7月8日(金)板倉康明 指揮 東京シンフォニエッタ
~ 第51回定期演奏会 ~
東京文化会館小ホール
【曲目】
1.シェルホフ/小協奏曲
2.ヒンデミット/三重奏曲 Op.47
3.ベンジャミン/ヴィオラ ヴィオラ
4.ノックス/ヨナと鯨
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5.ブリテン/ラクリメ―ダウランドの歌曲の投影 Op.48
6.西岡龍彦/我が唯一の望み~ヴィオラ、アコーディオンと12人の奏者のための~ (委嘱初演)
Vla:百武由紀、吉田篤、多井千洋/Fl:斎藤光晴/Cb:吉田秀/Pf:藤原亜美/BsCl:西澤春代/Tb:渡邊功/アコーディオン:大田智美
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ソリストシリーズと題して、ヴィオラを主役に据えた東京シンフォニエッタの定期演奏会。ヴィオラのソロはジョージ・ベンジャミンの曲以外すべて百武由紀が担当し、雄弁で多彩な演奏を聴かせた。渋くて味わい深いだけでないヴィオラの様々な魅力を伝え、個性豊かでワクワクする未知の曲と出会えたコンサートだった。
ワクワクの代表格はノックスのヴィオラとチューバのための「ヨナと鯨」。照明効果や特別な椅子も動員して、演奏者がシーンごとに場所を変え、聴かせて見せる迫真のパフォーマンス。得体の知れぬ怪物(実は鯨)から逃げようとするヨナ(ヴィオラ)と、どこまでも追ってくる鯨(チューバ)を描いたという曲。鯨役のチューバを操る渡邊功は、太い音から最高音までを駆使し、更に楽器を叩いたり、管に息や声を吹き入れたり、叫び声を発したりする曲芸的な「技」と「芸」で、迫りくる「怪物」をおどろおどろしく、ときにコミカルに表現した。対するヨナ役、ヴィオラの百武は、椅子の上に立ち上がる演技も交え、怯えて逃げ惑う様子を生き生きと表現した。
ワクワクしたもう一曲は、ジョージ・ベンジャミンの「ヴィオラ ヴィオラ」。2人のヴィオリスト(吉田篤、多井千洋)が格闘するように、野性的で入魂の演奏を聴かせた。重音を多用して、ヴィオラ2本でやっているとは思えないカルテットのような音域と重厚な響き、複雑なテクスチャーで迫ってきた。バトルだけでなく、精巧なアートに耳を澄ませるようなシーンもあり、10分ほどの間に様々なドラマを聴かせてくれた。
他の作品も、それぞれ特色を持つ逸品だった。シェルホフの小協奏曲は、土臭く、血の通った民衆の陽気な踊りが思い浮かぶ音楽。ヒンデミットの三重奏曲は、ガッチリとした対位法で緻密に書かれ、特に隙のない厳しさに貫かれた後半で、3人は緊迫した白熱の演奏を展開した。藤原さんのピアノの冴えが光っていた。ブリテンの「リメ」は、細かいパートに分かれた弦楽合奏の繊細なハーモニーと、温かく太い声で優しく語りかけるヴィオラが、美しく静かな祈りの音楽を奏でた。
最後に演奏された西岡龍彦氏の「我が唯一の望み」は、東京シンフォニエッタによる委嘱初演。プログラムノートによれば、この曲は中世ヨーロッパのあるタピスリーの印象を音にしたということだが、笙のような響きの効果のアコーディオンが静かに立ち昇り、室内オーケストラによって彩られる静謐な世界が現出した。そこで奏でられる百武のヴィオラは、古の物語を雄弁に、静かに語り聞かせているようだった。
終演後は今回も指揮の板倉さんが、面会が出来ない代わりにと気を利かせて撮影タイムを設けてくれた。ホールもそろそろ出演者との面会を解禁してはどうだろうか。特定の場所でだけ接触禁止にしても意味はないし、その必要もない。
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【曲目】
1.シェルホフ/小協奏曲
2.ヒンデミット/三重奏曲 Op.47
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3.ベンジャミン/ヴィオラ ヴィオラ
