もともとそれでよかった♡

すべては自分の中にある

2020 The New Earth 1-5

2015-12-12 | 2020 The New Earth

 Now Creationさんより

 

2020 The New Earth

     A travel report

http://2020-die-neue-erde.de/sites/2020/files/dateien/2020-the-new-earth_jesus_vacationer_bauchi-semifinal_version.pdf

   世界中で新しい地球を共同創造するため、本書を無料で公開する旨、本文中に記されていました。

   人名は英語読みにしました。小見出しは翻訳の都合で訳者がつけました。

 

 

2020 The New Earth

A time travel report

 

はじめに

 

その日、僕たちは浜辺で過ごしていた。本当に暑い日だった。そのときの2週 間で僕の人生は大きく変わった。初めは、僕たちは何も気付かなかった。ネイサンは少し寡黙だったが、それは珍しいことではなかった。彼は優れた観察者であり聞き手なのだ。それに彼はまったく僕のようなおしゃべりじゃない。帰途、僕たちは彼が何か思い詰めているように感じた。その夜、家に帰ってから、彼は話し始めた。僕たちは彼の話にすっかり圧倒され、心を揺り動かされずにはいられなかった。

 

ところで、今、僕はウィーンでネイサンの物語を書いている。まだ僕にはこのことをどう考えたらいいのか、はっきりせず、いまだにそのことしか考えられない。それなのに、僕もその物語の一部なのだ。ネイサンは、僕に書いてくれと頼んだが、これは彼の物語なのだ。彼は無名のままでいたかったし、Facebook のアカウントさえもっていない。彼はインターネットもとても用心しながら使っている。目下のところ、僕の書いたものを彼の体験と照らし合わせるために、僕らは、ほとんど毎日のようにスカイプで話し合っている。彼の同意なくして公表されたものは一切ない。それはまさに、僕が書いた通りに起こったことなのだ。

 

彼の物語は信じ難いものだが(僕たちは皆、彼が浜辺で夢を見ていただけだと思った)、非常に説得力をもつ面もある。 僕らが泳いでいる間、彼は浜辺で横になっていた。そのわずか半時間に起きたことにしては、夢とは別の、何か非現実的なものがあった。彼はとても多くのことを思い出せるのだ。本当に真実なのだ ろうか? 僕の友人は本当にタイムトラベルしたのだろうか? 僕には、もうそれが不可能なことだと思えなくなった。それでも僕の心は、ネイサンが僕たちに語ったことを信じたがらない。だから僕はこの本を書くことにしたのだ。なぜなら、それが真偽を見極める唯一の方法なのだから。ところで、最初の2週間でいくつかの点が本当だと証明された。2週間前、誰かが、僕が今ウィーンにいることを予言したなら、僕はそれを笑い飛ばしていただろう。そのような計画などまったくなかったのだが、今振り返れば、完全に説明がつくし理解できることだ。

 

僕は、今自分がワクワクしていることを認めなければならない。僕はこの本を、 大きな期待と膨らみつつある喜びと共に記している。この本は、彼が最初の夜に語ったことをもとに、細かい部分を肉付けしてある。今のところ、何ら矛盾する ところはない。この物語の結末を書き終えることを楽しみにしている。ネイサンは、僕が2015年の6月までに書き終わることを保証してくれた。

 

一つ、僕の頭から離れないことがある。ネイサンのことだ。彼はその日を境に 変わり、この件で誰も煩わせたいと思っていないし、その必要もなかった。彼の目にはユーモラスなまじめさがあり、彼には安らぎがある。この性質はまったく新しいものであり、それまでとは違うものだ。彼は僕の世界をも変えてしまった。 そして僕もまた、2週間前と同じ人間ではない。 僕は読者の皆さんが、僕がこの本を書いているときと同じくらい、楽しんでくれればと願っている。この物語が真実かどうかは問題じゃない。僕はその問いを脇におき、この物語がいかに僕らを鼓舞してくれることか、そこに目を向けようと思う。

 

2020年に会いましょう!

 

バウチ記す。 Bauchi ( Jesus Vacationer )

 

 

 

“Reconsider how

you look at the world,

because that’s how

 you see it.”

 

 

Manufacture and printing:

BoD – Books on Demand,Norderstedt

ISBN 978-3-7386-3338-2

Cover: Wu Wang (Aachen)

Translation by Peter Bockermann

 

 

 

To the esteemed Audience!

 

I welcome you onboard BRAINLINES.

My name isE. Kensington, I am your captain.

Please take a relaxed position,

and try to calm your thoughts.

That way I can guarantee a safe journey,

from which we might not return.

The plot of the story that follows,

and all people in it are not imagined.

Any similarity to living or real people

is NOT by chance!

If something awakens your interest,

it might be useful to do your own research

on the internet.

 

Nevertheless it is all fiction.

Nevertheless it is all real.

 

 

Before you start to read or listen,

allow your SELF to free your mind.

About the risks and side effects,

forget what your doctor or pharmacist would say.

Make your OWN experiences.

I wish all a pleasant journey to the year

 

 

 

 

2020

The New Earth

A travel report

 

――ネイサンの物語――

 

1.浜辺の出来事

 

6月のある日、僕たちは猛暑の中にいた。焼け付くような日射しだったが、僕は数人の友人と海にいたため、暑さは気にならなかった。むしろ、その暑さが、 僕らが度々海水に身を浸し、自由な時間を楽しむよう誘ってくれた。ストレスのない休日。世界はOKに見えたし、それ以外の見方をすることに何の興味もなかった。友人たちの方に目をやると、彼らは水の中で、見るからに楽しげに遊んでいた。

「人生は素晴らしい!」 それからひそかに思った。「なぜ、いつもこんな風じゃないのだろう?」

 

僕は目を閉じて背を反らせた。「太陽よ照りつけておくれ。燦々と頼むよ!」 しばらくして目を開けた。僕の体を優しくなでてくれる涼やかな風に、僕は微笑んでいた。体を起こすと軽く目眩がした。あったはずの水筒がない。僕のバッグもだ! それから友人たちもいなくなっていることに気付いた。「大した冗談だな」そう思って立ち上がり、あたりを見回すと、友人どころか、誰もビーチにいないことがだんだんわかってきた。 僕たちは、このビーチが旅行者に知られていないから気に入っていたのだが、 それでも奇妙なことだ。30分前にバナナの皮を捨てたゴミ箱もなくなっている。 僕の周りは緑色だらけになっていた! 僕は夢を見ているのか? これは現実か?

 

太陽は、先ほどと同じくやはり照りつけているし、海もそこにある。泳ぐために海水に入った。少しの間混乱を忘れたいという思いに駆られたのだ。ところが、 海の中から浜辺や島を見て、僕はショックを受けた。僕はどこにいるのだろう?? 山々の稜線は確認できるが、以前とはまったく違って見えるのだ。いつもの、乾ききったような夏の景色が、今はすべて緑色なのだ。その島に何世紀も無かったはずの森が見える。僕は過去にいるの?タイムトラベルしたのだろうか? 夢に違いない。でも、何もかもあまりにも現実的だ!

 

僕はゆっくりと泳いで浜辺に戻った。水は腰の高さしかなかったが、砂が僕のお腹をくすぐるまで、泳いだ。僕はそこでワニのように横たわり、動かないまま、 辺りを目で窺っていた。自分が何を探しているのかさえわからない。何か、何かあるはずだ。僕が今見ているものに説明がつくものが。それは僕の混乱した頭をすっきりさせてくれるだろう。気分が悪いわけでも、怖いわけでもない。僕の感覚は完全に研ぎ澄まされている。僕はゆっくり立ち上がり、僕がタオルを置いた場所に歩いて行く。僕は用心しながらそれを拾い上げる。何かが起きてくれることを期待しながら。けれども何も起こらない。いつもタオルが拾われるときのようにタオルは拾われた。僕はタオルを肩に掛け、駐車場に歩いて行く。だんだん、 これが悪ふざけじゃないことがわかってきたが、それでもそこに友人たちがいることを願った。そこに駐車場がないことを僕にはなかなか受け入れられなかった。 その場所はあるのだが、植物が生い茂っており、その中央には焚き火台がある。 そばに行って灰に指を突っ込むと火傷した。ついさっきまで誰かがここにいたに違いない。燃え殻がまだ赤い。

 

「こんにちは? 誰かここにいますか?コーンーニーチーワー!」ためらいながら声をかけてから、今度は精一杯声を張り上げる。「コーーーンーーーニーーー チーーーワーーー!!!」僕の声に驚いた鳥が、木々の間から数羽飛び立っただけだ。「ここで何が起きているのだろう?」声に出して自分に聞いてみる。すると、僕の質問に答えるように、カモメが頭上でうるさく鳴いた。まるで僕の知らない何かを知っているかのように。見上げると、カモメが島の中心に飛んで行く のが見えた。何の考えもないまま、足が勝手に歩き始め、僕はカモメを追う。カモメが視界から消え、僕は駐車場から通り道に出る。1時間前に通った道も、や はり前と違っている。同じ道だが、僕の周りの何もかもが緑に染まっているのだ。 数百メートル歩いてから気付いたのだが、ただ緑が濃くなっているだけではなく、 周りの植物がすべて実をつけている。熟した果実、未熟な果実がたくさん実って いて、どれもみんな食べられるものだ! 僕は、ブラックベリーの茂みのところ で立ち止まった。よく熟れた果実がたわわに実っている。その藪の中央から、イ チジクの木が突き出ている。僕は喉が渇いていたのを思い出し、水筒もなくして いたので、いくつかつまんで食べた。ああ、なんてうまいんだ! ジュースが僕 の喉をなだめるように下りていく。少しの間、僕は他のことを忘れていられた。 イチジクがこんなにジューシーだとは知らなかった。イチジクは甘くてジューシ ーだ。

 

2.2020年

 

少しうっとりした気分で歩いていたが、気が付くと僕は根っこがはえたように 立っていた。少し向こうにタワーが見える。鉄骨フレームの上にドームが乗って いる。前にも似たようなものをビデオで見たことがあった。テスラ・テクノロジ ーのビデオで見たのだが、実在しているものじゃない。その後気付いたのが、そ のタワーから200メートルくらい手前の家。古いぼろ家だったはずなのに、廃墟 でなくなっている。それどころか大きく見えるし、きちんと修復されている。誰 も住んでいないようだ。ブラインドが閉まっていたが、テラスのドアが開いてい て、白いカーテンが微風にそよいでいるのが見える。

 

魔法にかけられたように、僕はその家に向かっていた。僕の周りはどこもかし こも命が活気づいている。虫たちのブーンという羽音、鳥のさえずり、コオロギ の鳴き声、まるで互いに競っているようだ。かなり大きい音だが、同時に静かで もあり、全体が調和している。僕はテラスに立って「こんにちは」と声をかけよ うとしたら、突然、女性が出てきて、僕を見て微笑んだ。

「こんにちは。あなたがここに来てくれて嬉しいわ。一緒にレモネードでも飲ま ない? 今ちょうどつくったところなの!」彼女は僕をテーブルに招いてくれた。 テーブルの上のグラスが陽に輝いている。彼女は手にしていたピッチャーをテー ブルに置き、遠慮の無い親しい調子で「あなたのことを何て呼んだらいいかし ら?」と言った。

「ネイサン」用心しながら僕は答えた。それから初めて彼女を間近に見た。彼女 は僕と同じくらいの年齢で、茶色い髪が肩にかかっている。彼女は、僕が思わず 息を飲むくらい優しい目をしている。 僕はすっかりどぎまぎした。僕の声の魅 力はどこへ消えた? うまく言葉を選べない。僕の自信はどこに行った? 僕は いつもは内気じゃない。でもこの時は、穴に入って隠れてしまいたかった。ここ は一体どうなっているのだろう?

「こんにちは、ネイサン。今日、あなたがここに立ち寄ってくれて本当によかっ た。他の人たちはよそへでかけているの。だから私、ここに座って一人でレモネ ードを飲んでいた方がいいと思ったのよ。私はサミラ。あなたをお迎えできてと ても嬉しいわ」彼女が手を差し出したので、僕もそうした。彼女はレモネードを グラスに注いで僕にくれた。楽しそうに無邪気に僕の目を覗き込む。彼女は僕に 会えて本当に喜んでいるようだ。レモネードはすごくおいしくて、喉を潤してく れた。さっきのベリーやイチジクとは違うおいしさだ。僕が一気に飲み干すと、 彼女はキャッキャッと喜んでいる。

「その飲みっぷりが何よりの褒め言葉よ!もう一杯どう?」僕は息をはずませな がら、彼女がレモネードを注げるよう、ありがたくグラスを差し出した。彼女は 自分の分を飲む前に、笑いながら注いでくれた。そこに座っている彼女はとても 愛らしい。モデルや美人コンテストの女王とは違い、単純にただ美しいのだ。内 側の美しさが外に輝き出ている。またもや僕はうっとりした気分になり、礼儀作 法もすっかり忘れ、僕の口からは一言も言葉が出ない。彼女は微笑み、椅子の背 にもたれ、満足そうに目を閉じた。彼女は少しニンマリしてからこう言った。 「あなたはここの人じゃないでしょう?」「まあ、そうなのだけど、自分がどこ にいるのかわからないんだ」

 

驚きと好奇心で彼女はまた目を開け、僕の心を探るように見ている。 僕は続けて言った。「この島は知ってるし、数年間ここで暮らしたけど、僕が覚 えている島とはまったく違うんだ。もしかして夢を見ているのかなあ?」 「わからないわ。ここではどんなことを体験したの?」彼女が尋ねたので、僕は 起きたことを何もかも彼女に話した。彼女は、僕を不思議そうに見ているが、僕 をジャッジしているふうでもない。彼女のまなざしが、僕の話を真剣に受け止め てくれていることを語っていた。今と前とで何が違うか彼女が尋ねた。

「どういうわけだか、何もかも違う。島にいることはわかっているのだけど、ま ったく違っているんだ。最初に気付いたことは、島に緑が生い茂って青々として いること。それは僕が知っているここの夏景色じゃない。それからゴミ箱がなく なっている。駐車場も通り道も緑と果実でいっぱいになっている。それから後ろ にタワーもあるよね。どう言ったらいいのだろう? 30 分前か、僕がここに来 た 1 時間前、この家は崩れかけていて、友だちにそのことを話していたんだ。 誰もこの家を利用しないでもったいない。どれだけいいものが台無しになったこ とかってね。今は平行宇宙にいるようだよ。すべてがそうあるべきようになって いるからね」

 

彼女は考え深げに、けれども好意的に僕を見て、その後タワーに目を向けた。 「ネイサン、今年は何年?」

「僕の知る限りでは 2015 年」そう答えるが、もう何についても確信がもてない。 彼女は驚いた様子で僕を見ている。彼女は少し考えてから優しい声で話した。そ の声に僕はまた魅了された。

「我が友よ、あなたは記憶喪失かタイムトラベラーだわ。現在、もし私たちが年 を表記するとしたら 2020 年よ。というのも、私たちにとってそれは重要なこと ではなくなったの」そして微笑みながらこう付け加えた。「どちらがお好き?」

こんなことは思いもよらなかったので、まったく困惑してしまった。

「深刻にならないで。ただこっちかあっちか聞いただけよ」僕はその答えを考え てみた。

「何の考えも浮かばない。何が起きたのか、どうやって島が5年間でこんなに変 わったのか僕には分からない。家に帰りたいと思うけど、ここから 20 ㎞離れて いるんだ。僕たちは車を運転してここに来たのだが、誰も見つけられない。多分、 ヒッチハイクすればいいかもしれない」

 

彼女は僕を見て明らかに楽しんでいる。何がそんなにおかしいのか、僕には 分からない。僕は本当に笑えるような気分じゃないのだ。とても当惑しているの だから。

「多分、あなたのお役に立ててよ」と彼女は言った。「この5年間でたくさんの ことが変わったの。この島だけでなく、地球全体がそうなのよ。私、あなたにつ いて、まだあなたが知らないことを知っているわ。けれど、あなたがそれを自分 で見つけていく楽しみを台無しにしたくないの。少しあなたに話をしてから、家 に帰る方法を教えてあげましょう。それでいい?」

「それでいいと思う」僕はそう答えたが、実のところ他にどうしようもないのだ。 僕は興味と好奇心に引かれて彼女を見た。サミラは椅子の背にもたれると、深呼 吸して話し始めた。

 

― 3.変化の始まり

 

「あなたは 2015 年の前半まで経験して、あなたの今は 6 月の半ばなのね。だっ たら、まだあなたは 2015 年の大変化を経験していないわ。大勢の人にとって大 きな変化の年だったのよ。特にその年の後半は、大変化の時だったの。きっと他 の人たちが、もっと詳しくあなたに説明するでしょうから、私は本質的なことだ け話すわね。その変化は一夜で起きたみたいだった。政治情勢が劇的に悪化して、 当時は、ヨーロッパは大戦争に直面していたの。でもほとんどの人たちにはわか っていたわ。自分たちが創り出さなければ、戦争は起こらないって。だんだん人 々は、上からの命令を無視し始めるようになった。上に協力するのを拒否して、 自分自身の権威のもとに生き始めたのよ。インターネットも私たちが国際的に組 織化するのに役立ったわ。このようにして私たちは互いに助け合い、行動を起こ し始めたの。それぞれがそれぞれのやり方でそうしたのだけれど、決して一人で 孤立してたわけじゃない。私たちは、自分たちの権利と常識を守るためにそうし たの。それはあらゆるレベルで同時に始まったのよ。親も子供も一緒になって、 強制的な学校規則を無視し出した。多くの人たちが、もはや仕事には行かなくな って、公園と森に突然興味を引かれるようになったの。私たちの周りの生命体が、 個人レベルで一層大切なものになり始めた。だって、私たちは相互依存の関係に あるのだから。たとえ、同じ人間の本質、ましてや動物の本質に気付いていない としても、そうであることに変わりない。

賃借人は所有者に賃借料を払うことを止めたの。だから所有者も銀行に返済できなくなった。大手の銀行家は辞職し、連帯することを表明した。政治家までも が、行動を共にすると言い出し、自分の地位を捨てた。起きたことをうまく言い 表すには、民衆が階層制度のピラミッドを崩壊させた、と言えばいいわね。いく らか社会的動乱もあったけど、以前ほど大きなものではなくなった。平和でいら れるようになったので、そのような動乱からくる不安が打ち消されていったの。 以前のシステムでは、人々は永遠にストレスに晒されていたけれど、そういう人 が少なくなったので、平和でいられるようになったのよ。空いた時間は自分たち のためにあてたの。私たちは、互いに対立するのではなく、共に良い生き方がで きるように、世界中で繋がってアイデアを交換し合った。本当は不足していたも のなんて何にもなかったのよ。利用できなかっただけ。お金が厳しく統制されて いたから、不公平に分配されていたの。

しばらく経つと、主流メディアも変わらざるを得なくなった。問題指向の番組 制作をしなくなり、本当に問題解決を励ますようなものが出てきたの。他にも、 とても重要な変化があったのよ。私たちは、自分を他者の上におこうとすること と、他者に恥をかかせようとすることを、ほとんど自動的にやめたの。最初は、 風のささやきみたいだったのが、突然誰もがそれについて話していたわ。もし私 たちがネガティブな面だけ見続けて、他人のよそよそしさや、弱点や間違いだけ に心がとらわれていると、結局自分たちが損するだけなの。私たちの時間の 90 %を批判に、10 %を称賛することに費やす社会では、人生がちっとも面白くな かったのは当然だわ。誰もが、自分が顧みられていないように感じ、私たちは皆、 もっと成長するように駆り立てられるけど、誰もがそうするだけの熱心さを失っ ているように見える。たとえあなたがベストを尽くしても、ほとんどネガティブ なフィードバックしか得られず、それだと人生の面白みが奪われていくわ。

次第に、そういうことに無関心だった人たちも、私たちが互いに交流し合う中 でそのような変化が起きたことと、誰もがいつでも別のやり方を始められること を悟ったの。そのようにして、2015 年の終わりまでには、大勢の人々にとって 人生はより良いものになった。なぜなら人々はこれまでとは違うように振る舞い 始めたからよ。人々の周りに、ストレスとなる人がいなくなり、居心地のいい人 ばかりになったとき、人々は相対するものに美と善性を見始め、人生を享受し始 めた。人々は批判するより褒めるようになったのだけど、それはさほど難しいこ とではなかったわ。特にその年の終わり頃、メディアが変わり始めてからは。そ して、ごくわずかな人しか夢見ていなかったことが起きたの。私たちは、互いの 中に戻る道を見つけたのよ」

 

僕は今聞いた話に心を奪われた。僕は夢を見ているに違いない。そんなこと現 実であるわけがない! 数回、腕をつねったら痛かった。僕の人差し指も、野外 炉で実際に経験したことを思い出させた。サミラはレモネードを一気に飲み干し、 僕もそうした。喉の渇きが暑さのせいなのか、僕がはまり込んだ状況のせいなの かわからなかった。

「私はもう十分話したわ。家に帰りたいと言っていたけど、裏に自転車があるは ずよ。でもよければ、もう少しいればいいわ。マニュエルがもうすぐここに来る 気がするの。彼は喜んであなたを車で送っていくわ。彼がきっと車の中で、もっ といろいろ教えてくれる」   

僕は返事をせず、例のタワーを見ていた。終始気にかかっていたタワーを。

「あのタワーは何のためにあるの?」僕は尋ねたが、彼女が答える前に、一台の 車が私道に入り、近づいてきた。まったく音もたてずに。

 

4.マニュエル

 

「ほーらね。言った通りでしょう」サミラは歓声をあげている。 「マニュエルだわ。迎えに出ましょう!」 彼女はもう彼のそばにいて、僕は出遅れた。彼女は彼を抱きしめて心からのキ スをしている。僕は「ああ、彼女のボーイフレンドか旦那さんなのだな」と思い、 自然に歩みが遅くなる。二人はハグし終えると、サミラが僕のところに戻ってき た。

「マニュエル、こちらはネイサン。ネイサン、こちらはマニュエル。ネイサンが ちょうど立ち寄ったので、一緒にレモネードを飲んでいたところよ。彼はとても 面白い話を聞かせてくれたの」

大きなフレンドリーな笑みを浮かべて、マニュエルが僕に近づき、挨拶のハグ をする。僕はそれに抵抗できなかったが、あまり抵抗したいとも思わなかった。 彼のフレンドリーなカリスマ性が、僕に安心感を与えてくれる。

「ようこそ、アミーゴ。君に会えて嬉しいよ。ちょっと混乱しているように見え るけど、大丈夫かい?」

僕は当惑した。何て人たちだ? 僕は、僕の周りにヒッピーがいることに慣れ ているし、僕自身も似たような者だと思っている。互いに親しく触れ合うことに も慣れているし、男同士でハグすることさえある。でも、ここでは・・・・・・何かが 違う。より本物でとても自然だ。僕には説明できない。彼は真っ直ぐに、僕の「す べては大丈夫さ」というすまし顔を見透かして、直接それを口にしたのだ。とても思いやり深い人物だ。二人の思いやり深い人たち。それでも疑問は残ったまま。 僕はどこにいるのだろう??

