7月4日(火)ダニエル・オッテンザマー(Cl)/シュテファン・コンツ(Vc)/クリストフ・トラクスラー(Pf)
~ダニエル・オッテンザマー クラリネット・トリオ・アンソロジー~
王子ホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/三重奏曲第4番変ロ長調 Op.11 「街の歌」
2.ロベルト・カーン/セレナードヘ短調 Op.73
3.ロバート・ムチンスキ/幻想的三重奏曲 Op.26
4.イサン・ユン(尹伊桑)/Rencontre(邂逅)
5.ブラームス/クラリネット三重奏曲イ短調 Op.114
【アンコール】
1.ニーノ・ロータ/クラリネット三重奏曲~第3楽章
2.パウル・ユオン/4つのトリオ・ミニアチュール~第1曲「夢」Op.18-3
オッテンザマーのクラリネットが聴けるというので出かけたコンサートは、超人的な3人によるアンサンブルの妙に圧倒されまくりだった。3人は、積極・果敢な姿勢で一丸となって、エキサイティングな音楽を作る熱いパッションに、音楽を楽しむゆとりも加わった最高のエンターテインメントを実現した。メンバーによる分かりやすい曲目紹介も、演奏会をより楽しくしてくれた。
全身にエネルギーをみなぎらせ、嬉々とした表情で登場した3人のアーティストは、演奏を始める前からオーラを放っていた。そして始まったベートーヴェンの「街の歌」が、冒頭から聴衆の心を鷲掴みにした。3人はそれぞれが個性豊かな名役者だ。ベートーヴェンの音楽をどう料理するか手の内を明かし合い、3つの感性が共鳴し合ってドラマを作り上げて行く。演奏のどこを切り取っても今、正にこの場で音楽が生まれ出ているように新鮮で、喜びに溢れている。楽節が換わるときの間や、楽章間の間も、彼らのなかでは音楽が鳴っていて、それに心の耳を傾け合って音楽を共有し、次のシーンへと繋げる。「街の歌」のテーマが変奏を繰り広げる第3楽章は、幼なじみという3人が童心に帰って屈託なくはしゃいで踊りまわっているように楽しかった。
馴染みのあるベートーヴェンの音楽が、初めて聴くように新鮮に響いた後に演奏した3つの作品は、初めて聴いたのに馴染みのある曲のように感じられた。カーンのセレナードは緻密に書かれたロマンティシズムが熱く炸裂し、ムチンスキのトリオは、両端楽章のはち切れんばかりのごきげんな即興演奏的テイストと、透徹として静謐な中間楽章との対比が見事、そして尹伊桑の「出会い」は、尹の作品にいつも感じる暗く深刻に纏わりつく絶望的な「恨」のスピリッツではなく、能動的な生命力が心に飛び込んできた。
最後のブラームスのトリオが、ブラームス最晩年の作品から滲み出る渋さや重さよりも、そこから解放された軽やかさ、未来に向かって羽ばたいて行く初々しい力強さが感じられたのも、このアンサンブルが作品に命を吹き込み、息づかせていることの証しと云っていい。
どんな作品でも「オッテンザマー・トリオ」は、音楽のエッセンスを瞬時に共有し、豊かなインスピレーションを引き出し、綱渡り的なリスクをものともせず、何が起こるか予想もつかないスリリングな演奏で聴き手を非日常のワクワク感の中に誘ってくれる。これこそ室内楽の醍醐味であり、真骨頂と云えよう。
これを実現するには、演奏者のずば抜けた技量が必要なわけで、微弱音から力強い音まで縦横無尽に飛び回るオッテンザマーのクラリネット、果敢に深く斬りこむコンツのチェロ、飛び切りの美音とキレッキレのタッチで目から鱗のトラクスラーのピアノと、それぞれのプレイヤーが卓越したパフォーマンスを聴かせてくれたが、今夜は、彼らが意気投合して生み出された世界最高のトリオの演奏を堪能した。
ロリン・マゼール指揮NHK交響楽団(Cl:ダニエル・オッテンザマー)~2012.10.25 サントリーホール~
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1.ベートーヴェン/三重奏曲第4番変ロ長調 Op.11 「街の歌」
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5.ブラームス/クラリネット三重奏曲イ短調 Op.114
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1.ニーノ・ロータ/クラリネット三重奏曲~第3楽章
2.パウル・ユオン/4つのトリオ・ミニアチュール~第1曲「夢」Op.18-3
オッテンザマーのクラリネットが聴けるというので出かけたコンサートは、超人的な3人によるアンサンブルの妙に圧倒されまくりだった。3人は、積極・果敢な姿勢で一丸となって、エキサイティングな音楽を作る熱いパッションに、音楽を楽しむゆとりも加わった最高のエンターテインメントを実現した。メンバーによる分かりやすい曲目紹介も、演奏会をより楽しくしてくれた。
全身にエネルギーをみなぎらせ、嬉々とした表情で登場した3人のアーティストは、演奏を始める前からオーラを放っていた。そして始まったベートーヴェンの「街の歌」が、冒頭から聴衆の心を鷲掴みにした。3人はそれぞれが個性豊かな名役者だ。ベートーヴェンの音楽をどう料理するか手の内を明かし合い、3つの感性が共鳴し合ってドラマを作り上げて行く。演奏のどこを切り取っても今、正にこの場で音楽が生まれ出ているように新鮮で、喜びに溢れている。楽節が換わるときの間や、楽章間の間も、彼らのなかでは音楽が鳴っていて、それに心の耳を傾け合って音楽を共有し、次のシーンへと繋げる。「街の歌」のテーマが変奏を繰り広げる第3楽章は、幼なじみという3人が童心に帰って屈託なくはしゃいで踊りまわっているように楽しかった。
馴染みのあるベートーヴェンの音楽が、初めて聴くように新鮮に響いた後に演奏した3つの作品は、初めて聴いたのに馴染みのある曲のように感じられた。カーンのセレナードは緻密に書かれたロマンティシズムが熱く炸裂し、ムチンスキのトリオは、両端楽章のはち切れんばかりのごきげんな即興演奏的テイストと、透徹として静謐な中間楽章との対比が見事、そして尹伊桑の「出会い」は、尹の作品にいつも感じる暗く深刻に纏わりつく絶望的な「恨」のスピリッツではなく、能動的な生命力が心に飛び込んできた。
最後のブラームスのトリオが、ブラームス最晩年の作品から滲み出る渋さや重さよりも、そこから解放された軽やかさ、未来に向かって羽ばたいて行く初々しい力強さが感じられたのも、このアンサンブルが作品に命を吹き込み、息づかせていることの証しと云っていい。
どんな作品でも「オッテンザマー・トリオ」は、音楽のエッセンスを瞬時に共有し、豊かなインスピレーションを引き出し、綱渡り的なリスクをものともせず、何が起こるか予想もつかないスリリングな演奏で聴き手を非日常のワクワク感の中に誘ってくれる。これこそ室内楽の醍醐味であり、真骨頂と云えよう。
これを実現するには、演奏者のずば抜けた技量が必要なわけで、微弱音から力強い音まで縦横無尽に飛び回るオッテンザマーのクラリネット、果敢に深く斬りこむコンツのチェロ、飛び切りの美音とキレッキレのタッチで目から鱗のトラクスラーのピアノと、それぞれのプレイヤーが卓越したパフォーマンスを聴かせてくれたが、今夜は、彼らが意気投合して生み出された世界最高のトリオの演奏を堪能した。
ロリン・マゼール指揮NHK交響楽団(Cl:ダニエル・オッテンザマー)~2012.10.25 サントリーホール~
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