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紀尾井ホール室内管弦楽団(指揮:ジョナサン・コーエン/Vn:青木尚佳)

2022年04月26日 | pocknのコンサート感想録2022
4月22日(金)ジョナサン・コーエン 指揮 紀尾井ホール室内管弦楽団
~第130回定期演奏会~
紀尾井ホール


【曲目】
1.モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲 K.527
2.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61
【アンコール】
 ♪ バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番BWV1005~ラルゴ
Vn:青木尚佳
3.モーツァルト/交響曲第39番変ホ長調 K.543
【アンコール】
♪ モーツァルト/「エジプトの王ターモス」K.345(336a)~アンダンテ(第2幕への幕間音楽)

定期演奏会を指揮する予定だったトレヴァー・ピノックが病気のために来日できなくなり、指揮者が代わり、プログラムも大幅に変更になった。そこで登場することになったヴァイオリンの青木尚佳さんがソロを弾いたベートーヴェンの協奏曲が、今夜の白眉となった。

尚佳さんの、作品の様式感をいささかも揺るがすことなく朗々と伸び伸びと奏でるヴァイオリンに、導入から引き付けられた。堂々とした格調高い佇まいを呈し、全ての音が、フレーズが、生き生きと息づいている。様式美を湛えながら、今この瞬間に音楽が生まれ出ている新鮮さに溢れている。気高い美音のヴァイオリンは、ネイビーからウルトラマリン系ブルーのグラデーションの尚佳さんの素敵なドレスのイメージにピッタリ。

第2楽章は音楽の最もピュアなエッセンスを掬い上げてそっと届け、第3楽章は、落ち着きを保ちながらも高揚感を高め、天へと登り詰めていく幸福感にトリハダ立ちまくり。コーエン指揮の紀尾井ホール室内管も潤いのあるサポートを聴かせ、ピカイチの完成度の充実したベートーヴェンだった。

アンコールのバッハも心に沁みた。尚佳さんは聴く度に器が大きくなり、世界を広げていることがありありと感じられる。ステージに立つ尚佳さんは、実際の背丈よりも大きく堂々として見えるのは、そんな自信の表れだろう。益々目の離せないアーティストだ。

コーエン指揮紀尾井ホール室内管による2曲のモーツァルトも好演だった。「ドン・ジョヴァンニ」序曲はパワフルで勢いがあり、ドライブ感がリアルでドラマを感じさせた。39番のシンフォニーは、勢いに柔軟さも加わり、フレーズごとに丁寧に処理しつつ、自然な呼吸で生き生きと鮮やかな演奏を繰り広げた。やるべきこと、聴かせるべきところをしっかりと表現し、全体としての仕上がりも上々。

ただ、これだけでは感動に結びつかないのがモーツァルトの難しさでもある。ここに、香りとかエレガントな味付け、遊びの要素などが欲しい。指揮者のセンスや個性が問われるところだが、コーエンという未知の指揮者については、もうひとつ明確なイメージを掴むことはできなかった。

紀尾井ホールはよく出かける大切なコンサートホールだが、何度も流れる感染対策の協力を求める長くて細かいアナウンスはいただけない。殆ど意味がないと思う時差退場では、場外に出てからのこともあれこれ指示され、辟易だ。スタッフは相変わらずフェイスシールドで顔面を固め、クロークやバーコーナーもクローズが続く。演奏会は心のオアシス。アナウンスは必要最小限にとどめ、豊かな気持ちで過ごせるよう、そろそろ過剰な感染対策は止めて通常の運用に戻して頂きたい。

青木尚佳・三井静・大井駿ピアノトリオ 2021.7.27 Hakuju Hall
P.ヤルヴィ指揮 N響(Vn:青木尚佳) 2021.6.17 サントリーホール
阪 哲朗 指揮 紀尾井ホール室内管弦楽団 2022.2.11 紀尾井ホール

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