エッセイと虚構と+α

日記やエッセイや小説などをたまに更新しています。随時リニューアルしています。拙文ですが暇つぶしになれば幸いです。

雑貨にひそむ不思議

2013-02-14 17:13:39 | 小説
セガのゲームセンターの入口付近にはビートマニアが置かれていて大学生くらいのカップルがたむろしていた。平日の昼にしては人通りが多い。できたばかりであろう松屋の前には小都市らしく自転車が4,5台止まっていて、透明なガラス窓からも、食べながら話しをしているイマドキな男子高校生の熱気が伝わってくる。
底冷えはすぎたのだろうか、僕はジーンズメイトでこの前買った、カーキの厚手のジャケットをはおって歩いていた。初春の風は容赦なく吹きこんでくるから松屋に入って腹ごしらえをしようかとも思っていたのだが、まだ我慢して歩いている。しばし体重を減らさなければならない。クレープ屋の前を通ると、メープルシロップなどの甘い匂いがして、喜々としてお喋りに乗じながらクレープを頬張るスカートの丈を短くしている制服の女子高生たちに激しい欲情をそそられた。
吉祥寺に来ていた。この前、僕と同じように大学を出ても就職せずにフラフラしているフリーター仲間の堀木に連れられて吉祥寺を訪れてからしばしばこうして1人で来ているのだ。
雑貨店が多いとの噂を聞いていたがどれが雑貨店かもしくはどこにあるのかがいまいちよくわからない。吹きすさぶ空っ風と空腹についに耐えられなくなり僕はさっきのクレープ屋の前まで戻って向かいにあるマックに入った。マクドナルドの店内は思いのほか空いていた。すぐにレジ前で注文の番になって僕は照り焼きバーガーのバリューセットを注文して1Fの禁煙スペースに座った。クレープ屋の前のさっきのおしゃべりに乗じていた女子高生たちはまだたむろしていて僕は照り焼きバーガーを食べながら女子高生たちを観察してしまった。
でもそんなことでは駄目だと思い立つと同時にバリューセットも食べ終わってしまう。トレーを律儀に片付けるとマクドナルドを出て、また吉祥寺の雑貨店を目指して歩きだした。雑貨店に関しては2Fによくあるとの噂も聞いていたから店舗を見上げながらだんだん細くなっていく路地を歩く。上を見上げても歩き回っても見つからず、さっきのゲームセンターまで戻って来てしまった。どうやら探して、何回も道をまがったりしているうちにもといた場所に来ていた。道に迷うことは満たされた空腹とあいまって激しい疲労感を僕にもたらし不安にさせた。ショルダー掛けのポーチから携帯電話を取り出すと、アドレス帳から堀木の名前を探し出し電話をかけた。コールが3回も鳴らない内に、
「おお、柳田か?なんだ」と堀木の眠そうな声が聞こえた。
「いま吉祥寺を歩いてるんだが、雑貨店が見当たらない。お前がこの前雑貨店があるって言ってたから探しているんだ。どこにあるか知っているか?」俺は少し早口に堀木に疲労と不安をぶつけてしまった。
「吉祥寺に雑貨店はたくさんあるはずだろう」と堀木はぶっきらぼうに言うと電話を切ってしまった。
そうかと思った。そしてゲームセンターの2Fにある中古ゲームソフト屋で僕にとっての雑貨のようなものを探して見ることにした。