2月20日(金)フランス・ブリュッヘン指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
~フランス・ブリュッヘン・プロデュース HAYDN PROJECT
“ロンドン・セット”全曲演奏会 第3回 ~
すみだトリフォニーホール
【曲目】
1.ハイドン/交響曲第99番変ホ長調Hob.I-99
2.ハイドン/交響曲第100番ト長調「軍隊」Hob.I-100
3.ハイドン/交響曲第101番ニ長調「時計」Hob.I-101
【アンコール】
ハイドン/「時計」~第2楽章
ブリュッヘンを聴くのは何年振りだろうと調べてみたら最後に聴いたのは6年前、2002年秋の18世紀オーケストラとの来日公演だった。
80年代初めに出たこの組み合わせによるベートーベンの1番のCDにとにかく衝撃を受けて以来度々実演に接し、その溌剌とした活きのいい演奏に魅せられてきたが、いつしか最初の頃の溢れる精気が陰を潜め、 2002年に聴いた公演で「あのブリュッヘンの演奏」を追い求めても最早かなわないことを悟り、それからは来日しても聴きに行くのをやめてしまった。
ところが今回新日フィルとのハイドンシリーズのチラシを目にして、あの眼光鋭い生気溢れるブリュッヘンの姿をみたら、モダン楽器の新日フィルとなら何かまた違ったすごい演奏をやってくれそうな気がして、6年振りにブリュッヘンを聴くことになった。
で、ステージに登場したブリュッヘンはすっかりおじいさん(指揮者としてはまだそんな年寄りではないはずなのだが…)。ヨボヨボした足取りで指揮台の椅子に座るのを見て心配になった。そして始まった99番の序奏。表情がない、動きもない、上手いはずの新日フィルの弦が、練習不足のアマチュアオケのように恐る恐る弓を動かしているようにさえ見える。序奏から「本奏」に入っても精彩なし。
更に第2楽章を聴いて愕然とする。この曲の一般的なテンボがどんなものかはわからないが、とにかく蝿がとまりそうなほどにのろい。そう感じさせるのはそのテンボそのものよりも演奏に全然ムーブマンが感じられないことのせいかも知れない。これを聴いていたら失礼ながら「老人の演奏」という言葉が浮かんだ。ブリュッヘンの歩みと同様の動きを失ったヨボヨボの演奏… そのうちに、トリフォニーの深く座れてしまう座席も手伝って眠たくなってきてしまった。
続く「軍隊シンフォニー」はそんな訳でうつらうつら状態で聴いたので感想らしい感想はないのだが、演奏が終わると割れんばかりの拍手とブラボーの歓声。これは最後にステージに登場した楽隊のパフォーマンスのせいばかりではなさそうで大切なものを聴き逃した気がした。
気合いを入れ直して臨んだ後半の「時計シンフォニー」の演奏から感じたのは、とてもデリケートで自然な感触。とりわけ第4楽章、決して遅くはないテンボで駆け巡る弦楽器が、力任せとか勢いまかせとは全く違う、柔らかく微妙に変化する表情で競い合い、そこに管楽器が優しく調和して、得も言われぬ幸福感へと導いていってくれた。こちらがいつまでも20年も前のブリュッヘンの姿を追い求めている間に、ブリュッヘンは別の境地を切り開いていたようだ。それに気がついたら、前半の「精彩なし」と感じた演奏もちょっと見方を変えればもっと楽しめたのかも知れないと思った。
アンコールまでサービスしてくれ、喝采の中、笑顔のオケの面々に囲まれたブリュッヘンの表情が何とも嬉しそうで幸せそうだった。
~フランス・ブリュッヘン・プロデュース HAYDN PROJECT
“ロンドン・セット”全曲演奏会 第3回 ~
すみだトリフォニーホール
【曲目】
1.ハイドン/交響曲第99番変ホ長調Hob.I-99
2.ハイドン/交響曲第100番ト長調「軍隊」Hob.I-100
3.ハイドン/交響曲第101番ニ長調「時計」Hob.I-101
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【アンコール】
ハイドン/「時計」~第2楽章
ブリュッヘンを聴くのは何年振りだろうと調べてみたら最後に聴いたのは6年前、2002年秋の18世紀オーケストラとの来日公演だった。
80年代初めに出たこの組み合わせによるベートーベンの1番のCDにとにかく衝撃を受けて以来度々実演に接し、その溌剌とした活きのいい演奏に魅せられてきたが、いつしか最初の頃の溢れる精気が陰を潜め、 2002年に聴いた公演で「あのブリュッヘンの演奏」を追い求めても最早かなわないことを悟り、それからは来日しても聴きに行くのをやめてしまった。
ところが今回新日フィルとのハイドンシリーズのチラシを目にして、あの眼光鋭い生気溢れるブリュッヘンの姿をみたら、モダン楽器の新日フィルとなら何かまた違ったすごい演奏をやってくれそうな気がして、6年振りにブリュッヘンを聴くことになった。
で、ステージに登場したブリュッヘンはすっかりおじいさん(指揮者としてはまだそんな年寄りではないはずなのだが…)。ヨボヨボした足取りで指揮台の椅子に座るのを見て心配になった。そして始まった99番の序奏。表情がない、動きもない、上手いはずの新日フィルの弦が、練習不足のアマチュアオケのように恐る恐る弓を動かしているようにさえ見える。序奏から「本奏」に入っても精彩なし。
更に第2楽章を聴いて愕然とする。この曲の一般的なテンボがどんなものかはわからないが、とにかく蝿がとまりそうなほどにのろい。そう感じさせるのはそのテンボそのものよりも演奏に全然ムーブマンが感じられないことのせいかも知れない。これを聴いていたら失礼ながら「老人の演奏」という言葉が浮かんだ。ブリュッヘンの歩みと同様の動きを失ったヨボヨボの演奏… そのうちに、トリフォニーの深く座れてしまう座席も手伝って眠たくなってきてしまった。
続く「軍隊シンフォニー」はそんな訳でうつらうつら状態で聴いたので感想らしい感想はないのだが、演奏が終わると割れんばかりの拍手とブラボーの歓声。これは最後にステージに登場した楽隊のパフォーマンスのせいばかりではなさそうで大切なものを聴き逃した気がした。
気合いを入れ直して臨んだ後半の「時計シンフォニー」の演奏から感じたのは、とてもデリケートで自然な感触。とりわけ第4楽章、決して遅くはないテンボで駆け巡る弦楽器が、力任せとか勢いまかせとは全く違う、柔らかく微妙に変化する表情で競い合い、そこに管楽器が優しく調和して、得も言われぬ幸福感へと導いていってくれた。こちらがいつまでも20年も前のブリュッヘンの姿を追い求めている間に、ブリュッヘンは別の境地を切り開いていたようだ。それに気がついたら、前半の「精彩なし」と感じた演奏もちょっと見方を変えればもっと楽しめたのかも知れないと思った。
アンコールまでサービスしてくれ、喝采の中、笑顔のオケの面々に囲まれたブリュッヘンの表情が何とも嬉しそうで幸せそうだった。