1月10日(金)仲道郁代(フォルテピアノ&ピアノ)
~ミーツ・ベートーヴェンシリーズ vol.1(ベートーヴェン 生誕250周年記念)~
東京芸術劇場
【曲目】
~フォルテピアノ(シュタイン製)~
♪ ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 Op.13「悲愴」
♪ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2「月光」~第1楽章
~フォルテピアノ(ブロードウッド製)~
♪ ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 Op.109
~ヤマハCFX~
♪ ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2「月光」
♪ ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」
【アンコール】
♪ エリーゼのために(3台の楽器の弾きまわし)
生誕250年のベートーヴェンイヤーは、ベートーヴェンをライフワークにしている仲道さんが3台のピアノを使ってベートーヴェンを演奏するというユニークなコンサートで始まった。以前、3台のモダン楽器を弾くリサイタルは聴いたが、今回は3台のうちの2台はフォルテピアノで、モーツァルトも絶賛したというシュタイン製と、ベートーヴェンの作曲の可能性を劇的に高めたというブロードウッド製。どちらも仲道さん所蔵の楽器が運ばれた。3台目はヤマハのモダン。モダンとピリオドの聴き比べだけでなく、ピリオド同士の聴き比べもできる貴重な機会。ピリオド楽器にも大きな関心を寄せ、演奏に取り組んでいる仲道さんならではの企画だ。
演奏の前に、ベートーヴェン研究家の平野昭氏とピリオド楽器の制作や修復を手がける太田垣至氏を交えたトークレクチャーがあった。楽器の特徴や変遷について興味深い話が色々聞けたが、なかでも印象に残ったのは仲道さんの話。ベートーヴェンのソナタは後期になるとロマン的な傾向が濃くなってくるが、これはベートーヴェンの作曲技法や内的な変化のためだけでなく、そうした表現ができる楽器が現れたことが大きいということと、ベートーヴェンは譜面にアーティキュレーションの指示などを細かく書き込んで、どのように表現すべきかを正確に伝えようとしているという話。ベートーヴェンが楽器にどんな表現を託したのか、仲道さんがその楽器を実際に演奏して体得したものが聴ける機会でもある。
まずはシュタイン製で演奏した「悲愴」と「月光」第1楽章、音量は小さいがとても雄弁に語りかけてきた。決して大袈裟な表現ではなく、聴かせるべき声部に自然な光が当たり、その光が多彩な色を備えていることに驚いた。
シュタインから大幅に「進化した」というブロードウッド製の楽器では後期の作品109を聴いた。高貴とも云える雅で芯のある響きが印象的だった。仲道さんはこの楽器から無理なく優美で気高い精神性を引き出した。第3楽章のこぼれんばかりの情感の表現で、内声により存在感が聴こえたのはフォルテピアノでの演奏だったからかも。
最後はヤマハのモダンピアノで2曲。「月光」では第1楽章の3連符の繰り返しが、微妙に表情を変えながら寄せては返す波のように聞こえて印象的だった。「ワルトシュタイン」はモダンピアノの能力を最大限に発揮したダイナミックな表現が際立つ一方で、苦悩や焦燥感など、この曲ではあまり意識していなかった深刻な気分が呼び起こされることも多かった。第3楽章で、単なる音量という次元を越えた圧倒的なボリューム感を体験すると、現代のピアノが「楽器の王様」と呼ばれる訳も納得した。
フォルテピアノを、聴き慣れた現代のピアノの音と比較して聴いてしまう私達は、ベートーヴェンの時代の人が得たのと同じ種類の感動をフォルテピアノから得ることは困難だろう。どうしてもモダン楽器の響きが頭の中で重なり、フォルテピアノの音を「補正」して聴いてしまうからだ。そんなモダン楽器の影を遠ざけてフォルテピアノの魅力を本当に味わうには、サロンのような小さな会場で、弾き比べではなくフォルテピアノ一台だけの演奏をじっくり聴くことだろう。今夜は入門編ということでフォルテピアノの音を楽しめたので、次はそんなリサイタルを聴いてみたい。
<仲道郁代 ピアノリサイタル~第29回 交詢社「音楽と食事の夕べ」~ 2019.12.21 交詢社食堂
<仲道郁代(Pf)
~3台のピアノの響きとともに~ 2017.4.13 なかのZERO大ホール
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
