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東京藝術大学バッハカンタータクラブ 2023年定期演奏会

2023年03月15日 | pocknのコンサート感想録2023
3月13日(月)東京藝術大学バッハカンタータクラブ
東京藝術大学奏楽堂


【曲目】
1.バッハ/カンタータ第151番「甘き慰め、わがイエスは決ませり」BWV151
S:宮原唯奈/A:井澤佳名里/T:吉田啓修/B:早矢仕優弥
2.バッハ/モテット「主に向かって新しき歌をうたえ」BWV225
3.バッハ/ブランデンブルク協奏曲第4番ト長調 BWV1049
4.バッハ/カンタータ 第102番「主よ、汝の目は信仰を顧み」BWV102
A:久保田里奈、井澤佳名里/T:半田悠河/B:早矢仕優弥
【アンコール】
バッハ/カンタータ 第147番「心と口と行いと生活」BWV147~終結コラール「イエスは我が喜び」

【管弦楽&合唱】
小河佑樹 指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブ


40年来聴き続けている大好きな東京藝術大学バッハカンタータクラブが、3年ぶりに定期演奏会を再開した。この日は川口成彦のリサイタルへ行く予定だったが、こちらのチケットは手放してバハカンへ駆けつけた。久々のバハカンの定期、多彩で魅力の曲目に期待が高まる。

最初の151番は、全曲が慎ましい喜びに溢れた珠玉の名作で、終始幸せな気分で耳と心を音楽に委ねた。とりわけ心を捉えたのは最初のアリア。ソプラノの宮原唯奈さんの歌は、艶やかな美しい声と美しい発音で表情も素晴らしく、絶品だった。繰り返し歌われる「süßer Trost(甘美な慰め)」のフレーズのとろけるような妖艶で魅惑的な表現に心を虜にされ、中間部の生き生きと弾ける場面では心が浮き立った。まるでオペラのアリアを聴いているような気分で、バッハの音楽にはこの手の魅力もあることを宮原さんは教えてくれた。オブリガートを担った古川さんの流麗なフルートもステキだった。このカンタータ、昔、クリスマスにFMで流れているのを聴いた記憶が残っていながら、曲がわからないままだったが、今夜これに再会出来たことも収穫だった。

合唱によるモテットのあとはブランデンブルク協奏曲。落ち着いたテンポ設定で生き生きと、伸び伸びした演奏を聴かせ、3人のソロも瑞々しく豊かな表情を湛えて語りかけてきた。とりわけ第3楽章のダンスを踊っているような伸びやかでノリノリの演奏には心が踊った。ヴァイオリンの水谷さん?のソロは、上品ななかに喜びが感じられ、それが顔の表情からも窺えて共感を覚えた。

最後は規模の大きな102番。これはとりわけ冒頭合唱の深く掘り下げた厳しい演奏に、バハカンの非凡な表現力を感じた。ソリスト達も皆健闘して、聴き応えのある歌唱を聴かせてくれた。ソロの歌については151番でも云えるのだが、ひとつひとつの言葉の持つ重みや輝き、深淵さにもっと徹底的にこだわり、喜び、苦悩、慰め、警告・・それぞれの言葉をどう伝えたいかを掘り下げて、胸にぐっと来るものが欲しいと思うことがあった。

ところで今回の演奏会ではとても残念なことがあった。管楽器とソロ以外、全員がマスクを着けての演奏、なかでも合唱団がマスクを付けたまま歌うことは、大切な音の出口を塞いでしまって、声は素直に届いて来ないし、言葉もクリアさが失われるし、バハカンの大きな魅力である歌っている表情も覆われてしまい、なにひとつメリットはない。モテットの第2曲で同時進行した、マスクを外して各パート一人ずつで歌ったアリアと、マスクを着けた合唱隊によるコラールとの聴こえ方の差は歴然としていた。

未だに厳しい感染対策を励行している藝大がマスク着用を求めたことは想像に難くない。演奏者であれば、誰しも最高のコンディションで最高のパフォーマンスを聴かせたいはず。それを思うと学生たちが気の毒でならなかった。モテット第2曲ではマスクを外して生き生きと歌っていた学生が、第3曲に入ると歌いながらマスクを再装着している姿が痛々しかった。

3年ぶりの定期演奏会開催には、部員や関係者の大変な苦労や努力があったはずで、実現できたことは素晴らしいことだが、周りを見れば、もう1年以上前から多くの学生オケや合唱団は定期演奏会を再開している。学生にとっての1年は特別な時間だ。何が定期演奏会の開催を今まで阻んでいたのかを大学は検証し、いい加減、過剰な感染対策よりも学生のことを考えてもらいたい。

何も知らない部外者が的外れなコメントを書いているかも知れず、不愉快な思いを与えてしまったら申し訳ないが、このブログでは、あくまで自分の本音を伝える趣旨のもと、誠に僭越ながら思ったことを記した非礼をお許しいただきたい。バッハカンタータクラブはずっと好きだし、これからも応援しています。

東京芸術大学バッハカンタータクラブ2022年藝祭公演
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