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【ザルツブルク音楽祭】 リリング指揮 モーツァルトのハ短調ミサ

2006年08月30日 | pocknのコンサート感想録2006
8月30日(水)ヘルムート・リリング指揮 モーツァルトのハ短調ミサ
ザルツブルク・聖ペーター教会

【曲目】
◎ モーツァルト/ミサ曲ハ短調K.427
 
【演 奏】
SⅠ:ディアナ・ダムラウ/SⅡ:シモーナ・サトゥロヴァ/T:フェルディナンド・フォン・ボトマー/B:マルクス・マルカルド
ヘルムート・リリング指揮シュトゥットガルト・フェスティヴァル・アンサンブル

このハ短調ミサがモーツァルトの指揮、コンスタンツェの第1ソプラノで初演されたという聖ペーター教会で、モーツァルト生誕250年の年に同じ曲を聴ける、というだけで素晴らしい体験だが、演奏も本当に心に沁みる素晴らしいものだった。

オケは柔らかく充実した響きを持っている。リリングはゆったりめのテンポでたっぷりと歌わせ、風格と安定感を与え、明るく柔らかい光を放っていた。カッチリとしたフォルムを保ちつつ、柔軟な音楽を奏でる素晴らしいオーケストラの演奏だ。
ソリストは第1ソプラノのダムラウが出色の出来。天使の声のごとく繊細で美しく、一点の曇りもない "Et incarnatus est de Spiritu" のくだりをはじめ、ダムラウがソロで立つと聞き耳を立ててしまう。とにかく惚れ込んでしまった。
第2ソプラノのサトゥロヴァも「キリエ」でのアリオーソ風のくだりをはじめとして、温かく豊かな表情で貫禄のある歌をたっぷりと聴かせてくれて感銘を受けた。テノールのフォン・ボトマー、出番は少ないがバスのマルカルドも品性のある歌唱で好印象を得た。
合唱はハーモニーがとても美しい。オケと同様に柔らかくて高貴な響きがする。音程がぴったりとハマッている証拠だろう。

古楽器演奏の隆盛の下に隠れてしまっていたのか、リリングの名は最近耳にしなかったが、このような腰の据わった安定感に終始支えられ、温かくて格調高い演奏でこうした大曲をまとめ上げるリリングは素晴らしい。

モーツァルトが初演したこのザンクト・ペーター教会の素晴らしい響きも感激を増幅した。この記念の年に、記念すべき場所でこんなに素晴らしいモーツァルトを聴ける幸せに陶酔したが、「アニュス・デイ」の"dona nobis pacem" の輝かしいフィナーレで気分は最高潮に達した。最後の音が長く響き、いつまでも続くような静寂の後に熱い拍手が沸き起こった。

チケットを予約した時点でSteheplatz(立席)しかなく、2時間近くじっと立っているのは、野外ライブで小躍りしながら聴くよりもずっと辛いことが判明。実際、すぐ隣で聴いていたイタリア人の女性が気分が悪くなったようで抜けたし、遠くでは人が「ドサッ」倒れる音がした後運ばれたりしていた。でも素晴らしい演奏に接してそんな辛さは吹っ飛んでしまった。

終演後に同じ構内のレストラン"Stiftskeller"で食べたオーストリア名物"Tafelspitz"もうまかったぁ。


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