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MAROワールドVol.40 "バッハ Part IV" by 篠崎“まろ”史紀 & MAROカンパニー

2021年01月11日 |  pocknのコンサート感想録2021
2021年1月10日(日)夜公演
MAROワールドVol.40 "バッハ Part IV" by 篠崎“まろ”史紀 & MAROカンパニー

J.S.BACH ~協奏曲集~
王子ホール


【曲目】
1.ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調 BWV1048
2.ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV1042 Vn:小林壱成
3.ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調 BWV1051
♪ ♪ ♪
4.ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV1041 Vn:水谷 晃
5.ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲ハ短調 BWV1060 Vn:まろ/Ob:古部賢一
6.2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043 Vn:まろ、大関万結
【アンコール】
♪ 管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068~アリア

【演奏】篠崎“まろ”史紀(Vn)+<MAROカンパニー>Vn:大江 馨、小林壱成、﨑谷直人、白井 篤、水谷 晃/Vla:佐々木 亮、鈴木康浩/Vc:桑田 歩、伊東 裕/Cb:菅沼希望/Ob:古部賢一/Cem:山田武彦/(スペシャルゲスト)Vn:大関万結

2021年最初のコンサートは、3年続けて夫婦でMAROワールドのニューイヤーコンサート。テーマは大好きなバッハ。またもやの緊急事態宣言の最中だったが、予定通りのプログラムで無事に行われた。いつもの楽しいトークは大幅に縮小、メンバーへの無茶ぶりもなかったが、それでも2時間半、MAROワールドならではの楽しく、熱く、濃い時間を堪能した。

それは最初のブランデンブルク協奏曲から全開!落ち着いたテンポと充実した響きのなかに、いくつものドラマが現れる。それは、プレイヤー達のスリリングな対話や駆け引きでもたらされる。第2楽章でチェンバロの山田さんが新年らしいサプライズを入れたり、曲の最後でジャズのようにエンディングを引き延ばして場を盛り上げる「遊び」があったり・・・ これらが事前の打ち合わせなしで、プレイヤー同士の表情や息遣いで即興的に行われるというまろさんの話にビックリ!

MAROワールドの魅力はやっぱりこのライブならではのサプライズにあり、それがポリシーのように一貫して存在する。プレイヤー同士の親しげな語り合いから、やんちゃないたずら、挑発まで、あらゆるレベルの働きかけがある。耳だけでなく、メンバーの表情や体の動きなど、目でも楽しませてくれる。これぞアンサンブルの、MAROカンパニーの醍醐味だ。そこには「バッハはこうあらねばならない!」なんて縛りは存在しない。山田さんの、通奏低音とはかけ離れたチェンバロも大いに耳を引いたし、メンバーは音楽をいかに楽しく魅力的に聴き手に届けるかに徹し、「禁じ手」と云われそうなこともどんどんやって、バッハに真面目でお堅いイメージを持っている聴き手の心をどんどんほぐし、バッハの音楽がいかに楽しく、ウィットに富み、そして愛に溢れているかを伝える。

これができるのは、メンバーみんなが、それぞれ演奏スタイルは違ってもバッハの曲を心から愛し、それを共有しているからだろうし、誰もが超一流の名手であるからだろう。3回の演奏会のソロコンチェルトのソリストを、全ヴァイオリニストでクジで決めるなんてことが出来てしまうこと自体すごいが、そこにMAROワールドの、みんなが一緒に演奏会を作り上げて行こうというポリシーが感じられる。

ソリストが替わることで、ソロパートだけでなく演奏全体がガラリと変わるのも面白かった。小林さんがソロを担当したイ短調のコンチェルトは、キリっと引き締まったフォルムのなかに潤いが満ちていたし、水谷さんがソロを担ったホ長調のコンチェルトは軽やかで溌剌、即興的だった。まろさんが古部さんと演奏した二重協奏曲からは気品と貫禄、そして愛情が伝わってきた。

そして更なるサプライズが!アウシュヴィッツ強制収容所で救いの光をもたらしたアルマ・ロゼと、その父親のアルノルト・ロゼとの共演によるSP盤の録音にちなんで、まろさんの弟子でもある若きホープの大関万結さんが登場、アルマの勇気ある行動で音楽によってアウシュヴィッツに救いをもたしたことを引き合いに、「音楽は不要不急なものでありません。この困難な状況のなかでも、私たち演奏家は常に前に進んで行きます。」というメッセージとともに、ドッペルコンチェルトを師弟で演奏した。気高く、熱く、愛に溢れていた。この曲でカデンツァが入るのは意外だったが、これはアルマとアルノルトがSP盤に残したヨーゼフ・ヘルメスベルガーによるものとのこと。スリリングで白熱したデュオに圧倒された。男ばかりのMAROカンパニーが、大関さんを迎えて俄然熱く盛り上がった!

アンコールのアリアでは、ハイドンの告別シンフォニーのようにプレイヤーが一人ずつ静かに去り、照明も落ちて行く演出。最後は暗くなったステージに誰もいなくなったが、総勢15名のプレイヤー達の姿が心に浮かび上がった。コロナ禍にあってもステージで熱い演奏が繰り広げられ、今夜のように大勢の聴衆でホールが満たされ、素晴らしい音楽を共有し続けられることをひたすら願った。

MAROワールド Vol.38  “ベートーヴェン Part Ⅴ” ~2020.10.16 王子ホール~
MAROワールドVol.37 by 篠崎“まろ”史紀 & MAROカンパニー ~2020.1.11 王子ホール~

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