「今日も沢山の人を救ってしまった」
そんな事を言って満足そうにしてる草陰草案。その言葉はなにかの比喩……とかではない。実際あった事実。彼女によって今日、何人もの大病が治された。でも……それでも、草陰草案一人ではこの世の病を根絶するなんて出来ない。当たり前のことだけど……
二人は高級車に乗ってた。なんか胴体がやけに長い車である。今日助けた人がどうしても……ということで、それで送りたいということでその車に二人は乗った。
「「わあ!? なにこれ?」」
二人共軽とかファミリカーとかにしか乗ってこなかった庶民である。同時にそんな声を出した。なにせその車は草陰草案と野々野小頭の『車』という常識を壊したからだ。
なにせ外から見たら「なんかバスみたいだな」とか二人は思ってた。だから中はバスみたいに席が何席もある……とか思ってたけど、なんとそれは全く違ったのだ。中は広々としてる。席が何席もある……も別に間違ってはない。けど背中を向けるように座るのではなく、窓を囲むように席は設置されてた。中央には大きなテーブル。それに何故か壁面にはLEDとか仕込まれてるのか、間接照明が光ってた。
でも下品な照明ではない。温かい色の高級感を醸し出すような……そんな感じだった。そしてゆっくりと動き出したら、なんかもとから乗ってたピシッと上品な服を着てた人がオシャレなグラスにオシャレな飲み物を注いで渡してくれた。
「これって……」
「オレンジジュースです」
「「あ、はい」」
オレンジジュースかと二人は思った。なんかカクテル? みたいなのを注ぐような底が浅いグラスにお花が添えられてたから、アルコールなのかと思ったが、オシレンジジュース。
ちょっとガックリした二人であった。まあけどきっとこのちょっとしか入ってないオレンジジュースももしかしたらこれだけの量でもいつも飲んでるようなジュースよりも高いのかもしれない。実際、今飲んでるオレンジジュースはとても濃い味をしてると二人はおもってた。
「これからもこんな事をやっていくわけ?」
「大いなる力には、大いなる責任が伴う……」
「はい?」
なんかいきなり変な事を言いだした草陰草案に怪訝な顔をする野々野小頭である。
「聞いたこと無い? よく言われることだよ。漫画とか映画とかでね」
「それは聞いたことあるけど……あんたそんな責任を感じるタイプ? 責任はあるかもしれないけど、でもそれを背負うのは結局個人の意志でしょ? あんたは背負う気あるの?」
「私だって心情の変化くらいするよ」
そう言って髪の毛をくるくると指で弄ぶ草陰草案。そしてちょっと微笑んでる草陰草案の横顔を見て、野々野小頭はたしかにすこしは変化してるのかも……とか思う。なんか慈愛に満ちた感じの顔してたからだ。そんな顔は今までの草陰草案には見られなかった表情だ。
「やっぱり感謝されるのは気持ちいいのよ。私、そんなのなかったし」
「私だって、そんなのないし。でも……本当になんでも治せてるの?」
「そんなの……私だってわかんない」
「へ?」
なんか衝撃の発言を草陰草案はした。そのせいで野々野小頭は間抜けな声を出してた。