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4.ノックス/ヨナと鯨
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5.ブリテン/ラクリメ―ダウランドの歌曲の投影 Op.48
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6.西岡龍彦/我が唯一の望み~ヴィオラ、アコーディオンと12人の奏者のための~ (委嘱初演)
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Vla:百武由紀、吉田篤、多井千洋/Fl:斎藤光晴/Cb:吉田秀/Pf:藤原亜美/BsCl:西澤春代/Tb:渡邊功/アコーディオン:大田智美
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ソリストシリーズと題して、ヴィオラを主役に据えた東京シンフォニエッタの定期演奏会。ヴィオラのソロはジョージ・ベンジャミンの曲以外すべて百武由紀が担当し、雄弁で多彩な演奏を聴かせた。渋くて味わい深いだけでないヴィオラの様々な魅力を伝え、個性豊かでワクワクする未知の曲と出会えたコンサートだった。
ワクワクの代表格はノックスのヴィオラとチューバのための「ヨナと鯨」。照明効果や特別な椅子も動員して、演奏者がシーンごとに場所を変え、聴かせて見せる迫真のパフォーマンス。得体の知れぬ怪物(実は鯨)から逃げようとするヨナ(ヴィオラ)と、どこまでも追ってくる鯨(チューバ)を描いたという曲。鯨役のチューバを操る渡邊功は、太い音から最高音までを駆使し、更に楽器を叩いたり、管に息や声を吹き入れたり、叫び声を発したりする曲芸的な「技」と「芸」で、迫りくる「怪物」をおどろおどろしく、ときにコミカルに表現した。対するヨナ役、ヴィオラの百武は、椅子の上に立ち上がる演技も交え、怯えて逃げ惑う様子を生き生きと表現した。
ワクワクしたもう一曲は、ジョージ・ベンジャミンの「ヴィオラ ヴィオラ」。2人のヴィオリスト(吉田篤、多井千洋)が格闘するように、野性的で入魂の演奏を聴かせた。重音を多用して、ヴィオラ2本でやっているとは思えないカルテットのような音域と重厚な響き、複雑なテクスチャーで迫ってきた。バトルだけでなく、精巧なアートに耳を澄ませるようなシーンもあり、10分ほどの間に様々なドラマを聴かせてくれた。
他の作品も、それぞれ特色を持つ逸品だった。シェルホフの小協奏曲は、土臭く、血の通った民衆の陽気な踊りが思い浮かぶ音楽。ヒンデミットの三重奏曲は、ガッチリとした対位法で緻密に書かれ、特に隙のない厳しさに貫かれた後半で、3人は緊迫した白熱の演奏を展開した。藤原さんのピアノの冴えが光っていた。ブリテンの「リメ」は、細かいパートに分かれた弦楽合奏の繊細なハーモニーと、温かく太い声で優しく語りかけるヴィオラが、美しく静かな祈りの音楽を奏でた。
最後に演奏された西岡龍彦氏の「我が唯一の望み」は、東京シンフォニエッタによる委嘱初演。プログラムノートによれば、この曲は中世ヨーロッパのあるタピスリーの印象を音にしたということだが、笙のような響きの効果のアコーディオンが静かに立ち昇り、室内オーケストラによって彩られる静謐な世界が現出した。そこで奏でられる百武のヴィオラは、古の物語を雄弁に、静かに語り聞かせているようだった。
終演後は今回も指揮の板倉さんが、面会が出来ない代わりにと気を利かせて撮影タイムを設けてくれた。ホールもそろそろ出演者との面会を解禁してはどうだろうか。特定の場所でだけ接触禁止にしても意味はないし、その必要もない。
板倉康明/東京シンフォニエッタ ~武満 徹 生誕90年~ 2020.12.3 東京文化会館小ホール
板倉康明/東京シンフォニエッタ ~サマーフェス2020~ 2020.8.23 サントリーブルーローズ
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