10月31日(金)セルゲイ・クドリャコフ(Pf)&篠崎史紀(Vn)
~~ピアノとヴァイオリンによる心のアダージョ~
第417回日経ミューズサロン
日経ホール
【第1部】クドリャコフによる ブラームス・バリエーション
1. バッハ/ブラームス編/シャコンヌ(左手による)
2. ブラームス/パガニーニの主題による変奏曲
【第2部】マロ&クドリャコフのデュオ・バリエーション
1. ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op.100
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1. ジーツィンスキー/篠崎史紀編/ウィーン、我が夢の街
2. レハール/篠崎史紀編/メリーウィドウ・ワルツ
3. 篠崎史紀/チャールダーシュ“MARO"
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【アンコール】
1. ラフマニノフ/クライスラー編/祈り
2. ラフマニノフ/セレナーデ
マロさんが登場する楽しそうなコンサートだったので奥さんと一緒に出かけた。会場の日経ホールは初めて。ホール自体は昔からあったはずだが、ピカピカの新しいホールになっていて、思ったよりキャパは大きいが響きは悪くない。
最初にクドリャコフがソロで弾いた2曲は、ブラームが他の作曲家の作品に触発されてアレンジしたり、バリエーションにしたもの。強靭なタッチで始まったシャコンヌは、骨にまで響いてくるほどにリアルな音塊を撃ち込んできた。その度に心が激しく揺さぶられる。左手だけで、多声部のパートが別の生き物のように対話したり、対峙するのを聴くと、やっぱりスゴいなと思う。次のパガニーニバリエーションもスケールが大きく、スリリングで醍醐味溢れる演奏だが、いささか奔放過ぎるようにも思えた。
後半はお待ちかねのマロさん登場。最初に僕の大好きなブラームスの第2ソナタ。チラシには載っていなかったので嬉しいサプライズ。マロさんだったらウィーンの香りが漂う、甘く匂やかなブラームスになるかな、と思いきや、颯爽とした、これぞ「男のブラームス」と言いたくなる演奏。息を潜め、何かがやってくるのを予感しているような静の部分と、しなやかで力強い動の部分との振幅がダイナミックで、芯のある美しい音で朗々と奏でる歌も頼もしくてホレボレ。クドリャコフのピアノは前半のソロよりずっと陰影と表情に富み、バイオリンと常にリアルな対話を交わし、能動的なアンサンブルを繰り広げて行った。二人が見ている世界の大きさ、深さが伝わってくる素晴らしいブラームスだった。
さて、ここから先の曲目は細かい感想を書くのもヤボというもの。マロさんの楽しいトークを交えた演奏で、客席の空気が一気に和んだ。「メリーウィドウ」でも「ウィーン、我が夢の街」でも、会場にワインの匂いが漂ってきそうで、ほろ酔い気分にさせてくれる節回しや語り口にどっぷり浸かる幸せタイム。マロさんのバイオリンは「そんなところに大人しく座ってないで一緒に踊ろうよ」と誘ってくる。その誘いに乗れば、気分はどんどん高揚して、浮かれ気分で踊り回ってしまいそう。
そんな高揚感が頂点にまで達したのが最後の「チャールダッシュ」。マロさんのバイオリンは一音ごとに熱気を呼び込み、血を熱くする。尋常ではないほどの求心力でジプシー達が熱狂的に踊る渦中に引きずり込まれるよう。ピアノパートもマロさんの手によるものとのことだが、曲が進むに連れてどんどんアクロバット度を増していくピアノが気分を一層高揚させた。アンコールでは、ラフマニノフのおなじみのロマンチックな歌で、高揚しきった気分をやさしくヒートダウンさせつつ、コンサートの余韻に浸らせてくれた。
大満足のコンサートだったが、一つ残念だったのが譜めくりさん。ブラームスでうまくいかなかったのを、せめてその後で改善できなかったものか。見ていてハラハラしたし、ピアニストも気の毒だった。
~~ピアノとヴァイオリンによる心のアダージョ~
第417回日経ミューズサロン
日経ホール
【第1部】クドリャコフによる ブラームス・バリエーション
1. バッハ/ブラームス編/シャコンヌ(左手による)
