10月18日(木)マウリツィオ・ポリーニ(Pf)
サントリーホール
【曲目】
♪ ショパン/ノクターン 嬰ハ短調 Op.27-1
♪ ショパン/ノクターン 変ニ長調 Op.27-2
♪ ショパン/マズルカ ロ長調 Op.56-1
♪ ショパン/マズルカ ハ長調 Op.56-2
♪ ショパン/マズルカ ハ短調 Op.56-3
♪ ショパン/ノクターン ヘ短調 Op.55-1
♪ ショパン/ノクターン 変ホ長調 Op.55-2
♪ ショパン/子守歌 変ニ長調 Op.57
♪ ♪ ♪ ♪ ドビュッシー/前奏曲集第1巻
【アンコール】
ドビュッシー/前奏曲集第2巻~「花火」
ポリーニのリサイタルは高いのでずっとご無沙汰だったが、今回の来日での3日目の曲目を見て、これは大枚をはたいても行きたい!と思った。ベートーヴェンの「悲愴」に大作「ハンマークラヴィーア」、シェーンベルクの小品も入り、これぞポリーニの魅力を満喫できる、と楽しみにしていたら、本番8日前に「腕の疲労が回復しない」と、プログラムがすっかり入れ替わり、予定していた曲は1つもないという残念なお知らせ。
払い戻しにも出来たが、ショパンのソナタを聴けるなら、とチケットはキープしてサントリーホールへ出かけたら更なる曲目変更で、ショパンのソナタも消えていた。ポリーニさん、相当これは調子が悪いに違いない、と不安を抱えてのリサイタルとなった。そして久々に聴いた演奏は、想像以上に厳しいものだった。
最初のショパンのノクターンでは透明で静謐な音が聴こえて来たが、聴いているうちに、これこそあのポリーニだ!と感動し、納得できる演奏とはとても言えないと感じてきた。目立つミスは少ないが、演奏から明確な主張が感じられず、焦点が散漫になってしまっている。ポリーニならではの切れ味や冴えも感じられない。
前半で唯一心引かれたのは、最後に演奏した子守歌。左手の穏やかに揺らめく伴奏に乗って、右手で奏でられる軽くて柔らかな旋律は、天使の戯れのよう。他の曲もこの路線でやってくれれば、1年前に聴いた93歳のプレスラーの天上の世界と比肩する魅力を感じたかも知れないが、他の曲ではまだ現世への未練が感じられてしまった。ヘ短調のノクターンなんかもしゃべり過ぎ。
オペラ公演並みの25分以上の休憩の後に演奏されたドビュッシーも状況は変わらなかった。今のポリーニに往年の冴え渡る超絶技巧は求めないにしても、それに代わる透明感とか、達観した深淵な世界を感じたかったのだが、そういう演奏とも違うどっちつかずさを感じてしまった。そんな宙ぶらりんの気持ちで本割りを終えた後のアンコールで、今夜の中で一番技巧が勝る「花火」が始まったのは驚きだった。これは技巧的にもダイナミズムも一番の出来だったのでは?
