11月24日(木)レナード・スラットキン 指揮 NHK交響楽団
《2022年11月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.ヴォーン・ウィリアムズ/「富める人とラザロ」の5つのヴァリアント
2.メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
【アンコール】
♪ オーストラリア民謡(レイ・チェン編)/ワルチング・マチルダ
Vn:レイ・チェン
3.ヴォーン・ウィリアムズ/交響曲 第5番ニ長調
N響ではおなじみのレナード・スラットキンだが、聴くのは2016年以来。今回のB定期ではヴォーン・ウィリアムズの世界を堪能した。スラットキンは切れ味のいい鮮やかなサウンドを聴かせる颯爽としたイメージがあったが、今夜の演奏からは落ち着いた深みと温もりが伝わる名匠の味わいを感じた。
最初は「5つのヴァリアント」。N響の弦楽合奏のふくよかで温かく柔らかな響きに引き込まれた。芳香がほのかに漂ってくるような響きだ。スラットキンは音楽全体を温かく包み込むように慈しみ、繊細な表情を引き出し、民謡調の歌が郷愁を誘う。コンマスの伊藤さんの懐の深いソロも胸に沁みた。
次は台湾出身のヴァイオリニスト、レイ・チェンを迎えてのメンデルスゾーンの協奏曲。冒頭のヴァイオリンソロからダイナミックな演奏で聴衆を引き付けた。チェンは弓を目いっぱい使い、まるで弓の先や根元の下にも弓が続いているかのようなスケールの大きさでグイグイと大胆な表現で攻めまくる。大きなウェーブが寄せては返し身体を持っていかれそうな臨場感。全身を使って溌剌と楽しそうに聴き手の気持ちを煽ってくる演奏にワクワクドキドキが止まらない。そんなスリリングで果敢な攻めはアンコールでもとどまることを知らず、自らがアレンジして、新たなアイデアが涌いて来るという言葉通りの即興的でエキサイティングな演奏を聴かせてくれた。
後半は再びヴォーン・ウィリアムズ。こちらも落ち着いた静寂が印象的な音楽で、スラットキン/N響は「5つのヴァリアント」同様の温かな詩情溢れる世界を描いた。とりわけ心を捉えたのは第3、第4楽章。遥か彼方の地平線の更に先まで続く一本の道をゆっくりと独り歩んでいるような静寂と寂寥。池田さんのイングリッシュホルンと吉村さんのオーボエの歌が絡み、得も言われぬ詩情を醸し出す。N響ならではの繊細なアンサンブルが極上のシルクのように柔らかく輝きつつ遠くへ去って行き、音がなくなった後もまだ余韻が残っているような感覚。老匠スラットキンが辿り着いた美しく穏やかな境地を見せてもらった気がした。
クロークを再開したサントリーホールでは、とうとう感染対策を呼びかけるアナウンスも一切やめて快適になった。更にマスクは任意、ブラボーなど声出しもOKにしてほしい。
バーンスタイン&マーラー(スラットキン指揮N響B定期) 2016.4.28 サントリーホール
スラットキン指揮N響のベートーヴェン7番 2012.1.23 東京オペラシティ
ショスタコ10番他(スラットキン指揮N響B定期) 2012.1.19 サントリーホール
レイ・チェン ヴァイオリンリサイタル 2012.9.14 東京オペラシティ
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2.メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
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Vn:レイ・チェン
3.ヴォーン・ウィリアムズ/交響曲 第5番ニ長調
N響ではおなじみのレナード・スラットキンだが、聴くのは2016年以来。今回のB定期ではヴォーン・ウィリアムズの世界を堪能した。スラットキンは切れ味のいい鮮やかなサウンドを聴かせる颯爽としたイメージがあったが、今夜の演奏からは落ち着いた深みと温もりが伝わる名匠の味わいを感じた。
最初は「5つのヴァリアント」。N響の弦楽合奏のふくよかで温かく柔らかな響きに引き込まれた。芳香がほのかに漂ってくるような響きだ。スラットキンは音楽全体を温かく包み込むように慈しみ、繊細な表情を引き出し、民謡調の歌が郷愁を誘う。コンマスの伊藤さんの懐の深いソロも胸に沁みた。
次は台湾出身のヴァイオリニスト、レイ・チェンを迎えてのメンデルスゾーンの協奏曲。冒頭のヴァイオリンソロからダイナミックな演奏で聴衆を引き付けた。チェンは弓を目いっぱい使い、まるで弓の先や根元の下にも弓が続いているかのようなスケールの大きさでグイグイと大胆な表現で攻めまくる。大きなウェーブが寄せては返し身体を持っていかれそうな臨場感。全身を使って溌剌と楽しそうに聴き手の気持ちを煽ってくる演奏にワクワクドキドキが止まらない。そんなスリリングで果敢な攻めはアンコールでもとどまることを知らず、自らがアレンジして、新たなアイデアが涌いて来るという言葉通りの即興的でエキサイティングな演奏を聴かせてくれた。
後半は再びヴォーン・ウィリアムズ。こちらも落ち着いた静寂が印象的な音楽で、スラットキン/N響は「5つのヴァリアント」同様の温かな詩情溢れる世界を描いた。とりわけ心を捉えたのは第3、第4楽章。遥か彼方の地平線の更に先まで続く一本の道をゆっくりと独り歩んでいるような静寂と寂寥。池田さんのイングリッシュホルンと吉村さんのオーボエの歌が絡み、得も言われぬ詩情を醸し出す。N響ならではの繊細なアンサンブルが極上のシルクのように柔らかく輝きつつ遠くへ去って行き、音がなくなった後もまだ余韻が残っているような感覚。老匠スラットキンが辿り着いた美しく穏やかな境地を見せてもらった気がした。
クロークを再開したサントリーホールでは、とうとう感染対策を呼びかけるアナウンスも一切やめて快適になった。更にマスクは任意、ブラボーなど声出しもOKにしてほしい。
バーンスタイン&マーラー(スラットキン指揮N響B定期) 2016.4.28 サントリーホール
スラットキン指揮N響のベートーヴェン7番 2012.1.23 東京オペラシティ
ショスタコ10番他(スラットキン指揮N響B定期) 2012.1.19 サントリーホール
レイ・チェン ヴァイオリンリサイタル 2012.9.14 東京オペラシティ
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