2. ブラームス/パガニーニの主題による変奏曲
【第2部】マロ&クドリャコフのデュオ・バリエーション
1. ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op.100
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1. ジーツィンスキー/篠崎史紀編/ウィーン、我が夢の街
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2. レハール/篠崎史紀編/メリーウィドウ・ワルツ
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3. 篠崎史紀/チャールダーシュ“MARO"
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【アンコール】
1. ラフマニノフ/クライスラー編/祈り
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2. ラフマニノフ/セレナーデ
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マロさんが登場する楽しそうなコンサートだったので奥さんと一緒に出かけた。会場の日経ホールは初めて。ホール自体は昔からあったはずだが、ピカピカの新しいホールになっていて、思ったよりキャパは大きいが響きは悪くない。
最初にクドリャコフがソロで弾いた2曲は、ブラームが他の作曲家の作品に触発されてアレンジしたり、バリエーションにしたもの。強靭なタッチで始まったシャコンヌは、骨にまで響いてくるほどにリアルな音塊を撃ち込んできた。その度に心が激しく揺さぶられる。左手だけで、多声部のパートが別の生き物のように対話したり、対峙するのを聴くと、やっぱりスゴいなと思う。次のパガニーニバリエーションもスケールが大きく、スリリングで醍醐味溢れる演奏だが、いささか奔放過ぎるようにも思えた。
後半はお待ちかねのマロさん登場。最初に僕の大好きなブラームスの第2ソナタ。チラシには載っていなかったので嬉しいサプライズ。マロさんだったらウィーンの香りが漂う、甘く匂やかなブラームスになるかな、と思いきや、颯爽とした、これぞ「男のブラームス」と言いたくなる演奏。息を潜め、何かがやってくるのを予感しているような静の部分と、しなやかで力強い動の部分との振幅がダイナミックで、芯のある美しい音で朗々と奏でる歌も頼もしくてホレボレ。クドリャコフのピアノは前半のソロよりずっと陰影と表情に富み、バイオリンと常にリアルな対話を交わし、能動的なアンサンブルを繰り広げて行った。二人が見ている世界の大きさ、深さが伝わってくる素晴らしいブラームスだった。
さて、ここから先の曲目は細かい感想を書くのもヤボというもの。マロさんの楽しいトークを交えた演奏で、客席の空気が一気に和んだ。「メリーウィドウ」でも「ウィーン、我が夢の街」でも、会場にワインの匂いが漂ってきそうで、ほろ酔い気分にさせてくれる節回しや語り口にどっぷり浸かる幸せタイム。マロさんのバイオリンは「そんなところに大人しく座ってないで一緒に踊ろうよ」と誘ってくる。その誘いに乗れば、気分はどんどん高揚して、浮かれ気分で踊り回ってしまいそう。
そんな高揚感が頂点にまで達したのが最後の「チャールダッシュ」。マロさんのバイオリンは一音ごとに熱気を呼び込み、血を熱くする。尋常ではないほどの求心力でジプシー達が熱狂的に踊る渦中に引きずり込まれるよう。ピアノパートもマロさんの手によるものとのことだが、曲が進むに連れてどんどんアクロバット度を増していくピアノが気分を一層高揚させた。アンコールでは、ラフマニノフのおなじみのロマンチックな歌で、高揚しきった気分をやさしくヒートダウンさせつつ、コンサートの余韻に浸らせてくれた。
大満足のコンサートだったが、一つ残念だったのが譜めくりさん。ブラームスでうまくいかなかったのを、せめてその後で改善できなかったものか。見ていてハラハラしたし、ピアニストも気の毒だった。