良いことを殆ど書けなくて残念だが、ハッとする場面や美しいと感じる瞬間もあった。空席は目立ったが、終演後、聴衆は皆スタンディングオベーションで熱い拍手とブラボーを送っていたのは、不調を押してリサイタルをやってくれた老巨匠への感謝と敬意からだけではなく、そうした魅力に心底共感したからだとは思う。けれど、僕がポリーニに求めていたのはもっともっと崇高なもので、今夜のリサイタルはそんな期待からは遠かった。
今回はたまたま不調だっただけかも知れないし、次はずっと素晴らしいリサイタルになるかも知れないが、これだけのお金を払って(B席で1万9千円)、半ば賭けでまたポリーニを聴きにくることはないと思う。
ポリーニ ピアノリサイタル(ブーレーズフェスティバル) 1995.5.18 東京文化会館
ブラームス/ピアノ協奏曲第2番(アバド指揮) 2006.10.19 サントリーホール
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢(YouTube)
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美(YouTube)
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サントリーホール
【曲目】
♪ ショパン/ノクターン 嬰ハ短調 Op.27-1
♪ ショパン/ノクターン 変ニ長調 Op.27-2
♪ ショパン/マズルカ ロ長調 Op.56-1
♪ ショパン/マズルカ ハ長調 Op.56-2
♪ ショパン/マズルカ ハ短調 Op.56-3
♪ ショパン/ノクターン ヘ短調 Op.55-1
♪ ショパン/ノクターン 変ホ長調 Op.55-2
♪ ショパン/子守歌 変ニ長調 Op.57
【アンコール】
ドビュッシー/前奏曲集第2巻~「花火」
ポリーニのリサイタルは高いのでずっとご無沙汰だったが、今回の来日での3日目の曲目を見て、これは大枚をはたいても行きたい!と思った。ベートーヴェンの「悲愴」に大作「ハンマークラヴィーア」、シェーンベルクの小品も入り、これぞポリーニの魅力を満喫できる、と楽しみにしていたら、本番8日前に「腕の疲労が回復しない」と、プログラムがすっかり入れ替わり、予定していた曲は1つもないという残念なお知らせ。
払い戻しにも出来たが、ショパンのソナタを聴けるなら、とチケットはキープしてサントリーホールへ出かけたら更なる曲目変更で、ショパンのソナタも消えていた。ポリーニさん、相当これは調子が悪いに違いない、と不安を抱えてのリサイタルとなった。そして久々に聴いた演奏は、想像以上に厳しいものだった。
最初のショパンのノクターンでは透明で静謐な音が聴こえて来たが、聴いているうちに、これこそあのポリーニだ!と感動し、納得できる演奏とはとても言えないと感じてきた。目立つミスは少ないが、演奏から明確な主張が感じられず、焦点が散漫になってしまっている。ポリーニならではの切れ味や冴えも感じられない。
前半で唯一心引かれたのは、最後に演奏した子守歌。左手の穏やかに揺らめく伴奏に乗って、右手で奏でられる軽くて柔らかな旋律は、天使の戯れのよう。他の曲もこの路線でやってくれれば、1年前に聴いた93歳のプレスラーの天上の世界と比肩する魅力を感じたかも知れないが、他の曲ではまだ現世への未練が感じられてしまった。ヘ短調のノクターンなんかもしゃべり過ぎ。
オペラ公演並みの25分以上の休憩の後に演奏されたドビュッシーも状況は変わらなかった。今のポリーニに往年の冴え渡る超絶技巧は求めないにしても、それに代わる透明感とか、達観した深淵な世界を感じたかったのだが、そういう演奏とも違うどっちつかずさを感じてしまった。そんな宙ぶらりんの気持ちで本割りを終えた後のアンコールで、今夜の中で一番技巧が勝る「花火」が始まったのは驚きだった。これは技巧的にもダイナミズムも一番の出来だったのでは?
良いことを殆ど書けなくて残念だが、ハッとする場面や美しいと感じる瞬間もあった。空席は目立ったが、終演後、聴衆は皆スタンディングオベーションで熱い拍手とブラボーを送っていたのは、不調を押してリサイタルをやってくれた老巨匠への感謝と敬意からだけではなく、そうした魅力に心底共感したからだとは思う。けれど、僕がポリーニに求めていたのはもっともっと崇高なもので、今夜のリサイタルはそんな期待からは遠かった。
今回はたまたま不調だっただけかも知れないし、次はずっと素晴らしいリサイタルになるかも知れないが、これだけのお金を払って(B席で1万9千円)、半ば賭けでまたポリーニを聴きにくることはないと思う。
ポリーニ ピアノリサイタル(ブーレーズフェスティバル) 1995.5.18 東京文化会館
ブラームス/ピアノ協奏曲第2番(アバド指揮) 2006.10.19 サントリーホール
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢(YouTube)
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美(YouTube)
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