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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

イザベル・ファウスト & クリスティン・フォン・デア・ゴルツ & クリスティアン・ベザイデンホウト

2023年10月13日 | pocknのコンサート感想録2023
10月10日(火)イザベル・ファウスト(Vn)/クリスティン・フォン・デア・ゴルツ(Vc)/クリスティアン・ベザイデンホウト(Cem)
~欧州バロック作品集~
王子ホール

【曲目】
1.バッハ/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタト長調 BWV1021
2.ピゼンデル(伝バッハ)/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタハ短調 BWV1024
3.ビーバー/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ第5番 ホ短調
4.ヘンデル/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタニ長調 HWV371
5.フローベルガー/ブランシュローシュ氏の死に寄せるトンボーハ短調 FbWV632(チェンバロ・ソロ)
6.バッハ/ヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのためのソナタト長調 BWV1019
【アンコール】
1.バッハ/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタホ短調 BWV1023~アルマンド
2.ヴェストホフ/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ第2番イ短調~フィナーレ


度々聴いているヴァイオリニストのイザベル・ファウスト、今夜は鍵盤楽器にバロック・チェロが加わるトリオでの演奏会。プログラムには演奏機会の少ない曲が並び、新鮮で新たな感動を呼び起す演奏会となった。

ファウストのヴァイオリンは全てのものから解き放たれ、自由自在に駆け巡りながらも、常に聴き手の心の奥深くに真っ直ぐに刺さってくる。全ての音が「必然」として鳴らされ、核心を突いて訴えかけてくるのだ。音楽が、人間が太古から持ち合わせている歌や踊りのスピリットと繋がっていることも感じた。これは、作品に舞曲的要素が入っているという以上に、演奏がもたらしたものだと思う。

2人の共演者の抜群のパフォーマンスも大いにその印象を強めた。チェンバロのベザイデンホウトは、装飾音やトリルを随所に散りばめ、テンポも自由に伸縮させて、生き物が動き回るような予測不能な動きも交えてアンサンブルを揺さぶり、それが不自然になることなくある種のパルスを生み出す。これに輪をかけるようにフォン・デア・ゴルツのバロック・チェロがノリノリの演奏で、通奏低音という枠を飛び越えたようなソリスティックなフレーズもふんだんに盛り込み、アンサンブルにアクティブに働きかけて来た。

3人がそれぞれの感覚で自由に音楽を奏でているように見えながら、ひとつの音楽としてパワーを集結させて心を揺さぶってくる。相手の出かたに反応しつつアドリブで進めて行くジャズのセッションと共通する醍醐味を感じた。特にバロック音楽にはこうした即興的な要素が本来具わっていることを、彼らは実践で示してくれた。

こういう演奏からは多くのサプライズや発見がある。馴染みのあるバッハやヘンデルのソナタが、まるで初めて聴く音楽のように新鮮でアグレッシブに迫ってきたし、馴染みの薄い音楽が、こんなにアクティブで魅力いっぱいなことを教えてくれる。「バッハ伝」としてバッハ作品目録に1024として収録されているソナタは、バッハとは異質のワイルドさが前面に出て迫って来たし、ビーバーやフローベルガー、更にアンコールの曲からも、それぞれの作曲家が持つ強烈な個性が感じられた。

「欧州バロック作品集」と銘打たれたこのコンサートは、バッハやヘンデルだけでないバロック音楽の持つ個性とエネルギーを存分に伝え、おなじみの作品を今までのイメージと異なる視点で聴くことの楽しさを教えてくれた。音量ではモダン楽器に及ばない楽器による演奏で、こんなにもエキサイティングな気分にさせ、魂を揺さぶり、音楽の持つ底知れない力を改めて実感するコンサートでもあった。こんな体験をさせてくれた3人の演奏を是非また聴きたいと思った。

クリスティアン・ベザイデンホウト & 平崎真弓(2023.5.10 トッパンホール)
イザベル・ファウストによるバッハの無伴奏(2021.11.17 東京オペラシティ)
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