10月24日（金）第77回日本音楽コンクール本選会（声楽部門）
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【出場者と曲目】
1．市原 愛/Pf:越知晴子
早坂文雄:うぐひす/ ドビュッシー:パントマイム、アリエルのロマンス/ メシアン:復活 他
2．朴 瑛実/Pf:千葉かほる
ヴォルフ:眠れる幼子イエス、眠りに寄す、なぐさめはどこに/ 畑中良輔:「八木重吉による五つの歌」
3. 松原 友/Pf:藤江圭子
シューベルト:アイキュロスの断片から/ 石渡日出夫:汚れちまった悲しみに/ ヴォルフ:開く事を知らぬ恋 他
4. 馬原裕子/Pf:森 裕子
別宮貞雄:さくら横ちょう/ ツェムリンスキ:乙女の嘆き/ コルンゴルド:「３つの歌」 他
5. 友清 崇/Pf:伊坪淑子
服部正:野の羊/ ブラームス:「四つの厳粛な歌」
6. 原田 圭/Pf:小松紀子
石桁真礼生:汚れた掌/ ブラームス:「四つの厳粛な歌」
7. 相田麻純/Pf:東井美佳
團伊玖磨:朝明/ ロッシーニ:アラゴネーゼ、競漕後のアンゾレータ、踊り
8. 岩下晶子/Pf:千葉かほる
ローレム:朝早く、はるかーはるかー彼方で、小哀歌/ 川口耕平:よかった 他
9. 山崎法子/Pf:藤川志保
ブリテン:いざ華麗なる音楽で讃えよう/ 高田三郎:市の花屋/ ヴォルフ:お入りなさい、気高い兵隊さん 他
10.松井亜希/Pf:山田剛史
パーセル:もし音楽が愛の糧であるなら/ ウォルトン:「３つの歌」/ 高田三郎:市の花屋
４年振りに聴いた音コン声楽部門の本選。97人の応募者のうち2次予選に26人が進み、本選に残ったのは10人。今回は歌曲の回なので本選はピアノ伴奏によるミニリサイタリ形式で行われた。本選会に漂う緊張した引き締まった空気、出演者から感じる一種独特の気合いが聴く側としては心地よい。本選まで進んだ10人のレベルはさすがに高く、優劣つけ難いと思える出場者が何人もいたが、中でも印象に残った6人の出場者の感想を…
朴 瑛実さん
芸大のバッハカンタータクラブの演奏会で何度かソロを聴いたことがある朴さんがこの本選会に出場すると知ったのが今回本選会を聴きに来たきっかけ。朴さんの歌はとても心に温かいものを届けてくれる。細やかな感性で詩の深いところにある魂を優しく呼び起こしてくれるような歌唱には寄り添いたくなる親近感を覚えた。
馬原裕子さん
とりわけ馬原さんの磨きのかかった艶やかな美しい声が印象に残った。細かいところまで緻密にコントロールが行き渡り完成度の高い歌唱からは高貴な香りを感じた。
原田 圭さん
10人の出場者のうち男性は3人。そのうちの一人、原田さんの明晰に響くバリトンの声に引かれた。表現の幅が広く、ブラームスの「四つの厳粛な歌」での深くコントラストに富んだダイナミックな歌唱に大器を感じた。更に繊細さが加わるのが楽しみ。
相田麻純さん
團伊玖磨の歌の第一声を聴いたとたんにオーラのようなものが伝わってきた。万人を引きつけるような鮮やかに磨かれた声と彫りの深い明快な表現力に魅了された。ロッシーニでの自然な息遣いやコントロールも素晴らしく、スポットライトを照らされたようなソロとしての輝きを放ち、オペラのアリアに酔いしれる感覚を味わった。ロッシーニの華やかな歌、とりわけアンコールピースとしても有名な「踊り」を最後に置いて盛り上げたその選曲に審査員がどんな印象を持つかが少々心配に…
岩下晶子さん
