9月12日に日野市のイチョウ並木で枝折れ事故があり亡くなられた方がいらっしゃいました。それを聞いて、木が腐っていたのかと思ったのですが、そうではなかったようです。イチョウは隔年結果の性質により多量に稔らせる年があり、今年の実つきは多く その重みで折れたということ。2022年8月にも鹿児島でイチョウの枝が折れて校長先生が下敷きになってしまいました。この時も折れた枝に腐朽はなかったらしく、実の重さが原因だったようです。めすのイチョウの木は8月〜秋には気をつけなければいけませんね。実を収穫するために剪定を控えがちですが、特に街路樹の場合はこざっぱり剪定しておかなければいけないのかもしれません。
さて、私が住む地域でも街路樹に関して気づいたことがありました。散歩途中で大きなサルノコシカケが出ている木を見つけました。
サルノコシカケは木材腐朽菌に属し、半円形の傘を柄を介さずに直接幹から発生させるきのこの仲間です。リグニンを効率的に分解できるので森における分解者としては重要なポジションにあります。ただし、生きている木にも発生することがあり木の寿命を短くしてしまうので注意しなければなりません。写真の場所では、他の街路樹は元気で枝葉も青々としているのですが、この木は勢いが弱く、高いところに枯れ枝も見えました。なのでさらに腐食が進むと枝折れに注意する必要がありそうです。台風被害に遭いやすい地方自治体ではサルノコシカケを街路樹に見つけたら知らせるように案内しているところもあります。
森林総研チャンネル【森林講座 長生ききのこ「サルノコシカケ」の秘密】の説明聞いていたら色々知らないことがわかりました。材木では 心材の方を赤身といって抗菌物質などを蓄積し保護層が作られているので耐久性が高くなるのですが、生きている木の場合はその逆で、辺材の方が防御反応をとれるので心材よりも丈夫になるそうです。なので、この写真の木でも辺材が弱くなったところにサルノコシカケが感染し、心材にある程度蔓延したところで木の表面に傘を発生させたものと考えられます。幹周りの様子は他の木と大差ないように見えますが、内部はかなり傷んでいるのかもしれません。
それから動画での説明では、地球の歴史上で腐朽菌が出現したことによって木がすぐ腐ってしまうので石炭ができなくなってしまったとのこと。すなわち腐朽菌の出現は石炭期の末期であると2012年のサイエンスで報告されたそうです。さらに、半円形の傘が幹から直接出ている形をしていれば、全てサルノコシカケの仲間だと思いこみがちです。しかし、遺伝子解析の結果は そうでは無かったということでした。写真のコフキサルノコシカケ(?)は同じ形をしたレンガタケとは別のグループで、柄付きのきのこを生やすケガワタケと同じ仲間だったということでした。
写真ではサルノコシカケの上に黄色のものがベッタリ付着しています。こちらは、おそらくは地衣類のロウソクゴケでしょうか。地衣類とは、葉緑体を持つ藻類と持たない菌類が共生関係を構築している植物体のこと。菌類は藻類に居住環境と水分や養分を提供し、その代わりに藻類が光合成で作り出した栄養を受け取っています。この共生関係により他の植物が生きられないような樹皮上でも見ることができます。生活の場を広げるときも両者が一緒に含まれる小さな粒になって行動するそうです。そんな生活様式なので、樹木にはほとんど悪影響はないと考えられます。
過去、森の中で撮った写真にもっとすごいサルノコシカケがあったので載せておきますね。
生きている木に出るサルノコシカケは菌糸が維管束に沿って蔓延することも多く、この写真のように縦に連なることがあります。
「サルノコシカケに腰掛ける猿」の写真を撮った方がいらっしゃるのですね。野生の猿が相手では狙って撮れるものでもないけれど・・いい写真でした。#お前よくぞそんなもん撮ってきたな・とツッコミもしたくなります。
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