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~ミーツ・ベートーヴェンシリーズ vol.1(ベートーヴェン 生誕250周年記念)~
東京芸術劇場
【曲目】
~フォルテピアノ(シュタイン製)~
♪ ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 Op.13「悲愴」
♪ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2「月光」~第1楽章
~フォルテピアノ(ブロードウッド製)~
♪ ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 Op.109
~ヤマハCFX~
♪ ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2「月光」
♪ ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」
【アンコール】
♪ エリーゼのために(3台の楽器の弾きまわし)
生誕250年のベートーヴェンイヤーは、ベートーヴェンをライフワークにしている仲道さんが3台のピアノを使ってベートーヴェンを演奏するというユニークなコンサートで始まった。以前、3台のモダン楽器を弾くリサイタルは聴いたが、今回は3台のうちの2台はフォルテピアノで、モーツァルトも絶賛したというシュタイン製と、ベートーヴェンの作曲の可能性を劇的に高めたというブロードウッド製。どちらも仲道さん所蔵の楽器が運ばれた。3台目はヤマハのモダン。モダンとピリオドの聴き比べだけでなく、ピリオド同士の聴き比べもできる貴重な機会。ピリオド楽器にも大きな関心を寄せ、演奏に取り組んでいる仲道さんならではの企画だ。
演奏の前に、ベートーヴェン研究家の平野昭氏とピリオド楽器の制作や修復を手がける太田垣至氏を交えたトークレクチャーがあった。楽器の特徴や変遷について興味深い話が色々聞けたが、なかでも印象に残ったのは仲道さんの話。ベートーヴェンのソナタは後期になるとロマン的な傾向が濃くなってくるが、これはベートーヴェンの作曲技法や内的な変化のためだけでなく、そうした表現ができる楽器が現れたことが大きいということと、ベートーヴェンは譜面にアーティキュレーションの指示などを細かく書き込んで、どのように表現すべきかを正確に伝えようとしているという話。ベートーヴェンが楽器にどんな表現を託したのか、仲道さんがその楽器を実際に演奏して体得したものが聴ける機会でもある。
まずはシュタイン製で演奏した「悲愴」と「月光」第1楽章、音量は小さいがとても雄弁に語りかけてきた。決して大袈裟な表現ではなく、聴かせるべき声部に自然な光が当たり、その光が多彩な色を備えていることに驚いた。
シュタインから大幅に「進化した」というブロードウッド製の楽器では後期の作品109を聴いた。高貴とも云える雅で芯のある響きが印象的だった。仲道さんはこの楽器から無理なく優美で気高い精神性を引き出した。第3楽章のこぼれんばかりの情感の表現で、内声により存在感が聴こえたのはフォルテピアノでの演奏だったからかも。
最後はヤマハのモダンピアノで2曲。「月光」では第1楽章の3連符の繰り返しが、微妙に表情を変えながら寄せては返す波のように聞こえて印象的だった。「ワルトシュタイン」はモダンピアノの能力を最大限に発揮したダイナミックな表現が際立つ一方で、苦悩や焦燥感など、この曲ではあまり意識していなかった深刻な気分が呼び起こされることも多かった。第3楽章で、単なる音量という次元を越えた圧倒的なボリューム感を体験すると、現代のピアノが「楽器の王様」と呼ばれる訳も納得した。
フォルテピアノを、聴き慣れた現代のピアノの音と比較して聴いてしまう私達は、ベートーヴェンの時代の人が得たのと同じ種類の感動をフォルテピアノから得ることは困難だろう。どうしてもモダン楽器の響きが頭の中で重なり、フォルテピアノの音を「補正」して聴いてしまうからだ。そんなモダン楽器の影を遠ざけてフォルテピアノの魅力を本当に味わうには、サロンのような小さな会場で、弾き比べではなくフォルテピアノ一台だけの演奏をじっくり聴くことだろう。今夜は入門編ということでフォルテピアノの音を楽しめたので、次はそんなリサイタルを聴いてみたい。
<仲道郁代 ピアノリサイタル~第29回 交詢社「音楽と食事の夕べ」~ 2019.12.21 交詢社食堂
<仲道郁代(Pf)
~3台のピアノの響きとともに~ 2017.4.13 なかのZERO大ホール
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
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