絵じゃないかおじさん

言いたい放題、自由きまま、気楽など・・・
ピカ輪世代です。
(傘;傘;)←かさかさ、しわしわ、よれよれまーくです。

仮想はてな まりあカンノン・ストーリィ  008

2015-01-04 08:01:27 | 仮想はてな物語 
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絵じゃないかぐるーぷ




 バナイランは、龍先生の右手を両手で挟んだ。これは、後から聞いた話だが、骨ばかりで脂気のない感触に、これはほっていても、そう長くは生きられないと感じたそうだ。
「君たちは、すべて知っているのだね。じゃ、打ち明けよう。遺書も書き終わった。最後の小説も書き上げた。もう、僕はこの世に用はないんだよ。トイレの後、睡眠薬を飲もうと思っているのだ。いくら、君たちといえども、この僕を止めることはできない。僕自身だって、もうどうにも出来ないんだ。明日になれば、本当に気が狂ってしまうかもしれない。そういう姿を見せたくはないんだ。僕は、僕の最後の人生ぐらい自由にしてみたい。生まれて初めて、そういうことが出来るんだよ。止めないで欲しい。心よく僕を見届けて欲しい」
「なりません! ダメです。私は、これでも神仏に仕える身。先生に送り出してもらい、ずっと劣等感に悩まされて生き続けてきました。60過ぎて、やっと悟りらしきものも少しだけ分かるようになりました。先生はお若い。まだまだ、これからです」
「・・・ そう言われても、体力も残ってないし、頭の中も制止しにくくなっているし・・・」
「センセー。自殺はいけませんよ。あれは、殺人と変わりませんよ」
「センセーっ、死なないと言ってください。お願いです。先生に、この世に生まれさせていただいて、私たちは、苦しくとも生きていっているのですよ。お願いです。先生が死ぬと、先生によって生み出された多くの者が、死ぬのです。どうか死なないと言って下さい先生、私たちは、もっともっと生きていたいのです」

 下ピーのこの一言はきいたようだった。

「そうか、君たちも殺すことになるのか・・・」

 龍はんは、腕組みをして、頭を下げて考えこんでいた。前途ある青年・下ピーのすすり泣く声が、虫の音のごとくそっとあたりをはっていた。
「分かった。考え直してみよう」
 そこで、バナイランが、かねてから考え続けていた案を提案した。龍はんも、同意したようであった。
「先生、睡眠薬は17錠にしてくださいよ。18錠目が、致死量となります。先生が、この世が、そんなにお厭でしたら、好きにモノを書いて、その創作物、つまり私たちと自由気ままに暮らせる世界があるのですから。その判定は、エンマ大王がします。自殺だと、もうその対象にはなりませんからね」
「内供どの、よしなになそ!!!」

 龍はんの目が、爛々と輝き出した。
「分かりました。。現に、こうして私たちが、先生にお会いに来ているではありませんか安心して、いらして下さい」
「そうかい」
「しかしながら、先生には、この世で1回は死んでもらわねばなりません。しかし、自殺ではダメなのですよ」
「僕は、死ぬことは厭わない。心の準備は出来てる」
「先生、睡眠薬は必ず17錠にして下さいね。あと1錠は、私たちが何とかしますから」「分かった。そうする。そうすれば、君たちと仲良く暮らせるんだね」
「はい。お待ち申しあげております」

 バナイランの話は分かりにくい。が、翻訳するとこういうことだろう。
 龍はんの寿命は尽きかけている。死ぬには、自然死か、自殺か、他殺しかない。自然死を待っていると、龍はんの気が狂い、自殺どころか殺人も犯しかねない。自殺は、バナイランたちが、最も嫌うものである。他殺は、誰も志願者が居ない。

 しかし、バナイランは他殺を選択したようだ。その実行者は、はたして、誰がなるのだろう。

 バナイラン自身か?
 キヨヒメか? 


                               この項おわり



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