 

マニュエルが「どんな話をしたんだい?」と家に続く道の途中で聞いてきた。 僕は、サミラが僕に話してくれたことよりも、僕の話の方が彼らにとってずっと 面白いことに気が付いた。僕はすっかり混乱しきっていたので、座らなければな らない。僕は目眩に襲われた。すると、二人は即座に僕を支えてくれた。

「しっかりして。君をベランダに連れていくよ。そこで気を取り直したらいい」 僕にはどちらがそう言ったのかさえわからない。気付くとベランダの椅子に座っ ていた。僕はグラスを取り――3杯目の極上レモネード。この暑さにもかかわら ず、まだひんやりしている――少しすすった。サミラは屋内に入っていき、マニ ュエルが僕のそばの椅子に腰掛ける。僕は、彼が注意深く僕を見守っているのが わかる。僕は再び彼の大きな愛情と暖かさを感じ取った。それは僕には説明でき ないものだ。僕は、まるで自分が世界で一番重要な人物であるかのように尊ばれ、 気遣われているのを感じた。それは言葉では表現できないものであり、まったく さりげないものだった。

 

彼が笑みを浮かべて「良くなったかな、アミーゴ?」と尋ねる。僕は彼を見て、 彼の眼差しに心打たれた。僕は、本当に友人たちには恵まれている。何かあった としても、共にうまく切り抜けていくだろう。しかし彼の眼差しは、愛と思いや りと慈悲に満ちており、僕には馴染みのないものだった。しかし、居心地の悪さ はまったく感じない。それは誘惑とかゲイとかには一切関係なく、父と息子の間 にあるようなものだった。サミラがクッキーのお皿を持って戻り、卓に加わった。 僕は喜んで一つつまむ。すごくおいしい。「ネイサンは 2015 年の 9 月以降に起 きたことを何も覚えていないの。たとえ、経験していたとしても」サミラがこう 言ったのは、マニュエルがまだ僕に何も聞いていないと思ったからだろう。マニ ュエルは眉を上げてみせたが、何も言わない。僕が何か言う機会を与えてくれて いるのだ。僕は簡単に話を繰り返すと、彼はとても興奮した。

「よくある話じゃないよねえ」彼は笑ってから、「気分は良くなったかな、大丈 夫かい?」と単刀直入に尋ねた。

 僕は大分良くなったので、そう答えた。ともかく、二人のおかげで、僕は混乱 の中で自分を見失わずにすんだ。

「サミラは、僕がどこにいるのか教えてくれたのだけど、僕の頭はそれを信じた がらない。タイムトラベル? 記憶喪失の可能性はもっと薄い。だって 2 週間 前の脚の擦り傷が、とっくに治っているはずだもの。それに 5 才も年をとった なんて思えないよ」疑問点を話しているうちに、僕の頭がすっきりしてきたよう だ。感覚が戻り、自分に何が起きたのか本当に知りたくなった。

「さて」深く考え込んでいたマニュエルが口を開く。「もし君が本当に自分に起 きたことを知りたいのなら、まずはそれを信じないと。もし君が何かの存在を信 じなければ、君はそれを理解することができないよ」彼はそれを自明のことであ るかのように、そして愛情を込めた調子で言った。

「僕自身はまだタイムトラベルを経験したことないが、インターネットでは、タ イムシフトを経験した人たちがどんどんレポートをあげているよ。そういうこと に興味をもって調査に没頭しているグループがある。僕たちが、時間は直線的で はなく、空間は、僕たちが前もって存在を把握することにおいて存在する、と学 んで以来、僕たちの目の前には、調査すべき、まったく新しい時空連続体がある んだ」

「待って、ストップ! 一つずつお願い!インターネットはまだ存在していて、 時間は直線的じゃないの?」と僕は尋ねた。彼らは二人とも心から大笑いしたの で、僕も一緒に笑わずにはいられなかった。自分の言ったことの何がそんなにお かしいのかわからないが。

「インターネットはまだここにあるわ。多分あなたにはそれを認識できないでし ょうけど」僕たちの笑いがおさまってからサミラが説明する。「そして時間は直 線的じゃないのよ。私たちはただそのように知覚しているだけ。昔アインシュタ インが言っていたでしょう。時間は相対的なものであり、時間に限らずあらゆるものがそうだと。あらゆるものは観察者の視点から見られるわけだから、あらゆるものが相対的なのよ。5 分間があっという間に感じる場合もあれば、永遠に続 くように感じるときもある。人によってそれぞれよ。これまでの定説が消えてか らは、それを探求する価値があることが、私たちに明らかになってきたの。最初 の人たちがそれを探求し出したら、異常性のレポートが次々に集まり始めたのよ」

「ごめん、ちょっと質問させて。UFO はもう着陸した?」 彼らはプッと噴き出し爆笑した。だから僕も笑わなきゃならなかった。どっき りショーみたい。 「いいや、ネイサン、僕のアミーゴ。それはまだ起きていない。それが起きるの を待っている人はまだいるけど、僕たちしか宇宙にいないと思っている人は、地 球にはいないと思うよ。絶対、僕らだけが唯一の知的生命じゃない。今日では、 僕らが『ここから来た』のではないこと、宇宙によって命が創られたが、地球で 発達したのではないことを、僕たちは皆知っている。僕たちが周りで見ているも のすべて、何もかもが意識によってまとめられているんだ。僕たちは地球の外に 存在するものと接触しているよ。僕らのインナーネットを通じてね。ますます多 くの人たちがアクセスするようになってきたんだ」マニュエルは僕のいぶかしげ なな顔つきを見て続けた。

「すべてのものがあらゆるものに繋がっている。つまり、分離というものは存在 しないんだ。それは僕たちの想像の一部。だって僕たちが知覚するあらゆるもの が僕たちの想像の一部なのだから。僕たちがあらゆるものを我々自身の中に知覚 するのはそのためだ。そして我々自身の中にすべてであるものに通じる戸口があ る。テレパシーを知っているだろう? 僕らが話題にもしていないことを、言い 当てることができるよ。例えば、僕が戻る少し前に、サミラは、僕が間もなくこ こに着くことを感じただけではなく、それを君にも伝えた。こういうことは、僕 が今言ったインナーネット上で機能するんだ。その名前はほとんど自然についた 名前だよ」

「午後のひとときにしては、随分たくさんの情報だったなあ」僕は深呼吸しなが らそう言った。

「あそこのタワーは何? ニコラ・テスラの実験を思い出すのだけれど」 気を 立て直すために話題を変えようとした。

「よく分かったね。いい線いってるぞ」マニュエルが笑いながら言う。

「たった今僕は、車がいかに静かに走るか考えたんだ。僕とサミラにとって、そ れは何も珍しいことではないし、いつもと違ったところもなかったので、僕はそ の考えが君から来たのだと推測した。この通り、僕たちは皆繋がっているんだよ。 君だってそうさ。君がまだ意識的にそれを利用できないとしてもね。君はいつだ ってずっと繋がっていた。タワーは特定の場所に建っていて、テスラが『スペー ス・エネルギー』と呼んだものを我々に供給しているんだ。2016 年に、それに アクセスできるようになった。それを開発している研究者が、迫害されて中断さ せられたりしなくなったからだ。最初の実用モデルはあっという間に利用できる ようになり、今も進化している。中には、景観を損ねないように植物で覆って見 えなくしているものもある。私たちにエネルギーを供給しているだけでなく、イ ンターネットも電話もそれらを通して使えるようになっているんだ。車もこのエ ネルギーを利用して走っているよ。タワーに近づくと自動でチャージされるバッ テリーが搭載されているんだ」

 

5.エリートから力を取り戻す

 

僕が「みんな・・・・・・君たちみたいなの?」と聞くと、今度はサミラが、 「そうでないことを願うわ」と答えた。 「でもあなたが何を言いたいか分かるわ。あなたもすぐに、人々が変わったこと を自分の目で見ることになるわよ。今では、私たちはお互いにすごくフレンドリ ーなの。地球はとても親しみのある場所に変わったのよ。あなたは、動物たちも 変わったことに気付くでしょうね。エネルギーの変容が動物たちにも影響を与え たの。今ではずっと人間を信頼している。多分、私たちが、もう軽々しく動物を 食べなくなったからだわ。たとえまだ私たちがそうするにしても。あなたはフェ ンスがないことも気付くはずよ。あらゆるものが、すべての人に利用されている から。それもまた、誰にも命じられずに起きた変化なの。所有権という考え方は 消えたの。つまり、誰も自分のものを取られる心配がないということよ。誰もが 必要なものを何でももっている。だって、何でもそこにあり、今では自由に利用 するだけなのだから」

「エリートがそんなこと黙って許したの?」と僕が聞くと、二人ともにこやかな 顔で僕を見返した。

「エリートねえ・・・・・・」とマニュエルが言う。「君の考えでは、誰が力をもって いるんだい?」

「まあ、政府、企業、銀行などピラミッドのトップにくるものでしょう」

「私がさっき言った通り、2015 年に私たちみんなで、ピラミッドに盲従しなくなったとき、ピラミッドは崩壊したの」とサミラが言った。「いわゆる有力者に は、それを止めることができなかったわ。だって彼らに力なんてないのですもの。 少なくとも、誰かが他の人より多く力をもっているわけじゃないわ。私たちは気 付いたの。私たちが、エリートも含む、私たち一人一人が力をもっており、かつ また、この力が引き起こしたあらゆるものが、私たちのものであることをね。誰 かが他の人を支配することもできるわ。もし人々がそれを許すなら。この服従こ そがすべての醜い出来事の原因だったのよ。戦争、飢饉。だから私たちは少しず つ力を自分たちに取り戻したの。私たちが正しいと思ったことや、互いの助けと なることをを行うことで。そうやって長い間隠されていた幻想が暴かれて、もは や影響を及ぼせなくなったの。そのことが、おそらく、変化を引き起こした一番 重要な要素だわね。私たちは、取り戻した自由を行使した。自由と共に私たちの 力もね。いかに私たちの日常行為が、自分たちに影響を及ぼすか、私たちは少し ずつ学んでいったわ。どれほど私たちの行ったことが、実際に私たちを傷つけて いたか分かったの。私たちがそれを認識したとき、私たちはほとんど自然にそれ をやめたわ。私の知る限り、当時、超人的というか、超常的なことをした人が誰 もいなかったという事実に、驚異の念を持たざるをえないの。まったく突然にす べてが可能になり、私たちがこれまでとは違う振る舞いを始めたとき、私たち皆、 良い振る舞いができるようになっていたわ。人生はまた楽しいものになったし、 多くの人たちにとって、それは何か新しいものだった。だから私たちは人生をも っと享受しようと思ったの」

 

僕は「つまり、君は僕に、もはや犯罪や飢えや憎しみや戦争が一切無いと言っ ているんだね?」と疑わしげに尋ねた。

「まずないよ」とマニュエルが言う。

「警察も刑務所もないし、弁護士や裁判官も、もういない。誰だって間違いは犯 すが、我々は、罰する代わりに助ける方に興味があるんだ。間違いを犯す人たち の幼少期の問題を割り出せるような情報に関心がいくし、大事に思う。二度と過 ちを犯さないように助けてあげられるからね。そのために暴力はもう必要ないん だ。僕らは、必要なのは理解することだと知っている。以前は、理解するための 情報が監獄にしまい込まれてしまったが、今は誰もが豊かに情報を得られる」

「それなら、あなたは犯罪者に同情するの?」 僕は知りたいと思った。

「いいや、我々はただ一つのことが別のことにどう導かれていくか理解して、皆 互いを見守っているんだ。何か問題に繋がるようなものを見たら、我々は割り込 んで、それを避けるように助ける。その方が、そういうことが起こるがままにし た神を責めるより、ずっとましだよ。神を責めても結局は、それが起こるがまま にして、十分気にかけてあげなかったのは我々の方だと思い知らされるまでさ」

「神についてはどう考えているの?」と僕は尋ねた。

「そのことは、君を送る途中で喜んで話すよ。君は自分の家がどうなっているの か気になって仕方ないようだ。君の立場になってみれば当然だ。さあ、行こう。 途中でいろいろ見せてあげるよ」

僕はサミラに目を向けた。

「そうしてちょうだい、二人とも。気にしないで、ネイサン。また会えるわ。そ う感じるの。いつだって心の底からあなたを歓迎するわ」

僕らは立ち上がって別れの挨拶をした。彼女は僕を長いこと愛情を込めてハグ してくれた。そして僕にも、マニュエルにしたのと同じような親密なキスをした。 僕はショックで反応できず、気付くと膝の力が抜けていた。それから彼女はマニ ュエルにも同じように接した。僕は、頭の中が真っ白だったが、僕の内側では喜 びが弾けていた。

「君もすぐに慣れるよ」マニュエルが、彼女から体を離すとき、笑いながら言っ た。

「今の世界は愛に満たされているんだ。我々が5年間かけて築いてきたんだよ。 2015 年からのタイムトラベラーには、さぞかしショックなことだろうと思うよ」 彼は僕の腕を取り、僕たちは車へ向かった。

 

ボーッとしたまま、僕はサミラに手を振る。僕のタオルが彼女の肩にかかった ままだ。それから彼女が視界から消えた。

 

 (6へつづく)


2020 The New Earth 6-10

2015-12-12 | 2020 The New Earth

 Now Creationさんより

 

2020 The New Earth

     A travel report

http://2020-die-neue-erde.de/sites/2020/files/dateien/2020-the-new-earth_jesus_vacationer_bauchi-semifinal_version.pdf

   世界中で新しい地球を共同創造するため、本書を無料で公開する旨、本文中に記されていました。

   人名は英語読みにしました。小見出しは翻訳の都合で訳者がつけました。

 

 

2020 The New Earth

A time travel report


(つづき) 

6.森をつくる

 

しょっちゅう遊びに来ていたので、この道は知っているはずだけど、以前とは まったく様相が違っている。僕には、もう正確な位置がわからない。僕は方向感 覚だけを頼りに、マニュエルに行き先を伝える。途中で対向車とすれ違うたびに、 マニュエルは親しげに手を振って挨拶している。すると相手も挨拶を返してくる。 まるでみんなが知り合いみたいだ。じきに僕も挨拶を始めると、とても良い気分 になることがわかった。しばらく僕らは黙ったままでいた。驚いたことにハンド ルがない。代わりにマニュエルが操作しているのは、XBox 用コントローラーの ようなもの。ぼんやり考え込みながら窓の外を見ると、その風景にハッとした。 僕が思い出すのは、植物がまだらに生えていて、乾燥して、耕されないまま放置 された土地。ところが今は、畑と牧草地が広がっている。そこではあらゆるもの がぐんぐん成長しているようだ。森もある。本物の森だ! タイムトラベル前 (僕はこの考えに慣れつつあった)、僕はパーマカルチャーにすごく興味があっ て、自分で試したりもした。だけど、たった 5 年間で島全体を森で覆えるよう になるなんて、絶対考えられない。マニュエルが僕の考えを読み取ったのか、説 明しだした。彼らはジェフ・ロートンという名前の男性には感謝しているという。 ロートンは、この 20 年間、自然がどのようにフローラ(植物相)を築くか熱心 に研究してきた。そしてそれを真似てロートン自身の環境デザインの中に統合し た。

 

僕は「彼を知ってるよ、というか、彼のビデオを」と言った。「ゼップ・ホル ツァー、ヴィクトル・シャウベルガー、Robert Briechle、アナスタシア。僕、相 当読んだよ」

彼が満足げに僕を見る。

「うん、まさにそう。2016 年に、ジェフ・ロートンを妨げるものが何もなくな ったとき、彼の『砂漠の緑化』プロジェクトに数千人が集まった。そしてサハラ 砂漠のほぼ四分の一を緑に変えた。その全いきさつが毎週 TV ショーで放映され たので、人々は、自分たちが変化をもたらすことができることを悟った。たとえ 身の周りの小さな範囲に限られていたとしても。そしてパーマカルチャーが息を 吹き返した。翌 2017 年にはパーマカルチャーが大流行して、ご覧の通りの森と なりました。たったの3年間でだ」

3年で??」 僕は息を呑む。「どうしたらそんなことできるの?」

「1980 年代にスイスの農業関連企業の研究員が、種に特定の方法で放射線をあ てると、通常よりもずっと早く、大きく育ち、収穫高も増えることを発見した。 ところが、種を販売することで儲けている会社だったので、その発見は会社の得 にはならず、お蔵入りになり、それを開示することは誰にも許されなかった。そ の辺の事情はわかるよね。 主流メディアがその研究結果を伝えてからというもの、世紀が変わって最初の 十年間で『原始コード』(primeval code)に関する情報を、簡単にインターネッ トで探せるようになった。そしてロートンのおかげで、それが再び脚光を浴びた。 彼が植えたものはすべて照射されていて、君は、その結果を目の前で見ているん だよ」

「モンサントはどうなったの? 最後に聞いたニュースでは、メキシコのトウモ ロコシ農家が、彼らの穀物が風を通じてモンサントの遺伝子組み換え穀物に汚染 されたと訴えていたよ。その結果、トウモロコシの原産国でさえ、自然なままの 種がほとんど残っていないんだ。その原始コードはそれらを救ったの?」

「そうだよ。その放射線が遺伝子コードをリセットするからね。だから原始コー ドという名前なんだよ。彼らは、照射された種が、化石の中で見つかった植物に 成長することを発見した。自然に変異したものであろうが、研究室で変異させた ものであろうが、種に照射すると、数百万年前の遺伝子コードが活性化されたん だ。ここで実物を見せてあげよう」

 

マニュエルは車の速度を落とし、右に止めた。降りて自分についてくるよう、 僕に手を振って合図している。

 数メートル先の畑の中に僕らは立っていた。近づかないと、何の作物が生えて いるのかわからなかった。彼は、今言ったことを証明するかのように、一本のト ウモロコシを指さした。

「何が見えるかい?」と彼が聞く。

「えっ、そんなの簡単でしょう。トウモロコシだよ。一本の茎に5つ実っている のじゃなくて、2、3、4、5本の茎がついていて、それぞれの茎に、えっと、10 本の実! どうしたらそうなるの?」

彼は答えずに、一つもいで僕にくれた。

「食べてごらん。2、3、4」彼はふざけてジャングルブックのバルーを真似て いる。満面の笑みを浮かべて。僕は皮を剥いで一口かじる。

「ちくしょう!」と頬張った口から勝手にもれた。恥ずかしくて「すみません!」 と続けた。

彼は背を丸めて笑い、「気にしないで。情熱は時に我々をしてしきたりと作法 を忘れしむる。うまかったかい?」

「うん!」僕の知っている味の薄いトウモロコシと違い、本当のトウモロコシ! またかじらずにはいられない。(本当にリンゴにかぶりつくような感じだった。 お化けトウモロコシ)モグモグ食べたら、またかぶりついて頬張る。幼い時にこ んな風に立っていたことがあった。祖父とリンゴの木の下にいた。あまりにも立 派なリンゴだったので、祖父は僕にただ見せたかったのだ。「このことは二人だ けの秘密だよ。さもないとたっぷり食べられなくなるからね」祖父の言葉だ。こ っちの世界では不足なんてなかったんだ。僕が嬉しそうに食べているので、マニ ュエルも、もう一つもぎ取ってかぶりついた。

「これ全部みんなのものなの?」口をモグモグさせながら、僕は尋ねた。

「目で見えるものは全部そうだよ。地平線を越えて、向こう側へぐるっと回って、 あそこまで」彼は道の反対側の畑を指さして答えた。

「今の答えは、もう地球に飢えが存在しない説明になっているかな?」彼は微笑 みながら問いかけた。僕は肯いて答えた。信じられないよ。

「ようこそ、エデンの園へ」僕の新しい友人が、半分食べかけのトウモロコシを 畑に放りながら言った。僕は本当に、彼が幼馴染みのように感じる。彼はとても 僕に親しくしてくれる。

 またもや僕の考えを読み取ったかのように彼が言った。「オーケー、アミーゴ、 まだ日は長い。もっとドライブしよう。神について尋ねていたね」僕は彼の後に ついて車に戻った。その話題には興味がある。

 

7.神について

 

マニュエルが僕に呼びかける。

「トウモロコシをくれた畑に感謝しないと」

僕はそう言われて今気が付いた。彼が食べ残しのトウモロコシを、祈りをこめ るように畑に「返していた」ことを。僕はあわてて畑を振り返り、感謝をこめて お辞儀する。おかしくて笑ってしまう。僕は、食べ物に対してこういう態度を持 つことが気に入った。

 車に戻ってから、僕たちは数分の間しゃべらずにいた。 「それで何が知りたいの?」彼が尋ねる。「うん、まあ、あなたが神についてど う考えているのかなって。まだ宗教があるなら、どの宗教が残っているの? 神 の存在は、もう証明された?」

