9月16日(木)ネヴィル・マリナー指揮 NHK交響楽団
《2010年9月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. チャイコフスキー/幻想序曲「ハムレット」Op.67a
2.サン=サーンス/ チェロ協奏曲 第1番 イ短調Op.33
【アンコール】
バッハ/無伴奏チェロ組曲第6番~前奏曲
Vc:アルバン・ゲルハルト
3.ブラームス / 交響曲 第1番 ハ短調 Op.68
2007年に続くマリナーによるN響定期。前回も良い演奏を聴かせてくれたが、今回はそれをは更に上回る感動を与えてくれた。
チャイコフスキーの「ハムレット」が、厚みのある熱のこもった充実した弦の響きで始まり、冒頭から引き込まれた。この厚みと熱のこもった響きは、楽器を加えて更に充実度を増し、ドラマティックな演奏を展開した。劇的な盛り上がりではエネルギーが思いっ切り充溢して迫真のシーンを聴かせ、ロマンチックなフレーズはこの上なく柔らかく甘く歌う。チャイコフスキーならではの情感が十二分に伝わる熱演だった。
お次はサン=サーンスのチェロコンチェルト。オケの編成が軽くなったせいもあるのだろうが、ここではマリナーは、チャイコフスキーとはガラリと筆致を替えたアプローチで、軽めの柔らかな響きをオケから引き出す。チェロ独奏のゲルハルトは柔らかく美しい響きを大切にしながら、滑らかにメロディーを紡いで行く。熱血タイプに音楽を盛り上げて行くのではなく、微笑みを浮かべながら自由に駆け回ったり、ちょっと立ち止まって親密な甘い歌を聴かせつつ、聴き手を幸せな気分にさせてくれる。この意味でゲルハルトとマリナー/N響は同じ音楽を奏でていた。
そして迎えた後半のブラームスの第1シンフォニー、なんとチェロパートにさっきソロを弾いたゲルハルトが!序奏の最初の音が、これまで聴いたことがないような、力強さとデリケートさが融合した、天からの響きのように神々しく鳴り響いた。マリナー/N響のブラ1は、力は十分にみなぎり、活力に満ちていながら、決してゴリ押しせず、それぞれのパートがたっぷりと呼吸し、十分に歌いながら進んで行く。まさに生きている音楽と向き合っている気分。第2楽章や第3楽章では、室内楽的にパート同士が対話し、調和し、柔らかく美しい響きを作り出す。気品という点でも絶品。青山さんのオーボエ、松崎さんのホルンの柔らかな歌が素晴らしい。
そしてフィナーレでは、この演奏の冒頭から支配していた神々しさが最高潮に達した。「アンサンブルの妙」と呼びたくなるように全てが音楽的に歌い、響き、力むことなくテンションをどんどん高め、感動的なクライマックスを作って行く。年齢を重ねてこそ至れる、徳の高い境地から発せられる啓示が、86歳とは想像できない若々しい力強さで迫ってくる。底から突き上げてくるような低音の響きも十分!音楽が1拍進むごとに、感動で鼓動が高まり、トリハダが全身に広がり、終演を迎えた。
会場は大きな拍手とブラボーの大歓声が続いた。帰り道でも、この演奏を思い出す度にトリハダが立った。これはN響の歴史に残る名演の1つになるに違いない。マリナーがこんな巨匠の域に達するほどの指揮者という認識がなかったが、こうなればN響との度重なる共演を願わずにはいられない。
♪♪♪
ところで、この9月の新シーズン開始を機に、B定期会員の1日目から2日目に移動した。サントリーホール主催のN響シリーズも含めると20年以上確保していた1階ど真ん中の特等席を放棄して日を替えた理由は、両隣のでかいオッサンの威圧感と、度々浴びる鼻息攻撃から逃れたいというのもあったが、もっと大きかったのは、保守的と言われるN響定期会員の中でも、その重鎮達が一番集まる感じのB定期1日目の会場の淀んだ空気に耐えられなくなってきたこと。
空気だけでなく、実際に演奏への鈍い反応や演奏が終わると、ろくに拍手もせず帰ってしまう客の多さ、気難しそうなご年配の面々を見ているだけで気が滅入るようになってきたのは、自分もだんだんとこの年齢層に近づきつつあるためか… いくつになっても保守派の仲間入りはしたくない僕は、心機一転、日を替えたというワケである。
席は2階RCブロックの前方で悪くないし(むしろ響きはこっちの方がいいかも)、定期2日目の恩恵の一つ、ソリストのアンコール演奏も早速聴けた。それに、今夜のような演奏にブラボーがたくさん出て、聴衆の反応も上々のようだし(ブラボーが出ればいいってものではないが…)、何より1日目より若い人が多い気がするのが嬉しい。
ということで、これからはB定期2日目のレポートとなります。
《2010年9月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. チャイコフスキー/幻想序曲「ハムレット」Op.67a
2.サン=サーンス/ チェロ協奏曲 第1番 イ短調Op.33
【アンコール】
バッハ/無伴奏チェロ組曲第6番~前奏曲
Vc:アルバン・ゲルハルト
3.ブラームス / 交響曲 第1番 ハ短調 Op.68
2007年に続くマリナーによるN響定期。前回も良い演奏を聴かせてくれたが、今回はそれをは更に上回る感動を与えてくれた。
チャイコフスキーの「ハムレット」が、厚みのある熱のこもった充実した弦の響きで始まり、冒頭から引き込まれた。この厚みと熱のこもった響きは、楽器を加えて更に充実度を増し、ドラマティックな演奏を展開した。劇的な盛り上がりではエネルギーが思いっ切り充溢して迫真のシーンを聴かせ、ロマンチックなフレーズはこの上なく柔らかく甘く歌う。チャイコフスキーならではの情感が十二分に伝わる熱演だった。
