公園の水辺にミソハギが咲いていました。花は紅紫色で直径は1.5cmほど。群生して咲く様子は美しいです。
ミソハギは、お盆の時に使われるお花です。花穂を束ねて水を入れた器に浸し、穂先についた水を振ってお清めするということ。その謂れなど詳しいことは忘れ去られ、ただ盆棚に乗っていたなぁという印象。用いられる水はただの水ではなく閼伽水(あかすい)と名前があったのですね。一説には、喉の渇きを抑える作用のため餓鬼の喉を潤す意味があるとか。私の故郷でもお盆の時先祖供養と一緒に施餓鬼が行われています。施餓鬼とは飢え苦しむ生き物や弔う者のない死者の霊に食べ物を供えて供養すること。というように、飢え苦しむことは一番かわいそうなことと思われていたのですね。
ミソハギ科ミソハギ属。この植物は自家受粉を避ける工夫をしているおもしろい花なのです。その仕組みがちょっと複雑なので花を解剖して見れば分かりやすいのですがね。公園を管理している方が育てているのは明らかなため、それを折り取るようなことはちょっと。なので写真だけでなんとか説明してみたいと思います。
雄しべと雌しべの組み合わせに3つの型があるのですよ。まずは長花柱花と呼ばれるタイプ・・
上の写真のように花柱が長く伸びて突き出しています。だから漢字で書くと長花柱花となります。雄しべの葯の位置はというと、萼片と花弁が開き始めるあたりに見えます。写真には写っていませんが、萼筒の中にもっと花糸の短い雄しべがあります。
花を正面付近から見て見たのが次の写真・・
花の入り口あたりにある雄しべが邪魔で短いタイプの雄しべは正面からでもよく分かりません。
次に中花柱花・・
柱頭は、花弁の開出部あたりにあります。雄しべは花弁の外に大きく出たものと、萼筒の中に短い雄しべがあります。
角度を変えて撮ったのが次の写真・・
この写真では、花の奥の方に短い雄しべの黄色い葯が見えます。
最後に短花柱花です。
長い雄しべと開出部に短い雄しべが見えます。
雌しべを見るために正面から・・
この花を正面から見ると奥の方に薄緑色した柱頭が確認できました。
以上をまとめると・・
花柱の長さには3つの型があります。雄しべについては、ひとつの花に12本あり6本ずつ異なる長さになっています。すなわち、長い花柱の場合には、雄しべの長さが萼筒の中にある短いのと開出部にある中くらいのになります。中くらいの長さの花柱の場合は、萼筒中の短いのと外に突き出した長い雄しべに、短い花柱の場合は、中くらいのと長い雄しべになります。簡単にいうと、雄しべと雌しべにはそれぞれ長、中、短があり、柱頭と同じ位置に葯がこないようにそれぞれの長さが決まっているということ。この花の型は遺伝的に決まっているので、一つの株では全ての花が同じタイプで統一されています。
この構造が受粉にどのように役立っているのでしょうか。まず柱頭が自身の葯の位置と離れることで自家受粉を避けています。それから次のようなメリットがあります。長花柱花の場合を考えてみますと、蜜を集めにハチが訪れた時、葯の位置が萼筒内と開出部なので、花粉はハチの口先と中程に付きます。次にこのハチが同じタイプの長花柱花を訪れると花粉の付いた位置に柱頭が無いので受粉できません。一方、このハチが短花柱花や中花柱花を訪れたときには付着した花粉と柱頭の位置が合うので受粉できるという具合。同様に考えると、3つの型それぞれが受粉するとき別の型の花粉が受粉しやすいことを意味しており、たった一匹のハチでも花のタイプを区別して効率的に受粉させられるということ。植物には考える力はないと思うのによくできたシステムなんだと感動しますね。
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