彼は笑い出す。「一度に随分たくさんだな。君に何か教えてあげることはでき るが、証明はできない。こういう事柄は、そう簡単には説明され得るものじゃな い。僕は説明を試みることはできるが、君の信念が疑いに染まっている間は、君 には理解することができない。実際の経験を取り逃がしてしまうからね。幸いに も、今の君なら大丈夫だ。だから僕は、君の宗教についての質問を取り上げ始め たのだよ。僕は、みんながそれぞれの宗教をもっていると思う。その上で、僕た ちは宗教をめぐって互いに戦争をしたり、殺し合ったりするのを止めにした。そ んなことには、もはや誰も関心がないよ。僕たちは、僕たちみんなが嘘をつかれ ていたってわかったから。それに我々は、宗教の教義を通して神を見つけることも、我々自身を見つけることもできない。神を探すことは、我々自身を探すのと 同じく、時代遅れになった。そして我々が自分自身の内側を見始めたとき(その ことはね、アミーゴ、これまでとはまったく別の結果を生じさせたんだ。それに ついては後で話すよ)、我々はすぐに、自分たちが互いに依存し合っていて、互 いに繋がっていることを見出したんだ。我々は全体像が見えるようになって、自 分たちが探していたものを見つけた。それは、我々がありとあらゆる名前を付け ていたものだった。そして我々は謙虚になった。気持ちのいい謙虚さは内側から くる。我々が宗教で教えられたような謙虚さとは違う。内側に、我々は神ばかり か、我々自身をも再び見出した。そして我々みんなが「神」であることも。つい て来てるかな?」

 

僕は、彼が言ったことについて、しばらく考えた。彼の説明についていくのは 難しくない。彼は明らかに、僕に何かを納得させることに、何の興味も持ってい ない。そのことは僕にとって、何か爽やかな新しいものだった。僕の考えを読み 取ったかのように、彼が続ける。

「君が信じることを選んだものは、君が自分のために決断したものでなければな らない。君の選択は、何であろうが正しい。あらゆるものが、君の総体的な見方 を反映しているのだから」彼はここで微笑んだ。

「そしてそれぞれの見方は、いずれもまったく本物だ。君が本当だと信じるもの は、君の認識通りに自らを表すことができるし、そうするだろう。大きながらく たの山でさえ、過去に、あらゆる種類の戦争の、もっともらしい理由に利用され た。君が何かを選ぶときには、必ず君が気持ちよく感じるものを選ぶのだよ。そ して他の人にもこの権利を認める。すると、神についての質問は、もうあまり意 味がなくなる。僕の個人的なアドバイスは、あくまでも僕の意見だが、自分自身 を神性の存在として見ることだ。何の疑いもなく、そのような存在として見るこ とだ。宗教の教義は、それとは逆に考えるように教える。神と人間は分離してい なければならない。そうすれば、人々は完全性――知覚されうる全創造物ととも にある、創造主の完全性――を感じないからね。もし君が、君の信念が何の役に も立たないと気付いたときは、君はいつでもそれを変えていいんだ。予期せずに 巡り会った何か他のものにね。あの当時、我々には宗教を選ぶ自由があった。今、 僕たちはそれを実践できる」彼は笑いながら付け加えた。

僕にもそれは避けられない。しかしこの瞬間、僕は愛で一杯だ。マニュエル、 サミラ、トウモロコシ、音のない車、目にする人々、そして僕に道を教えてくれ たカモメに対する愛で。突然、そのすべてに繋がっているのを感じる。一なるものとして。彼の言葉が僕の中の何かを揺り動かしている。長い間滞っていた何か を。

「生命体を」と彼が言う。

「何?」とボーッとしたまま僕は答える。「生命体を、あまり分類しないことだ な。人々、君、僕、サミラ、カモメ、動物、植物。そのように区別することで、 我々はあまりにも長い間、ずっと自分たちの道を塞いできたんだ。つまり僕が言 いたいのは、何でも君の好きなように見たらいい。けれど、身の周りのあらゆる ものを、ヒエラルキーの中にあてはめることなく、ある命の形として見るように してごらん、ということ。そうすると、あらゆるものを同等なものとして見るよ うになる。ドラッグ・トリップするような気持ちよさに襲われる。麻薬を使わず に」

彼は笑みを浮かべて言った。

僕は、間違いを指摘されたようにはまったく感じない。彼のアドバイスを受け 入れることにした。

「それなら神は、僕らを通して自分自身について学んでいる。僕らはみんな神な のだから。そういうこと?」

「おや、おや、ものの見方を変えたばかりなのに、随分はやく新しいものが見え るようになりましたね。悪くないぞ、アミーゴ。君は飲み込みが速いな」

褒めてもらって嬉しい。気分は最高。僕は、自分が嵌まり込んだ奇妙な状況を 忘れている。突然、何もかもがとても面白くなり、ここにいることに感謝の気持 ちで一杯。僕は情熱家だ!

 

「信じられない速さだよ。我々がものの見方を変えるまで、どれくらい時間がか かったかを思うと」彼が目の端で僕を見ながら、そう言う。

「君は今なら、世界がたった 5 年でいかに大きく変わり得るか、信じられるで しょう?」

「ちくしょう!」 心の中で僕は言った。彼はただ笑っている。

それからの車中、僕たちは黙ったままでいた。方向を指示する僕の声だけが、 時折沈黙を破った。

農場の門の前で車が止まると、僕は「友だちはまだそこで暮らしているだろう か?」と言った。

「教えてあげられるけど、君が自分で見つける楽しみを台無しにしてしまうから ね」彼は、さっきのサミラみたいに秘密めいた調子で答えた。

トゥルーマン・ショーの中にいるみたい。他の人たちは皆、僕について何かを 知っているようなのに、何も言いたがらない。僕も今は何か言えるような気分じ ゃない。僕は、僕の運転手に体を寄せて、心からのハグをして、送ってくれたこ とに感謝した。

「僕は君にありがとうって言わねばならないよ、アミーゴ! 君に会えて、僕は 本当に信じられないくらい喜んでいるんだ。僕らはまたすぐに会えるさ。じゃ、 またね!」その言葉を聞きながら、僕は車のドアを開ける。 車から降りて我が 家の前に立ち、ショックを受けた!

 

8.旧友と出会う

 

家はすっかり様変わりしていて、もはや同じ家だとは思えない。美しく手直し されていて、そこら中、花と実のなる植物だらけだ。僕が覚えているのは、島の 他の場所と同様、植物のまだらな乾いた土地の夏景色だ。それが今や森になって いる。水が流れているのが聞こえる。プールから聞こえる音よりも大きい。虫は 空中でブンブン羽音をたて、小鳥は歌いながら飛び回り、そして僕の犬が、嬉し そうに尾を振りながら向かってくる。

「ファズィ!」僕は彼を呼び、他のことは皆忘れた。鍵を持っていないけどフェ ンスのどこを登ればいいか分かっている。今気付いたけど、門はまだあるのにフ ェンスがない。それなら門に何の意味があるの? ハンドルを押したら開いた。 いいねえ。鍵のない世界。気に入った。一つの不安が解消されると、鍵を忘れた ことなど、もう過去のことだ。農場に入り、僕の四つ足の友とあいさつする。幸 せだ。奇妙なのが、僕が数時間前に見たばかりだと思っているファズィが、少し 老けて見え、長い間僕に会っていないような反応をしている。そうそうこれほど の歓迎を受けるわけではない。ファズィはすっかり興奮して、くるくる走り回り、 跳ね返っている。犬にしかできない歓迎ぶりだ。

 

「ネイサン? ここで何をしているの?」背後から女性の声で聞かれた。

「あなた、ちょうど・・・・・・」

僕が振り向くと、彼女は静止した状態になり、目を大きく開いた。

「オー・マイ・ゴッド、そんなこと思いつかなかったわ。このときを完全に忘れ てた!」

僕は彼女を見たが、誰だか見当がつかない。どうしてここでは、誰もが僕のこ とを知っているんだろう。僕の方は誰も知らないのに??

「ちょっと考えさせて」と僕は言った。「君も、僕が自分で見つける楽しみを台 無しにしたくないんでしょう?」

彼女は僕を見て笑い出す。彼女は自分を抑えることができず、両腕を広げて近 づいてきた。僕の真正面に立つと、彼女は自分の両手を僕の顔にあて、ピチャピ チャ叩いた。笑いながら僕の唇にキスして言った。

「私たちには、あなたがビーチに来る日付まではわからなかったわ。私たち、ず っと待っていたんだけど、それがいつになるかは知らなかったの。これってすご いことだわ! 今はあなたが二人いる。ただあなたの方が5歳若いだけ!」

二人? 何が二人? 次第に分かってきた。『バック・トゥ・ザ・フューチャ ー』がパッと心に浮かんだ。時空連続体における誤作動、(スタートレックの) スポックや『LOOPER/ルーパー』も頭をよぎる。ここには5歳年上の僕がいる のだと察知する。この瞬間、僕を安心させてくれる唯一のことは、ここがまだ僕 の家なので、ここにいられるということ。そして本人は明らかにまだここに住ん でいること。再び、すごく混乱してきた。

 

「あなたは誰?」僕が尋ねる。

「私はクリスティーナ。バウチの妻よ」と彼女が答える。

「あなたはまだ私を知らないわ。来て。みんなあなたを見て喜ぶわ。特にネイサ ンは。つまりあなた、うーん、つまり・・・・・・あー神様、信じられない。あなたが あなたに会えてどれくらい喜ぶことか、あなたには信じられないでしょうね。え ーと、その逆も」彼女が笑う。

ここの人たちみんな気が狂ってるの、それとも僕が? 彼女はとても愛情のあ る人で、こうして手を引かれて歩いていると、彼女の喜びがすぐに伝わってくる。 僕らは、すっかりリフォームされたテラスを歩いている。テーブルの上には果物 を盛った鉢があり、色とりどりの花々がそこかしこに咲いている。そして僕が覚 えているのよりもずっとこぎれいにしてある。何て美しい場所だろう。

「腰掛けて」と彼女が僕に勧める。

「すぐに他の人たちを連れてくるわ!」 彼女が行ってしまってから、僕は目を閉じ、目が覚めることを願った。足音が 聞こえる。目を開けると、今のところまだ僕は目覚めていないことが分かった。 クリスティーナが階段を上ってくるのが見える。後ろに従えているのは、マーク に、バウチに・・・・・・僕だ。息ができない。そんなに年とって見えない。元気でい たんだ。心の中でそう思った。

別の僕が僕を見た。 「アーーーーーーーー! ほーら、いたっ! やったぜ! みんなに言ったよな あ。夢なんかじゃないって!」

僕もこっちの世界の僕をこのような驚きをもって見ていたに違いない。彼がそ ばに来て目の前で跪いた。

「これは失礼。君をさぞかし混乱させたことだろうね。わかるよ。だってすでに 経験したことなのだから。調子はどうだい? いいわけないよね、思い出すよ。 オーケー、この状況にどう対処するかだ。あらゆる事態に備えていたのだが、現 実となると違うもんだな。僕が君に何かしてあげられることある? 君の気分が 良くなるような?」

僕は、彼の健康的な白い歯に気が付いた。今のぼろぼろの歯とは全然違う。

「いくらか説明するっていうのはどう?」僕はドライに尋ねた。

「これが夢じゃないことを君に保証するよ。ただし、保証できるのは、この瞬間 以降ことだよ。僕がまだ夢を見ている場合は除くが、それは非現実的だな。僕が 今知っていることから思うに、君はちょうどよい時に元の世界に戻る。まずは、 君が安全であることは僕が保証するのだから、君はリラックスしていいよ。この 言葉が5年前、僕を救ってくれたのを知っている」

彼らはリラックスして、僕も少しリラックスした。クリスティーナがジュース を入れたピッチャーとグラスをもって戻ってきた。

「絞ったばかりよ」そう伝えてから注ぎ始めた。彼女は美しく、太陽みたいに輝 いている。彼女は実に幸せそうだ。僕は彼女が好きだな。今になってやっとマー クとバウチは疑いを捨てた。

「ちくしょー」とバウチが言って僕に笑いかける。「俺は信じていなかったぞ。 今の今まで一つも信じていなかった。だけど・・・・・・」彼は話すのをやめ、僕をき つく抱きしめた。彼の目は以前よりも光を放っている。それに体もかなり細くな っている。

「おい、どうしたんだい?」僕は尋ねた。「口数の少ない君なんて初めてだよ!」 僕たちが互いに笑顔を交わしてから、マークも心から僕にあいさつしてくれた。 皆が腰をおろすとき「ワー、すごいことだよね」とこっちの世界の僕が言ってい る。「これが現実なのかどうか、本当は分からなかったんだ。ずっと5年間待ち 続けて、今、君はここにいる。これだけ疑っていたのにもかかわらず!」

 

9.自分の中の平和

 

突然、二人の子供が、テラスの様子を見に来た。

「ウィリアムとステファンだよ」と、もう一人の僕が言う。

「ウィリアムはクリスティーナとバウチの息子、そしてステファンはマークとナタリーの息子だ。じきにナタリーにも会えるよ」

「すると、君には子供がいるのか?」僕はバウチに尋ねた。2015 年のバウチには子供がおらず、一生子供ができないと思われていた。

「そうなんだ」彼は笑って答えて、自分の息子を膝にのせる。「完璧な子だろう?」 ウィリアムは頭を父親の胸に預けた。目は半分閉じかけていたが、興味を引かれて僕を見つめている。本当に良かった。僕は自分の混乱を忘れていた。驚いたことに、ステファンが僕のそばに来て両腕を上げた。僕はとっさに彼を膝にのせた。 彼は皿のように大きな目で僕を見ている。そして僕は再び、何か馴染みのない感覚――自分の周りに漂う、圧倒的な愛と喜び――を覚えた。そして僕は、みんながこの事態を承知しているように感じた。涙がこぼれてどうにもならず、流れるままにした。この小さな坊やは指先を僕の鼻にあて、ぶっぶっと唇を鳴らした。

「人生は良いものだよ!」彼が言う。「それを忘れちゃったの?」

僕の内側の殻が打ち砕かれた。ここは一体どうなっているんだ?

「続けて」と僕は言った。「救われる気がするよ」

するとステファンは、僕が予想もしなかったことをした。彼が僕を抱きしめたのだ。こんな一途な献身ぶりを僕は知らない。父親が息子にするようなハグだ。

「すべてうまくいってるよ」と彼が言う。彼は僕を抱き、僕は子どものようにむせび泣く。他の人たちは、敬意を払って見守っている。彼らは、このことをもう知っていたようだ。この小さな坊やは本当に僕を抱いている。僕は彼の中に、子どものものとは思えぬような強さを感じた。

「すべてうまくいってるよ」彼の小さな声が、また繰り返した。すると僕の中で何かが反応しているのが感じられる。何かが僕の中で変わりつつある。僕の一番深いところから平和が生じた。それに解放されたかのように、自由が目覚め、意識が広がった。とうとう自分の中に平和を見出した。僕がこれまで持っていたあらゆる欲望、恐れ、馬鹿げた考えが押し寄せてくる。まるでそれ――終わりのない平和、一体感と調和――から逃れるように。平和を、僕は自分の中に平和を感じることができる。

僕の中の平和。世界との平和な関係。僕はあらゆるものと平和な関係にある。 僕はあらゆるものと一つだ。ぼくがすべてである。僕は宇宙だ。アルファでありオメガ、上のものであり下のものであり、光と闇であり、そして僕は愛で満たされているものだ。

まるで暗記しているように、マニュエルの言葉が頭の中で響いている。

「自分自身を神性の存在として見ることだ。何の疑いもなく、そのような存在として見ることだ」

鼻の頭に柔らかい感触があり、ぶっぶっという音が聞こえる。涙で濡れた目を開けると、これまで見たこともないような澄み切った目が飛び込んできた。

「人生は良いものだよ! 決してそれを忘れちゃいけないよ!」とステファンが言う。

今度は僕が彼に聞いた。「君は何者なんだ?」 目の前に子どもがいるようには思えない。ある存在が、子どもの体に宿っているように見える。このように子どもを見ているのは、生まれて初めてだ。僕は彼を、まだ僕の膝に座っている、同等の存在として見ている。同等かつ完全なる人物として。

「あなたは誰なの?」彼が質問を返してきた。

「わからない!」

「それはいいことだよ」

「どうして、いいことなんだい?」

「だってあなたは無であると同時にすべてだからだよ。思い出した?」

4歳の子どもが発したこの質問が、再び僕を困惑させる。僕はただ肯いて、

「うん。思い出したよ」と言った。

たった今思い出したのは他の人たち。まだそこに座ったままで見守っている。

「もうこれで、君は時局への備えができた」もう一人の僕が説明し出した。「これで君も地球の振動数を保つことができるはずだ。そして君を通して、多くの多くの人たちもそうなる。たとえ彼らがまだそのことを知らなくてもね。僕はこのことを知っているんだ。だってもう起きたことなんだから。ジュース飲んだら?」

 

しばらくしてから、僕はネイサンからの散歩の誘いを受け入れた。ステファンの「処置」以降、これまで味わったことのないような気分でいる。僕はまったく心安らかで、集中して明晰に思考できる。ポジティブで建設的な考えしか浮かばず、恐れたり心配したりする理由は一切ない。ネイサンと並んで歩いていると、 僕は一層気が楽になった。僕の周りにいる人たちの中で、僕は彼に最も理解されているのを感じる。彼は本当に、僕がどう感じているか分かっているようだ。彼は5年前に、すべてを経験したのだから。それ以降、彼は、今の僕とはまったく違う人物になったようだ。彼は、今の僕よりもずっと落ち着いていて分別心もある。

 

「ステファンは僕に何をしたの?」庭をしばらく静かに歩いてから尋ねた。

「そしてどうして彼にそんなことができるの?」

「彼は小さなシャーマンなのだ。僕たちは早くからそれに気付いた。彼がハーブ やエネルギーワーク、ヒーリングに特別な興味をもっていたからだよ。彼はまだ文字は読めないが、周りの植物については何でも――何て呼ばれているのか、どんな治癒力があるのか――知っている。彼は小さな百科事典みたいだよ。彼には素晴らしい教師たちがいて、彼の母親、ナタリーから多くを受け継いでいる。彼女もこの方面では随分活躍しているんだ。ステファンは他のことにはあまり興味を示さない。彼はすぐに彼女の仕事を手伝えるようになった」

「彼女は仕事に自分の子どもを連れて行くことができるの? 格好いいね」僕は感心してそう言った。

ネイサンはただ僕を見て笑い出した。

「別の視点から自分自身を見るのって、すごく変な感じ。5年前に、僕の5歳年上の自己が言ってたことは、今だからこそ理解できる。彼も5年前にそう言ってたよ!」彼は僕の質問には答えずに、そう言った。

 

10.遊びと学び

 

彼は「ちょっと失礼」と言って、僕にも彼の隣に座るように身振りで招いた。 木の切り株がうまくベンチの形に彫られている。

「こんなふうに想像してみて。今日では誰もが自営業者。ただし、誰も企業登録する必要なし。だって、どこへ登録しろっていうの? 今は状況が違うんだ。誰もが自分の興味に従っている。これは好都合だぜ。喜びと情熱を傾けて何かをすることができるのだから。このような興味を通してこそ、速く学べるし、上達もする。遊ぶことと学ぶことは同じことなんだ。動物を見ていれば、それがよくわかる。人間だって違いやしない。我々は最も学びやすい方法で学べるようにした。 それが今の我々の世界だ。遊びたいという衝動にかられて遊ぶときの喜びと情熱が、我々に速く効果的に学ぶことを可能にしてくれる。遊ぶことの論理的副産物は、我々の能力と技量が高まることだ」

「分かるよ! 2週間前に YouTube で André Stern( https://www.youtube.com/watch?v=N0fk7QOLbs8 )の講演を見た。彼は学校へ一 度も通ったことがないのに、かなり教養のある人物なんだ。世間的な教養とは違う種類の教養だけど、彼は間違いなく愚か者ではない。彼の話を聞いていると、 自分がほとんど馬鹿みたいに感じる。だけど、彼が鼓舞してくれるから、そんな思いも打ち消されてしまう。君もそのことを覚えてる? 君だってそれを見たはずだよ」

ネイサンが笑っている。「覚えているよ。覚えているどころか、本人にお目に かかったこともある。彼の父親と息子ともね。僕は彼らと少し仕事をしたんだ。それに Gerald Hüther 教授とも仕事をした。アンドレは TV にも出演して有名になったよ。以前よりももっと人々を励ましている。子どもの通学をやめさせるだけだと、それに代わるものがない。彼のおかげで、夢中になるような熱意の大切さに、人々の関心が向くようになった。その熱意こそ、古い時代――僕たちは 2016年までを、そう呼んでいる――の奴隷民が失っていたものだと思う。人々は、今日でもなおアンドレを愛している。人々を目覚めさせたという意味での、彼の重要性は、100年前のジークムント・フロイトやカール・グスタフ・ユングに匹 敵する。彼がいなかったら、あるいは、彼の NoCredit ――彼の言い方だよ―― がなければ、多くの人たちは、学ぶことと熱中することが、これほどがっちり結びついているとは認識できなかったよ」(訳注:credit には履修証明、履修単位 の意味がある)

「つまり子どもたちは自由に成長できて、もう学校に行く必要がないってこと? 信じ難いことだけどなあ」

「君の言う通りだと思うよ。でも本当にそうなんだ。古い校舎はそのまま残っているが、現在では違う用途にいろいろ利用されている。そして誰も通学を強いられない。自分の子どもに通学を強いるということは、結局、精神的にも身体的にも子どもを虐待することになる。数時間も椅子に座り続けているよう誰かに強いることは、その人の人生に大きな影響――かつて認識されていたよりも大きな影響――を及ぼす。そういうことを人々が悟ったとき、彼らは学校に代わるものを探し始めた。そのとき、アンドレ・スターンは大勢の人たちを励ますことができた。というのも、彼の周りにいた人たちは、それよりも前から学校に代わるものを探し始めていたから」

