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12月B定期(デュトワ指揮)

2009年12月16日 | N響公演の感想(~2016)
12月16日(水)シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団
《2009年12月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1.ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
2.ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲ニ長調
Pf:ニコライ・ルガンスキー
3.ショスタコーヴィチ/交響曲第11番ト短調Op.103「1905年」

デュトワの定期登場はちょうど1年ぶり。今夜のN響の演奏は初めから終りまで充実していた。

亡き王女のパヴァーヌは実に柔らかな陰影に富んでいた。清らかな水に白い絵の具を流し込んだときのように、ゆっくりと漂うようにメロディーが水に広がり、微妙に表情を変えつつ溶けて行く。そんなデリケートで移ろいやすい、はかない美しさを湛えていた。

ルガンスキーをソロに迎えた左手のためのコンチェルトではオケは一転熱い底力をたぎらせる。音の密度が濃く、凝縮された内なるエネルギーがうねるように押し寄せては引いて行く。それは強力な持続力に支えられ、単一楽章のこの音楽がひとつの熱い塊となって迫ってきた。

ピアノのルガンスキーはそんな熱くて濃いオケの中でも強烈な存在感を放っていた。全身にみなぎる隆々とした筋肉に熱い血が通い、酸素をいっぱい吸収して力強く、しなやかに、縦横無尽に動きまわる。両手で弾くよりも却って独特な豊かな表情や、匂やかさも具え、心を捉える。終盤の長いソロからコーダへとなだれ込むドラマも圧倒的だった。

そして後半のショスタコーヴィチでもオケの充実ぶりは衰えるところを知らない。全身全霊で音楽に没入するその気合いはとにかくすごい。第2楽章での殺戮の場面ではオケのメンバーが情け容赦ない残虐な兵士に見えたし、第4楽章終盤の異様な盛り上がりでは意気揚々と勝利を叫ぶ市民達のようにも見えた。

その場面の登場人物の魂が乗り移ったような臨場感。怒涛のようなアンサンブルがもたらすエネルギー、或いは第3楽章でヴィオラが奏でた深い鎮魂の歌の美しさ… デュトワはフランス音楽を演奏するのとはまた違った、熱く凝縮されたダイナミックなドラマを描くのも得意だが、それが最高の状態で実現したような今夜の演奏だった。

・・・と、演奏に関しては文句なしの今夜のN響定期だったが、ショスタコのこの曲はなんと言っていいのだろうか・・・ ショスタコのシンフォニーは1番、5番、9番以外は殆ど知らない。それだけに以前アシュケナージの指揮で第4シンフォニーを聴いた時の感動は未知との出逢いのような忘れがたいものがある。今夜の11番にもそんなものを期待していたのだが、この曲の印象は思いっきりの単純明快さ。同じショスタコの5番にも共通するが、5番のほうはそれが凝縮され昇華されているのに対し、こちらではそれが徒に引き伸ばされているようで冗長に感じた。この曲は1回聴けばもういいかも…

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