facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ブラームス 室内楽マラソンコンサート~国際音楽祭NIPPON 2022~

2022年03月16日 | pocknのコンサート感想録2022
3月13日(日)ブラームス 室内楽マラソンコンサート
~国際音楽祭NIPPON 2022より~
東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル

【曲目】
1.弦楽五重奏曲第1番 ヘ長調 Op.88
2.弦楽五重奏曲第2番 ト長調 Op.111
♪ ♪ ♪
3.クラリネット三重奏曲 イ短調 Op.114
4.クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115
【プレゼント】
♪ F.A.E.ソナタ~第3楽章

【演奏】
Vn:諏訪内晶子(4,E)、マーク・ゴトーニ(1,4)、米元響子(2)、小川響子(2)、小林美樹(1)/Vla鈴木康浩(2,4)、田原綾子(1)、村上淳一郎(1,2)/Vc:辻󠄀本玲(2,4)、中木健二(3)、上野通明(1)/Pf:阪田知樹(3,E)/Cl:金子平(3,4)

諏訪内晶子が芸術監督として主導する国際音楽祭NIPPONの最終コンサートは、ブラームスの室内楽マラソンコンサート。朝の10時半から3部構成で続いた最後の第3部を聴いた。

このマラソンコンサートでは普段聴く機会の少ない作品が演奏され、第3部もクラリネット五重奏曲以外はそんな曲目が並んだ。そして、それらがいかに充実した作品揃いかを思い知った。演奏がまたとびきりの名演揃い!諏訪内の呼びかけで集まったというプレイヤー達は、今最も充実した演奏活動を行っている精鋭たち。各々の素晴らしさに加え、アンサンブルとしての力量にも舌を巻いた。作品や演奏者によってアプローチは異なるが、どの曲でもプレイヤーが親密に対話を交わし、熟成の芳香を放ち、歌に溢れていた。ブラームスの音楽の奥深さ、味わい、ハーモニーの柔らかなグラデーションの妙などに酔いしれた。

プログラム前半は2つの弦楽五重奏曲。第1番はしっとりと滑らかな歌を奏で、優しく味わい深いハーモニーを響かせた。ゴトーニのヴァイオリンの柔らかな語りかけ、田原の能動的なヴィオラの歌など、各プレイヤーの妙技も光った。

第2番は気分ががらりと変わって、エネルギー全開でアクティブに突き進んできた。辻本の芯の強いアグレッシブなチェロが頼もしい。イケイケだけではなく、中間楽章のしっとりしたハーモニーも美しい。第3楽章で一瞬演奏が一時停止のような状態になったが、そのまま再開。あれは何だったんだろうと想像するに、誰かが何かの事情で先に進めなくなり、それを察知した他のメンバーが待っていたようにも見えた。だとするとそれはそれでスゴいこと。ハプニングの影響を全員で最小限に抑えたこのアンサンブルへの信頼度が上がった。終楽章の結束力と半端ない熱量で万雷の拍手となった。

後半はブラームス最晩年のクラリネットを伴った作品がふたつ。トリオは、ソナタと比べても演奏頻度は少ないが、ソナタに負けず劣らずの名曲だと再認識した。3人の落ち着いた語り合いが聴き手を魅了。互いに慌てず騒がず、相手の言葉にじっくり耳を傾け、それを噛み締めて言葉を返す。そんなやり取りが、深い物語へと誘ってくる。金子のクラリネットの語り口と音色の柔らかさが極上の味わいを醸し出していた。

最後はクラリネット五重奏曲。ブラームスの最高傑作と云われながら、僕のなかでは地味な存在だったが、今夜の演奏で極上の音楽であると思い知った。アンサンブルは緻密できめ細かく、かつ柔軟。得も言われぬ香りを湛えながら5人が心の声を合わせるように陰影の綾を織り成し、大人の魅力をムンムンと放つ。鈴木のヴィオラが濃厚な味わいを聴かせ、辻本のチェロが色香を醸し出す。そして諏訪内のヴァイオリンは、アンサンブル全体をひと際高貴なオーラで彩った。シルクの美音が優美に伸びやかに羽ばたく。彼岸の境地にたどり着いたアンサンブルが静かに羽を休めるようなラストシーンでは、ジーンとしてトリハダが立った。痺れた。

鳴りやまない拍手のなか、諏訪内は司会の舩木篤也氏との短いトークのあと、音楽祭最後のプレゼントと称してF.A.E.ソナタからブラームスが作曲したスケルツォを披露。阪田との熱くて充実したバトルを繰り広げた。

終演は10時になろうとしていた。第3部だけでもこれだけの濃厚で充実した内容。朝から聴いていた人は毎回飛び切りのフルコースを味わったことだろう。次回は挑戦してみようかな・・・

諏訪内晶子 室内楽プロジェクト 第1夜2021.2.25 紀尾井ホール
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲( N響12月演奏会)2020.12.12 東京芸術劇場
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「Andiamo in Italia! ~イターリアへ行こう!」

拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゲーテのドイツ語検定試験 B2... | トップ | 紀尾井レジデント・シリーズ ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

pocknのコンサート感想録2022」カテゴリの最新記事