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辻 彩奈 ヴァイオリン・リサイタル

2021年05月05日 |  pocknのコンサート感想録2021
5月3日(月)Vn:辻 彩奈/Pf:江口 玲
ミューザ川崎ホリデーアフタヌーンコンサート2021前期
ミューザ川崎シンフォニーホール


【曲目】
1.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第10番ト長調 Op.96
2.ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 Op.78「雨の歌」
3.プロコフィエフ/ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調 Op.94 bis
【アンコール】
♪ パラディス/シチリアーノ

都内の演奏会は壊滅状態なので他の地域に目を向け、また良さそうなコンサートを見つけた。辻彩奈は20代前半にして世界的に活躍するヴァイオリニスト。昨年10月に竹澤恭子とのデュオでの名サポートが記憶に新しい江口玲との共演というのも期待が高まる。3つの渋めのソナタを並べるプログラムも光る。

ベートーヴェンの出だしを聴いて浮かんだ言葉は「端正」。晩年にさしかかり、彼岸の境地も垣間見られるベートーヴェンの美しい音楽に、辻は心静かに向き合い、端正に音を紡いでいった。落ち着いた息遣いで深くて長く、緩やかなフレーズの波を次々と乗り越えていく。そこには行き着くべき目的地をしっかりと見据えた自信がみなぎっている。曲の細部まで目を配り、大切なものに注がれる優しく繊細な眼差しが、落ち着いた大人の魅力を醸し出していた。

ベートーヴェンでは天上的な美しさを描いたのに対し、ブラームスでは地上の世界の美しさに気づかせてくれるような演奏。野に咲く花々の美しさだけでなく、花々を咲かせる土壌となっている暖かくて柔らかな土の香りや感触。

江口のピアノは、どちらの曲でもいつも優しくヴァイオリンに寄り添い、ことさら目立つことはせずにさりげないアクセントや呼吸が音楽に彩りと味を与えていた。心臓の鼓動のような安定した生命の存在が感じられ、共演者にとっても頼もしいピアニストだと感じた。

後半のプロコフィエフでは、音楽の持つスピード感や刹那的な煌めきを鋭い感性で捉え、果敢に切り込んでいった。音楽を大きく捉えたうえで細部まで見据える辻の姿勢は更に研ぎ澄まされ、様々な要素がモザイクのように入り組んだ音楽に、精巧でデリケートな金細工作品のような統一感のある造形美と、輝きや煌めきを与えた。江口のピアノとの要所を的確に突いたアクロバティックなやり取りを楽しそうに積み重ねて行き、聴き手の気持ちをどんどん高めて最高潮へと達し、圧巻の演奏で聴衆の大喝采を勝ち取った。

今日の3つのソナタは辻にとってすべて初挑戦だったとのこと。どの作品でも、音楽の全体と細部をしっかりと見つめ、丁寧に自分の演奏を構築していく姿勢が音楽の核心をしっかりと捉えることに繋がり、聴衆の心もしっかり捉える結果となった。今後の成長が益々楽しみなヴァイオリニストだ。

竹澤恭子 & 江口 玲 デュオリサイタル 2020.10.24 第一生命ホール
超久々のコンサート(江口 玲&川口成彦 ピアノリサイタル) 2020.6.19 紀尾井ホール

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