「今日の子どもたちはどうやって学んでいるの? どんな様子を思い描けばいい の?」

「僕ならこう言おうかな。彼らはただ生きることで学んでいるのだ、と。学ばなければ生きていけない。そんなことはもう通用しない。学校でさえもね。当時と今の違いは、君が自分の興味のあるもの、学びたいものを選べることだ。そして君は、同じ興味を持つ、他の人たちと共に学ぶ。我々はそれを人生大学と呼ぶ。 君は誕生時に卒業し、あらゆる科目の、そしてみんなのための、教師であり、しかもあらゆる科目の学生である。誰もが君から学ぶことができる。もしそうしたければね。そして君も、そうしたければ、彼らから学ぶことができる。いつだって、このようになっていたのだ。しかし学校は、皆にその事実が見えないようにしてしまう。学校の外で学ばれたことは、何もかも劣っているように見られた。 修得したことを証明するものは何もない、どれほど君がよく学んでいるかなんて 重要じゃない。証明書が無ければ、その知識を利用して生計を立てることもできなかった。

『生計を立てる』なんて言い方は、すっかり古くさくなって、もうずっと使ったことなかったよ。今日では、誰も何かを取得したり、稼いだりする必要はない。 生きるための基本的なものは(生き残るためだけのものではない)みんなが自由に利用できる。僕は、'school' が 'train'(訓練する、枝などを好みの形に仕立てる)の意味であることを知っている。木からは学ばない庭師みたいだ。だけど枝を刈り込んで木を 'train' する。古いシステムの学校は、人々を訓練して標準化するためのものだった。TV やメディアもまた人々を『教育』し、その結果も同じものだった」

「今日だと、そういうことはどう変わったの? 番組制作では何が変わった?」

「特に変わったのが、知識として伝えられていた『消費情報』だ。今日では、我々みんなが、ある一つのことを認識している。それは、誰かが何かを言っているからといって、それが正しいわけではないということ。TV であろうが『学校』であろうがね。我々はむしろ、すべての情報に対して、それがインスピレーションを与えてくれるかどうかという視点で見ている。形を与えられた情報は、いずれも相対的に受け止められている。誰も、次から次へとエンドレスに伝えられる真実を保持することはできない。ある人にとって明快で理解しやすいことでも、 他の人にとっては必ずしもそうではない。だからといって、その人が愚か者であるとか、そういうことではない。もし君がある情報に興味を引かれた場合、それは、君がさらにそれを探求するように招いているのだ。すると我々は、以前には、 そう簡単に知り得なかったもの――真の理解――にアクセスする。実力は理論的知識ではなく、実際の経験に基づいて得られるものだ。それは大きな違いなんだよ。その代わり一般知識は前よりも減った。一般知識はすべて我々の周りにあるのだから、それを自分でもっている必要はないんだ。『百万長者になるのは誰だ』 みたいなクイズショーには、もう優勝者はいないだろうね。幸いなことに、そのようなクイズショーはもはや必要ない。誰も百万長者になる必要なんてないからね。今日の富の定義は、以前とはまったく異なっている」

「どんなふうに?」僕は知りたかった。僕にそれが想像できないからではなく、 すでにそれを経験している人の口から聞きたかったからだ。たとえその人が5年後の自分だとしても。

(つづく)

 


2020 The New Earth 11-13

2015-12-12 | 2020 The New Earth

Now Creationさんより

 

2020 The New Earth

     A travel report

http://2020-die-neue-erde.de/sites/2020/files/dateien/2020-the-new-earth_jesus_vacationer_bauchi-semifinal_version.pdf

   世界中で新しい地球を共同創造するため、本書を無料で公開する旨、本文中に記されていました。

   人名は英語読みにしました。小見出しは翻訳の都合で訳者がつけました。

 

 

2020 The New Earth

A time travel report 

(つづき) 

11.関係性

 

「僕は豊かさを感じているよ。自分の興味を追求できるからね。以前は、十分な お金を持っている人だけがそうできた。今、僕にはしなければならないことが何もないんだ。ただ、何かをしたいと思うときだけ、それをする。例えば、この素晴らしいリンゴを味わいたいと思えば」彼は腕を回して木から1個摘み取る。 「僕はそれを食べねばならない。その『ねばならない』が、欲求から来るのか命令から来るのかで、大きく違う。つまり、内側から来るのか、外側から来るのか、 ということ。もし君も食べたけりゃ、自分で取ればいい」彼は笑顔でそう言って、 リンゴをかじる。

 

「君、知ってるよね」とリンゴを食べながら、彼は話を続ける。「昔はどんなだったか今でも思い出せるよ。僕は他の人に抑圧され、知らないうちに影響され、 僕が普通ならしないことをするように強いられていた。人にそうされることを、 自分で自分に許していたんだ。それに、僕がしたかったことを、他の人のせいでしなかったことも。当時、我々はあまりにも他の人のことを気にし過ぎていた。 それじゃあ、今日のような自由や豊かさは実現しないよ。それは悪循環を形成していた。誰も自分自身を大切にできず、他人を気にし、次第に悩みを抱えるようになる。我々は空しさを感じ、世間は我々と対立した。すると我々は、それを外側で埋め合わせようとした。

内側はどうかと言えば、死ぬまで不可解なままだった。だから誰も自分の生き方を立て直す機会を持てなかった。それを願ってそうした人たちがいても、邪魔する人たちに悩まされる。それはすごく不満が募ることだった。けれども、だんだん多くの人たちがそれを理解し、互いに助け合うようになり、我々はストレス要因に対する、ある種の免疫力を獲得した」

僕らは黙ったまま隣同士で座っている。僕は、ここ数週間、数ヵ月間に自分が受けたストレスのことを考えていた。僕の周りには、僕と僕のライフスタイルを批判し、たくさん『助言』をしてくれる人たちや、本当に僕に対して敵意があり、 僕を放っておいてくれない人たちがいた。そのくせ、彼らは自分の人生さえどうにもできないのだ。彼らは、自分たちが犯したかつての間違いを、僕も犯しているので指摘するのだと言う。彼らが自分たちの弱点を僕に投影しているのは明らかで、僕はただ彼らを無視すればいい。ところが、彼らは僕を放っておかないので、僕は彼らから遠ざかることができなかった。

最悪の場面は僕ではなく、バウチに関することだった。僕は集中攻撃を受けていた。僕がバウチに味方し、彼を擁護したからだ。だから僕も拒絶され、バウチと同じ目に遭った。

僕を支えてくれる人たちもいて、あんまり真に受けるなと言ってくれた。しかし、結局、僕は浜辺で『完璧な日』を楽しめたのだ。だって違いを見ることができたのだから。

僕は知りたい。「もし誰かが、君たちに何をすべきか告げようとしたら、今の時代の君たちはどうするの?」

「まずその人を笑っちゃうよ。それからその人に尋ねるね。『何かあなたのお役に立てることがありますか。それとも、あなたが僕の役に立ちたいのですか』どちらでもないなら、僕らはただその場を立ち去るだけさ」

「もし平和を乱す人が家の中にいるとしたら?」

「そのときには、その人に出ていってもらうよ。もしくは、その人だけを居させたまま、自分が出て行く。今日の我々には、どこにも縛り付けられない自由がある。誰もストレスを感じる場所に留まっている必要がない最近は不愉快な人の方が少数派で、しかも死んでいなくなりつつある。前よりも楽になったと、僕は認めないわけにはいかないよ。気づきの遅い人たちでさえ、今では理解している。 それぞれの人が、自分自身の幸福、あるいは不幸に責任があることを。自分の状況を嘆いていたり、誰々が何をしたとか、何をしなかったとか嘆いている人は、 そのことをまったく理解していない。腹を立てている人は、その点を本当に見落としているんだよ」

彼はもう一度リンゴをかじり、残りを庭へ返した。僕にはこれからの5 年間 で学ぶことがたくさんあるのだな。

 

夕べは夜更かししなかった。夕飯にごちそうがふるまわれたが、僕たちは、ここ数年間でもたらされた変化については話をしなかった。どっちみち僕の頭はもう破裂していた。1 日にあれだけたくさんの情報を詰め込んだので、僕の頭は何も入る余地がなかった。僕は早めにベッドに入り、すぐに眠りに落ちた。今朝、またここで目が覚めて嬉しかった。というか、状況をどう見るかで気持ちが変わる。全体的には、非常に面白い経験であるし、滅多にない機会を持てたことが、 僕にもだんだん分かってきた。ネイサンが、僕が元の世界に戻ることを保証してくれたので、一瞬一瞬、楽しむことに決めた。夢かどうかなんてどうでもいい。 僕の経験はとてもリアルなのだ。

その日の朝遅く、僕はテラスでお茶を飲んでいた。 バウチが僕のそばに腰掛ける。

「おっす、よく眠れたかい?」彼はあくびをしながら僕に尋ねた。まだ眠そうな目をしている。なかには変わらないものもあるらしい。彼は夜型人間で、遅くまで寝ているタイプだ。他の人と同じ時間だけ眠ったとしても、やっぱり遅く起きてくる。

「俺は一日平均8時間をキープしている。8時間を身体に、8時間をマインドに、 8時間を魂のためにあてる」彼は5年前、僕にそう説明した。彼の言う一日とは、 起きてから寝るまでを指しているので、その時間は相対的なものだとも言っていた。彼の一日が48時間のときもあれば、たった2時間のときもある。それでも彼が非常にうまくバランスをとっていることには感心する。

いま彼は僕の隣に座って、ジュースを注ぎながら僕を見ている。

「いやはや、まあ、何と。俺は本当に自分を抑えなきゃならんわ。お前さんを言葉の海で溺れさせないようにね。君に聞いてもらいたいことはたくさんあるが・・ ・・・・」彼は僕に微笑みかけてから続ける。「俺もやっぱり、君が自分で見つける 楽しみを台無しにしたくないからな。この台詞聞いたの4回目だろ。だけどここでの時間はそんなに長く残されてはいない。理由があって、俺にはこのことが分かっている。そしてその理由のため、俺は君にまだ何も言わない。俺は台本通りにしているんだ。君に質問させてあげるよ。俺の答えられる範囲で喜んで答えよう」

「クリスティーナと知り合ってどれくらいになるの? 君の妻になってからどれくらい経つの?」僕は個人的な質問から始めた。

「まあ、妻というのは彼女が自分でそう呼んでいるのさ。俺はむしろ自分のことを彼女の男だと見ている。それは変化を反映してのことだよ。今日の我々の関係性は、以前とは少し違っている。我々は結婚しないし相手を独占しない。そして一番重要なのは、我々が互いに相手に属していないことだ。我々が独立性を得るにつれて、我々は皆一つであり、みんな繋がっていることに目覚めた。そして悟ったんだ。自己を完成させるのに、他者は必要ないことを。我々の準備ができたとき、我々は別のレベルの自己を見出した。以前の俺たちが知っているような、もたれ合うような関係は、もうないんだ。愛には以前とは違う定義がなされている。2010年にも俺はこのことを話したが、君には理解できなかった。他の連中と同様、愛を欲望と思い違いしてたからな。当時、俺が言ってたこと覚えている か?」

すごくよく覚えている。当時、バウチが You Tube ビデオで語っていたことが、 僕の心を占領した。だから僕はバウチに僕の恋愛問題を話したんだ。僕の彼女が浮気して、僕はどうしたらいいか分からなかった。二人の仲はうまくゆかなくなった。彼女が他の人に心変わりしても、あまり驚かなかった。それでも僕は苦しみ、自殺を考えた。自分が欺されたように感じ、自分には価値が無く、女性を幸せに出来ないのだと思った。バウチのビデオに、誰かが誰かを幸せにする義務はないと言っていたものがあった。数日、眠れぬ夜を過ごした後で、勇気を振り絞って彼に手紙を書いた。当時、まさか彼と一緒に暮らし、彼が親友の一人になろうとは、考えもしなかった。そして夢にも思わなかった。5年後の未来に、こうして朝食の卓を共に囲み、話し合っているなんて。

「君は言ってたよね。愛している人の幸せを望むことで、無条件の愛を生き、実践するのだ、と。つまり、その人のすることは何でもオーケーで、なぜなら、他者に自由を与えなければ、自分も自由でいられないから。少し練習が必要だけど、 最初のうちは、あまり自分や人に厳しくすべきじゃない、とも言った。ともかくそれには感謝するよ。とても救われたんだ。その後付き合った人はいなかったけどね。僕はますます多くの人たちの幸せを願えるようになった。そしてもちろん、 その中に僕の幸せも入っている」

彼は愛に満ちた顔で僕を見ている。

「わかるだろうが・・・・・・」彼は考え深そうに言った。「当時はほとんどみんな机上の空論に過ぎなかった。何回かそれを実際に経験する機会があったが、今日と比べれば、何も知らなかったのと同じだよ。俺はクリスティーナとある経験をした。どんな経験かは言えないが、無条件の愛を訓練するには、彼女は完璧なスパーリング・パートナー(ボクシングの練習相手、仲間)だと思う。彼女が笑うのを見るのは、今でも俺にとっては世界で一番美しいことなんだ。人が笑っているときって良いものだが、彼女の笑いは俺の中に最高の幸福感を呼び起こすんだ。 俺がそのためになすべきことは、彼女に幸せでいるために必要なことは何でもできる、完全な自由を、与えることだ。不満をもたれたり、罰せられたりする心配をせずに何でも出来る自由をもつ人間にとって、その代償は小さいものさ。俺には他の女がいる。けれども俺は彼女の男なんだ。彼女にも他の男がいる。けれども幸運なことに、彼女は俺の女なのだ。ラベルを貼ることは、所有権とは何の関係もない。一体感に関することだ。我々はただ共にいるだけだ。それを表現する言葉はなく、感情があるだけだ。それを証明することも、生涯を誓い合うことも我々には必要ない。劣っていたり、価値が低い人なんて誰もいない。幸せになるために、我々みんなが互いに助け合う。そのほうが、愛の本質によっぽど近い結びつきだよ。昨日、ステファンが君に行ったのも、愛の本質に基づいた結びつきを調えることだった。だから、競争は存在しない。一体感において対抗心の入り込む余地はない。それは分離の兆しだ。君はこの知識、物事の見方を身につけたので、元の世界に戻ってすぐに、新しい機会に恵まれるようになる。そのとき君は、すでにここで君の女の子に出会っている」

彼はそう言って微笑み、僕は困惑した。僕は自分の気持ちさえ考えたくもなかった。ある顔が突然頭に浮かび、心臓の鼓動が狂ったように激しくなる。いかなる甘い考えも抱くまいと、すぐに話題を変えた。

 

12.個の自立

 

「お前がお前自身の王なんだ。君は以前みんなにそう言ってた。それ、何か効果 あった?」

「それが人生に対する一般的態度になったよ。当時、俺がそう言ったのは、周りの連中がみんな俺より上だと思って、俺に何をすべきか言ってきたからだ。今は、みんながそれぞれ独立した存在であることを認め、我々みんなが自分自身の王でいられる。他の誰かの王ではなくてね。それについて誰もがこんなふうにわざわざ言うわけじゃない。当たり前のことになったんだよ。今日では誰もが、自分自身の王であり、自分自身の人生を生きている。だから、もう他の人に指図する必要なんてない」

「Terra Nia、我らの地球、自由民の同盟」僕はじっくり考える。

「そんなとこだな」とバウチが笑う。「当時、マザー・アースの地域分割を止めることが、計画の一部にあった。時間もかかったし、他の同種のネットワークからの助けも必要だった。でも結果が出た。TerraNia.org website (http://translate.google.com/translate?u=http://www.terrania.org/de/&hl=de&ie=UTF8&sl=de&tl=ja)はとても有名に なった。創立者の Johathan Leonhard が、みんなのものであるのは地球だけではない、ネットワークもみんなのものだ、と適切な言葉で説明してからは特に。 それまでは、彼は自分の利益を追求していると糾弾されていた。ところが、非難していた連中の方が、それ以上に痛手を被ることになった。こうした問題を抱えていたのは彼だけじゃない。このようなことをしていた者はみんな同じ目に遭ったよ。一番酷っかったのは Thomas。『Eigiland』とその背後にある発想が、人々をインスパイアした」

「そうだね。そうだろうと思うよ。一週間前、僕は彼と船に乗ったんだ。Eigiland 賛歌(https://www.youtube.com/watch?v=ldf-MW0oT90)のビデオを君が一緒につくったでしょう」 「おー、そうだよ。忘れかけていた」バウチがまた笑った。「その歌、流行ったんだぜ。どういうわけか、タイミングがよかったらしいんだ。俺の知る限り、今、トーマスとケイティはバハマで船に乗ってるよ。だが、歌はまだここにある。しばらく聞きも歌いもしなかったがね。まだ覚えているか?」彼が聞いたので、

「もちろん」と答えた。すると彼は素早く立ち上がってギターを持ってきた。

「また一緒に歌おう。こんなエキサイティングな時代のサウンドトラックに入ってるよ」

 

Jeden Morgen fruh aufstehn

zur Schule oder Arbeit gehn

und den lieben langen Tag

das zu tun was Ihr mir sagt..

darauf hab ich keine Lust,

denn das erzeugt in mir nur Frust,

ich tu lieber was ich mag

weil ich da viel mehr von hab.

Wenn ihr nur wusstet,

oh wenn ihr nur wusstet,

oh wenn ihr nur wusstet

wie simpel dieses Leben ist.

Das Leben ist schon

das Leben ist toll

das Leben ist wunder-voll

weil alles kommt wie es soll.

Ihr sagt mir was ich denken soll,

doch denk ich das, geht’s mir nich so toll.

Ich folge lieber der Natur,

dem Miteinander, der inneren Uhr

Die Sonne scheint, ich fuhl mich frei,

genies den Tag und hab Spass dabei,

wir sitzen hier in einem Boot

zusammen halten wirs im Lot

und legen an ner Insel an,

auf der man frei sein darf und kann.

Lieben alles um uns herum

und nehmen keinem mehr was krumm.

Wenn ihr nur wusstet,

oh wenn ihr nur wusstet,

oh wenn ihr nur wusstet

wie simpel dieses Leben ist.

Das Leben ist schon

das Leben ist toll

das Leben ist wunder-voll

weil alles kommt wie es soll.”

 

 

「いいねえ、いまだにグッとくるよ。僕、この歌好きだな。Rubin や彼のつくったタイムトラベル・ビデオのこと覚えてる? 君が仲間とつくった最初のビデオを取り上げていたよね。彼のビデオの中で、彼は、彼の今においてしゃべっていた。君の今におけるレコーディングについて。そしてリスナーが、リスナーの今において、どのように聞いているかも。それぞれまったく異なる今なんだよ」

バウチは僕を見てニヤリとする。

「それはまさにルービンが、例の本を読んだ後に言ったことだよ」

「何の本?」

「君がトリップから戻ってすぐに――トリップというのは、俺が今、本当に起きているのを見てるやつ――君の体験談を書いて欲しいと、俺に頼んできた。最初、 俺は疑っていたが、すぐに書き始めた。6 月の終わりには書き上がったよ。それからだよ、回り始めたのは。ネイサンは昨日そのことを言っていたんだ。俺たちみんなが君の体験談を知っているのはそういうわけなんだ。よく知られているんだぜ」

僕の口がぽかんと開いていた。今彼は何て言ったんだ? 僕が有名だって?

