4月30日(日)伊藤 恵 ピアノ・リサイタル ~春をはこぶコンサートVol.8~
紀尾井ホール
【曲目】
1.モーツァルト/ソナタ ニ長調K.311
2.シューマン/第3番へ短調op.14
3.シューベルト/ソナタ第20番イ長調D.959
【アンコール】
1.ショパン/マズルカ op.67-4
2.シューマン/交響的練習曲op.13~遺作変奏曲第5番
伊藤 恵さんの「春をはこぶコンサート」は8回シリーズとして毎年この時季に行われていたが、今回はとうとう最終回の8回目を迎えた。
去年「若い頃にブレンデルの演奏に打ちのめされて以来封印し続けてきた」というシューベルトのソナタ(ハ短調D598と遺作の変ロ長調)を披露し、それは素晴らしい演奏だったが、今回もリサイタルの最後にシューベルト晩年の大作・イ長調D959を置いて感動的な演奏を聴かせてくれた。
やわらかく、慈しみ深く歌い、奥深く、包容力のあるシューベルト。とりわけ第2楽章の、暗い照明の中で仄かなロウソクの灯かりに照らされたように浮かび上がるメランコリックなモノローグは本当に心に染みた。また、第4楽章では歌謡性に富んだメロディーが本当に優しく慈しみ深く歌い上げられ、聴いている心が温かく潤い、時に懐かしさで胸が締めつけられるような感じにもなり、いつまでもいつまでも聴いていたかった。ガンガンと鳴らしまくらずに優しい広がりを聴かせた第1楽章や、優雅で遊び心にも溢れた第3楽章も秀逸。それぞれの楽章が魅力いっぱいに個性の花を咲き競わせ、心を満たしてくれ、それが更に次の「第5楽章」へと気持ちが向いたのは、シューベルトの「果てしなさ」を感じる演奏をした恵さんの力であり、また、この8回のシリーズがもっと続いて欲しいという思いへとつながった。
前半のモーツァルトも良かった。恵さんが心を込めて歌い表現しようとしているものと、実際に出てくる演奏が共鳴し合って、これまで聴いた恵さんのモーツァルトの中で一番印象に残った。オーケストラをバックに歌うソプラノの優雅なアリアを思わせる第2楽章はとりわけ素晴らしかった。また、シューマンのソナタも恵さんの愛情がこもったとても良い演奏だった。
「今回でひとまず区切りにします」と言っていたが、できるだけ早い新シリーズの再開を期待したい。その時はまた恵さんのシューベルトが聴きたい。
紀尾井ホール
【曲目】
1.モーツァルト/ソナタ ニ長調K.311
2.シューマン/第3番へ短調op.14
3.シューベルト/ソナタ第20番イ長調D.959
【アンコール】
1.ショパン/マズルカ op.67-4
2.シューマン/交響的練習曲op.13~遺作変奏曲第5番
伊藤 恵さんの「春をはこぶコンサート」は8回シリーズとして毎年この時季に行われていたが、今回はとうとう最終回の8回目を迎えた。
去年「若い頃にブレンデルの演奏に打ちのめされて以来封印し続けてきた」というシューベルトのソナタ(ハ短調D598と遺作の変ロ長調)を披露し、それは素晴らしい演奏だったが、今回もリサイタルの最後にシューベルト晩年の大作・イ長調D959を置いて感動的な演奏を聴かせてくれた。
やわらかく、慈しみ深く歌い、奥深く、包容力のあるシューベルト。とりわけ第2楽章の、暗い照明の中で仄かなロウソクの灯かりに照らされたように浮かび上がるメランコリックなモノローグは本当に心に染みた。また、第4楽章では歌謡性に富んだメロディーが本当に優しく慈しみ深く歌い上げられ、聴いている心が温かく潤い、時に懐かしさで胸が締めつけられるような感じにもなり、いつまでもいつまでも聴いていたかった。ガンガンと鳴らしまくらずに優しい広がりを聴かせた第1楽章や、優雅で遊び心にも溢れた第3楽章も秀逸。それぞれの楽章が魅力いっぱいに個性の花を咲き競わせ、心を満たしてくれ、それが更に次の「第5楽章」へと気持ちが向いたのは、シューベルトの「果てしなさ」を感じる演奏をした恵さんの力であり、また、この8回のシリーズがもっと続いて欲しいという思いへとつながった。
前半のモーツァルトも良かった。恵さんが心を込めて歌い表現しようとしているものと、実際に出てくる演奏が共鳴し合って、これまで聴いた恵さんのモーツァルトの中で一番印象に残った。オーケストラをバックに歌うソプラノの優雅なアリアを思わせる第2楽章はとりわけ素晴らしかった。また、シューマンのソナタも恵さんの愛情がこもったとても良い演奏だった。
「今回でひとまず区切りにします」と言っていたが、できるだけ早い新シリーズの再開を期待したい。その時はまた恵さんのシューベルトが聴きたい。