10月22日(日)仲道郁代(Pf)
Road to 2027 ブラームスの想念
東京文化会館小ホール
【曲目】
1.ブラームス/7つの幻想曲 Op. 116
2.ブラームス/3つの間奏曲 Op. 117
3.ブラームス/6つの⼩品 Op. 118
4.ブラームス/4つの⼩品 Op. 119
【アンコール】
♪ ブラームス/ゴドフスキー編/子守歌
仲道郁代の10年におよぶ壮大なリサイタルシリーズroad to 2027、今回はブラームスの最後のピアノソロ作品となった晩年の4つの小品集が取り上げられた。オールブラームスプロというのも珍しいが、ソナタや変奏曲などの大規模な作品が入らないのは更に珍しい。けれど今日取り上げられた作品は、どれも小品と呼ぶにはあまりに深淵な世界を描いていることを仲道さんは伝えてくれた。
曲目にはどれも、人生の終わりを意識したブラームスの悲哀や諦念、追憶や憧憬など、様々な感情が深く入り交じっている。大作曲家の遺言とも云えるこれらの作品たちは、それだけに重く、深く、取り組むことは容易ではないはずだが、仲道さんはこれらの音楽を、背伸びすることも気負うこともなくブラームスが刻んで来た人生に寄り添い、作曲家の等身大の姿を描いて行った。それは、ブラームスの人生と自らが歩んで来た人生とを重ね合わせ、自らの悩みや苦しみ、愛や慈しみを、ピアノを通して自分の言葉で語っているようでもあった。
今日の曲には、どこへ向かおうとしているかが明瞭でないものが少なくない。それが作品の魅力でもあるのだが、その魅力を伝えるには一つ一つのフレーズが何を意味しているのかを解明し、そこに共感することが大切だろう。仲道さんは愛と慈しみを持ってブラームスの心の奥底へと入ってそれを究明し、自身の思いと共振させているように感じた。なかには、明確な意思が伝わる骨太でパワフルな音楽もある。そこでは、地の底から噴きあがるようなパッションやただならぬ切迫感がダイナミックに伝わり、命や愛への情熱が感じられた。それは、達観の境地に至ったブラームスの奥底に、老いることのない魂が燃えていることを訴えているようだった。
このシリーズでは、仲道さんの語りが重要な役割を果たしている。曲の解説というよりも、語りが音楽の一部のように演奏と密接に連動して一体となる。仲道さんの言葉にはブラームスの魂が宿っている。それを成し得るのは、仲道さんの音楽と作曲家への飽くなき追及と愛の賜物だ。このことは自ら手掛けたプログラム解説や、掲載されているブラームスの音楽語法についての有田正広氏との対談からもわかる。
仲道さんが、このリサイタルシリーズに全身全霊で打ち込んでいることは、会場に高度な静寂を求める姿勢からも窺えた。演奏中だけでなく、休憩時間も客席でのスマホの使用を禁止にして、「演奏中に携帯音などが鳴った場合は演奏を中断します」というアナウンスも入った。語りの最中にスマホを見ている聴衆に、仲道さんが切るようにお願いしていたことからも、その思いの強さが窺えた。去年のリサイタルでは演奏中にとんでもない「事件」があり、そこでの仲道さんの神対応に真のプロの芸術家魂を感じたが、あんなことは二度とあって欲しくないという思いもあったのだろう。それを思うと、最後の作品119の3曲目で大きな拍手が入ってしまったのは残念だった。
仲道郁代ピアノ・リサイタル(劇場の世界)2023.6.3 サントリーホール
仲道郁代ピアノ・リサイタル(知の泉)2022.5.29 サントリーホール
仲道郁代ピアノリサイタル(幻想曲の系譜)2021.10.23 東京文化会館小ホール
仲道郁代 ロマンティックなピアノ ~ 2021.3.5 紀尾井ホール
仲道郁代 フォルテピアノ&ピアノ~ミーツ・ベートーヴェンシリーズ~ 2020.1.10 東京芸術劇場
仲道郁代 ピアノリサイタル~第29回 交詢社「音楽と食事の夕べ」 2019.12.21
仲道郁代 ショパンへの道 2019.1.26 ハクジュホール
ウィーン&ベルリン音楽の旅(2023)
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「かなりや」(詩:西條八十)
拡散希望記事!