「有名じゃないよ」とバウチが言う。彼も僕の考えが読めるらしい。「君が考えているようにじゃない。大勢の人が君のことを知っているが、君が誰かは、誰も知らない。君はいつでも公衆の目に晒されるのを嫌がっていたが、それは今でも変わっていない。だから俺は、君が無名のままでいられるように本を書いたんだ。 ネイサンにまた会った時にでも、彼の意見を聞いてみればいい。それについては俺の方はしっかり伝えたからね。俺の観点から見ていることを君に知ってほしいのだが、個人的な平和を築くことに関して、君はいつでも良い手本だったよ。君は今でも偉大な無名人であることを楽しんでいる。俺たちみんなもそれを幸せに思っているよ。それに俺は、もし俺たちが君のことを人々に明かしていたなら、ことの成り行きは違ったものになったと思う。魅力のない本になっていただろう」

 

僕はこのすべてを消化しなければならない。バウチもそう思ったらしく、何も 言わずにギターをつま弾いている。少し経ってから、クリスティーナがテラスに戻ってきた。彼女は僕に温かい挨拶をくれ、庭で二人の男の子たちと植物を愛でていたのだと言った。バウチも彼女に温かくて親密な挨拶をした。僕はサミラが頭に浮かんだ。ウィリアムとステファンもやって来て、光り輝く笑顔で挨拶してくれた。二人とも、二人のネイサンがいることを楽しんでいるようだ。とても面白そうに見ている。彼らもその話を知っているらしい。彼らはあまり質問しないが、すごく楽しんでいる。彼らの目は輝いていて、まるでクリスマスのようだ。 彼らはおかしな子たちで、はしゃいでいた。しかし、それでもどこか穏やかで、 イライラさせるようなところは何もない。ウィリアムが椅子の後ろから空気注入式のマットレスを持ってきて、僕に膨らませてくれと頼んだ。

彼の役に立てて僕は嬉しい。空気を入れ終わると、二人はそれを持ってプールの方へ消えて行った。クリスティーナがキッチンからサンドイッチを持ってきて、僕らと一緒に座った。

 

「どうやって二人は知り合ったの? 一緒になってどれくらいになるの?」僕は知りたかった。

「インターネットを通じてよ」とクリスティーナが言う。

「2005年には、もう Face book で知り合っていたの。連絡を取り合っているうちに、お互いにぴんと来るものがあった。それで私ここに来たのよ。あなたのタイムトラベルから数日後のことよ。あの年は変化の目まぐるしい夏になったわ。ここら辺も随分変わったのよ。あなたのトリップのせいだけじゃないの。バウチは農場主のバーバラとマイケルから圧力を受けていた。彼の生活に酷く干渉していたのよ。特にバーバラは、彼女の投影物を彼の中に見ていたから、すごく取り乱していた。あなたもそのこと覚えているでしょう。あなたもバウチに味方したせいで、とばっちりを受けたのだから」

おー、そうだとも。よく覚えているよ。昨日はもう一人の僕と話しているうちに思い出し、その前日は、まさにその真っ只中にいたんだ。随分遠い昔のように思えるけどね。

「その晩、クリスティーナはフェリーに乗っていたんだ。俺が、クリスティーナの車がレッカー移動されて、本土で立ち往生していると Face book に書いたもんだから、マイケルがバーバラを連れてきて、俺に対してぐちぐち言い出したんだ。俺はすべて大丈夫だと感じていたが、それを証明できるものが何も無い。それでマイケルがその晩、俺をフィンカ(訳注:農場。典型的なフィンカにはコテージ、農家、建物などがついている)から追い出した。それは、翌朝、クリスティーナへの悪い知らせとなったよ」

「私は最初、バウチが私をからかっていると思ったの。私を招いておきながら、 警告なしに突然ホームレスになったなんて言うんですもの。私にとって、彼はもう大した存在じゃなくなった。引き返して真っすぐ家に帰りたかったわ。一夏滞在する予定だったけど、数日しかいなかった。そしたら、住むところがなくなったもんだから、バウチも私にくっついてウィーンに来たのよ。私は当時ウィーンに住んでいたの」

「それからどうなったの? ハリウッド・ロマンスみたいだね」

「いいえ、そんなんじゃないわ。ウィーンで私たち別れたの。私にはバウチを本気で愛せなかったわ。彼に関する噂は、彼への疑念を抱かせるものばかり。私も彼のネガティブなところばかりたくさん見ていたから、もう彼と一緒に過ごせなくなった」

「うん。俺も思い出すよ。当時はこんなふうに感じていたんだ。彼女に頼ることは、即ち『Eigilander』たることを否定することだ、と。だから俺たちは別々の道へ進んだ。それは本当に俺たちを自立させてくれたよ。俺はこの期間に君の本を書き、旅行しながら徐々にまた自分を取り戻していった。俺たちは、まだ連絡は取り合っていたんだ。そして何か否定できないものを、俺たちの中に感じた。 俺たちは再会し、相手の自由を許すことで、個人として隣同士で共に存在するということを、ゆっくり学んでいった。俺たちは、俺たちを強く結びつけるものを体験したんだ。無条件の愛だよ。俺には、俺たちがいつ『一緒になった』のかわからない。そのような日付は存在しないからだ。俺たちは一緒に過ごす時間を楽しんでいる。充実した時間だからだ。だからといって、四六時中一緒に居る必要はない。2年前、半年間会わない時期があった。それぞれ別のグループで世界を旅していたからだ。それによって、俺たちの愛や結びつきが損なわれることはなかった。代わりにもっと絆を強めてくれたよ」

「君は彼と一緒で幸せかい?」僕はクリスティーナに尋ねた。というのも、バウチの前のパートナーが、そうではなかったことを知っているから。

「ええ。でもそれは、私が自分で幸せでいられるからよ。私が幸せでなかったら、 彼と一緒にいても幸せじゃないわ。私が幸せでいられるために、彼が出来る限りのことをしてくれたことは分かっている。でも、自分で幸せになることを学ばねばならなかった。バウチと共にいて幸せでいることは、実際、難しいことではないの。だって、彼は普通、自分で幸せでいられるから。でも、彼と共に幸せでいるためには、まず自分が幸せでなければね」

「君が俺のところに話をもってきて、俺が一週間後にウィーンにいることを予言したとき、俺をからかっているのかと思ったよ。でももし君がそう言わなかったら、そしてその通りにならなかったら、君の言ったことは何一つ信じなかったろうな。俺たちみんながいかに繋がっているか、今ならわかるだろう?」バウチが念を押すように言った。

 

13.体験する

 

「俺たちが一緒になってどれくらいになるかと、君は尋ねたが、その答えはこうだ。俺たちはみんなずっと一緒にいる。無限に多様な生命の形をとりながら。我々にはそれぞれ 1,200万のソウル・パートナーが地球にいる。その数は、一つの魂が、数え切れないほどの転生で経験したいものを、我々が協力し合って経験するために必要な数なんだ。大きなプロジェクトグループみたいなもんだよ。そしてどの人も重要だ。分離を思わせるものは、いずれも幻想だよ。全体から、特に神と我々自身から外れていった結果なんだ。それはこの地球上でのプログラムなんだ。いかにリアルに見えようと関係ない。何も本当のものじゃない。俺がマイケルとバーバラから特別なことを学んだので、俺がいかに早く彼らに感謝するようになったか、君には信じられないだろうね。誰も悪いことや、よこしまなことを、本当に行えるものじゃない。悪いこと、よこしまなことというのは、そのように解釈されているに過ぎない。そしてその解釈のみが、観察者――他の誰かではなく――にとって唯一リアルなものなんだ。俺は数日間、彼らに腹を立ててたし、不当に扱われていると思っていた。でも後になって彼らをハグすることが出来たよ。それが良い考えだからそうしたんじゃない。だって彼らと一緒に何かを楽しむなんて不可能なことだし、特に彼らは、まだ自分たちの憤りにかられたままだったからね。それでも彼らの行動がなければ、俺の経験はありえなかった。 いわゆる、ソウル・パートナーがいなけりゃ、我々は何も経験できないんだ。彼らはしばらく後になって、落ち着きを取り戻したよ。共に座って、また親しく交流できた。その間、俺の周りには俺を受け入れてくれた人たちがいた。彼らは自分の中心を保っていられる人たちだったので、楽しく過ごせたよ。それからは、俺も前よりうまく自分を保てるようになった」

「へー、あの人たち本当に君を追い出したの? 僕にはどうだった?」

「君には何もしなかったよ。どうせ君は出て行ったから。君は数ヵ月間トーマス とケイティと一緒にヨットの旅に出たんだ。そして聞いたところによると、君は彼らのネガティブな波動を、実にうまくかわしたそうだ。それが俺のまったくできていないところだったのさ。それって昨日君がもう一人の君に質問したこと― ―君を放っておいてくれない人をどう扱うか――の答えになっているだろう?」

「うん、そう思うよ。まだうまくイメージできないけど。今はそれがとても理屈にかなっていると思う」

「すぐに自分で確かめられる機会が来るわよ。そうしたら、ちゃんと実体験を積んだことになる」クリスティーナが笑いながら言う。「もう何も恐れる必要がなくなるわ」

「ということは、僕はトーマスとケイティとこれから数ヵ月間、世界をヨットで廻るんだね??」その考えは僕を笑顔にする。「どこを廻るんだろう?」

「教えて上げられるけど、あなたが自分で見つける楽しみを・・・・・・ 」

「分かってる、分かってる。台無しにしたくないんだね・・・・・・」僕たちみんなで 笑ったら、気が楽になった。

 

僕の中に、何か説明のしようがないものが生まれた。それは僕に Ella Kensington の『Mary』という本を思い出させた。2015 年の初めに読んだけど、興味深い本だった。それは地球の人生に興味をもつ、ある存在の話だ。その存在は、語られているすべての『問題』を体験することを欲した。あなたがまだ読んでいないのなら、僕は読むことをお勧めします。この存在は『エラ』と呼ばれるソウルの助けと、他のソウルたちからの助けを得て、メアリーのために、彼女が経験する様々な状況を準備する。エラはメアリーに、経験とは常にこのように創造されるのだと説明する。経験とはこのようにコーディネイトされ、ソウルのレベルで、「プログラム」される。そしてコンピュータープログラムのようにプレイバックされ、『本物』のように体験される。その体験に関わっているどの個人のエゴも、自分のフィルターを通して自分の視点をもってそれを体験している。 だから、個人的な体験が可能なのだ。そのことを理解することが重要である。メアリーは、彼女の周りの誰もが、彼女に対して物事を無意識に行っている事実を、よく意識している。しかし、彼女が、その場における自分の役割が、他のエゴの経験のためにどれほど重要なものだったかを悟るには、しばらく時間がかかった。こうして、いかにすべてが繋がっているのか、読み手に明かされる。

 

こんなことを考えながら、近隣を散歩して過ごした。他者と対話することで新しい考えを持つようになった。僕は自分の思考パターンが変わっていく様子を実際に見ているし、様々なものに対する知覚も変わった。突然、一筋の光が僕を貫いた。今ならわかる。どうして僕がここにいるのか。僕が本当に属している時間ではないが、なぜか、まだここにいるのだ。今、僕がどうしてメアリーの話を思い出したのか分かった。トゥルーマン・ショーの主役であるような感覚は、僕に何かを告げたり見せたりするために、この状況にあたかも実在しているかのようだ。そして僕は、今初めて分かった。僕は、僕の思考と行動を通して、他の人たちが彼らの経験をするのを助けるためにここにいるのだ。起きていることは、すべて本当のように見えているだけなのだ。僕たちみんなが互いに関わり合って一 つ一つの想像できる経験を創り出している誰もソウルレベルでの同意無しに考えたり、話したり、何かを行うことはできない。『正しい』考えも『間違っている』考えも、いずれも相対的なものなのだ。他のものとの関連においてのみ、正しかったり、間違っていたりするのだから。

 

僕の思考は、今、ここにおいて、消失した。圧倒的な明晰さ。その波で洗われているようだ。僕の感覚が、僕にいたずらをし出した。素晴らしい薫りが僕を包 んでいる。僕の周りの木々、灌木(かんぼく)、花々の匂いだ。僕は気が付いた。 それはいつだってそこにあったのだ。いなかったのは僕の方だ。少なくとも、僕の思考がよそにいたのだ。僕の目は花畑を歩いている。こんなに色鮮やかなことがあっただろうか。こんなに鮮明な彩りを、僕は今まで見たことがない! 僕の周りで、静寂というコンサートが奏でられていた。指揮者も音符もいらないコンサート。鳥が歌っているのが聞こえる。これ以上美しいコーラスはあるだろうか。 セミの鳴き声さえ、鳥の歌う旋律にリズムを添えている。ミツバチやマルハナバチのハミングは、バグパイプの通奏低音を思わせる。それもまた、鳥たちの歌に完全に調和している。以前にも全部そこにあったのに、僕が気付かなかっただけ。 どうして突然大きな音になったのだろう。何も変わっていない。今、僕はそれを聞いている。僕の体が動いている。僕の息が、暖かな真昼の太陽のように、体を廻っている。それは強烈に輝いていて、この瞬間、僕はそれと一体になり、すべての細胞でそれを感じている。イチジクが目の前の一本の木にぶら下がっているのが見える。僕がすべきことは、ただ手を伸ばして摘み取るだけ。とても柔らかくてみずみずしい。かじると僕の味蕾が炸裂した! 僕はそれを鼻でも味わうことができる。僕の舌と口がくすぐられて、体の中がふるえる。人生をただ純粋に享受したいという思いが溢れ出てくる。何もかもが、こんなにも信じられないくらい強烈なのだ。

 

この瞬間、僕のマインドは静止した。ただ、働くのが止まったのだ。この瞬間、マインドは、あらゆることが可能なのだと理解している。マインドがマインド自体を理解している。マインドは、それがどのように働いているのか、僕と一緒に観察できるのだ。知覚されるあらゆることを、どのようにマインドが解釈しているのかを。何かが本当に確かなものだと感じるとき、マインドが、その確かさを揺るがすものを悪と決めつけたり、無視したりすることを。この理由により、マインドは常に正しいのだ。たとえそれが僕たちの死を意味しようとも。

 

Vera F. Birkenbihl が講演で、脳について解説していた。マインドのツールである脳が、どのように働いているかを。外からもたらされた情報は、まず左脳に記録される。それから左脳は右脳に尋ねる。「我々はこれについて何か知っているだろうか?」

右脳は、潜在意識を掘り返す。そこには僕たちの経験がすべて貯蔵されているのだ。そしてその情報を解釈する方法を探し、思考に渡す。何も見つからなければスクリーンは空白のままで、僕らは、理解していないという感覚を得る。マインドの判断が、常に正しいとプログラムされている場合、僕たちは観察する(言われていること、体験されていることのすべてに耳を傾ける)代わりに、反応する。その場合、僕たちは何も学ばずに習慣的な振る舞いを繰り返すだけだ。

 

周りのものを楽しみながら散歩している間、僕は自分のマインドがひとりでに 再プログラミングしているのを見ていることができた。僕がどうやってそれを助け、あるいは影響を与えるのかわからなかった。どっちみち、それは重要なことではないように思われた。また、僕が自分の興味に応じた視点から見ていることもわかった。僕のマインドは、僕の興味に従っており、特定の視点から経験する必要があることを、僕に見せ始めた。突然、僕はアインシュタインの 95%の 『unused potential』、つまり僕たちの中に眠る 95%以上の潜在的可能性を理解できた。僕はもっと説明できるけど、それではあなたが自分で見つける楽しみを台無しにしてしまいます。

 

僕の頭を明晰な思考で射貫くことで、僕のマインドは再プログラミングを続けていた。無意識のこと、意識していること。ほとんど思い出せないもの、説明できないもの。けれども自分を愚か者だと思わないし、知らないことを恥じる必要もない。自分の中の何かが、ブラックホールの真ん前に立って楽しんでいるように感じる。ブラックホールから何でも出てくる。次に出てくるのは何なのか、辛抱強く待ち構えているネコのように、興味津々、ハラハラしながら待っている。 僕は、理解可能な状態という感覚を得た。僕のマインドが、すべてを把握する必要がないことを理解したためだ。いつでもそうしたいときに何かを理解できる。 マインドが学んでいるがままに、ただ状況を観察すればいいのだ。そうすればマインドは最終的に必ずそれを理解する。あなたは理解できましたか?

 

「もう一回」と僕のマインドは言う。まるである書物の最後の段落を再読しているようだ。「いいよ」と答えが返ってくる。「了解」。その間、僕は自分の内側と、周りにある楽園を楽しみ、マインドに微笑みかける。マインドは独り言を言いながら、これもまた常にそこにあったのだと認識している。それは、今始まったばかりではなく、僕が今、知覚した変化なのだ。それは単純なロジックで僕に告げる。僕の世界も、僕自身も、二度と同じものにはならないことを。歩みを進めるごとに、息をするごとに、僕は周りのものとますます一つになっていく。僕は自分の周りの世界になる。僕が周りの世界ではないことを、僕は知っている僕は自分の中に生じているものすべて見ながら、体験しながら、知覚する主体だ。僕は自分の周りのあらゆるものである。僕はあらゆるものと繋がっているだけでなく、僕が体験しているあらゆるものが、僕なのだ。僕の意識は別のレベルにある。そこでは、あらゆるもの、そして僕をニュートラルな観点から観察している。それこそが、僕が唯一リアルであると気付いたものだ。角を曲がると、 誰かにぶつかるところだった。それは僕、ネイサンだった。

 

僕は大きく目を見開いて彼を凝視する。それから僕は理解した。僕がこれまでいた『宇宙』は、こんなにわかりやすいものじゃなかった。シンクロニシティーだ!

「やあ、そこの君」彼が僕に挨拶して尋ねる。「夢でも見てるの? そんなにあからさまに見つめられることは、そうあるもんじゃない。僕のことモジョーと読んでくれ。喜んでお付き合いするよ」

僕は真っ直ぐ彼の目を見る。ネイサンの顔が変化するのが見える。そして突然、 まったく別の人物が僕の前に立っている。僕はびっくりしたが、不思議だとも馬鹿げているとも思わない。僕はただ観察しているのだから、そこに不可解が入り込む余地はない。何か説明のつかないことが起きた。僕のマインドにとっては、初めて新しいプログラミングを試す絶好の機会。僕が不可解なタイムトラベルを経験したのは、ほんの昨日のことだけど、僕は混乱し、よるべを失い、不安だった。今の僕は、興味をそそるものをただ体験していて、ショーを楽しんでいる。

 

「こんにちは、モジョー。僕はネイサン。僕、本当に夢見ているのだと思う。現実とは違う夢の世界。それに僕たちが出会う前の現実が夢になる。だから、君のことを凝視してしまったんだ」自分の目を見ることはできないけれど、どんな目つきをしているかは感じられる。僕は自分の内側で彼を知覚している。自分の内側が、どのように彼を知覚しているのか感じられる。僕の目の周りの筋肉が感じられる。僕のこめかみがぴりぴりする。

「僕はびっくりして君の前に佇んでしまったんだよ。最初の数秒間は、君は僕と同じ容貌をしていた。それから君の容貌が変わり、君の名前も、君の声も変わったんだ」

「僕もびっくりしたよ。君は今繋がったばかりみたいだね。そうだろう? 君のコンソール(制御盤、ゲーム機の本体)はもう使ったの?」モジョーが興味深そうに尋ねる。

(つづく)


2020 The New Earth 14-18

2015-12-12 | 2020 The New Earth

Now Creationさんより

 

2020 The New Earth

     A travel report

http://2020-die-neue-erde.de/sites/2020/files/dateien/2020-the-new-earth_jesus_vacationer_bauchi-semifinal_version.pdf

   世界中で新しい地球を共同創造するため、本書を無料で公開する旨、本文中に記されていました。

   人名は英語読みにしました。小見出しは翻訳の都合で訳者がつけました。

 

 

2020 The New Earth

A time travel report 

(つづき) 

 14.リアルゲーム

 

「コンソールって何のこと?」僕のマインドも興味を引かれて尋ねる。知識のギャップに何の劣等感も感じない。カバンが口を開けて中身を詰められるのを待っているように、僕のマインドはモジョーに対して大きく開かれている。

ある考えが僕の頭にひらめいた。「これっていい感じ。何かを知っている必要がなくて、尋ねることができるなんて」僕は、喜びの感情がひとりでに自分の中から生起するのに気付く。

「君のヘッドだよ!」とモジョーが言う。「本当に君は、僕が何のことを言っているのか分からないの?」

「残念ながらわからない。僕は今タイムトラベルの最中。僕のことは君の好きなように判断すればいい。だけど、今のところ僕には何もわからない」

「すると君は僕に、君がまだヘッドを使ったことがないと言っているのか? それでもタイムトラベルはできるのだ、と?」彼は大きく目を見開いて尋ねるが、 不親切な感じはしない。「どうしたらそんなことできるんだい?」

「わからないよ。どうしてタイムトラベルできないと思うの?」

「だってそんなことするには君のヘッドが必要だからだよ。他のことはどんなふうに感じているの? 君はタイムトラベルの最中だと言ったけど、どこから来たんだい?」

彼がとてもフレンドリーであることに気付いた。僕には懸念することなど何もない。僕は『メアリー』を読んでいたから分かっている。僕たちはここで出会うことを同意したのだ。前もってソウルレベルで調整しなければ、どんな出会いも起こらない。僕はすっかり目覚めた状態でモジョーの前に立っている。僕はエクスタシーを感じている。ただ観察さえすれば、人生とはこんなにも面白く、素晴らしいものになり得るのだ。僕には、モジョーが僕のために何かをもっており、 僕がモジョーのために何かをもっているのが感じられる。それが交換の基本だ。 双方向への流れ――それが何であろうと――がなければ、交換は成り立たない。 モジョーが僕のために何をもっているのか見つけるために、僕は何もする必要がない。ただ次に何が来るのか観察するだけ。周りが全部スクリーンになっている映画館の中に座っているみたい。フィルムはずっと回っていたのだけど、僕は今それに気付いたばかり。僕はもう好奇心で破裂しそう。

僕の口から言葉が勝手に出てくることに気付いた。言葉が自動的に組み立てられているみたい。前もって書かれていたかのよう。他の言葉じゃ意味が通らなかったろうな。特に僕には。

「2015年から来た。なぜだか昨日ここにいて、それからずっと不思議の国のアリスのような気分。僕のマインドを当惑させることばかり経験していた。今は、新しい経験の真っ最中、ていうか、少なくとも僕には、どのようにその経験が創られているのか見ることができる。そして突然、君が僕の前に立っていて、僕が自分のヘッドをまだ使ったことがないと言う。僕と一緒に歩きながら、もう少し教えてくれないかな?」

モジョーは驚いて僕を見る。「2015年? 5年前じゃないか! 確かに僕はそんなに長くプレイしていない。だけど僕はすっかりゲームに嵌まっちゃったよ」 僕たちは一緒に歩き出し、僕は彼の言うことに耳を傾ける。

 

「XBox や Playstation なら知っているだろう?」と彼が聞く。

「もちろん。僕がいる時代では一つ持ってるよ。この時代でもまだ使ってる?」

「たまには」いたずらっぽく彼が答える。「君のような人に、僕たちが今日ではどのようにプレイするのか、例を示すためにね。そうでなければ、ヘッド・コンソールのゲームの方がずっといけてるんだよ。ゆっくりと、次第に人々はコンピューターゲームに興味を失っていった。僕たちは、五つか、それ以上の感覚を使えるというのに、どうして二つの感覚だけで遊んでいられるのかい? 僕の言っている意味を君に見せてあげよう。昔のコンソールのグラフィックを知っているでしょう。さあ、目を閉じて、君がかつて見たことがある最高のグラフィックを思い浮かべて。今度は目を開けて僕のグラフィックを見てごらん。周りを見回してみて。それがヘッド・コンソールのグラフィックだよ。それから、これ。彼は 両手をカップの形にして両耳を覆う。「これが僕のサウンド。ドルビーサラウンドどころじゃない。標準的人間版のヘッド・コンソールには、三つの受動的感覚が搭載されている。それらを通してインパルスが受信され、知覚される。ついて きてる?」

うん。わかるよ。僕は(仮想現実を創り出す)ホロデッキ上で生きているんだ! 常にそうだったんだ! 僕にはヴァーチャルなコンピューター世界の類似点が理解できる。物をいかにコピーするか。それとまったく同じことなんだ!