相田さんの歌に酔ったすぐ後に、またまた違う種類の魅力を届けてくれた岩下さんもソリストとしてのオーラを持っていた。ローレムという作曲家の名前は初めて聞くが、そんな耳に馴染みのない歌の数々に夢中で聴き入った。柔らかく美しい声でそれぞれの歌を繊細かつ鮮やかに歌い上げ、燐とした気高い空気を伝えた。川口耕平の「よかった」も思わず涙が出そうなほど心に染みて本当に「良かった」。岩下さんの歌は自分のフィーリングにも最もマッチしていて「聴衆賞」を投じた。朴 瑛実さんの時にも伴奏を務めた千葉かほるさんの、心のひだを優しく撫でるような情感たっぷりのピアノもいい。
.松井亜希さん
本選会最後の「取り」となった松井さんの歌も自分のフィーリングにとてもマッチしていて気に入った。羽化したばかりの蝶の羽のようなデリケートな声で滑らかに歌の心を描いて行く。パーセルでの優雅な気品、ウォルトンでは、柔らかな光が空気の揺らぎで照らすものの色合いを微妙に変化させるような繊細さが絶品。「歌曲」の本選会にふさわしいエンディングとなった。
…で、僕なりに順位をつけさせていただいた。それぞれタイプが違う歌手でそれぞれの世界で抜群の歌を聴かせてくれたので、この３人なら誰が１位になっても嬉しいなと思った。
1位：相田麻純さん
2位：岩下晶子さん （＋聴衆賞）
3位：松井亜希さん
そして終演後ロビーに貼り出された実際の審査結果は…
1位：岩下晶子さん
2位：市原 愛さん
3位：馬原裕子さん
聴衆賞：松原 友さん
という結果だった。
岩下さんが1位になったのはすごく嬉しかった。相田さんと松井さんは入賞は逃したが立派な入選。発表後、ロビーで仲間に囲まれているお二人の胸にもピカピカの「メダル」がかかっているのが見えるようだった。今夜の出演者みんなのこれからの活躍を大いに楽しみにしています。
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【出場者と曲目】
1．市原 愛/Pf:越知晴子
早坂文雄:うぐひす/ ドビュッシー:パントマイム、アリエルのロマンス/ メシアン:復活 他
2．朴 瑛実/Pf:千葉かほる
ヴォルフ:眠れる幼子イエス、眠りに寄す、なぐさめはどこに/ 畑中良輔:「八木重吉による五つの歌」
3. 松原 友/Pf:藤江圭子
シューベルト:アイキュロスの断片から/ 石渡日出夫:汚れちまった悲しみに/ ヴォルフ:開く事を知らぬ恋 他
4. 馬原裕子/Pf:森 裕子
別宮貞雄:さくら横ちょう/ ツェムリンスキ:乙女の嘆き/ コルンゴルド:「３つの歌」 他
5. 友清 崇/Pf:伊坪淑子
服部正:野の羊/ ブラームス:「四つの厳粛な歌」
6. 原田 圭/Pf:小松紀子
石桁真礼生:汚れた掌/ ブラームス:「四つの厳粛な歌」
7. 相田麻純/Pf:東井美佳
團伊玖磨:朝明/ ロッシーニ:アラゴネーゼ、競漕後のアンゾレータ、踊り
8. 岩下晶子/Pf:千葉かほる
ローレム:朝早く、はるかーはるかー彼方で、小哀歌/ 川口耕平:よかった 他
9. 山崎法子/Pf:藤川志保
ブリテン:いざ華麗なる音楽で讃えよう/ 高田三郎:市の花屋/ ヴォルフ:お入りなさい、気高い兵隊さん 他
10.松井亜希/Pf:山田剛史
パーセル:もし音楽が愛の糧であるなら/ ウォルトン:「３つの歌」/ 高田三郎:市の花屋
