9月16日(木)鈴木秀美 指揮 NHK交響楽団
《2021年9月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.バッハ/管弦楽組曲 第3番ニ長調 BWV1068
2.C. P. E. バッハ/シンフォニア変ロ長調
3.C. P. E. バッハ/シンフォニアニ長調
4.ハイドン/交響曲第98番変ロ長調 Hob. I-98
N響の定期演奏会シーズンが1年7か月ぶりに始まった。予定されていたトン・コープマンに代わって、鈴木秀美が幕開けのB定期を指揮した。来日後に隔離を強いられることは織り込み済みのはずだが、欧米では通常の演奏会が再開され、隔離まで受け入れて日本に来るアーティストが減ることは想像に難くない。日本もそろそろ入国制限を緩めるべきだろう。ただ、コープマンが来れないのはとても残念だったが、鈴木は代役という位置づけを遥かに超え、コープマンでもここまでやってくれただろうか、と思えるほどの素晴らしい演奏会をもたらした。
鈴木の指揮は溌剌として瑞々しく躍動する。それはピリオド奏法を徹底することで生み出されるというより、音楽そのものが持つ自然な息遣いを無理なく表出させることから生まれている。フレーズの収め方も、勢いでばっさり切り捨てたり投げ捨てたりせず、名匠の筆の払いのように丁寧で整った美しさがある。バッハの組曲では、N響の華やかで美しい響きが明るい光となってホールいっぱいに満たされ、音たちが楽しそうに笑っているよう。宮廷の大広間で聴いているような贅沢な気分を味わった。
少し時代を下ったエマヌエル・バッハのシンフォニアは、音楽史への挑戦状のようにアグレッシブに疾風怒濤の気概を主張してきた。弦パートが一丸となって大きく熱い流れを作り、それらが激流となって押し寄せてきた。ニ長調の方は管楽器も投入され(ホルンはナチュラルホルン)、更に激しく揺さぶられる。思う存分暴れまくるなかにも品のある潤いが感じられるところは、N響の余裕の表れだろうか。独りよがりの大暴れではなく、アスリートの名演技のような四肢の躍動を見る思いがした。
最後はハイドンのシンフォニー。これがまた極上の極み。充実した響き、伸びやかな歌、リズムの愉悦… プログラムノートによれば、第2楽章はモーツァルトへの哀悼の音楽とのこと。これを聴いていたら、何だかモーツァルトが蘇って更なる深みの境地の音楽を作曲したのではと思えるほど。鈴木/N響の演奏からは静寂な祈りが伝わってきた。
そしてフィナーレは天上の至福の世界。次々と変化する楽想では様々なソロが繰り広げられ、ワクワクが高まっていく。白井さんの艶やかなヴァイオリンが、美しい楽園のさらに奥まで誘ってくれ、チェンバロ(どなたか?)の華やかなアルペッジョでお祭りはお開きに。ブラボーな快演&名演!ハイドンの魅力も存分に味わうことができた。作曲家としての評価は高いが、ハイドンの演奏機会はなぜか少ない。秀美さんの指揮でハイドンシリーズをやってもらいたい。
コロナ前の定期と変わらぬ数の聴衆が集まった客席からは熱い拍手が続いた。定期演奏会に代えて1シーズン分行われたN響の演奏会は、他のオケに比べても極端に聴衆が少なく、お年寄りや企業の招待客?が多かったN響の行く末を案じていたが、定期の再開を待ち望んで戻ってきた会員がこれだけいたと知ってホッとした。コロナ以降、オケがステージに登場するときに送られる拍手がN響定期で起きたのも嬉しい一コマ。これからもN響の定期を楽しみに、応援して行きたい。
N響公演の感想タイトルリスト(2017~)
鈴木秀美/オーケストラ・リベラ・クラシカ 2016.10.30 石橋メモリアルホール
鈴木秀美指揮 チェンバー・オーケストラ 2008.1.11 トッパンホール
#文化芸術は生きるために必要だ
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N響の定期演奏会シーズンが1年7か月ぶりに始まった。予定されていたトン・コープマンに代わって、鈴木秀美が幕開けのB定期を指揮した。来日後に隔離を強いられることは織り込み済みのはずだが、欧米では通常の演奏会が再開され、隔離まで受け入れて日本に来るアーティストが減ることは想像に難くない。日本もそろそろ入国制限を緩めるべきだろう。ただ、コープマンが来れないのはとても残念だったが、鈴木は代役という位置づけを遥かに超え、コープマンでもここまでやってくれただろうか、と思えるほどの素晴らしい演奏会をもたらした。
鈴木の指揮は溌剌として瑞々しく躍動する。それはピリオド奏法を徹底することで生み出されるというより、音楽そのものが持つ自然な息遣いを無理なく表出させることから生まれている。フレーズの収め方も、勢いでばっさり切り捨てたり投げ捨てたりせず、名匠の筆の払いのように丁寧で整った美しさがある。バッハの組曲では、N響の華やかで美しい響きが明るい光となってホールいっぱいに満たされ、音たちが楽しそうに笑っているよう。宮廷の大広間で聴いているような贅沢な気分を味わった。
少し時代を下ったエマヌエル・バッハのシンフォニアは、音楽史への挑戦状のようにアグレッシブに疾風怒濤の気概を主張してきた。弦パートが一丸となって大きく熱い流れを作り、それらが激流となって押し寄せてきた。ニ長調の方は管楽器も投入され(ホルンはナチュラルホルン)、更に激しく揺さぶられる。思う存分暴れまくるなかにも品のある潤いが感じられるところは、N響の余裕の表れだろうか。独りよがりの大暴れではなく、アスリートの名演技のような四肢の躍動を見る思いがした。
最後はハイドンのシンフォニー。これがまた極上の極み。充実した響き、伸びやかな歌、リズムの愉悦… プログラムノートによれば、第2楽章はモーツァルトへの哀悼の音楽とのこと。これを聴いていたら、何だかモーツァルトが蘇って更なる深みの境地の音楽を作曲したのではと思えるほど。鈴木/N響の演奏からは静寂な祈りが伝わってきた。
そしてフィナーレは天上の至福の世界。次々と変化する楽想では様々なソロが繰り広げられ、ワクワクが高まっていく。白井さんの艶やかなヴァイオリンが、美しい楽園のさらに奥まで誘ってくれ、チェンバロ(どなたか?)の華やかなアルペッジョでお祭りはお開きに。ブラボーな快演&名演!ハイドンの魅力も存分に味わうことができた。作曲家としての評価は高いが、ハイドンの演奏機会はなぜか少ない。秀美さんの指揮でハイドンシリーズをやってもらいたい。
コロナ前の定期と変わらぬ数の聴衆が集まった客席からは熱い拍手が続いた。定期演奏会に代えて1シーズン分行われたN響の演奏会は、他のオケに比べても極端に聴衆が少なく、お年寄りや企業の招待客?が多かったN響の行く末を案じていたが、定期の再開を待ち望んで戻ってきた会員がこれだけいたと知ってホッとした。コロナ以降、オケがステージに登場するときに送られる拍手がN響定期で起きたのも嬉しい一コマ。これからもN響の定期を楽しみに、応援して行きたい。
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鈴木秀美/オーケストラ・リベラ・クラシカ 2016.10.30 石橋メモリアルホール
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