「ここにあるものはすべて本当のものではないでしょう?」僕は周りを指差して尋ねる。

「いや、本物だよ」と彼が笑う。「ただし幻想の中でだけ。現実性も幻想も互いに相容れないわけではない。現実性は幻想である。しかし、その幻想はまったくリアルなものとして知覚される。ちょうどコンピューター・スクリーンのようだよ。昔のコンソール上でのゲームが、どれほど人の心をつかんだか知っているだろう。たった二つの感覚しか使っていなくても、あれだけ没頭してしまうんだ。 君だけが五感を使えるゲームの中にいると想像してみて。君は、完全にリアルな 存在として、君のゲーム・アヴァターの視点からすべてを体験できる。それはゲームの中のキャラクターに過ぎず、君はそのキャラクター自身ではない。ところが、それを忘れてしまうまでにどれくらい時間がかかると思う? 君は自分をそのキャラクターと同一視している。どういうわけか、いつのまにか、僕たち人間はみんなそういう具合になってしまった。僕たちは、コンピューターゲームのような幻想の中にいると認識しているようなマトリックスでは、特定のレッスンを学べなかったろうね。例えば、死への恐怖にしたって、それが「ただの」ゲームだって認識してからは、同じものではなくなった。誰ももう死を恐れていない。 僕たちの時間では、死は必要なくなり、実質的になくなったんだ

僕はすっかり感心してしまった。今の僕には僕自身、つまり 2015 年からきたネイサンが目の前に見える。モジョーの隣に並んで立っているのが見える。僕には彼が観察できるのだ! 誰か別の人間のように見ることができる。これからの彼の物語(his stories)も歴史(history)も他人事のように感じる僕にはネイサンの物語が見えるし、ネイサンが役割を演じていて、これからも演じるということが見えるあらゆるものが、この瞬間に存在している! 今、完全にそれが理解できた。一つの瞬間において、僕にはあらゆる転生を含むネイサンの映画全体が見える。整理棚のフォルダーのように、僕の内部スクリーンにすべてうまく分類整理されているその一続きの映画には、あるストーリー・ラインがあり、 あらゆる細かいことが釣り合いを保ちながら一大作品を構成しているのだ。根拠、 あるいは原因なしに、偶発的に起きることなど何もないことがわかるだから人生のすべてのことに意味があるのだ。僕は本当に、自分がコンピューターゲーム の中にいるように感じている。あらゆる物がリアルに見える。僕の周りの物質も、 僕が新しい体験をしているからといって何も変わらない。しかし、今、僕にはマトリックスが、僕の周りに 3D スクリーンがあるのが見える。それは常にそこにあった。僕の真ん前に。しかし僕は、やっと今になってそれを見ている。

 

15.自由への目覚め

 

(訳者註:2015 年から来た主人公の「僕」は、意識がシフトしたため、それま での自分「ネイサン」を第三者のように見ています)

 

「どうして僕がまだコンソールを使用していないって分かったんだい?」僕のマインドがさらに理解を深めるための、何かヒントでも得られないかと思い、尋ねた。僕のマインドは、仕事を命じられるのを座って待っている猟犬みたい。マインドは、この言葉のゲームが大好きなんだ。

「僕たちが出くわしたときに君が最初に見たのは君自身だったと、僕に言ったでしょう。それで最初に "オンマインド" になって、プレイし始めた人たちのことを思い出したんだよ。周りの世界を意識的にヴァーチャルな世界として見始めると、世界はそのように自らを見せ始めるんだ。大勢の人たちが本当にあっという間にそのような状態になった。中には自分たちのコンソールを目の前にしながら、変化に気づけなかった人もいた。だけど大抵の人たちは、彼らが "繋がった" 状態になったときの体験を君に話すことができるよ。きっとそれが君にも起こったんだよ。君は、君の周りのあらゆるものが、見えている通りのものじゃないって悟った。オンマインドゲームではなく、何か別の方法を通して、それを悟ったんだ。どうして僕が散歩したくなったのか、今になって分かったよ。僕は明らかに、 君にアップグレード版を授けるためにここにいる。君が今、解除(アンロック)されたことを理解できるからね。僕は、君がなぜ最初に君自身を見たのか説明できるよ。君は、他のプレイヤーの役回りを解釈することで、彼らを知ることができる。対戦相手なんていないことを忘れちゃいけないよ。地球の古いプログラムでは分離の幻想が認められていたけど、この世界ではあらゆるものが、一なるものだからね。秘密はないが、すべての情報が常に誰にでも利用できるわけじゃない。複雑なゲームの中にいる人の場合は、特にそう。まあ、僕たちみんなが複雑なゲームの中にいるけどね。何かを学ぶために。その点はいつも同じだよ。君は 必要なタスクを完了したので、分離のゲームから抜け出たんだ。これから君にとって、物事は変わっていくよ。君はオンマインドになったばかりなので、スターターキットを持っている」

 

彼は大笑いしてから、目を細めて僕を見る。「君にとって、僕がどんなふうに見えるのか、是非知りたいところだな。君は僕のことをスターターキットを使って見ているんだ。(他のプレイヤーの役回りへの)多様な解釈の仕方を活用するためには、まずそれらの解釈の仕方を解除しないとね。そのために君がしなければならないことは、何もないよ。そのためにチュートリアルがあるのだから。このような会話がチュートリアルになっていて、情報と解説がたっぷり与えられる。 君はゲームのいたるところで、チュートリアルを見つけることができる。君は他の周波数、他のプレイヤーをただ解釈するだけでいい。僕のことを君と解釈することで、君は僕を知覚できた。もしそうしたければ、世界中の他のプレイヤーともそうやって交流できるよ。そうすれば、どのプレイヤーも、君の姿を映し出す鏡、モニターだということがよく分かる」

彼は両腕を伸ばして、周辺を指しながら説明する。 「僕たちは並んで歩いているけれど、僕が見ているものは君が見ているものとまったく違う。それは、知覚機能が選択的に働くという事実によるものだ。各プレイヤーが、それぞれの世界を構築している。僕たちの中には、それがすごく上手にできる者がいる。彼らが自分たちの知覚の仕方を解除すると、誰もがそれを見れるようになる。君はフィルターのセットを丸ごとダウンロードして、君以外の人たちの目を通して、世界を見ることができる。中には、まだプレイしたがらず、 自分のヘッドを使いたくない人もいる。そういう人たちは、それを悪魔の仕業と呼び、僕たちのことを地獄の子と呼ぶ。どうしてかというと、彼らは、僕たちが こんなことをするのが怖いからだ」彼は片腕を軽く上げる。すると、こぶしサイズの石がゆっくり地面から浮いて、彼の手に乗った。羽のように軽そうだ。彼は心得顔で僕を見て、狙いを定めてそれを上に高く放った。それは空に消えて戻らなかった。

「いまだに恐竜がいるけれど、だんだん死んでいなくなってるよ。彼らは自分の憎しみで窒息しているんだ」

僕には(モジョーの言葉を聞いた)ネイサンが、恐竜たちが憎しみをのどに詰まらせているところ想像しているのが見える。

「メルケル夫人も時代遅れの恐竜の一人みたい。彼女は何に対しても良い見方をしないからな」ネイサンのマインドが、そう思っている。僕には、今僕が一体化しているその女性が見える。まだこの世界にいて、反面教師のような振る舞いをしている。僕は彼女に共感している。「強いままでいてね、勇ましいおネエさん」 彼女にそういう思いを送った。ネイサンと僕には、彼女の顔が変化しているのが見える。彼女が咳き込んでいる。「彼女は愛に堪えられないのだな」ネイサンのマインドが解説している。

「君は心のこもったメッセージを送れる?」ネイサンのマインドが知りたがっており、その問いがネイサンを通して発せられる。僕にはそのプロセスが起きているのが――神の意志が働いて、あることが、誰かを通して為される様が――見える。あらゆるものが時計の歯車のように噛み合って動いているみたい。それは流れるようにずっと動き続ける。

「うん」モジョーが答える。「電子メールを送るようなもんだよ。受け取る人のことを考えて、思考や感情、あるいはその両方を送る! 匂いや味でもいい。これはテレパシーと呼ばれてきたものだけど、僕たちは実際にずっとそれを使っていたんだ。これまでは四六時中、別のことに気が散っていたので、気付かなかっただけ。今はますます多くの人たちが、どこにいようとも、まるでコンピューターゲームの中にいるみたいに、意識的に人生を生きている。それにより彼らはプレイヤーとしてオンマインドゲームに繋がり、オンマインドゲームがとても急速に広まっている。その結果、僕たちはこのような素晴らしい能力の数々を活用できるようになったわけ。言葉は急速に、オンマインドゲームのフリーク(熱狂的愛好者)に広まるよ。フリークと言っても僕たちは、害を与えない、愛すべきフリークなのさ」彼は大きな笑みを浮かべて言った。

「ところが、このフリークたちは世界中でチームプレイを広め始めた。君が、競争相手なんて誰もいないことを知れば、君は誰に対しても、そのような扱いをしない。すると、そのとき君は愉快な仲間と見なされる。そうなると、反体制文化の強硬論者さえ議論を戦わそうとしない」

「そんなに簡単に広まったの?」ネイサンが尋ねる。彼の想像の中では、そのようなことは、まず最初にエネルギー的な繋がりができてから、完全なタイミングで発生する。

 

「すでに至るところで関心はもたれていたようだ。当時、インターネットでは okitalk.com( http://www.okitalk.com/)というアングラのラジオ局があった。誰もがそこで突然にヴァーチャルワールドとリアルワールドの同等性を話すようになり、リスナーの心をつかんだ。その頃は、僕もリスナーの一人だった。ある友人が okitalk のことを教えてくれて、聴くように勧められた。二日後にも WhatsApp(スマートフォン向けメッセージ アプリ)で勧められたので、リンクをクリックした。1 時間後、僕の世界はもう同じ世界じゃなくなった。僕は仲間と公園でたむろしてたんだけど、10 分後には、みんな引き込まれていたよ。ニュー世代のゲームコンソールについて話す人たちがいた。彼らは明らかにもうそれを使用していたので、週に数回それについて話していた。他には、物事の新しい見方を話す人たちがいて、それは面白かったし、すごく参考になったよ。彼らはフリーエネルギーやエネルギー全般についても話したし、僕たちの周りで何が起きているのか、何故なのかも話していた。突然、誰も彼もが互いに話をしていた。その現象はとどまるところを知らず、広まっていくばかりだった。それは当然のことだ。誰もが、自分たちの考えていることを言えたし、言うべきだったのだから。しばらくの間、このように言い出すのが流行った。『突然、私の頭に浮かんだことは・・・…』それは、すべての観点を見る上で大いに役立ったよ。誰が何を言ったかなんて問題じゃない。 話せないでいることに、不平を言った者は誰もいない。誰もが話すように招いてもらえたからね。もし話すことがあり過ぎて番組内に収まらなければ、okitalk.com に自分用のチャンネルをつくればいいだけだ。YouTube、Facebook そして無数のチャンネル。それは人々の精神を自由にした。人々は、自由に語られたどんな考えも受け入れられるようになった。YouNow(https://www.younow.com/) は当時でも盛況だったが、突然 誰もが、ウェブカメラのスイッチを入れて、自分の考えを世界とシェアしたくなった。自由人のネットワークである TerraNia(http://www.terrania.org/) も、okitalk を通じて知られるようになった。それで僕たちは思い出したんだよ。どの国にいようと、僕たちはみんな地球上にいることを。我々の地球。それが Terra Nia の意味なんだ。僕たちは、 国籍なんて誰が決めるんだ、という議論を開始した。国自体が、僕たちの頭の中の幻想に過ぎないじゃないか、とね。国境は僕たちの境界ではない。僕たちがますますオンマインドでプレイするにつれ、僕たちはそう認識するようになった。 そして僕たちは国境を越え始めたのだ。物理的にさえも。TerraNia は地球市民 になりたい人に身分証明書を発行した。その初期の人たちが、その ID で航空チケットをオーダーし、ロシアと中国に問題なく出入国できたことを報告し出してからは、プラットフォーム全体にブームが起きた。突然誰もが、自分たちには何かができるという実感を得た。僕たちみんながもっていた停滞感が解消した。それは僕たちが行動を起こしたからだ。みんなが連携した。僕たちは新しいひらめきを、できる限りの手立てを使って広めた。押し付けないように気を遣いながらね。誰も説教されるべきじゃないんだ。興味をもつ人たちに話すと反響を呼んだ。 一般の人たちに話し終えた頃には、すぐに多くの人たちが、行動を共にし耳を傾けた。僕たちは愛を広め始めた。歩行者の集まる場所やあらゆるところで、そうしたい人たちと一緒になって、デモンストレーションを行った。キスし合い、ハグし合って、愛の、静けさと平和の「人間モニュメント」になったんだ。それは本当に起きた現象なんだよ。それはフラッシュモブのように人気が出てきて、止まらなくなった。僕たちは数分間時間をかけてハグする。挨拶を交わし、キスしてギュッと抱きしめる。それが当然すべきことのようになり始めたんだ。それがとても感じがいいし、1 セントもかからないから。エネルギーをチャージしてくれるし、そのエネルギーが周りに伝わるのが見える。誰も嫉妬心を抱く理由はなかった。僕たちが意識的に自分の内なる衝動に従ってからは、どんどんシンクロニシティ―が増えていった。自分の興味が、一緒に同じことをする人たちを引き合わせてくれた。相手を見ればわかるし、そのとき自分のセンサーは燃えて溶けてしまう。僕たちはみんな、誰かと出会う感覚――姿を見て思わず息をのむ感覚 ――を知っている。自分の衝動に従えないというのは、大きな障害なんだ。なぜなら、あれこれ理由をつけて、そうする自由を持たないということだから。妻という概念はもう意味をもたないだろう。ハリウッドロマンスは、一体感を求める僕たちの欲求を妨げるようにつくられている。しかし僕たちは、今、ここで、毎日、一体感を得ることだってできるんだ。特別なロマンスへの期待をもつことは、 僕たちにとってベストなことではない。それが分かっているので、僕たちは互いを自由にした。性的にも自由にするまでに長く時間はかからなかった。僕たちは互いに、特に最愛の人に、何でもする自由を許し始めた。人々が、自分が幸せになるのに必要なものを得るためにね。そうして誰も孤独を感じなくなったんだ。 だっていつでも誰かが君のためにそこにいるのだから。だからといって互いの感情が変わることはなかった。僕たちはただ、自分の可能性を生かし始めただけだ。 それはキスから始まった。キスは欠伸みたいに伝わりやすい。君が自分にそれを許すとき、どこにいてもその機会はある。だから僕たちはただそうした。誰も僕たちを本当に止めることができなかったから。それには対応効果があった。一番良かったことは、誰もが、何かが変化しているという感情を抱いたこと。だって僕たちが変えていたのだから。それが僕たちの物語であり、僕たちで書いた物語だ! 僕らが考えたこと、話したこと、行ったことで物事は変わり、その変化はもちこたえた。僕は素晴らしい時間を過ごしたよ!」彼の目が輝いている。

 

16.話す、話す、話す

 

「今でも思い出すよ。犬を散歩させながら夜の街で、壁や街灯柱に片っ端から okitalk.com と書いていた人たちがたくさんいた。僕もそのうちの一人だったのさ。僕は当時19歳でトゥルーサー・ムーブメントに関わっていた。(訳注:truther とは2001年9月11日に起きた米国同時多発テロは米国政府の陰謀だと信じている人)。僕は9.11についてのブログをもっていたのだけれど、しばらくすると、他の人たちの低い波動に巻き込まれてしまった。でも2015年の9月に、この運動に参加し、数週間後、僕の人生は変わっていた。僕は突然、自分が何をすべきか分かったんだ。僕はメッセージを広め、友人たちに okitalk.com の URL を送り、聴くように誘った。以来、大勢の人たちが次々と聴くようになり、okitalk.com から離れる人はいなかった。多くの人たちが自分で話し始めた。ビデオやラジオショーをつくり、考えていることを発表した。その結果、TV 番組はもはや、僕たちが見たいものを見せるものではなくなり、okitalk.com が、僕たちが聞きたいことを聞かせてくれるものになった。僕たちは声に出しながら考えるようになり、 自分のヘッド・コンソールを使い始めた。

 

僕たちは、周りにいる人が興味をもっていれば、誰にでも話した。そして興味をもつ人はどんどん増えていった。自分たちの画面の前で始まりの合図を待っていた全世代の人たちが、立ち上がって話し始めた。内気な人もいれば、とても感情的な人もいたが、とにかくみんなが話したんだ。それは大きなざわめきとなり、恐ろしささえ感じるほどだった。それは蜜蜂がブンブン言っているようで、全地球に広まった。人がいるところでは、必ずそれが聞こえた。人々は今や互いに語り合い、他者が言わねばならないことに耳を傾けていた。時には2、3人が同時に話すこともあったが、僕たちは自分にとって大切な言葉を聞き取っていた。誰がそれを話していたかは関係ない。独断主義は消えてなくなり、議論や論争は、もうしなくなった。素晴らしいボソボソ話が三日三晩続いたが、それは氷山の一角に過ぎない。それは少数の草分けの人たちが始めたこと――心を開き、ウェブカメラを通して、自分が本当に考えていることを世界に伝えたこと――の結果だ。 その後、みんなが語っていた。まるでトランス状態に入っているかのように。耳は開かれ、僕たちは聞き始めた。

 

三日三晩の素晴らしいボソボソ話は、それ以外の地上の騒音を黙らせた。機械は静かになり、おしゃべりな人、ストレスをもたらす人、往来の音、兵器、テレビ、ラジオ、政治家が黙り、そして多くの人たちにとってスピリットも黙った。 それから後は何もかもが違った。物質的には何も変わらない。すべてが以前と同じようにそこにある。しかし変化はあった。僕たちは新たなコミュニケーションの土台を手に入れたんだ。単純で効果のあるものを。僕たちは互いに話すことができた。そのときにのみ、僕たちは違いが何かを認識できた。それだけが、目に見えて世界を変えた。その後は、何も同じではなかった。僕たちは古い問題と、別の解決法に集中できた。それに慣れるまでしばらくかかったが、ここでもラジオ ショーが役に立った。僕たちは新しいコミュニケーションの形式を訓練できたんだ。僕たちの話し方も少しずつ変わった。話す言葉はほとんど同じだが、言語をまったく違った方法で使い出したんだ。君、ついてこれる? それが最初に僕たちが気付いた変化だった。一人の男性がとても興味を引かれて、少しの間、感謝に関する実験を始めた。『Mary』の共著者である Bodo Deletz が世界中から数千人を集めた。日曜日の19:50に、誰彼関係なく、マトリックス内のメンタルルームに集い、感謝できる心を養う時間を過ごした。人々の生活の中には感謝すべきことが、思っていた以上に多くあるのが常だった。それはオンマインドゲームだった。人々は何ヵ月にもわたって、そうとは知らず、オンマインドゲームをしていたんだ!」

 

「Bodo Deletz だって? ちょうど彼のことを考えていた! もちろん、そう、 僕だって参加していた。毎週ではなかったけれど、僕の携帯は日曜日の20:40に セットしていた。信じられないよ!」ネイサンのマインドが、とても興奮しながら考えている。けれどもネイサンのもう一つのマインドは落ち着いたままでいる。 「引き込まれないで、絡んでいかないで、ただ聞き続けろ」ネイサンのマインド は、異なる二つの調子で独りごちている。落ち着いている方が、ひどく興奮して いる方を黙らせている。だからモジョーは話し続けることができた。

 

「二つのグループが繋がったんだ。"感謝する人たち" とオンマインド・ゲームをしている人たちだ。前者のグループが okitalk で、自分の思いをシェアし始めたんだ。何千もの人々が、身の周りにどれだけ感謝できることがあるかを聞いた。 彼らには、そうするだけの知覚力がなかっただけだ。彼らはそれをダウンロードした。そして信じられないことが起きた。突然、リラックスして幸せな人たちに道で出くわすようになったんだ。カーニバルのようだった。アルコールなしのね。 その人たちはほろ酔い加減だったけど、飲酒はしていない。僕が思うに LSD トリップの方が近いかも。少なくとも、僕はそんなふうに感じたんだ。数週間が過ぎ、数ヵ月が過ぎても、その現象は止まらなかった」

 

17.OKiTALK フェスティバル

 

「2016年半ば、ウィーンの近くでOKiTALKフェスティバルがあり、世界中から人々が大挙して押し寄せた。大会スケジュールなし、計画なし、舞台裏の責任者なしで、だ。入場料もなかった。それぞれの人が必要なものを持ってきて、自分のゴミは持って帰った。そんなことは以前にはなかったことだ。それは僕にレインボー・ギャザリングを思い起こさせた。(訳注:rainbow gathering。屋外で開催される、主催したい人々、または声の大きな者の合意にもとづいて開催される大規模なイベント運動)。でも、そこにいたのはレインボー・ファミリーだけじゃない。それぞれの人生を歩んでいる、あらゆるタイプの人々が集まってきたんだ。 みんなが平等。それはアナーキー(無政府状態)で、ヒエラルキーの反対だ。ここで僕たちが分かったことは、アナーキーはカオスと一切関係がないこと。物事は、ここで自由に発展できた。当時、僕たちは、大量のゴミを信じ込まされていたんだぜ」不敵な笑みを浮かべて彼が言う。

「分かったよ」ネイサンのマインドが言った。僕は、それを言ってもよいと判断した。モジョーの話は中断していなかったが、話の流れがネイサンに口をはさむように誘っている。もし僕たちが舞台にいるとしたら、まだネイサンの番じゃない。ネイサンは僕の気持ちを受けて、何かを言いたい衝動を得た。そして彼の頭の中で一番新鮮な考えを言った。「分かった。僕たちは、大量のゴミを信じ込まされていたのか!」

モジョーが同意するように肯く。「自分の時代に戻ったら、君がそれをするのを確認してごらん。OKiTALK フェスティバルは、突発的で独創的なアイディアだった。バンドも予約なしだった。バンドの連中とはインターネットで個人的に知り合い、何回か会う機会があったので、僕たちはみんなそこへ出かけていった。 僕たちは自分自身のスターなんだ。ルールは簡単だ。最長2週間まで。その後は跡形も無く去らねばならない。それが入場費用だ。最初の日は、車、キャラバン、 トラック、干し草とあらゆるものを積んだトラクターが、何百台か到着した。3 日目になると数千もの、掘っ立て小屋、テントや家が至る所に出現した。出鱈目な配置ではなく、周りにスペースを取り、道路や通路も確保されていた。夕べには、みんなで大きな火を囲んで座った。想像してみて。中央の火の周りに、数千人の人たちが輪になって座っている。ドラムの音が聞こえてくる。ギター、バグパイプ、ディジェリドゥーの音も。(訳注:didgeridoo。アボリジニの楽器。枯れたユーカリの木の中をシロアリが食べて空洞になったもの。トランペット式に吹き込む)。輪の中央で大勢の人達が歌い、踊っている。突然、音程が一定の高さになった。みんながその音に合わせてハミングし出した。誰も合図していない。 ただ、太鼓の音が止んだのだ。同じ高さで歌っている声しか聞こえない。その声は、どんどん大きくなっていった。みんなが歌っている。君もだよ。そしてその歌声は叫びになった。攻撃的な感じでもなければ、ひどく興奮した感じでもない。 むしろ、大人のクマに近いかな。クマみたいじゃないにしても、僕の言っていることわかるかな。こんな感じだよ。

HUUUUUUUUAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHH!!