４年振りに聴いた音コン声楽部門の本選。97人の応募者のうち2次予選に26人が進み、本選に残ったのは10人。今回は歌曲の回なので本選はピアノ伴奏によるミニリサイタリ形式で行われた。本選会に漂う緊張した引き締まった空気、出演者から感じる一種独特の気合いが聴く側としては心地よい。本選まで進んだ10人のレベルはさすがに高く、優劣つけ難いと思える出場者が何人もいたが、中でも印象に残った6人の出場者の感想を…
朴 瑛実さん
芸大のバッハカンタータクラブの演奏会で何度かソロを聴いたことがある朴さんがこの本選会に出場すると知ったのが今回本選会を聴きに来たきっかけ。朴さんの歌はとても心に温かいものを届けてくれる。細やかな感性で詩の深いところにある魂を優しく呼び起こしてくれるような歌唱には寄り添いたくなる親近感を覚えた。
馬原裕子さん
とりわけ馬原さんの磨きのかかった艶やかな美しい声が印象に残った。細かいところまで緻密にコントロールが行き渡り完成度の高い歌唱からは高貴な香りを感じた。
原田 圭さん
10人の出場者のうち男性は3人。そのうちの一人、原田さんの明晰に響くバリトンの声に引かれた。表現の幅が広く、ブラームスの「四つの厳粛な歌」での深くコントラストに富んだダイナミックな歌唱に大器を感じた。更に繊細さが加わるのが楽しみ。
相田麻純さん
團伊玖磨の歌の第一声を聴いたとたんにオーラのようなものが伝わってきた。万人を引きつけるような鮮やかに磨かれた声と彫りの深い明快な表現力に魅了された。ロッシーニでの自然な息遣いやコントロールも素晴らしく、スポットライトを照らされたようなソロとしての輝きを放ち、オペラのアリアに酔いしれる感覚を味わった。ロッシーニの華やかな歌、とりわけアンコールピースとしても有名な「踊り」を最後に置いて盛り上げたその選曲に審査員がどんな印象を持つかが少々心配に…
岩下晶子さん
相田さんの歌に酔ったすぐ後に、またまた違う種類の魅力を届けてくれた岩下さんもソリストとしてのオーラを持っていた。ローレムという作曲家の名前は初めて聞くが、そんな耳に馴染みのない歌の数々に夢中で聴き入った。柔らかく美しい声でそれぞれの歌を繊細かつ鮮やかに歌い上げ、燐とした気高い空気を伝えた。川口耕平の「よかった」も思わず涙が出そうなほど心に染みて本当に「良かった」。岩下さんの歌は自分のフィーリングにも最もマッチしていて「聴衆賞」を投じた。朴 瑛実さんの時にも伴奏を務めた千葉かほるさんの、心のひだを優しく撫でるような情感たっぷりのピアノもいい。
.松井亜希さん
本選会最後の「取り」となった松井さんの歌も自分のフィーリングにとてもマッチしていて気に入った。羽化したばかりの蝶の羽のようなデリケートな声で滑らかに歌の心を描いて行く。パーセルでの優雅な気品、ウォルトンでは、柔らかな光が空気の揺らぎで照らすものの色合いを微妙に変化させるような繊細さが絶品。「歌曲」の本選会にふさわしいエンディングとなった。
…で、僕なりに順位をつけさせていただいた。それぞれタイプが違う歌手でそれぞれの世界で抜群の歌を聴かせてくれたので、この３人なら誰が１位になっても嬉しいなと思った。
1位：相田麻純さん
2位：岩下晶子さん （＋聴衆賞）
3位：松井亜希さん
そして終演後ロビーに貼り出された実際の審査結果は…
1位：岩下晶子さん
2位：市原 愛さん
3位：馬原裕子さん
聴衆賞：松原 友さん
という結果だった。
岩下さんが1位になったのはすごく嬉しかった。相田さんと松井さんは入賞は逃したが立派な入選。発表後、ロビーで仲間に囲まれているお二人の胸にもピカピカの「メダル」がかかっているのが見えるようだった。今夜の出演者みんなのこれからの活躍を大いに楽しみにしています。
