穴の中に視界を飛ばす。けどそれだけはなんとか確保したが、結構まずい……と野々野足軽は思ってた。なにせさっきの一撃にかなり力を使ってしまった。そのせいで本当ならこの穴の先の空間に力を満たしていきたかったわけだが、今は視界を確保する程度の力しか出さない。
「ドラゴンは……」
視界を飛ばしてる野々野足軽は今、その気になれば360度を見ることが出来る。だからどこから来ても見逃すわけはない。問題は力を周囲に満たしてないと、視界を移動できないということだ。このままでは再びバクンとやられて野々野足軽の力がドラゴンに食われたら最初からになってしまう。一番無防備な瞬間が穴に手を突っ込む時だ。
あの時は力を纏う事ができない。今は手を突っ込んですでにこっちの空間に手が届いてるからそこから力を徐々に広げてるし、ある程度力を纏わせて手自体を守ってる。けどこれの難点はドラゴンが野々野足軽の手を狙ってきた時にとっさに穴の向こう……つまりは野々野足軽の肉体のある方に取り出すことが出来ないってことだ。そうなるとこの手はそれなりの力で守ってないといけない。なにせまた食われるのは嫌だからだ。
でもその具合もよくわかってない。どのくらいならあのドラゴンの嚙む力から手を守れるのか……ワニとかカバとかよりもきっとドラゴンは力が強いだろう。そもそもドラゴンなんてのはいろんなゲームや物語で最強を冠されることが多い存在だ。それを考えるといくら今の野々野足軽の力で守ったとして……という思いもある。けど守らないと手がなくなる。最悪生やせるが……それでもなくなるのは嫌だろう。それに……この穴の向こうに手を残し続けたい理由はちゃんとある。
それは穴を通ってる手がないと、力を穴の向こうに送ることが出来ないからだ。そうなると、この穴の空間でやりあうってことが出来なくなる。そもそもどうやってやりあうのか? という感じでもあると野々野足軽は思ってるが、一応色々と考えてはいる。
「でもそれも……想像以上に力を使ってるから厳しいかも……」
力が潤沢にあるのなら、色々とやれることも多いだろう。当然である。力の大きさはそれこそ資金力みたいなものだ。たくさんの金があったら何も我慢せずにあれもこれも――と買う事かできる。でもあんまりお金がないと、これは我慢しよう、あれも我慢我慢……となってしまう。節約しながらでもできることはある? それよりも潤沢な資金があればすべてなぎ倒せるのだ。
いつもなら野々野足軽の力はそれこそ一日で消費することが難しいほどにはなってた。いつもどうやって使い切るかで頭を悩ませる日々だった。なにせ体感的に力を使い切った後の方が力が増えてるような気がするのだ。だから野々野足軽は力の総量を増やすためにも毎日毎日、力を使い切るようにしてる。
そしてそれも大変になってきて、だいぶ成長したんだな……とか思ってた野々野足軽だ。でもどうやらそれは甘かったと痛感させられる。ドラゴンを相手にするにはとても心もとないと感じるからだ。今残ってる力でドラゴンを倒せるか? と野々野足軽は考えて首をふった。
(いや違う。倒すんじゃなく、助けないといけないんだ)
余計に高いハードルになった気がするが、野々野足軽はどうやってそれをなすか……色々と考える。そして結局はこんな結論に行きつく。
「色々とやってみるしかないよな」
限られてる力の残量では厳しいが、でもやるしかない。
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