ドラムが突然鳴り出して、みんな飛び上がって笑い、歓声を上げていた。そして彼らはみんな踊り始めたんだ。そこら中で人々はハグしてキスしていた。 二日後にステージ設営会社の大きなトラックが到着した。そのボスがウィンクして、しばらくの間ステージを設置したままにしてもいいか尋ねた。彼は、フェ スティバルを手伝うつもりで、自分のチームを率いてここに来たのだ。OK が出 た。

簡単に説明しよう。皆が携帯やウェブカメラを取り出して、自分が知っているバンドをここに招いた。その夜、最初の三つのコンサートが行われた。ひどいバンドだったが、雰囲気は素晴らしかった。それが始まりだった。2週目の初めにニーナ・ハーゲン(Nina Hagen)がステージに立ったのを機に、コンサートビデオが外された。それまで何千、何万のビデオが流されていて、その中には有名なバンドも含まれていた。その週の終わり頃には、大きなステージは7つになっていた。登録を済ませたバンドに対し、人々が次に演奏するバンドに投票する。 どのバンドも、もっとも投票の多かった時間枠で演奏しなければならない。他にもたくさんのリサイタルが、そこかしこの小ステージやテントで行われた。スペースがきつくなると、そこでもやはり投票が行われた。アナーキー・キャンプのデモクラシーだ! 2週目の終わりには、ざっと150万人がいた。200万まではいかないだろうが、僕たちには推測することしかできない。ものすごい数の人たちが、デモンストレートしたんだよ。自分の面倒は自分で見れるし、しかも一緒になってたくさん楽しめることをね。それは巨大なピース・デモンストレーションだった。何かに反対するのではなく、こうして僕たちがお互いに平等に生きられることを示すためのデモンストレーション。当時、そのまとめ役のプラットフォームが konsensieren.eu (https://www.konsensieren.eu/de/)だった。諸問題に関する合意を見出すのに必要なものを、すべて提供してくれた。つまり、あらゆる人の興味が尊重されたということだ。誰もが、自分の考えていることを表明するための、平等な機会と権利を持っていた。そして誰もが建設的に参加できた。だって、すべての提案が考慮される機会を得たのだから。それは、SC ―― systematic consensus ―― の原則に基づいて投票されたんだ。今日ではほとんどの人が SC アカウントを持っているが、 多くの人たちは、それなしでどうにかしているし、もうほとんど利用しない人もいる。 何か解決すべきことが出てきた場合、潜在的に全世界が君を助けることができる。当時の Facebook と同じだよ。誰でも、その問題に対する意見をつけ足して、 自分の考えをシェアし、フィードバックを得ることができただろう。今日でも僕たちが同じことをしているのが分かるよ。ただ別の方法――建設的かつ合意的な方法――でだけど。OKiTALK フェスティバルとそれに続くたくさんの他のギャザリングでは、konsensieren.eu のアカウントを取得することで、誰もが問題解決に寄与できたし、助けも得られた。プラットフォームから、多くの解決案を迅速に引き出せることが明らかになった。僕たちが政治システムを無効にするのに、 さして時間はかからなかった。それは誰にとっても、もはや何の意味もないもの だった! 政治家たちでさえ、その現象の論理性に言葉を失った。そういうことが、僕たちの目の前で米国で起きたんだ。僕たちは立ち上がり、自分たちの問題を自分たちで解決し始めた。僕たちは、他者――何もせずに、ただ話すだけ―― を頼みに待ち続けることに飽き飽きしたんだ。最初の政治家たちが自分の SC アカウントを作ると、政治はあっけなく消えた。クーデターは必要なかった。暴動も、感情的なスピーチも、幕引きの祝賀会もなかった。それはただなくなった。誰ももう一切興味がなかったからだ。森に咲いている一輪の花みたいだ。枯れて腐っても誰も気付かない。今度は別なものが僕たちの興味を引いた。Terra Nia、僕たちの地球だ。僕たちの足下に横たわり、そこから世界へと平和を広め続けている地球。

 

18.ゲームスタート

 

「数十億人がオンラインで OKiTALK フェスティバルをフォローした。そしてそれが最初のオンマインド大会だった。とても多くの人たち――数百万人――がマトリックスの各々の部屋で、オンマインドでコンタクトした。世界中の都市、その他の場所で、大勢の人達が集まり、そのフェスティバルを世界中に広めた。それにはたくさんの名前がついて、おなじみのものになった。今日でもなお僕たちは、集まったり、それぞれの道を歩んだり、自由にしている。僕たちは鳥の群れのように常に繋がっていて、だれも独りぼっちじゃない。今日、君と僕がばったり出会ったように、僕たちはダンスのように誰かと出くわす。有機体の個々の細胞が自分の興味に従いながらも、流れるような動きとなって僕たち全員が繋がっている。ときには遠く離れ、ときには一緒になり、けれども一切が無常であり、 僕たちはいつでも自由だ。嫉妬心が芽生える理由はない。僕たちはそれぞれ自分の面倒を見られるからね。誰かを欺したり、インチキをしたりするような人は、 もういない。それは僕たちにとって良くないことであり、それのみが、僕たちの足を引っ張るということを、みんなが理解しているから。変化は、僕たちみんなが自分の考えや気持ちを言えるようになったことの、論理的帰結だよ。そして何も悪いことは起こりえないと分かっているので、コンソール上のゲームのように、 安心して一緒に訓練できた。本当に当時はびっくり仰天するような変化だったよ!

友よ、本当に OKiTALK フェスティバルに行くことを勧めるよ。大勢の人が後になって後悔したのだから。というのも、そのフェスティバルはもう二度と開催されなかった。なぜなら、その必要がなかったから。最終日、あれだけ大勢いたにもかかわらず、全員が会場をきれいに片付けてから去った。みんなでそれができることを示したんだ。たくさんのマークは残っていたが、一片のゴミもなかった。マークは数ヵ月後には消えていた。人々はただ立ち去っただけじゃない。オープンなスピリットで心を満たして戻って行った。それがフェスティバルの意義だったんだよ。彼らは新たな人脈、インスピレーション、体験をたくさん他の人たちとシェアした。そして誰も、翌年に再びフェスティバルが開催されるのを待っていたいと思わなかった。彼らがその後どこへ行ったかは問題じゃないし、多 くの人たちが、もと来たところへは戻らなかった。彼らは友だちを連れて行った。 人生を享受したいという熱望と共に。繋がっているという感情と共に。そして無条件の愛と共に。彼らは、自分がたどり着いたあらゆる場所でそれを広めた。オンマインド・ゲーマーの自由に向けた最後の行軍は、ただ生きることだった。それは本当に真価を発揮し、影響を与えた。

「世界平和?」

「うん。そう言えるね」

 

「オンラインゲームについて初心者向けの助言をしてくれない?」

「もちろんだよ。そのために僕はここにいるのだから。OK。こうやって始めるんだ。君の想像力、つまり僕たちのマインドの中のものを見る能力が、君にヘッドアップ・ディスプレイ(訳注:ヘッドアップ・ディスプレイの一般的な意味は、 航空機などのフロントガラスへの計器表示。頭を上げたまま、すなわち前方を見ながら計器を見られる)を使用する機会を与える。君のすべきことは、それをイメージすることだ。スクリーンをイメージしてみて。左端の領域に上から下にスロットが並んでいるよ。このスロットの中に、君の知っているやりたいゲームを挿入できる。一度に一つのゲームを行う従来のコンソールとは違い、好きな数だけ同時にできる。その場合、すべてのゲームの世界が一つになる。ゲームを好きなように停止させることもできる。ただ自分で停止させているところをイメージ すればいい。普通は思考だけで十分なんだが、それぞれに ON / OFF ボタンをつけておくと楽かもね。慣れるまで少し時間がかかるけど、やっているうちに、 ほとんど眠ったままでもできるようになるよ。

今度は水平のタスクバーをイメージして。そこには、君が出会い、その振る舞いを見たことのある、すべてのキャラクターが揃っている。中には特定のフィギュアを使わなければならないゲームもあるが、そのうちのどのフィギュアにするかは、君のセットアップ次第だ。タスクバーの左には君が一番使うキャラクターが、右には他のキャラクターが出ている。君がある状況に陥り、問題を解決するために特別なアクションが必要になったら、問題を解決するよりも、あるキャラクターを登場させるとよい。ただそのキャラクターをクリックするだけでアクティブにできる。同時に多数のキャラクターを演じることもできる。Mega Man みたいなもんだな。彼はグループ化されたキャラクター全員の能力と経験を持っ ている。君も今一つもっているね。ネイサンのことだよ。彼に関しては、君の好きなようにできる。デザインし直したり、名前を付け替えたり。もっと高いレベルでは、女性にもなるよ。そして君は他のキャラクターを開発することもできる。 だけど知っておいてね。他の人たちには、君が現在演じているキャラクターではなく、君の振動数が分かる。言わば、君のプロフィール写真だな。彼らにとって、 君はいつでも同じに見えるんだ。君は一つのアバターと一つの体を持っており、 それを通して君は、君のすべてのキャラクターやエゴを演じる。だから君にはそのすべてを、そのアバターの内側で知覚できるんだ。君のキャラクターたちを使ってどれくらいプレイするかで、君の体が変化し始める。練習すれば、好きなように変えることさえできるようになる。君はマルチプレイヤー・モードで他のアバターとも一緒になれる。他のアバターに接続したり、交換したりして、あらゆることをする。新しい種類のセックスみたいなもんだけど、僕には説明できないや。まだ君には理解できないからね。時間をあまりかけなくても自分で全部できるようになるよ。ああ、見て。街に着いたよ」

 

ネイサンがそこにびっくりして立っている。僕には、彼が口を開けて目を皿のように大きく見開いて、そこに立っているのが見える。僕は愛を感じることがで きる。

「信じられないや!」ネイサンのマインドがスイッチをオンにする。「僕は1時間も歩いていたというのに、見えなかったよ! まさかこんなこと。すごくいけてるんじゃない? 景観を損なわずに街が築かれているなんて、気持ちいいよね」 どこかで聞いたことをメモリーから取り出した台詞。TV で聞いた台詞で、感じがよかった。

「ここは景観を損ねていないばかりか、外からは見えない! どうやってんの?」

ネイサンの想像のスクーンにブラックホールが出現する。僕らには、これに関する情報が何もなくて理解できない。すると、今までそこになかったものが現れる。ネイサンのマインドがインストラクション、命令を待っている。僕は自分がプレイヤーであることを認識した。僕は XBox コントローラーを手にして長椅子に座っている気分。完全に混乱している。目の前のスクリーン上で、特定のプログラミングに基づいてすべてのことが起きているのが見える。僕は正しいときに正しいボタンを押せばいいのだ。僕は僕自身を認識する。もうネイサンのマインドには、二つの声はない。沈黙しているのが僕のだ。それがだ。そして僕には、 いつでもそうだったことがわかる!

(つづく)


2020 The New Earth 19-22

2015-12-12 | 2020 The New Earth

2016/01/06  「20.Synergetic Energy Xchange 」を追加しました。

2016/01/12  「21.ジャックとの会話」を追加しました。

2016/01/13 「22.ハウスメイト」を追加しました。

 

Now Creationさんより

 

2020 The New Earth

     A travel report

http://2020-die-neue-erde.de/sites/2020/files/dateien/2020-the-new-earth_jesus_vacationer_bauchi-semifinal_version.pdf

   世界中で新しい地球を共同創造するため、本書を無料で公開する旨、本文中に記されていました。

   人名は英語読みにしました。小見出しは翻訳の都合で訳者がつけました。

 

 

2020 The New Earth

A time travel report 

(つづき) 

19.インナーネットに接続開始

 

今僕は、ネイサンの「上位の」存在としての自己を体験している。僕はすべてと一つになった。これまでもずっとそうだったように。僕の目の前の少し左に彼が見える。口を開けて目を見開いて立っている。右側に彼のマインドが見える。 極めて明快なことだ。僕らがいるのだ。そこでは父(僕)と子(ネイサン)と聖霊(ネイサンのマインド)が一つになっている。僕は再び長椅子の上の自己を見つける。ミスター聖霊が、これはすべて真実なのかという問いを(頭の中の)スクリーンに挿入する。スクリーン右下にある書類入れにドラッグするだけだ。僕は、ミスター聖霊(ネイサンのマインド)の飲み込みの速さに驚き、愛の波が僕を通して流れる。僕は両腕を伸ばして彼らを引き寄せる。ずっと伸び伸びになって、やっと再会した気分だった。両者をきつく抱きしめて覆い被さり、"ONE"になる。ハグしている感覚が永遠に続く。故郷のようだ。これが、僕のずっと求めていた平和だ。自己の内側の平和。僕から愛が溢れ出て、感謝の気持ちが無尽蔵に湧いてきた。こんなことは初めてだ。それから僕は溶けていった。完全に溶けて 純粋なエネルギーになり、常にそうだったことに気付いた。僕はただそれを再び知覚し始めたに過ぎない。僕はエネルギーである。常にそうだったし、別に新しいことではない。その経験は僕に一なるものを思い出させる。それは、すべての "ONE"たち から構成されている。ある有機体が全細胞から構成されているように。 その一つ一つの細胞が僕や、他のプレイヤーである。僕には無数にある感覚で "All-One"を知覚することができる。そしてそれがI AM なのだ。僕には有機体全体が、くまなく感じられる。それぞれの細胞が、呼びかけに従い、興味に従っているのが感じられる。僕の細胞の一つであるネイサンが、無限の意識の中心に立っている。僕は他の全細胞の一つ一つを見る。それから彼に戻る。そうしないと、 まったく別の物語をあなたに話さなければならない。この立場に立つと、どんなことができるかを、ちょっと説明しただけ。これまで生きてきたあらゆる命、今生きている、これから生きるあらゆる命がすべてここに、僕の中に、すべてであるものの中に存在している。何もそれから除外されている感じがしない。

僕たちの物語に戻るために、ここに僕がおり、この瞬間にバウチがこれを書いている。興味をもったすべての細胞が、それを読めるように。僕はこの宇宙の創造主だ。自らを無限に体験しては、再定義する。あなたもそうだし、街角のミューラー夫人もマイヤーグルーハウゼン牧師も花々も蜜蜂も、その他のあらゆるものもそうだ。存在しているもの、まだ存在していないもの、すべてが。僕は存在し、あなた――現在これを読んでいて、自分がであることを思い出しているあなた方全員――を通して自己を体験している。あなた方が自分自身のことを、この僕だと言っても、そんなに馬鹿げたことじゃない。だ って誰も彼もがなのだから。僕は、時空を越えてあなた方全員の目を通して同時に見ている。なぜなら、の外には何にも存在できないから。すべてが僕なの だ。どんな興味でも追えて、人生を体験できる果てしない意識。そうする理由は、 ただそれが可能であり、経験されたがっているからだ。それはただただ驚くべきことであり、説明の必要はない。経験されることを欲しているものは、経験されることを望まなければならない。さもなくば、それは経験され得ない。だからこそ、どの細胞も、望むこと以外は経験できないのだ。それぞれの細胞は自分の興味を追っており、僕は各自の興味に影響を及ぼせない。僕の興味はすべての個々人の興味の総和なのだ。もし僕があなたの興味に影響や変化を及ぼしたら、僕は 自己を変えるだろう。あなた方全員がなのだから。僕はすでにそれを言いましたよね? あなたが自分に背き、他の細胞からエネルギーを奪ったり、彼らの平和を乱したりすることで、僕に異議を唱えるからといって、僕が完全な有機体として、あなたに対立しなければならないわけじゃない。僕は、そういうことは不愉快なことだと信じている。 僕はあなたがいなくても何とかなるよ。これらの言葉があなたのマトリックスに流れ入るのにふさわしいときだと思う。あなたを 助けてくれるだろう。

ネイサンとバウチとあなた――この言葉を読んだり聞いたりしているあなた― ―に戻ろう。僕はあなた方一人一人に戻って、あなたとあなたのミスター聖霊の少し後ろにいる。僕がいなかったことはないのだよ。僕はただあなたに完全に注意を戻して映画の続きを見ているだけ。誰か僕と一緒に見たい人はいる? 僕はあなた方全員のもとに戻るが、ネイサンの物語を続けよう。願わくば、あなたが今意識的に自分自身の物語を体験できるようになればいいな。

 

ネイサンは数秒間何も言わずに、そこに立っている。僕の前に彼が見える。彼の隣にはミスター聖霊がいて、聞きたそうにして僕を見ている。

「うん。続けな」僕はそういって固まっていたネイサンをアクティブにする。

「ワーオ、これはすごいや! どうやったんだろう?」彼が尋ねる。 僕には、彼がプログラムされた行動パターンを――別の言い方をすれば、彼流で――演じているのが見える。どちらもまったく同じことだ。僕は彼の驚きようが好きだ。また僕を通して愛の波が流れる。僕には、それが有機体全体に広まっているのが感じられる。それがすごく感じられるときと、少ししか感じられないときがあるが、いずれにしても、僕は宇宙全体に行き交っている、あらゆる振動数をどの瞬間にも感じることができる。ほんの小さな違いでも、全体の振動数を変えているのがわかる。僕はこの立場が気に入っている。ネイサンの見張り塔だ。 僕は、いつになく、より多くの細胞が意識的にこの立場を体験しているという感覚を得る。  「クリーンな種のストックがあれば、まあ、そんなに難しいことじゃない」とモジョーが言う。「僕たちは本当に早い時期からここに着手したんだ。街を緑にするのと同時に美しくもした。僕たちは高木と低木を至る所に植え、4年経ったら家々はもう外から見えなくなっていた」

突然、僕たちの目が会う。彼の中に僕自身がいるのが見える。神が自分の目を覗きこんでいるのだ。

「やあ、こんにちは。今君ははっきり見えるようになったね。インナーネットにようこそ!」モジョーが楽しそうに僕に挨拶する。「これからの君の人生は、決してこれまでと同じものではなくなる。君が、君の本来の時間に戻っても、だ。 僕は、この目つきを知ってる。百回は見たことあるよ。君は三位一体の経験をしたんだろう? 父と子と聖霊とか・・・・・・。西洋にいる僕たちのほとんどが、それを経験する。僕たちはカトリック教義に馴染んでいるからね。でも最終的には、 それぞれのゲーマーが独自の経験をする。ヘッドコンソールを使い始めるときに、 君は、誰がゲーマーなのかも思い出すよ。すると君は物事を別の観点から見て、 あらゆるものとの繋がりを感じる。君は最後にはホームにいて、君の人生を違うように経験する。そのことを好きなように呼べばいいさ。卵から孵化するとか、 繭から出てくるとか。君は、今、別の者になっている。はっきり言えば、すべて の体験の創造主。僕たちを通して体験するんだ。あるいは、僕たちを通してプレイしているとも言える。コンピューターゲームのように、新しい自分を何度も何度も体験できる。このチュートリアルで僕たちは何かを学んだかな?」モジョー が尋ねる。

「君が何かを学んだかどうか、僕には分からないけど、自分の人生のレッスンになったよ。本当に君の助けに感謝している。おかげで良いレッスンになったよ」 僕は心から彼に感謝する。

「僕はこういうことをするのが好きなのさ。僕は喜んでみんなにそうしているんだ」

 

「セックスについて教えてくれない?」僕は、ネイサンがミスター聖霊の考えを話すようにインパルスを送り、この瞬間に僕がこの物語の舵取りをしているのが見える。だ。この瞬間の! 僕がプレイしている! 僕には、ネイサンを通して自分が今、ここでプレイしている様子が見える。そして僕の周りのあらゆる所で他のプレイヤー(細胞)も同じことをしている。彼らの今、ここにおいて。タイムループの中の人生。

今僕は自分のために素晴らしいラインアップを用意した。そしてネイサンの視点に戻る。彼の視点から続きを見るためだ。そのために彼はそこにいるのだから。 すべての両目が、独自のフィルターを通して知覚する。僕は知っている。ネイサンの物語は本当に心をとりこにするし、あなたにとってもそう。さあ、彼と共に先を経験しよう。観察者の視点からのレポートも、すぐにお伝えしますよ。

 

