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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

東京混声合唱団定期演奏会(指揮:岩城宏之)

2006年04月21日 | pocknのコンサート感想録2006
4月21日(金)東京混声合唱団定期演奏会 没後10年 ― 武満徹に捧ぐ
東京文化会館小ホール

【曲目】
1.武満徹/混声合唱のための「うた」I
小さな空、うたうだけ、小さな部屋で、恋のかくれんぼ、見えないこども、明日ハ晴レカナ、曇リカナ
2.武満徹/風の馬
3. 武満徹/男声合唱のための「芝生」
~対談:岩城宏之/林 光~
4. 武満徹/混声合唱のための「うた」II
翼、島へ、○と△の歌、さようなら、死んだ男の残したものは
アンコール:さくら

【演 奏】
岩城宏之指揮 東京混声合唱団


武満徹の作品だけで行われた東混の定期を指揮した岩城宏之は、車椅子でステージに現れた。マイクを手にして「自律神経失調症でふらつく危険があるので、こんな格好で失礼します」と、笑いを取りながら話していた。暮れに10時間にも及ぶベートーヴェンの交響曲全曲を立ち通して指揮した様子をつい1週間ほど前にNHKのBSで見たばかりで、岩城さんは立って指揮をすることにこだわっていただけに、相当覚悟を決めての決断だったのではないか。

車椅子に座って始めた指揮からは、しかしデリケートで温かい武満トーンが紡ぎ出された。これまでに何度か聴いた東混の武満は、響きが聞き手に届き切らないようなドライな印象が強かったのだが、今夜はハーモニーが、自然に会場を包みこむようなウェットであたたかなものを感じた。倍音がとてもよく鳴り、響きが響きを呼んで、実際の音量よりも豊かな響きを生む。武満作品を完全に手中に収めた東混が、老練の域を迎えた岩城の指揮から武満の音楽の更なるエッセンスを感じとって実現した響きが今夜の演奏のような気がする。

そんな今夜の岩城/東混が聴かせる「風の馬」は、精巧なハーモニーに妖しげな色香が加わり、武満の後期のオーケストラ作品から醸し出されるような極上の響きを発していた。音があくまでも滑らかに静かに連なった終曲のフェードアウトでは、まさに遊牧民たちが陽炎の揺れる草原の彼方へだんだんと消えて行く情景が目に浮かぶようで、「こんな演奏に出会いたかった」というような「風の馬」に出会うことができた。

林光さんとの対談で岩城さんは、「風の馬」は長い時期に渡って書かれたために様式的にはいろいろな作曲様式の音楽が渾然一体となっていて統一感がないと言えるかも知れないが、これを全部ひっくるめて武満の魅力だ、といったことを言っていた。多くの難病や大病を克服し、また現在も病気と闘う岩城だが、本当に自然体で、武満の音楽の持つ魅力をさり気なく引き出す境地に達した岩城さんの言葉であり、演奏なのだと実感。岩城宏之の指揮する武満作品はこれまでも名演が多いが、健康とは行かないまでもとにかく体に気をつけて、ますます素晴らしい武満を聴かせ続けてもらいたい。来月の紀尾井シンフォニエッタも楽しみだ。

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