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11月B定期〈指揮:イルジー・コウト)

2005年11月23日 | N響公演の感想(~2016)
11月23日(水)イルジー・コウト指揮 NHK交響楽団
《11月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1.モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
2.モーツァルト/協奏交響曲変ホ長調K.364
Vn:堀 正文/Vla:店村眞積
3.ブラームス/交響曲第4番ホ短調Op.98


今夜のN響は素晴らしかった。落ちつきのある温かく包みこむような響き、無理のない必然から生まれてくるようなドラマ性・・・ 指揮のコウトは派手ではないし、日本ではそれ程注目されてはいないかも知れないが、この指揮者が発する「気」のようなものをN響が肌で感じ取り、素晴らしい音を醸し出した。

「フィガロ」はコンサートピースとしてではなく、まさしく「オペラの序曲」という雰囲気が伝わる演奏。暗い劇場でオケピットから沸きあがってくるような、あたたかで奥行きのある音がした。何だかヨーロッパの古い劇場にいるような気分になる「フィガロ」だった。

協奏交響曲はN響のソロ・コンマスとソロ・ヴィオリストによる素敵な演奏だった。堀さんの何とも自然な呼吸と共に奏でられるヴァイオリンの心地よさ、森の小鳥のさえずりのような柔らかく美しい音色、瑞々しく、微笑みを湛えた優雅な演奏。店村さんのヴィオラは深い語り口が魅力。陰影に富み、幅の広い包容力のある演奏にしびれた。2人のコンビネーションも抜群。自然体で歌い、語り、本当に演奏を楽しんでいる余裕が頼もしい。コウト指揮N響も素晴らしい。滑らかな流れ、控えめに明かりを灯しているような温かなハーモニーが、全体の色調に落ちつきと統一感を与える。曲が終わったあと仲間のN響メンバーの拍手に笑顔で応える2人の表情も良い。

後半のブラームスはコウトの本領がますます発揮された名演。深みのある柔らかく温かな響きは、ヨーロッパの古い町並みのたたずまいが持っているような色調で、この曲にピッタリ。そんな音で奏でられる線が、程よい粘度を伴って絡み合い、結びつき、次々と自然に受け継がれ、見事な織物が仕上がって行くよう。その織物は名匠によって仕上げられた極上の作品だ。そんな一つ一つの心のこもった積み重ねがもたらすクライマックスは、自然と熱を帯び、高いテンションを保ち、大音響を鳴らさずとも心を大きく揺り動かす力となる。
この名演は、もちろんオケの力量もあってのこと。アンサンブルではがっちりと演奏の骨格を支え、ソロでは高貴な歌を聴かせた松崎さんらホルンを筆頭に、横川さんの息の長い神経の行き届いたクラ、中野さんの周りの空気まで温めるような心に染みるフルート等、各奏者の本領が発揮された。今年のN響のベストコンサートに挙げたい。コンマスはまろさん。
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2 コメント

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11月B定期 (一静庵)
2005-11-26 22:17:56
私は2日目に聴きました。モーツアルト:協奏交響曲は、pocknさんのおっしゃるように、自然体の感じがしました。ブラームス4番、全体に軽快で、楽しかったけれど、第2楽章は、N響の音色が本当に美しく、心に響きました。ホルン3番は、東響のハミルさんでしたね。
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Unknown (pockn〈管理人))
2005-11-27 02:07:11
一静庵さん、いつもコメントありがとうございます。N響の音色が本当に素晴らしかったですね。こんな風にオーケストラから指揮者の個性を感じる美音を引き出せる人ってそんなにいない気がします。

ホルンの外国人の方は東響の人でしたか。在京のオケのメンバーが、こうした形で交流できるのはいいことですネ。
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