邦題は星影のステラ
Starlightは星明りの意味ですが。星影の言葉の方がいいですね。
Stella By Starlight - Bill Evans
この曲は、ビル・エバンスのConversations With Myselfというアルバムの中に入っている曲です。
訳せば「自分との対話」ということになりますが、エバンスのピアノにはそういうところがあります。
このアルバム、詩人 長田弘(おさだひろし)「こんな静かな夜」の詩に出てきます。
「あなたの死」について語っていますが、これは自分に対しても向けられている言葉のように感じます。
Conversations With Myself ですからね。
決して難しい言葉を使うのではなく平易な言葉を美しく強く紡いでいく
素晴らしい言葉の生地が揺らいでいるようです・・・・
こんな静かな夜 長田弘
先刻まではいた。今はいない。
ひとの一生はただそれだけだと思う。
ここにいた。もうここにはいない。
死とはもうここにはいないということである。
あなたが誰だったか、わたしたちは
思いだそうともせず、あなたのことを
いつか忘れてゆくだろう。ほんとうだ。
悲しみは、忘れることができる。
あなたが誰だったにせよ、あなたが
生きたのは、ぎこちない人生だった。
わたしたちと同じだ。どう笑えばいいか、
どう怒ればいいか、あなたはわからなかった。
胸を突く不確かさ、あいまいさのほかに、
いったい確実なものなど、あるのだろうか?
いつのときもあなたを苦しめていたのは、
何かが欠けているという意識だった。
わたしたちが社会とよんでいるものが、
もし、価値の存在しない深淵にすぎないなら、
みずから慎むくらいしか、わたしたちはできない。
わたしたちは、何をすべきか、でなく
何をなすべきでないか、考えるべきだ。
冷たい焼酎を手に、ビル・エヴァンスの
「Conversations With Myself」を聴いている。
秋、静かな夜が過ぎてゆく。
あなたは、ここにいた。
もうここにはいない。
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