映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「プラダを着た悪魔」

2007年09月23日 | 映画~は~
女性に大人気だったこの映画。

うける理由はよくわかる。でも映画としての出来は2流。映画前半はテンポもよく、主人公の奮闘の空回りやありえないくらい威圧的な上司とのやりとりは面白い。洋服に何の興味も無かったのが、どんどん磨かれきれいになっていく様は観ていて面白い。しかし、主人公が上司ミランダの信頼を勝ち得ていくに連れて、面白さが減速。面接の際、「(ファッションのセンスは無いけど、他の女性社員よりも)仕事が出来る」と言うことを言い放った。確かにミランダが満足のいく仕事振りはしたけれど、彼氏や友達を放たらかし。人としてどうなんだ、と。まぁ日本ではそれは普通のことなので(爆)、映画も見ている側もそれについて悩むようなことはなかっただろうけど。個人的には仕事を辞める前に、仕事と彼氏や友人達との関係に悩むシーンがもう少しあってもよかったと思う。

それにしてもミランダの仕事(なのか?)の要求は恐ろしい。いや、やはりあれは仕事ではない。ミランダの専属召使。ハリーポッターの最新作を手に入れろ、て。原作は読んでいないからわからないけど、こういうのがまかり通るのですかセレブの世界って?それこそ本人が納得してやっているなら別にいいんだけど、この仕事に対する奴隷的な職業意識は日本の企業の、特に男性社会と言われる業界ではまかり通っていますね。上司のご機嫌取りは日本では仕事の一部ですから。

なぜか印象に残っているのは、アンディ(アン・ハザウェイ)の入社前からミランダのアシスタントをしていた女性がどんどん自分の居場所を侵食され、エルメスのスカーフをお店にとりに行った際に交通事故にあう…という。
これ、この映画に必要なのか。えげつなさ過ぎて胸糞わるくなった。

そして劇中に使われている有名アーティスト達の楽曲…が最高に映画に合っていなくて最低。楽曲のよさが台無し。映画にも音楽にもメリットはないであろうこの組み合わせ、商業的な理由でしょうか。

あともう一言。ミランダは確かにいい服きてるけど、あれは似合っていると言えるのか?


見所は、アンディが変わり行く映画前半。内容は無視。



お薦め度:★☆

「Ray レイ」

2007年09月23日 | 映画~ら~
レイ・チャールズの波乱の生涯を綴った伝記映画。この映画でジェイミー・フォックスはアカデミー主演男優賞を受賞。実際映画を見てみて、彼の受賞は納得。誰も異議申し立てはしないでしょう。

では映画は…といいますと、正直最後まで見るの辛かった。ジェイミーの演技は申し分ない。でも内容がね。
これが伝記映画の難しいところ。人間の一生にはいろんな出来事がある。伝記映画になるくらいの人物なら、相当ドラマチックなのは間違いない。でも普通の映画がテーマにのっとって物語が展開されていくのに対し、伝記映画は映画を面白くするために「展開させる」ことができない。そんなことしたらその人の人生を描くものではなくなってしまうから。むしろある人物の人生をベースにした物語となる。その人自身に興味を持っている人にとっては、この上なく面白い作品だと思うけど、たとえばレイ・チャールズの音楽が好きな人全員がこの映画をすきかといったらそうではない。女たらしのレイをちょっと嫌いになるかもしれない。

でもそれは仕方の無いことよなぁ。だって人間にはいろんな側面があり、いい面もあれば人によっては認めたくない面もある。伝記映画で特定の人物の人生を語るには、その双方を見せなくてはならないし、よいか悪いか、好印象か悪印象かはそれこそ見る人によって違う。別にこの映画だってレイ・チャールズを大好きにさせるために作られたものではないだろうから、誰かがレイを「ちょっとヤダ」と思ったとしてもそれは失敗ではないんだろう。

面白くないとはいえ、まだ人種差別、特にアフリカ系への差別が色濃く残っていた時代(今も酷いけど)に、目が見えないというハンディを背負いながら音楽業界で頂点に上り詰めたレイの世渡り術は必見。特に印象的なのは、映画始まってすぐのバスに乗るシーンと給料をちょろまかされそうになるシーン。どんな時代にも酷いやつはいる。人種差別が法律上まかり通っている時代には、酷い奴等というよりもそれが当たり前なのでさらにどうしようもない。そんな中でもほんの一握り、ほんの一つまみの、社会の基準に惑わされない独自の良識を持ち合わせている人が1人でも身近にいるかいないかで、被差別側の人生は大きく変わるのだろう。

物語として期待するのではなく、レイ・チャールズを知りたい!と言う人にはお薦め。


お薦め度:★★

「フォレストガンプ」

2007年09月23日 | 映画~は~
「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみるまでわからない」

