家庭菜園でナスを栽培していると、下の写真のようにヘタが白っぽく汚れてきたり、実の先端部分が茶色に変色したりすることがあります。
見た目が悪くても自宅で食べる分には問題ない・・とは言ってみたものの どうせならピカピカのナスを収穫したいですよね。この症状は何が原因なのでしょうか、対策はないものでしょうか。
この症状は、チャノホコリダニという体長約0.2mmの微小な生物が引き起こしているらしいのです。あまりにも小さく色も薄いため肉眼ではほとんど見えません。肉眼でそれとわかる0.5mm前後のハダニに比べてもだいぶ小さいのですね。ダニの背景が黒っぽい平坦面で適切な光が当たっていれば、やっと「何かが動いているな〜??」程度です。8倍くらいのルーペならしっかり見ることができるので菜園をやられている方は是非ルーペを用意しておきましょう。まあそれを使っても写真を撮るには小さすぎるので顕微鏡を用いて主犯を写してやりました。
うげっ!!こんなのがうじゃうじゃいたんだぁ。収穫後のナスは平気でそのままキッチンに置いていたけれど・・・嫌になるねぇ。
白い粒々が集まった丸いものはチャノホコリダニの卵です。成虫の体長に比してかなり大きいんですね。
別の角度からもう一枚・・・
ホコリダニの特徴である第4脚(写真の下方の一番後ろの足)には細い毛のようなものが伸びており、それを引きずるように歩きます。雌雄で第4脚のたくましさに差があるそうで、この写真のダニはそれがほっそりしているのでメスでしょうね。
それから卵の写真をもう一枚・・・
これは美しい!卵にある白い粒々は小さな突起で表面にきれいに並んでいます。この特徴はチャノホコリダニ特有。近縁で区別の難しいスジブトホコリダニの卵にはこの粒々は無いらしいのでダニの同定に役立ちます。
静止した写真だけではわかりにくい部分もあるので動画も作ってみました。初めてYouTubeにアップしたのですよ。短い動画なのでよろしかったらぜひ見てください。
チャノホコリダニ
雄が静止幼虫を運搬して新天地を開拓するというおもしろい生態があります。それに加え、約2週間で卵から成虫になるとか、一匹のメスは生涯で50個の卵を産むとか言われているから あっという間に被害が拡大するのも分かります。
主犯は分かりました。でもなぜ実の先端だけが変色するのでしょうか。
まず、ナスが成長するとき外果皮が伸長する部分はどこかを見ていきます。右の写真のように、ナスの先端に花がらが付くことと、へたの下に夜間の成長を示す白い部分があるということから、伸長は、子房の基部から花弁が接する間で起きています。次にダニ被害について。開花中から莫大な数のダニにより吸汁されるため子房表面は全面傷だらけ。しかし、その後ナスは急激に大きくなり正常な表皮が作られ続けます。それにダニの増殖スピードが追いつけないので、変色してしまうのは花弁がついていた先端付近に限られるということになるのでしょう。
一方、がくについては伸長スピードがそれほどでもないためダニ被害は免れないと推測。さらにがくには星状毛が多数あり、ツルツルよりも毛があるほうが住み心地が良くダニが増えやすいということも一因のようです。
ナスの上には、このダニの他に見知らぬ住人も住んでいました。それが下の写真・・・
ダニ被害でコルク化したナスの表皮上を歩く黄色い虫。これも別種なダニか?と心配になりましたが、足が6本で昆虫でした。ヒメハナカメムシ類の幼虫で、こちらはアザミウマやアブラムシ、昆虫の卵を食べるという益虫です。形から4齢幼虫でしょうか。大きさはダニよりもだいぶ大きく体長1.5mm弱であり肉眼でも歩いているのがすぐにわかりました。この虫の捕食シーンを撮りたかったのですけれど根気が続かずに断念。ハダニやホコリダニも食べるという報告もあったので今後の活躍に期待しちゃいますよー!。このような住人もいるので安易に農薬使うのは考えものですね。