「殺すのかよ……」
なんとか立ち上がって俺はそんなことをいった。足元には切り裂かれた教会のやつの死体。見た目は普通の人だ。教会のやつはだいたい高そうなローブを着てるが……それも中央のやつなら、普通はそこらの地方の教会よりも高待遇なのは間違いないから高そうというか高いものを着てる筈。
それに高給取りだろう。だから地方の教会関係者よりも金はあるはず。でも死んだ奴らはそんな高級な見た目ではない。
当たり前だけど。流石に市中に溶け込むのに、あまりにも場違いな服装では溶け込めないからだろう。コイツラのプライド的にそんな事をしそうにないが、きっと上の方から無理矢理やらされたんだろうなって思う。
いくら中央の貴族共だといっても、その中では更に細分化された上下関係があると聞く。そしてそれは絶対。中央の奴らはだいたい地方の街にえらい顔をしてるが、中央に戻れば下っ端……ってのは案外よくあることらしい。
なにせそもそもが地方に出向させられる様なやつが偉いやつな訳はないっていう。でも選民思想が極まってる中央の奴らは、中央でなくてはすべて下――って思ってるらしい。
まあそんなのは親父に聞いてたが、実際この目で見るまではそこまで何かおもうこともなかった。なにせ俺自身は中央との関わりなんてまったくないからだ。
親父はそれこそこのアズバインバカラでもそれなりの権力を有する豪商だからな。中央の奴らと関わることだってあったんだろう。だから忠告してた。
なにせ物資も何もかもを握ってるのは中央だ。それらを卸されてもらうには中央にヘコヘコくらいしないいけなかったり……きっとするんだろう。
俺はそこら辺全くしらないが……
「仕方なかった。お前が馬鹿なことをしたからだ」
ジジ――なんかそんな音が聞こえた気がした。すると女が死体を漁る手を止めて立ち上がって速歩きをしだす。
「行くぞ」
「おい、死体は?」
「放っておけ、気づいたら勝手に処理されるだろう。奴らは教会の関係者だ。ちょっと調べればわかること。殺ったって別に構わない」
「ならなんで止めたんだよ」
殺ったって良いのなら、最初からやってよかったじゃんってのが俺の感想だ。なにせ俺は手柄がほしいのだ。ここに入り込んでる教会の奴らを次々と殺しておけば、俺の罪が免責されるのなら、ためらう理由なんて俺にはない。だって俺は死にたくない。誰かを殺してそれを逃れられるのなら……それに越したことなんてない。
俺はやれるんだ。自分の為なら、躊躇いなく……
「そんなのは簡単だ。本当なら、相当上手くやらないとやられるのはこっちだからだよ。今回は運が良かっただけ。それをわすれるな」
そういって女は俺を脅してくる。