コロナ禍とは何だったのか? ~徹底的な検証と総括を求める~
コロナ報道への意見に対する新聞社の残念な対応
やめよう!エスカレーターの片側空け
Road to 2027 ブラームスの想念
東京文化会館小ホール
【曲目】
1.ブラームス/7つの幻想曲 Op. 116
2.ブラームス/3つの間奏曲 Op. 117
3.ブラームス/6つの⼩品 Op. 118
4.ブラームス/4つの⼩品 Op. 119
【アンコール】
♪ ブラームス/ゴドフスキー編/子守歌
仲道郁代の10年におよぶ壮大なリサイタルシリーズroad to 2027、今回はブラームスの最後のピアノソロ作品となった晩年の4つの小品集が取り上げられた。オールブラームスプロというのも珍しいが、ソナタや変奏曲などの大規模な作品が入らないのは更に珍しい。けれど今日取り上げられた作品は、どれも小品と呼ぶにはあまりに深淵な世界を描いていることを仲道さんは伝えてくれた。
曲目にはどれも、人生の終わりを意識したブラームスの悲哀や諦念、追憶や憧憬など、様々な感情が深く入り交じっている。大作曲家の遺言とも云えるこれらの作品たちは、それだけに重く、深く、取り組むことは容易ではないはずだが、仲道さんはこれらの音楽を、背伸びすることも気負うこともなくブラームスが刻んで来た人生に寄り添い、作曲家の等身大の姿を描いて行った。それは、ブラームスの人生と自らが歩んで来た人生とを重ね合わせ、自らの悩みや苦しみ、愛や慈しみを、ピアノを通して自分の言葉で語っているようでもあった。
今日の曲には、どこへ向かおうとしているかが明瞭でないものが少なくない。それが作品の魅力でもあるのだが、その魅力を伝えるには一つ一つのフレーズが何を意味しているのかを解明し、そこに共感することが大切だろう。仲道さんは愛と慈しみを持ってブラームスの心の奥底へと入ってそれを究明し、自身の思いと共振させているように感じた。なかには、明確な意思が伝わる骨太でパワフルな音楽もある。そこでは、地の底から噴きあがるようなパッションやただならぬ切迫感がダイナミックに伝わり、命や愛への情熱が感じられた。それは、達観の境地に至ったブラームスの奥底に、老いることのない魂が燃えていることを訴えているようだった。
このシリーズでは、仲道さんの語りが重要な役割を果たしている。曲の解説というよりも、語りが音楽の一部のように演奏と密接に連動して一体となる。仲道さんの言葉にはブラームスの魂が宿っている。それを成し得るのは、仲道さんの音楽と作曲家への飽くなき追及と愛の賜物だ。このことは自ら手掛けたプログラム解説や、掲載されているブラームスの音楽語法についての有田正広氏との対談からもわかる。
仲道さんが、このリサイタルシリーズに全身全霊で打ち込んでいることは、会場に高度な静寂を求める姿勢からも窺えた。演奏中だけでなく、休憩時間も客席でのスマホの使用を禁止にして、「演奏中に携帯音などが鳴った場合は演奏を中断します」というアナウンスも入った。語りの最中にスマホを見ている聴衆に、仲道さんが切るようにお願いしていたことからも、その思いの強さが窺えた。去年のリサイタルでは演奏中にとんでもない「事件」があり、そこでの仲道さんの神対応に真のプロの芸術家魂を感じたが、あんなことは二度とあって欲しくないという思いもあったのだろう。それを思うと、最後の作品119の3曲目で大きな拍手が入ってしまったのは残念だった。
仲道郁代ピアノ・リサイタル(劇場の世界)2023.6.3 サントリーホール
仲道郁代ピアノ・リサイタル(知の泉)2022.5.29 サントリーホール
仲道郁代ピアノリサイタル(幻想曲の系譜)2021.10.23 東京文化会館小ホール
仲道郁代 ロマンティックなピアノ ~ 2021.3.5 紀尾井ホール
仲道郁代 フォルテピアノ&ピアノ~ミーツ・ベートーヴェンシリーズ~ 2020.1.10 東京芸術劇場
仲道郁代 ピアノリサイタル~第29回 交詢社「音楽と食事の夕べ」 2019.12.21
仲道郁代 ショパンへの道 2019.1.26 ハクジュホール
ウィーン&ベルリン音楽の旅(2023)
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「かなりや」(詩:西條八十)
拡散希望記事!
コロナ禍とは何だったのか? ~徹底的な検証と総括を求める~
コロナ報道への意見に対する新聞社の残念な対応
やめよう!エスカレーターの片側空け