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MAROワールド Vol.42 ブラームスPart Ⅳ

2021年09月28日 |  pocknのコンサート感想録2021
9月24日(金)MAROワールド Vol.42 “ブラームス Part Ⅳ” by 篠崎“まろ”史紀

王子ホール
【曲目】
1.ブラームス/ピアノ四重奏曲第1番ト短調 Op.25
 ♪ ブラームス/チェロ・ソナタ第1番ホ短調 Op.38~第2楽章
2.ブラームス/ピアノ五重奏曲ヘ短調 Op.34
【アンコール】
♪ ブラームス/ハイフェッツ編/瞑想曲(低音のための5つのリート Op.105~調べのように私を通り抜ける)

【演奏】Vn:篠崎“まろ”史紀、伝田正秀/Vla:佐々木 亮/Vc:笹沼 樹/Pf:清水和音


ホワイエに飾られたこの肖像画はマロさん所蔵?

毎回一人の作曲家に焦点を当て、マロさんとその仲間の名手たちがステキな演奏を聴かせる王子ホールの目玉シリーズMAROワールド、第42回で取り上げた作曲家は4度目のブラームス。プログラムを飾った2作品は、どちらも重く激しくスケールの大きなイメージがある。けれどMAROワールドの面々は、重さや深刻さよりもシャープに研ぎ澄まされた演奏で、生き生きした音楽をリアルに届けてくれた。そしていつものようにそこには常に楽しさが加わる。

ブラームスの若々しい気概が込もった作品を大きな懐で受け止め、じっくり吟味したやり取りが進んでゆく。そこには一点の曇りや疑問もなく、メンバー一人一人が自信を持ち、お互いの表情を確かめながら自然な息遣いで音楽を届ける。落ち着いて自然なだけではない。ブラームス節とも言えるメロディーでは渋くて深みのある、匂いまで漂ってきそうな歌をたっぷり奏でるし、ここぞというときの火に油を一気に注いだようなエネルギー全開での燃え上がりのスゴさもこのアンサンブルならでは。四重奏曲も五重奏曲もフィナーレの煽りまくりの邁進は圧倒的で、どちらの曲も規制のなかで客席から飛んだブラボーの声に共感してしまった。

今夜の演奏では、久々にMAROワールドに登場したピアノの清水和音さんの存在が耳を引いた。硬質の輝きを持つ澄んだ音色で、冷静で細やかな配慮が行き届き、アンサンブルをキリっと引き締める役割を果たした。初登場はチェロの笹沼さん。マロさんと初めて出会ったときはまだ4歳の少年だったそうだ。笹沼さんは、MAROワールド恒例の「無茶振り」でソナタの第1番を披露。和音さんとの対話も軽妙洒脱に、活きがあって鋭くて奥行きのある演奏を聴かせてくれ、是非全曲が聴きたくなった。

MAROワールドのコンサートに来ると、いつでも特別な満足感と幸福感で満たされる。そのワケを考えてみると、マロさんのもとに集まってくるアーティスト達は、それぞれがそれぞれの個性を持ちながらも、音楽に対する思いとか、お客さんの前で演奏することへの思いといった基本的な価値観を共有して、それに向かって全力で一致団結しているためだと思う。それが、今この時、この場所でしか味わうことができない一期一会の演奏を生み出す原動力になっている気がする。


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