・・・チョコレートの箱って言うてんのやから、チョコレートやろ。
と、当時高校生だった私はこの言葉に感動どころか「なんだそれ?」という違和感を強く感じた覚えがあります。実際今の年齢になっても、よくわかりません。いろんな種類のチョコレートと言うこと?そんなに多岐にわたる味わいが、その当時のアメリカにはあったのか?
この言葉のヒントが映画の中にあったのかどうかさえ、実はよく覚えていません。


フォレスト・ガンプ。アメリカの激動の時代に寄り添って生きた男性のお話です。


アメリカではもちろん、公開当時は日本でも煽るような広告合戦で、テレビでも雑誌でも誰もが大絶賛していました。そして劇場に足を運んだ私の感想は・・・「面白いか?」

トム・ハンクスの演技は素晴らしかったけど、映画の内容には正直拍手は送れません。恋人ジェニーのどうしようもない、手のつけられないやりたい放題のわがままぶりには呆れます。

当時英語を習っていた英会話講師のアメリカ人は、大絶賛!それに対し「あんまり面白くなかった」と素直な感想を語った私を前に、彼の顔色は風船がしぼむようにどんどん曇っていったのを覚えています。「たしかに…アメリカ人には特別な映画なのかも」と一言つぶやきました。
もちろん日本人にもこの映画が大好きという方はいらっしゃるでしょうが、私は彼のいうとおり「アメリカ人にとって特別な映画」だと思うのです。アメリカの栄光を満載し、同一人物がそれぞれの時代のそれぞれの出来事にかかわっている映画。貧困から成功を勝ち取るのとは異なりますが、これって立派なアメリカンドリームだと思うのですよ。ベトナム戦争での勲章、オリンピックの卓球選手、大陸を何往復もする「ヒーロー」とあがめられた男・・・この中に日本人が共に喜びを感じ、テンション上がるようなエピソードは皆無です。アメリカの近代史に詳しいからといって楽しめる類の話でもない。年齢のせいかとも思ったけど、30手前にして見てみてもやっぱりそれほど面白いとは思えない。

映画の出来って、動員数や興行成績では測れないものだわ。


お薦め度:★☆  (期待度とがっかりのギャップによる低得点。アメリカ研究をしている学生は一度見ておけ)



「火垂るの墓」

2007年09月23日 | 映画~は~
この映画、先日テレビで放送されていたようですね。いつもは8月に放送されているので、今年は「あれ?」と思ったいたら9月に登場。

何回観たでしょうか。小学生の時にビデオで、その後は3回ほどテレビの放映の際に観たと思います。こんなに何回も観ているけれど、この年齢になるともう見れません。辛すぎて。
戦争は悲惨、苦しむのはいつも弱者・・・と擦り切れるほどに使いまわされたこの言葉では、この映画は語れないような気がします。

主人公のせっちゃん、そしてお兄ちゃん。
お兄ちゃんはまだ14歳なんです。現代の年齢と比べても社会も時代背景も精神年齢も大きく違うでしょうから意味がないかもしれませんが、それでも今の時代なら中学2年生の男の子が幼い妹と生き延びようとするたくましさ、強さ、やさしさ、苦しみに胸が張り裂けそうになります。



空襲や両親との死別は恐ろしく、辛すぎる経験。でもこの映画を観ていてさらに観客の胸に訴えかけてくるのは、戦時中ではなく「戦後」ではないか。誰もが苦しみながらも戦後の街は復興に向けて大きく動き出した。生活を立て直すため、誰もが必死にもがいている時期。きっとそれには大人も子供も、年齢なんて関係がなかったのだろう。そんな時代、誰も頼ることができない14歳の兄と幼い妹には、本当に誰一人として手を差し伸べない。

「そんな人は大勢いる」「誰もが苦しい」と、そんな兄妹の存在も大勢の中の一部に過ぎず、誰も気に留めない。食べ物に困ろうが、住む場所に困ろうが、幼い女の子が死のうが、14歳の男の子が行き倒れようが・・・。誰も気に留めない。これが時代と言うものなのか。仕方がない、と言っていいのか。

戦争は人の心を変える、とよく言われる。この言葉が使われる時、人とはある特定の人物に対してのものだと思っていたが、そうではないらしい。「みんな生きるのに精一杯。みんな苦しいのだから…だから大勢の中の1人2人にかまっていられない」という集団心理、社会心理。こう思う人を責めるつもりは無いが、これがまかり通ってしまう社会ほど恐ろしいものがほかにあるだろうか。
空襲は恐ろしい。でもそれを行うのは人間。戦争だから爆撃する、そこに一般市民がいても。これも社会心理なのか。洗脳なのか。


社会や時代背景によって、物事の善悪も常識もすべては変わる。私は正直「戦争は悪」とは言い切れずにいる。果たして人間の世界に、白黒はっきりと答えが出せるものがあるのだろうか。

それでもこうは言える。14歳の男の子と幼い妹が、その存在をなかったもののように扱われる社会が容認されて良い訳がない。そして戦争は無い方がいい。



お薦め度:★★★★★  (映画としてのハイクオリティー。でも大人になってからは辛くて耐えられません)