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バッハ「音楽の捧げもの」~寺神戸亮のバロック音楽の真髄~

2018年10月15日 | pocknのコンサート感想録2018
10月13日(土)J.S.バッハ「音楽の捧げもの」
~寺神戸亮のバロック音楽の神髄、前田りり子、上村かおり、曽根麻矢子を迎えて~

ヤマハホール

【曲目】
♪ クープラン/王宮のコンセール第3番イ長調
♪ バッハ/音楽の捧げもの BWV1079
【アンコール】
♪ バッハ/音楽の捧げもの BWV1079~6声のリチェルカーレ(4名による合奏)

【演 奏】
Vn&レクチャー:寺神戸亮/バロック・フルート:前田りり子/ヴィオラ・ダ・ガンバ:上村かおり/Cem:曽根麻矢子


北とぴあ国際音楽祭のオペラ公演を担うレ・ボレアードの指揮者としてもお馴染みの寺神戸亮をはじめ、古楽界のトッププレイヤー達により、バッハの「音楽の捧げもの」をメインとした興味深い室内楽コンサートが開催された。

「音楽の捧げもの」に先立って演奏されたのは、今年のアニバーサリー作曲家、フランソワ・クープランの作品。自然な呼吸で音楽全体を包み込むようなアンサンブルが、「王宮のコンセール」という名に相応しく、柔らかく優美に、響きの良いヤマハホールに広がった。特に印象深かったのは、5曲目のガヴォットと次のメヌエットの間が4度の持続音で繋げられ、その4度をベースに展開されたメヌエットから独特の香りを伴った民族色を感じたことと、終曲のシャコンヌが、野に遊び、踊るような楽しい雰囲気を醸し出していたこと。

続いての「音楽の捧げもの」は、寺神戸氏が作品誕生のいきさつを、スライド投影やフルートの前田さんによる「献辞」の朗読などを交えて紹介し、更に13曲(トリオソナタを4曲とカウントすれば16曲)から成る作品を途中で区切り、他の演奏者にもマイクを向けたり、実演を交えたりしながら、詳しく解説するレクチャーコンサート形式で行われた。

話の中心は各カノンの構造について。単純に模倣するカノンだけでなく、一方のパートは楽譜を後ろから読んでいく逆行型、鏡に映したように音の動きが反転する反行型、テーマの音価を広げた拡大型、テーマが一巡する間に一音高い位置で終わる螺旋型、入りが譜面上に記されていない「謎カノン」、忠実な模倣カノンでありながらフーガのように聴こえる曲など、様々なバリエーションがあることを詳しく解説して、バッハの自筆譜を映しながら演奏が進んだ。

こんな風にカノンの仕組みを理解しながらこの曲を聴くのは恐らく初めての経験で、とても興味を引かれた。どの楽曲でも、大王の与えたテーマが必ず使われ、それがカノンと共に美しく調和するところに、バッハのセンスや才能にとどまらず、対位法のありとあらゆる可能性を探り、極め、知的な遊びも盛り込んだうえで最高の芸術作品に仕上げてしまう驚異的な作曲能力を思わずにはいられなかった。

コンサートは、解説の興味深さだけでなく、演奏も非常に優れたものだった。各プレイヤーは卓越した技と自然な息遣いで、音楽がどのように立ち現われ、繋がり、どう収束して行くかという流れを、繊細で柔らかなタッチで端正に表現し、それをアンサンブルとしてまとめて行った。音楽が緻密で複雑でありながら、何の無理もなく美しい調和を奏でる理想郷といっていい世界を聴かせてくれたことに、畏敬の念さえ覚えた。


♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢(YouTube)
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美(YouTube)

拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け

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