お次はサン=サーンスのチェロコンチェルト。オケの編成が軽くなったせいもあるのだろうが、ここではマリナーは、チャイコフスキーとはガラリと筆致を替えたアプローチで、軽めの柔らかな響きをオケから引き出す。チェロ独奏のゲルハルトは柔らかく美しい響きを大切にしながら、滑らかにメロディーを紡いで行く。熱血タイプに音楽を盛り上げて行くのではなく、微笑みを浮かべながら自由に駆け回ったり、ちょっと立ち止まって親密な甘い歌を聴かせつつ、聴き手を幸せな気分にさせてくれる。この意味でゲルハルトとマリナー/N響は同じ音楽を奏でていた。
そして迎えた後半のブラームスの第1シンフォニー、なんとチェロパートにさっきソロを弾いたゲルハルトが!序奏の最初の音が、これまで聴いたことがないような、力強さとデリケートさが融合した、天からの響きのように神々しく鳴り響いた。マリナー/N響のブラ1は、力は十分にみなぎり、活力に満ちていながら、決してゴリ押しせず、それぞれのパートがたっぷりと呼吸し、十分に歌いながら進んで行く。まさに生きている音楽と向き合っている気分。第2楽章や第3楽章では、室内楽的にパート同士が対話し、調和し、柔らかく美しい響きを作り出す。気品という点でも絶品。青山さんのオーボエ、松崎さんのホルンの柔らかな歌が素晴らしい。
そしてフィナーレでは、この演奏の冒頭から支配していた神々しさが最高潮に達した。「アンサンブルの妙」と呼びたくなるように全てが音楽的に歌い、響き、力むことなくテンションをどんどん高め、感動的なクライマックスを作って行く。年齢を重ねてこそ至れる、徳の高い境地から発せられる啓示が、86歳とは想像できない若々しい力強さで迫ってくる。底から突き上げてくるような低音の響きも十分!音楽が1拍進むごとに、感動で鼓動が高まり、トリハダが全身に広がり、終演を迎えた。
会場は大きな拍手とブラボーの大歓声が続いた。帰り道でも、この演奏を思い出す度にトリハダが立った。これはN響の歴史に残る名演の1つになるに違いない。マリナーがこんな巨匠の域に達するほどの指揮者という認識がなかったが、こうなればN響との度重なる共演を願わずにはいられない。
ところで、この9月の新シーズン開始を機に、B定期会員の1日目から2日目に移動した。サントリーホール主催のN響シリーズも含めると20年以上確保していた1階ど真ん中の特等席を放棄して日を替えた理由は、両隣のでかいオッサンの威圧感と、度々浴びる鼻息攻撃から逃れたいというのもあったが、もっと大きかったのは、保守的と言われるN響定期会員の中でも、その重鎮達が一番集まる感じのB定期1日目の会場の淀んだ空気に耐えられなくなってきたこと。
空気だけでなく、実際に演奏への鈍い反応や演奏が終わると、ろくに拍手もせず帰ってしまう客の多さ、気難しそうなご年配の面々を見ているだけで気が滅入るようになってきたのは、自分もだんだんとこの年齢層に近づきつつあるためか… いくつになっても保守派の仲間入りはしたくない僕は、心機一転、日を替えたというワケである。
席は2階RCブロックの前方で悪くないし(むしろ響きはこっちの方がいいかも)、定期2日目の恩恵の一つ、ソリストのアンコール演奏も早速聴けた。それに、今夜のような演奏にブラボーがたくさん出て、聴衆の反応も上々のようだし(ブラボーが出ればいいってものではないが…)、何より1日目より若い人が多い気がするのが嬉しい。
ということで、これからはB定期2日目のレポートとなります。
たしかに今回も、1日目はアンコールはありませんでした。生中継の関係なのでしょうね。
2日目は、早く席をお立ちになる方が少ないのでしょうか?
2日目のもう一つの楽しみは、指揮者や退団する団員への花束贈呈セレモニーでしょうか。
昨夜は、拍手が一旦止んだあと、ステージに残っている団員に、また小さな拍手が起こりました。1日目ではないことかも知れません。早く席を立つ人は少なかったかどうかは、自信ありません。次回、じっくり観察しておきますね。
いずれにしても、日を替えて気分が一新できました!
同じ日にお聴きでしたとは!
以前にお世話になったこともあり、1日目とばかり。そして、両隣のオッサンに鼻息・・・。
私もそういえば体験させていただきましたっけ(笑)
それだけでも変更したくなる気持ちが痛いほどわかりますし、やはり重鎮ムードってあるんですね。
両日を聴いた方によると、初日は、かなり手探り的だったようで、2日目は、わたしたちが聴いたとおり、素晴らしい出来栄えになったそうです。
限られた時間の客演演奏は、やはり2回目の方がいいのでしょうね。
そして、放送も2回目を選んで欲しいと思いますね。
それにしても、マリナーならではの素晴らしいブラームスでした。
私も鳥肌たちました!
次はシューマンですね!
yokochanさま、情報ありがとうございます。
そうですか。すると、いろいろな意味で今回日替えをして正解でした!
自分が日替えをしたから言っちゃいますが、大勢の会員が何十年も同じ席を動かない定期公演というものは、それ自体危険な存在かも知れませんね。ウィーン・フィルの定期なんかもそうした意味では危ないかも…
せめて席ぐらいは定期的に移動したほうが、全体が活性化して空気がよくなるように思います。隣にきれいなヒトが来るかな… なんて別の楽しみも増えるし…
シューマン、楽しみです!