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N響 2018年5月B定期(パーヴォ・ヤルヴィ指揮)

2018年05月26日 | pocknのコンサート感想録2018
5月24日(木)パーヴォ・ヤルヴィ指揮 NHK交響楽団
《2018年5月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.ストラヴィンスキー/バレエ音楽「ミューズの神を率いるアポロ」
2.ストラヴィンスキー/バレエ音楽「カルタ遊び」
3.ストラヴィンスキー/3楽章の交響曲

今夜のN響定期の曲目を見て思ったのは、「ああ、B定期だな」。こんなマイナーなプログラムは、追加で集客が見込めるNHKホールではやらないだろう。会員でほぼ満席のサントリーホールの定期だからできるプログラムで、会員にとってはあまり有り難くないな・・・ と低めのテンションで臨んだが、予想に反してどれも面白く、中味の濃い、充実した演奏会となった。

前半の「ミューズの神を率いるアポロ」は弦楽合奏の30分ほどの組曲。ギリシァ神話を題材にした音楽ということだが、解説を読んでもよくわからないので、純粋に弦楽合奏組曲として聴くことにした。まず耳を引いたのが、深くて香り高い美しい弦の響き。それから、随所に登場するソロヴァイオリンの活躍。コンマスの伊藤さんは、落ち着きと温かさを感じる美しい音色と、滑らかで優しい語り口で、解説を読んでもイメージできなかった神話の幽玄な世界を感じさせてくれた。ソロの後の弦楽合奏は、ソロの優美さを引き継ぎ、益々豊かで深い表情を聴かせてくれた。パーヴォらしい瑞々しい切れ味のある表現も随所で聴かせ、多分初めて聴くこの曲の魅力をたっぷりと味わうことができた。

後半の1曲目「カルタ遊び」は小さめの編成による管弦楽作品。ここでもパーヴォの光るセンスとフレッシュな切れ味が冴え渡り、シェーンベルクの室内交響曲のような音楽を、緻密かつスリリングで瑞々しい演奏で聴かせてくれた。響きの艶や密度も申し分ない。N響各セクションのソロの巧さも大いに貢献した。終盤でロッシーニのメロディーが出てくるあたりは、もっとぶっ飛んでもいいとも思ったが、最後まで鮮やかな色彩を振りまく胸のすく演奏だった。

最後の「3楽章の交響曲」はフル編成。元々パーヴォの指揮は見た目が鮮やかでかっこいいが、その指揮姿と音が見事に一致して冴え渡った。冒頭の悲壮な響きを聴いたときは、解説に書いてあった悲惨な戦争の光景が思い浮かんだが、そのあとは純粋にオーケストラの響きとパフォーマンスを楽しんだ。抜群のオーケストレーションを、N響の艶やかなサウンドが彩った。この曲は「新古典主義の頂点を成す作品」と解説にはあったが、「ペトルーシュカ」や最後は「春の祭典」を思わせるシーンも登場し、乗りと張りとスリルのある、緊迫した手に汗にぎる演奏を楽しんだ。
これまでに立ち会ったパーヴォ/N響の演奏会のなかでも、今夜は出色の出来と言っていい。

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