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モーツァルト・シンガーズ・ジャパン Vol.2《フィガロの結婚》

2021年02月13日 |  pocknのコンサート感想録2021
2月10日(水)モーツァルト・シンガーズ・ジャパン『フィガロの結婚』

王子ホール

【演目】
モーツァルト/「フィガロの結婚」K.492(ハイライト)

【出演】モーツァルト・シンガーズ・ジャパン
アルマヴィーヴァ伯爵:宮本益光/伯爵夫人:澤畑恵美/ケルビーノ:中島郁子/フィガロ:加耒 徹/スザンナ:鵜木絵里/バルトロ&アントニオ:伊藤 純/マルチェリーナ:小泉詠子/バジリオ&クルツィオ:金山京介/バルバリーナ:三井清夏/(ダンス)内田靖子、いしいゆうき/Pf:山口佳代/ナレーション:長谷川初範

【構成・演出】宮本益光 【演出助手・振付】成平有子 【舞台監督】近藤 元


二期会21さんのツイッター上の写真より

昨年9月の「魔法の笛」に続くモーツァルト・シンガーズ・ジャパンによる公演が、王子ホールの主催で行われた。とにかく楽しかった!ピアノ伴奏によるシンプルなステージながら、本格的な振り付けにダンスも加わって、エキサイティングなドタバタ喜劇の楽しさと、何よりも全編から溢れる「愛」を感じた。

ハイライト版でレチタティーヴォは全カットだったが、長谷川初範のミニ解説も交えた味のあるナレーションが、笑いも誘いつつ軽妙にストーリーを浮かび上がらせた。有名なアリアがいろいろカットされて「えっ。。?」と思うこともあったが、上演が進むうちに舞台にどんどんのめり込み、「フィガロ」の世界にどっぷりと浸かった。

その一番の立役者は素晴らしい歌と演技を披露した歌手たち。9人の歌手達は国内外で活躍する若い(一部ベテランも)実力者揃い。それぞれの役に相応しい名唱を聴かせ、抜群の演技を見せてくれた。

簡単に紹介すると… 堂々とした歌で権威を振りかざす宮本の伯爵、気品溢れる歌が心を熱くした澤畑の伯爵夫人、歌も演技も弾けていた中島のケルビーノ、若さ溢れ、艶やかな声が光った加耒のフィガロ、聡明で心優しい歌をたっぷり聴かせた鵜木のスザンナ、貫禄の味わいでバルトロとアントニオの2役をこなした伊藤、濃厚な美声とお色気で魅了した小泉のマルチェリーナ、バジリオとクルツィオの2役で機転の利いた軽やかな歌と演技を楽しませた金山、瑞々しく可憐で下心も覗かせた三井のバルバリーナ…

更に随所に登場するアンサンブルでは、生き生きと輝く歌と、ダンスも交えた振り付けを鮮やかに決め、目と耳を存分に楽しませてくれた。この完成度に至るには相当に稽古を積んだのではないだろうか。

これに花を添えたのがダンサー(内田、石井)によるマイム。ここぞというタイミングで登場人物の影の存在となって心の動きを表現した。ケルビーノが伯爵から身を隠した場所が、内田さんのスカートの中というのは笑えた!

重要なオーケストラパートを、連弾での序曲以外全て一人で受け持った山口の雄弁なピアノも光った。とりわけ耳を引いたのは抒情的な表現。スザンナのアリア「おいで、美しき喜びよ」での色彩豊かで柔らかな表情は、歌と共にピアノにも聴き入ってしまった。ピアノの蓋は半開だったが、歌手達の声量も豊かだし、全開にして鮮明な音色を聴かせた方が良かったと思う。

こうして全てのキャストが一丸となって作り上げた「フィガロ」、モーツァルトのオペラの優れた上演では、「フィガロ」に限らずいつも「愛」が溢れているのを感じるが、今夜もそんな大きな愛がビンビンと伝わってきた。これは何と言ってもモーツァルトの音楽の力だが、今夜の出演者の愛情と情熱たっぷりの演奏と演技がそれを一層強く感じさせた。

そして宮本の演出は、愛と、愛ゆえに生まれる寛容な心をうまく表現した。その決め手と感じたのは、4幕の夜の庭の場面でスザンナが歌うアリア「おいで、美しき喜びよ」。庭に隠れているフィガロにこれみよがしに伯爵に歌う設定のはずの愛の歌に、「フィガロへの想いを込めて歌います」とナレーションが入った。この歌をスザンナのフィガロへの素直なラブソングとして聴くと、モーツァルトがこれほど情愛のこもった美しい歌を書いた意味が心にスッと入ってくる。そして全員揃って迎えたフィナーレ、スザンナが伯爵へ指輪をそっと返す場面からも寛容な心が伝わり、愛と喜びに溢れたシーンにジーンと来てしまった。

コロナ禍にあっても最後のフィガロとスザンナの抱擁シーンをはじめ接触シーンも多く、これを実現するには相当な苦労があったことだろう。おかげで愛の表現に心から共感できた。

満席の客席からは大喝采が止まず、久々にブラボーの掛け声も聴いた。愛と寛容のオペラを今の状況に重ね合わせた人も多かったのではないだろうか。こんなに楽しく幸せな気持ちにさせてくれたモーツァルト・シンガーズ・ジャパンのメンバーに心からの賞賛と感謝を送りたい!

キハラ良尚&モーツァルト・シンガーズ・ジャパン『魔法の笛』(2020.9.5 かつしかシンフォニーヒルズ)

コロナ禍で演奏会の中止が続く欧米、やっている日本
マルチェリーナ役で出演した小泉詠子さんの歌による「鯨法会」をYouTubeで視聴

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