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インキネン/日フィル/諏訪内晶子

2019年06月12日 | pocknのコンサート感想録2019
6月7日(金)ピエタリ・インキネン指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
第711回 東京定期演奏会
サントリーホール

【曲目】
1. 湯浅譲二/シベリウス讃 ―ミッドナイト・サン―
2. サロネン/ヴァイオリン協奏曲
 【アンコール】バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番~ルール
Vn:諏訪内晶子
3. シベリウス/組曲「レンミンカイネン」―4つの伝説

インキネンと云えば、日フィルに登場して間もない2013年に聴いたシベリウスの交響曲全曲演奏会が今でも記憶に深く刻まれている。あれ以来6年ぶりの再会。

北欧ゆかりの曲が並んだプログラムの最初は、湯浅譲二の「シヘリウス讃」。1991年、前衛音楽がまだ元気だった頃の作品で、厳しさと気高さのなかに豊穣の響きを湛えていた。インキネン/日フィルの演奏からは、単なるピュアな音響だけではない、音楽のなかにある人間的な温もりが伝わってきた。演奏後に客席から呼ばれ、しっかりとした足取りでステージに立った湯浅先生に熱く大きな拍手が送られた。

次はヘルシンキ生まれのサロネンのヴァイオリン協奏曲。作曲家サロネンを聴くのは初めてだが、音楽も演奏も圧巻だった。冒頭のチェレスタを伴ったヴァイオリン・ソロからいきなり引きつけられた。深い闇の中を激しく駆け回る光の軌跡が目に焼き付くような鮮烈さ。諏訪内はステージに登場した瞬間から、全身から美しいオーラを発し、演奏からも極上のオーラが放たれた。高級シルクのような光沢と肌触りの美音、隙のないコントロール、緊迫したスピード感、研ぎ澄まされた感性と歌、どこを取っても完璧という言葉しか出てこない。この曲は諏訪内のため書かれたと思うほどだった。

オーケストラはソロ・ヴァイオリンを光彩のように雅やかな響きで包み、時に強烈な光を放ち、聴く者を引き付けた。サロネンの音楽は、音数は多くても無駄がなく、古典的な佇まいのなかにドラマがあり、新鮮な感動の連続。諏訪内のヴァイオリンあっての感動かも知れないが、作曲家としてのサロネンにも大きな魅力を感じた。

後半はインキネンお得意のシベリウスということで益々期待が高まった。非常に能動的な演奏で、パート間の対話がリアルに交わされ、全体がしなやかで伸びやかな歌を奏でて行った。暖かみのある響きが北欧の物語の抒情を伝えていたが、細部での表現の冴えや響きの鮮度という点では物足りなさも感じた。有名な「トゥオネラの白鳥」は、コールアングレの柔らかな歌とチェロのモノローグが、仄かな光を帯びた薄明の情景を醸し出すオケの響きと共に、寂寥感漂う幻想の世界を表現していて印象深かった。
♪ ♪ ♪

聴衆に配られたパンフには、4月のヨーロッパ公演の詳報が楽しいエピソードを交えて掲載されたり、新団員のプロフィールが本人へのインタビュー形式で紹介されたりして、オケと聴衆をつなぐ工夫が感じられた。そこで思ったのが、僕が会員のN響のパンフ「フィルハーモニー」のつまらなさ。オケや団員を紹介する記事は久しくお目にかかっていない。連載記事はお堅い論文調の歴史もの。N響は団員と聴衆をつなぐことをもっと考えてほしい。

インキネン指揮 日本フィルのシベリウス・チクルスⅢ~2013.4.26 サントリーホール~
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
子守歌 ~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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