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鈴木優人プロデュース:読響アンサンブル・シリーズ

2024年03月10日 | pocknのコンサート感想録2024
3月8日(金)鈴木優人プロデュース:読響アンサンブル・シリーズ
~2つのチェンバロ協奏曲とG.トラークルの詩による3つの作品~

トッパンホール

【曲目】
1.バッハ/チェンバロ協奏曲ヘ短調 BWV1056
2.ウェーベルン/6つの歌 op.14
3.ヘンツェ/「アポロとヒュアキントス」
4.鈴木優人/「浄められし秋」
5.フィリップ・グラス/チェンバロ協奏曲

【演奏】
S:松井亜希(2,4)/A:藤木大地(3)
鈴木優人(指揮、Cem、Pf)/読売日本交響楽団のメンバー


読響のメンバーによる室内楽など小編成の作品の演奏会「読響アンサンブル・シリーズ」を初めて聴いた。「鈴木優人プロデュース」ということで、優人さんが指揮、チェンバロ、ピアノ、作曲、それにプレトークまでフル出演して、多彩な存在感を発揮した。

最初はバッハ。オケはほどよい弾力性があって響きが豊か。アクティブに働きかけてくるオケと、優人さんの自らの存在を主張するチェンバロとが有機的にやり取りを進め、躍動し、ワクワク感のある生きた演奏でオープニングを飾った。

続いてウェーベルンの歌曲。ここでテクストに使われているトラークルの詩は演奏会の柱のひとつで、今夜の声楽曲は全てトラークルの詩によるもの。点描的な音楽を敏感に微細に表現するウェーベルンの音楽を、鈴木/読響メンバーは、音が生まれ、消えて行く様をデリケートに描き、作品のエッセンスを巧みに引き出して行った。松井さんのソロは繊細で研ぎ澄まされた感覚で、孤高の光を放った。

次にトラークルの詩が使われたのはヘンツェの作品。こちらは、ウェーベルンとは毛色の異なる湿感を醸し出し、深い情感を滲ませた。各プレイヤーの冴えた演奏がまとまった響きを作り出す。終盤で藤木の温かく柔らかなソロが入ると、更にしっとりとした奥行きが増し、黄昏の穏やかな情景を映し出しているようだった。

後半の最初は鈴木の自作自演で「浄められし秋」。折り重なる弦の厚みのある響きが、人肌の温かさを醸し出す。そこに鈴木のピアノが加わると、音楽が動き出すような感覚を与えた。この作品では、トラークルの詩が音楽と最も密接にリンクし、言葉の情景や情感をデリケートに、ときにエモーショナルに伝え、言葉に命が与えられた。松井の艶と色香のある歌唱が冴えた。

最後はグラスのコンチェルト。プレトークで優人さんが「今夜は不協和音の曲が続くので、最後は和やかに」という思いで選んだと話した通り、屈託のない陽気な音楽が会場の空気を和ませ、温めた。Vの字型にオケが並び、鈴木は一番奥でチェンバロを独奏した。

グラスの曲は、断片だけを取ればシンプルな調性音楽だが、それが重なり合うことで新しい響き、予想外の動きが生まれ、新鮮味がもたらされる。鈴木のチェンバロが15人のオケと対等にやり合って存在感を示す。終楽章は聴いていて身体が動いてしまうイケイケの音楽。演奏には十分躍動感があるのだが、プレイヤーの表情や動きはお行儀が良くて、もっと悪乗りしてぶっ飛んだパフォーマンスをしてもいいのに、とも思った。

それにしても鈴木のチェンバロの存在感は並外れている。チェンバロがいかに雄弁に音楽を語り、歌い、表現することができる楽器であるかを、そしてバロックに限らず、これほどバラエティに富んだ場で活躍する楽器であるかを教えてくれた。

鈴木優人×バッハ・コレギウム・ジャパン×千住博「魔笛」 2024.2.22 目黒パーシモンホール
鈴木優人/バッハ・コレギウム・ジャパン 2023.7.16 タケミツメモリアル
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