4月22日(土)藝大21「創造の杜」 ピエール・ブーレーズ 室内楽作品演奏会
東京芸術大学奏楽堂
【曲目】
1.マラルメによる即興 I:処女であり、生気にあふれ、美しい今日(1957)
2. デリーヴ I (1984/1986)
3. 二重の影の対話(1984)
4. シュル・アンシーズ(1996/1998)<日本初演>
【演 奏】
S:佐竹由美/Perc:藤本隆文(1,2,4)、和田光世(1,4)、平尾信幸(1)、西川圭子(1)、中山航介(1,4) /Harp:田島緑(1,4)、片岡詩乃(4)、信国恵子(4)/Cl:芳賀史徳(2)、亀井良信(3)/Pf:羽石道代(2)、野田清隆(3)、藤原亜美(3)、山田武彦(3)/
Vn:佐原敦子(2)/Vc:松本卓以(2)/Fl:神田勇哉(2)
指揮:クリストフ・マングウ
芸大が毎年現代音楽を中心に行っているシリーズ「藝大21『創造の杜』」でブーレーズが取り上げられた。
世界を代表する現代作曲家ブーレーズの作品が演奏会でなかなか取り上げられない理由の一つとして、演奏の難しさが挙げられると思うが、今日は優れた演奏を聴くことができた。ブーレーズの音楽は知的で計算され尽くされ精巧を極めているが、優れた演奏で聴くと微妙な色合いの変化や、柔らかな触感が伝わってきて、ブーレーズの世界へと誘われる。
6個の6面スピーカーを会場にぐるりと配し、照明効果も使いながら行われるクラリネットの生と録音によるコラボレーション「二重の影の対話」では、亀井良信の見事な技巧を駆使したソロクラリネットと、音響担当者の共同作業で不思議な魅力ある世界を現出しておもしろかったが、この日最も感銘を受けたのは日本初演となった「シュル・アンシーズ」。
それぞれ3人のパーカッション、ピアノ、ハープによるこの作品は音色も音の出し方も共通点のある3種類(パーカスはマリンバがメイン)の楽器でありながら、そこに存在する違いが微妙に呼応しあい、組み合わせを変えながら変幻自在で多彩な音色とテクスチャーを織り成す。しぶきを上げながら流れる川は、実際にはしぶきの部分、水の中、底の部分がそれぞれに独自の動きや色を持ち、それがひとつの流れとして海へと注いで行くが、そうした表層だけでない活きた水の動きと共通するような音の粒と、それらの有機的につながり、活発に活動する様子が思い浮かんだ。
9名のソリスト達は各楽器のソロイスティックな魅力も十分に発揮しつつ、この凄まじいほどの音楽を一見整然と、しかしすごいエネルギーを内包した演奏で聴かせてくれた。指揮者の正確なコントロールも不可欠に思われるこの曲は、このような演奏があって初めて真価を発揮する音楽であり、強烈な魅力を放出した。1時間近くにも及んだと思われる大曲だが、どんなふうになるのか、というワクワク感でいつまでも聴いていたい気分だった。「お見事!」と言いたい。
コンサートに先立って行われた笠羽映子氏によるレクチャー「ブーレーズ 音楽創造の60年」はNHK・FMの「現代の音楽」の西村さんのような話を期待していたが、直接音楽と関わりのないとりとめのない話が原稿もなく延々と続き辟易した。つまらない講義を出席のためだけに仕方なく聞いていた学生時代を思い出した。
東京芸術大学奏楽堂
【曲目】
1.マラルメによる即興 I:処女であり、生気にあふれ、美しい今日(1957)
2. デリーヴ I (1984/1986)
3. 二重の影の対話(1984)
4. シュル・アンシーズ(1996/1998)<日本初演>
【演 奏】
S:佐竹由美/Perc:藤本隆文(1,2,4)、和田光世(1,4)、平尾信幸(1)、西川圭子(1)、中山航介(1,4) /Harp:田島緑(1,4)、片岡詩乃(4)、信国恵子(4)/Cl:芳賀史徳(2)、亀井良信(3)/Pf:羽石道代(2)、野田清隆(3)、藤原亜美(3)、山田武彦(3)/
Vn:佐原敦子(2)/Vc:松本卓以(2)/Fl:神田勇哉(2)
指揮:クリストフ・マングウ
芸大が毎年現代音楽を中心に行っているシリーズ「藝大21『創造の杜』」でブーレーズが取り上げられた。
世界を代表する現代作曲家ブーレーズの作品が演奏会でなかなか取り上げられない理由の一つとして、演奏の難しさが挙げられると思うが、今日は優れた演奏を聴くことができた。ブーレーズの音楽は知的で計算され尽くされ精巧を極めているが、優れた演奏で聴くと微妙な色合いの変化や、柔らかな触感が伝わってきて、ブーレーズの世界へと誘われる。
6個の6面スピーカーを会場にぐるりと配し、照明効果も使いながら行われるクラリネットの生と録音によるコラボレーション「二重の影の対話」では、亀井良信の見事な技巧を駆使したソロクラリネットと、音響担当者の共同作業で不思議な魅力ある世界を現出しておもしろかったが、この日最も感銘を受けたのは日本初演となった「シュル・アンシーズ」。
それぞれ3人のパーカッション、ピアノ、ハープによるこの作品は音色も音の出し方も共通点のある3種類(パーカスはマリンバがメイン)の楽器でありながら、そこに存在する違いが微妙に呼応しあい、組み合わせを変えながら変幻自在で多彩な音色とテクスチャーを織り成す。しぶきを上げながら流れる川は、実際にはしぶきの部分、水の中、底の部分がそれぞれに独自の動きや色を持ち、それがひとつの流れとして海へと注いで行くが、そうした表層だけでない活きた水の動きと共通するような音の粒と、それらの有機的につながり、活発に活動する様子が思い浮かんだ。
9名のソリスト達は各楽器のソロイスティックな魅力も十分に発揮しつつ、この凄まじいほどの音楽を一見整然と、しかしすごいエネルギーを内包した演奏で聴かせてくれた。指揮者の正確なコントロールも不可欠に思われるこの曲は、このような演奏があって初めて真価を発揮する音楽であり、強烈な魅力を放出した。1時間近くにも及んだと思われる大曲だが、どんなふうになるのか、というワクワク感でいつまでも聴いていたい気分だった。「お見事!」と言いたい。
コンサートに先立って行われた笠羽映子氏によるレクチャー「ブーレーズ 音楽創造の60年」はNHK・FMの「現代の音楽」の西村さんのような話を期待していたが、直接音楽と関わりのないとりとめのない話が原稿もなく延々と続き辟易した。つまらない講義を出席のためだけに仕方なく聞いていた学生時代を思い出した。