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趙 静(Vc)/仲道郁代(Pf) ベートーヴェンのチェロ・ソナタ

2007年05月30日 | pocknのコンサート感想録2007
5月30日(水)趙 静(Vc)/仲道郁代(Pf) 
仲道郁代のベートーヴェン・ツィクルス
JTアートホール室内楽シリーズ ~チェロ・ソナタの世界Ⅱ~
JTアートホール
【曲目】
1. ベートーヴェン/「魔笛」の主題による7つの変奏曲変ホ長調WoO.46
2.ベートーヴェン/チェロとピアノのためのソナタ 第1番 ヘ長調 Op.5-1
3.ベートーヴェン/チェロとピアノのためのソナタ 第4番 ハ長調 Op.102-1
4.ベートーヴェン/チェロとピアノのためのソナタ 第5番 ニ長調 Op.102-2
【アンコール】
ベートーヴェン/「マカベウスのユダ」の主題による12の変奏曲ト長調WoO.45


このところよく名前を見聞きする若いチェリストの趙静(チョウ・チン)、中国から東京音大に留学して世界的に活躍するという経歴にも興味があり一度聴いてみたいと思っていたところ、僕の大好きな仲道さんとのデュオでベートーヴェンをやるというのでチケットをゲット。今夜聴いてきた。

「魔笛」の主題の変奏曲のチェロの低音が鳴ったとき、その深さ、人肌の温もりが一気に伝わってきた。人の声を思わせるようなこの温もりが趙静のチェロの音の魅力。たっぷりとしたブレスの呼気がチェロの音に重なって、更に人間的な温かみを伝える。安定感のある演奏を着実に重ねて行くことによって、弾き進むに連れて聴くものを徐々にベートーヴェンの世界へと誘って行く。エモーショナルでスリリングな演奏の魅力とはまた違った、構築感のあるベートーヴェン。これもベートーヴェンの魅力だ。

仲道さんの、端正でカチッとした様式感の中で生き生きと歌い、美しい音色を奏でるピアノと、趙静の構築感のあるチェロはとてもよくマッチし、ベートーヴェンの若い時代のソナタ(第1番)でも、円熟期の作品に引けを取らないような音楽の魅力を伝えていた。

後半に演奏された後期のソナタ、変則的な構造を持った第4番もたいへん堅実に一音一音積み重ねることによって、その全体像が見事に見渡せ、更に安心感のある力強さを感じたし、フーガを最終楽章に置いた第5番は、そんな趙静と仲道さんのまさしく手中にハマッた演奏で、様式美が生み出す底から湧き立つようなエネルギーが伝わってきた。

アンコールとしては大曲の「マカベウスのユダ」の変奏曲を演奏することで、仲道さんのピアノによるこの室内楽シリーズでのベートーヴェンのチェロ作品全曲演奏を完結させるというしっかりしたコンセプトが、今夜の演奏全体に行き渡っていたように感じた。

初めて聴く趙静のチェロはとても好印象を受けたが、前評判で想像したような驚嘆するような、一度聴いたら忘れられないような演奏、とまでは感じなかったかな… でもこういうタイプの演奏家は歳を重ねるほどに着実に成長してくれるはず。今後の更なる活躍に注目したい。

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2 コメント

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Unknown (つけちぇろ)
2007-06-01 00:35:02
おおっ、趙静の演奏を聴かれたのですね。いいなあ。
おっしゃる通りこの方は経験を重ねるとうんと成長しそうな気がします。
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ショパンのソナタ (pockn)
2007-06-15 01:42:49
つけちぇろさんは趙静のファンでしたか!数日前、朝FMで趙静のチェロでショパンのソナタをやってましたが、ついつい聞き入ってしまいました。
返信する

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