常緑樹のナンテンとエレガンテシマについて。冬に寒くなってくると、ナンテンの葉は赤色に、エレガンテシマの葉は茶褐色になることをレポートしてきました。今回は、その両者の葉を酸・アルカリテストをして調べてみたいと思います。原因物質がアントシアニンであれば酸で赤く、アルカリ性で青〜緑色になるはずです。
上写真の左がナンテン、右がエレガンテシマです。これらを ろ紙２枚に挟んでソフトハンマーで叩き出しをしました。
ちなみに、ナンテンでは１枚の葉に見えるのは複葉の小葉です。エレガンテシマ場合は小さい粒々に見えるのが一枚一枚の葉に相当します。
叩き出しをすると写真上のようになり、その一部に酸性のクエン酸液（上部の丸）とアルカリ性のセスキ炭酸ソーダ液（下部のハート型）を滴下し反応をみたのが写真下です。（酸・アルカリの濃度はテキトー）
すると、ナンテンでは、セスキ炭酸ソーダで緑色に変化しました。一方、エレガンテシマはクエン酸でもセスキ炭酸ソーダでも明らかな変色は見られませんでした。
ということは、ナンテンの赤色はアントシアニンであり、エレガンテシマの茶褐色はそれ以外の物質による可能性が高まりました。
次に、各々に葉の断面を顕微鏡で観察して色素の存在位置を調べました
写真の上下とも100倍で観察したナンテンの葉の断面です。ナンテンでは、柵状組織と海綿状組織がはっきりしており、赤い色素は柵状組織と葉裏の表皮細胞に存在していることがわかりました。一方、海綿状組織は緑色をしていました。
参考までに、落葉タイプの紅葉ではどうなっているのでしょうか。イロハモミジの紅葉した葉を透過光で顕微鏡観察（過去画像）・・
紅葉が未完のところは緑色に見えます。透明な筋は葉脈です。
葉の断面を観察すると（過去画像）・・
写真上がほぼ完全に紅葉している葉で、下が部分的に緑が残っている葉です。
この時観察したイロハモミジでは、柵状組織と海綿状組織の両者ともに赤くなっていました。また、部分的に緑が残っている葉では、柵状、海綿状組織の両者が赤くなっているか、あるいは その両者が緑であるかでした。この時の観察ではナンテンのように柵状組織が赤で海綿状組織が緑と色分けされていることはありませんでした。
落葉樹がどのような機序で紅葉するか、について これまでの説明は、
- 気温低下により光合成効率が落ちた状態では、これまでと同じ量の光であっても光エネルギー過剰状態になってしまう。
- 光エネルギー過剰状態は、活性酸素を生じてしまう。
- 活性酸素は葉緑体に傷害を及ぼし、クロロフィルの分解が始まってしまう。
- その反応をできるだけ遅らせる目的で植物は赤い色素のアントシアニンを合成し、過剰な光エネルギーを緩和している
- それが樹木の多くの葉で起こると紅葉として認識される。
- それと時を同じく葉の付け根に離層ができ落葉する。
- 紅葉の赤い色素はアントシアニンのうちのシアニジンだということが分かっています。
でしたが、実は別の機序ではないか、と考えられてきているということ。それは・・
- 気温低下の秋に葉内では、澱粉合成がストップする。
- これまで作られ葉内に残っていた澱粉は糖に分解され、その後の光合成では澱粉が作られずに糖の濃度が上昇してしまう。
- 澱粉と違い水に溶ける糖では、その濃度上昇は細胞にとって害となり老化が進んでしまう。
- また、糖の濃度上昇は、光合成が滞ってしまい過剰となった光エネルギーは活性酸素を生じる。
- それらを防ぐ目的でアントシアニンが合成され糖が消費される。
- アントシアニンは液胞内に貯められ細胞への障害を回避している。
下の説だけが正しいとすると世の中に青色の紅葉があったとしてもいいような・・やはり、アントシアニンのサングラス効果は正しいと思われます。
次にエレガンテシマ・・
写真上は、40倍、下は100倍で観察したものです。
エレガンテシマでは、葉表の表皮細胞の直下の組織に褐色の色素が溜まっていました。それ以外の部分は緑色でした。
【まとめ】
- 常緑樹であるナンテンの紅葉では、柵状組織と葉裏の表皮にアントシアニンが存在していると考えられました
- 落葉樹であるイロハモミジの紅葉では、柵状組織、海綿状組織の両者が赤くなっていました
- 落葉樹の紅葉ではその色素はアントシアニンのうちシアニジンであることがわかっています
- エレガンテシマでは、葉表の表皮直下の組織に茶褐色の色素が溜まっていました
- エレガンテシマの茶褐色の原因物質は、アントシアニンではないと推測されました
【今後の予定】
- 紅葉したセダム オーロラで酸・アルカリテストをしてみたいと思います
- 赤色の色素がベタシアニンとして知られるビーツで酸・アルカリテストを試してみたいと思います
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