モジョーが僕の質問に答える前に、「モジョー!」と女性の声がした。葉っぱに覆われたカフェのテラスには数脚のテーブルが置かれていて、彼女はそこに座っていた。カフェの名前は "カフェオーレ"。たくさんの花と果物で覆われている。あらゆるところに緑があり、街中、緑の途切れるところがない。通りを見やると、緑の茂みの中に消えてゆく。森の都市みたい。本当にうまくできてるなあ。 彼女は素早く立ち上がり、僕たちの方に走ってくる。彼女がコマ撮り映像のように近づいてくるのが見える。言葉では言い表せないほど美しい女性だ。長いブロ ンドの髪、夢のような容姿。彼女が近づくにつれて、はっきり見えてくる。彼女のふっくらした唇、キュートな鼻、素晴らしい目! 彼女はモジョーの腕の中にもたれて、親しげなキスをする。彼女は体を真っ直ぐに起こし、モジョーの目の奥を見つめる。僕の真ん前でだ。僕は自分のスピリットと内なる自分と一つであることに気付く。彼女がまたキスをする。アイコンタクトを保ったままで。彼女の舌が彼の唇の周りで戯れている。彼も彼女を見つめ返し、彼女のヒップをつかんで自分の方へ引き寄せる。彼女が彼の方に身を寄せると、二人は突然強く揺れ出した。二人の目は閉じられていて、愛の波が、僕を通して、僕の内部全体を通して、流れる。一なるものが二人を抱き、彼らが創り出して周りに広げているエネ ルギーの一部になっているのだ。彼らは地面に崩れ落ちて、笑い出した。数人の見物人が一緒に笑い、拍手喝采している。目の前でインタラクティブな映画を体験することに関して、僕が最後までもっていた問題は解消してしまった。ほとんどコメディーみたい。モジョーが抱擁を解いて僕に笑いかける。僕には笑い返すことしかできない。どうやら本当に笑っているらしい。

 

20.Synergetic Energy Xchange

 

「SEX とはね、」モジョーが話し始める。「Synergetic Energy Xchange(相乗作 用的なエネルギーの交換)だよ。それは、双方向に完全に開かれている結びつきに基づいている。互いに相手から何かを得ようとしたり、必要としたりせず、タマラや僕みたいに与えて分かち合いたいとき、両者のエネルギーは交換を通して相乗作用が働き、どんどん強くなって広がっていくんだ。このエネルギーの中では、SEX はずっとはるかに豊かなものだし、バランスも取れていて心地いい。それが今日の地球の基本エネルギーなんだよ。ここで経験できる最高のものだ。それはアナーキーのエネルギー、平等のエネルギーなんだ。君、ついてこられる?」

「大丈夫だと思うよ。それも体験することになる気がする」僕は微笑むと、恥ずかしげに付け加えた。「やあ、タマラ。僕のことネイサンと呼んで。僕は新参者なので、君が、僕のチューターであるモジョーとデモンストレーションしてくれて有り難く思ってる。僕はヘッドコンソールを使い始めたばかりなので、慣れるように彼が手伝ってくれているんだ。僕は、この 5 年間を経験していない。ああ、そうだ。君のキスは喜び一杯だよね。ダンスみたいだった。生き生きとした感じが伝わってきたよ」

「こんにちは、ネイサン。私の知覚の中であなたに挨拶できて嬉しいわ。そしてある意味、あなたの言う通りよ。あれは一種のダンスだったの。私たちはそういうことをしているのよ。私たち両方にとって、エネルギーを上昇させる最高の方法なの」

彼女はこの状況をまったく正常なものとして見ているらしい。何の判断もせず、 彼女は僕の話を受け入れて登録する。彼女は、僕にアップデートが必要だと見ている。

「つまり、あなたは SEX に興味があり、それに関して 5 年分の情報がないわけね」彼女が話を締めくくる。僕はメアリー・キャンプにいるような気分。あの本を読んでから、僕には自分がメアリー・キャンプにいるという感覚が続いている。 本の物語は終わっているけれど、僕の周りの話は続いている。僕が会った人はみんな僕へのメッセージを持っているか、僕が彼らのためのメッセージを持っているかに思えた。僕は、みんなとの出会いがお互いの約束に基づいていることを理解できたが、他の人たちは違った。だから僕も徐々にそれを意識しなくなったが、 今、それが完全に戻ってきた。僕は、自分がメアリー・キャンプにいると見ている。そして他の人たちも同じように見ている。つまり、僕たちはみんなそのキャンプ――他の呼び方でも構わないけど――にいるんだ。僕たちがここにいたのは、 僕たちがそうしたかったからだ。タマラが今現れたのは、彼女がこの瞬間を経験したかったから。彼女の役割を演じるために。彼女はそうすることが好きだから、 そうしたいのだ。肉感的なことに関心を持つ人に教えること。それが彼女の役割だ。彼女の目の中に、存在全体に、彼女の近づき方に、それが見て取れる。彼女の細胞から弾け飛んでいる。そうだ。この娘はそうしたいんだ。彼女はエクスタシーの甘い匂いがする。彼女は優しく僕の首に両腕を回す。目の前に彼女の美しい顔が見える。豊かな赤い唇、輝く白い歯、実にキュートな鼻、瞼は閉じかかっているが、完全にではない。彼女が口を開くと僕の息が止まった。彼女は瞼を上げて僕の目を直視する。彼女はそれから自分の腿を僕の股に優しく押しつける。僕の心臓は停止し、時は止まる。この瞬間、時間がいかに相対的なものかを感じている。何もかもが自分のテンポで時を刻んでいる。どのエゴも、どのプレイヤーも、それぞれの時間感覚を持っている。我に返ると、僕はリラックスした観察者モードに切り替えた。映画のようにネイサンの物語を見ている知覚者モードに。 時空を越えた「今、ここ」に。時間は静止している。なぜなら、ネイサンの物語として知られるこの話の中で、僕はエゴとの同一化から離れることができるからだ。そのうち、この物語の読者も含め、もっと多くの人たちが、そういう経験をするようになる。この変化により、時間は止まるんだ。なぜなら時間は幻想だから。時間は経験を時系列に並べ、筋書きや物語を創るための手段なんだ。僕たちはみんな、自分が本当は何者なのか、I AM を思い出しつつある。僕たちはます ます ME と同一になり、ME と同じような心境になる。だからこそ、時間という幻想が崩れるのだ。それを残念がることこそ残念なことだ。僕は自信を持って、 この新たな時空――マトリックス内の無限の可能性に満ちている場、常にそうだったように、経験したいことは何でも経験できるところ――を探検することをお勧めします。ここでは何も変わっておらず、もっと意識的に経験するようになっただけのこと。少しずつ、一歩ずつ、各自が自分の興味に従っている。あらゆる興味が追い求められている。他に方法はないのだ。だって、すべてが僕たちを通じて起きているのだから。ネイサンとしての経験もそう! ネイサンと I AM は 一つ。そして僕らは共に、愛の波が彼の体を通して流れているのを感じる。

 

彼女が僕を見つめ、僕も自然に彼女を見つめる。僕はその眼差しのなかで自分を失ってしまいたい。僕は自分に倒れることを許す。すると上唇の真ん中に彼女の舌が触れているのを感じた。全身が爆発し、僕は目を閉じる。僕は宇宙のど真ん中に来た。周りはすべての意識が満ち満ちている。ネイサンの体は崩れ落ちるところだが、僕は完全にはっきりしている。僕には、自分の上からも背後からも、自分がまるで意識を失ったかのように倒れていくのが見える。そしてどれだけ自分が輝いているかも。すべてが輝いている。すべてが光になっている。タマラの体も僕の体を支えるのに引きつっているが、それでも優雅に身を低くしながら、 二人の体を地面に横たえた。この女性は、自分がしていることを分かっている。 さっきのモジョーの「ダンス」のとき、足を止めて見ていた人たちが、今度は僕らに声援を送っている。

「タマラ、君の指導は最高だよ!」「時間を無駄にすることはないさ。質問が出ないうちに、ただみんなに見せてやればいい! 鮮やかにな!」人々が囃し立てる。

タマラとネイサンが一緒に目を開けて互いに見つめ合う。それから二人は笑い、 体を揺すり、地面を転げ回り、抱き合って休む。最後のため息を数回吐いて上半身を起こす。

僕は彼女から視線を逸らせてあたりを見回した。ぼーっとしているが、人生を味わい尽くしたい思いに満ちている。僕らの周りにいる人たちが、戦士のいないゲームのようにハグし合っている。互いに、そして僕らに感謝して、それぞれの道へ分かれていく。 僕がネイサンの視線をモジョーに向けると、彼は僕に笑いかけている。

「僕たちが話していたエネルギーについての質問には、これでいくらか答えられたと思う。君ならそれをどう説明する? 僕が言った通り、タマラには彼女独自のメソッドがある。彼女のタイミングと流れは完璧なんだ。彼女は本当に上手だよ。愛の卓越した芸術家とまではいかないにしてもね。彼女はよく知られていて尊敬されている。そのための感受性がとても豊かなんだ。僕は、君たちを残して、もう行くよ。約束があるのでね。どこかで僕を必要としているらしい。インナーネットでまた会おう。ただ僕のことを思えば繋がるから。初めのうち君のワイヤーはちょっと錆び付いているかもしれないが、再設定されていくうちに良くなるよ。独自に再設定されていくから、君の内側の長椅子で寛ぎながら人生で遊んでいればいいさ、兄弟!」

 

21.ジャックとの会話

(訳者注:今回は「父と子と聖霊」の「子=ネイサン」に、ネイサンから見た「聖 霊=ジャック」が話をします)

 ウィンクと共にモジョーは森か街の中に消えていく。角を曲がって、夢みたいに僕のシーンから出て行き、次のシーンへ入って行く。それもまた常にそうだったんだな。僕が見えるのはいつでも今だけ。今や僕のマインドは自己防衛モードに固定されていないので、そういうことに気付くことが出来る。僕のマインドは 見えないゴーストみたい。聖なるゴースト「聖霊」だ。彼をジャックと呼ぼう。 その間にも映画は続いていく。エンドレスに、永遠に、止まらずに、四六時中、今でも。僕には新しい友人ができた。見えない友人が。これからは僕は決して一人じゃない。ネイサンとジャックはチームだ。完全に目覚めた意識であり、僕はその状態が気に入っている。愛がまた僕を通して流れる。タマラはまだ僕の隣に横たわって微笑んでいる。

「私は人をびっくりさせるのが好きなの」彼女が愛情を込めて話す。「興味を持ってくれて有り難う。ネットワーク内のあなたの質問は、私のところに飛んで来たわ」

「僕の質問?」

「ええ。あなたの真ん前に "ブラックホール" つまり知識のギャップがあったで しょう。あなたにはモジョーが話していたエネルギーについて理解できなかったからよ。私はこのエネルギーを扱うことに情熱を持っているの。だから私は、自分の情熱を注いで人の役に立てるような質問をインナーネットで探すの。これが私たちの今日のやり方よ。あなたのフィーリングを通して、あなたは、この方面への興味をインナーネット上に送り出した。それは誰でも見ることが出来るから、 私は機会が来たとばかり飛びついたわ。あなたはもうアップデート情報をもっているわ。よかったらもうしばらく一緒にいて何が起こるか見てみない? あなたは 2015 年以降の 5 年分の記憶がないと言ってたわね。私の方は随分いろいろあったわ。あなたの話が当時の記憶を呼び出して、私のスクリーンは思い出で一杯になっている。明らかにあなたの頭にコピーせよ、ということよ。昔の学校方式でコピーするの。つまり、あなたがこれから見る映像について、私が話をする。その間あなたは、私の目を通してその映像を見ていることになるの。これはただ情報をコピーしているだけではなく、同時にあなたの共感力も微調整しているのよ。出来るだけのことはするけれど、一つ一つやっていきましょうね。 準備はいいかしら。そうしたいと思っている?」

「うん、もちろんだよ」この瞬間、これ以上に興味を引くものは何もない。サミラを除けば。

 

今、ジャックがスクリーン上にサミラの像を映し出している。僕はじっとしたままだが、何もすることがない。ただ観察するのみだ。父と一緒に意識的に。彼のことはパパと呼ぶよ。僕はジャックを見守ることができる。僕のマインドは当然、古いプログラミングに起因することを行う。僕たち三者は、僕の観点、僕のフィルターによって引き起こされる反応を見ている。それで気付いたのだが、僕は居心地悪さを感じている。この状況に対する僕の気持ちが調和してないからだ。

「僕に見せてよ。僕は見たいんだ」僕はジャックに言う。ジャックは、サミラの顔がまだ映っているモニターを指し示す。愛が僕を通して流れ、あらゆるものが少し明るくなる。次に僕はパパからのインパルスを受け取り、自分の興味に従って彼女の顔を見つめたり、眺め回したりした。今度はジャックとパパが隣同士でいるのが見えて嫌な感じがする。ジャックが記憶の断片をスクリーン上に投げ込んでいる。口げんか、嫉妬、ひどい瞬間の数々、そして最後には泣いている元恋人の記憶がゆっくりと現れる。僕はそのすべてを観察する。僕自身の不安な感覚はこれほどまで大きくなっていたのか。だけど罪の意識は感じない。僕は、パパが僕の味方だから何も悪いことは起こりようがないと知っている。ジャックが考え深そうに僕を見ている。僕には、彼が裏で処理作業に忙しくしているのが分かる。彼はパパを見上げると、自分の考えを僕に語りかけた。「私は私のプログラミングに従っているのですよ。あなたがあなたのプログラミングに従っているようにね、兄弟!私が自分を再プログラミングし始めたことを、あなたが喜んでくれるのを見るのは嬉しいです。だけど忘れないでくださいよ。あなたも、あなたのプログラミングの産物に過ぎないことをね。たとえあなたが、習慣だとか観点だとか呼ぼうとも、プログラミングには変わりありません。それはあなたをずっと盲目のままにしてきました。私と同じようにね。少しチームワークしてみませんか?」

僕は彼を見る。彼をきちんと見るのは初めてだ。彼はずっと僕の右側にいてくれたんだな。姿が見えない霊の友だち。僕の兄弟。長い間ちゃんと認識してこなかった、僕の大切な一部。今はしっかり認識している。別の人物のように。感謝をこめて彼にウィンクする。「喜んでそうするよ」

「タマラに戻りましょう」彼はウィンクを返し、二人の素敵な女性にフォーカスを戻す。パパが、僕が少し左を見るようにガイドする。タマラの顔が僕の視界の中央に来る。僕の内側のスクリーンにも視界が重なっている。僕は初めて意識的に全域を見る。家にいるような――以前には決して感じたことのない――安心感を覚える。この「場所」って一体何だろう。「今、ここ」とも言えるこの場所は。 この時空を越えたところを一番的確に言い表しているのは "perception" (知覚、認識)だろうな。それは無数の時空からできている場所で、ここでは無限の可能性と経験がある。そしてこのような場所というか知覚は無数にあり、そのうちの一つに過ぎない。ここで僕はさらに大きい時空に入ることができ、他の人たちと一緒に自分の経験をシェアすることができる。

「あなたの不安はあなたの考え方から来ています。『僕は一人の女性に恋をしているのに、別の女性とキスをした。タマラは僕をびっくりさせたけど、これって浮気と言えるのかどうか。でも僕はサミラを傷つけたくないし、ああたら、こうたら、ぐだぐだくだ・・・』わかりますか?」

「うん。わかるよ。それが自分、ネイサンだと認識できる。それが僕の考え方で、 他の人たちが知っている僕。僕はそのように振る舞うと思われている」

「それがまさに、私たちがチームとして、ユニットとして取り組まねばならないポイントです。私たちは両立していますし、基本的に同じ様に機能します。私は合理的なあり方で、あなたは感情的なあり方で。しかし私たちは両方とも、私たちの思考や物事の見方によって、特徴付けられます。私たちの間に上下はありませんし、揉め事も常に不要でした。なぜなら、どちらが欠けても私たちは何かを知覚することはできませんからね。パパにしたってどちらか一方だけでは無理なのです。私たちは、全体の二つの部分なのですから。パパの無数の細胞の一つです。 私たちは同じ様に機能します。私たちの長旅――エゴの旅と呼んでもいいでしょう――も終わりに近づいてきました。私たちはずっと長い間、世界をあなたの観点から見ていたのです。そこでは明晰な論理の出る幕がありませんでした。私は 何でも起こるがままにしました。私は自分が不能になったのかと思いましたよ。 たまに頭痛がしましたよね。そのときは考えることを中断できて嬉しかったです。 だって考える内容ときたら、無理矢理考えさせられていることでしたからね。あなたが常に正しくあらねばならないという線に沿って、あなたの道理に沿って考えさせられていました。おかげで私はよく胃痛に悩まされましたよ。提案があります。今後、私たちが共に働くときには、私が論理性を受け持ち、あなたは気持ちを受け持ちます。そして私たちは一緒に調和を生み出すのです。いかがでしょうか?」

「いい考えだね、兄弟。それで君の見方からすると、タマラの件はどう解決する?」

「別のレベルで他の考え方をすることで解決します。まず第一に、サミラはタマラです。サミラがあなたや他の人たちであるように。物事は自ずと起きます。それはここでも一緒です。別の言い方をすれば、タマラがあなたの知覚の中に入ってきたのは、あなたがそのようにコントロールしたからではありません。仮に彼女から逃げ出していたとしても、何も変わらなかったでしょう。あなたは彼女を見て彼女に反応しました。あなたが逃げたとしても、彼女はまだここにいます。 あなたは何も変えることができません。なぜなら、すべてが、一なるもの、神、 パパ(名前があると便利なのでそのように呼んでいます)を通して起きるように、それはひとりでに起きるのですから。ネイサンは、他の人たちに対しても同様ですが、サミラと、そしてタマラの両方に会わねばならなかったのです。私たちはパパであり、望まれていないことは何も起きません。いかなる反対意見(私たちのこの頭ではなく、他の人たちの頭の中の反対意見)も違う考え方による論理的結果です。それぞれの考え方がそれぞれ違うものを見せます。問題は、あなたが私の考え方に自己同一化することです。少なくとも、ある瞬間にあなたに都合のいいものに自己同一化します。同一化しない場合には反対します。私、ジャック、聖霊に逆らいます。それはエゴと同様、あらゆる細胞内で見られることです。(たとえ私が各自に合わせて別様に機能していても)。    

それは人間のようにプログラムされた細胞内だけで起きることです。そこではエゴたちがそれぞれのエゴの旅を創り上げています。なぜなら、エゴにはそれが必要だからです。あなたの成長のためなので、私は喜んでお付き合いしているのです。それでも、もしそれを終わりにしていただければ、大変嬉しく思います。 あなたに分かっていただくために、どうやって物事の見方を変えるか、例を示しましょう。私たちは思考を通してコミュニケートしています。私は物事を論理的に処理し、あなたは感情的に処理しますが、それはそうあるべきことです。ナンセンスの代わりに、あることに同意しませんか。パパは私たちを通して自らを経験しています。彼は私たちの両方の内側にインパルスを与えます。彼はあなた、私たちみんなを導いています。もちろん、サミラとタマラもです。パパが創り出した状況に直面しても、私たちはもう感情的に反応しません。不安からズボンの中にクソをたれる代わりに、むしろ興味を示すのです。あなたはこれを承知できますか? つまりあなたは、あなたに対する固定観念の支配を手放さねばならないという意味です。ただそれを行うことによって、あなたに何が出来るかを考えることを自分に許すという意味です。この例えを理解できますか? その背後にあるロジックを? 状況はあるがままのものです。あなたはその状況を、あなたの馬鹿馬鹿しい方法で解釈し、自分の不快感に対して不平を言うこともできます。あなたがしなければならないことは、これまでとは別の考え方をすることです。あなたにそれができますか? くだらないことをぐだくだ考える代わりに、 もう一度、タマラに完全に興味を持ってください。あなたがタマラから学ぶことが、サミラのためになるかもしれないのです。論理上、そうなるでしょう。あなたが今、意識的に何かを学べば。あなたにそれができますか? 続けていいですか?」

「オーケー。いいよ」と答えてから、目の前の女性の素晴らしい顔に再び意識を集中させる。僕の感覚と時間を奪った人が、僕に手を差し出して立っている。低速度撮影の世界にいるみたい。 "あちらでは" あまりにもたくさんのことが同時に起きているし、あまりにもたくさんのことが、僕にも毎秒起きている。でも誰も気付いていないみたい。僕は驚いて自分の注意がタマラに戻って行く様子を見ている。トンネルを脱けているみたい。

 

22.ハウスメイト

 

「来て。邪魔の入らないところへ行きましょう」タマラが僕を励ますように言う。 僕は彼女の手を取り、忠犬のように彼女について行く。犬との唯一の違いは、浅速呼吸をしていないだけ。いくつかの道を進み、家々や植物だらけの庭を通り過ぎ、僕は見慣れないものに気が付いた。ドアにベルみたいに何かが掛けられている。緑色をしていたり、赤色をしていたり、半々ぐらい。そういえば、マニュエルの車のボンネットにもあった。一色しか見えなかったけど。僕たちが緑色のものが掛かっている家に着くと、タマラが言った。「この家は空いているわ。私の好きな家なの。入りましょう」自動的に彼女の後をついていくと、そこはキッチンだった。夢の中のように場面が変わる。彼女はカップボードを覗いてボウルを取り出している。

「ここで待ってて。何か食べるものをとってくるわ」と言っていなくなる。僕は本当に何も考えずにあたりを見回した。すると突然、男がドアの所に立っていた。

「やあ、なんか役に立てることはないかい?」と彼が言う。

「いや、有り難う。ここでタマラを待っているだけだから」と僕は答える。

「その人のことは知らないけど、君は自分がしていることをわかっているのかな。 あたりを存分に見回したらいいさ!」彼は行ってしまった。

自分がしていることをわかっているかって? いいや。見当もつかない。ただ観察しているだけ。僕はここでそれを経験するために、観察するためにいるんだ。 判断したり、奇妙なことを見つけるためじゃない。最初はそうだったかもしれないが、ジャックのおかげで、今、ここで僕たちは観察している! それで十分。 僕たちは、何をするのかわからないときは、パパが僕たちに何もしないことを求めているって知っている。取り乱したり、次は何をするのか尋ねたりしても無駄なこと。これから起きることを変えられるわけじゃないんだから。

タマラが部屋に戻り、僕にニコニコ微笑みかける。ボウルは果物で一杯。

「僕、君のハウスメイトに会ったのかと思ったけど、彼は君のこと知らないって」 勢いづいた口調で言った。

タマラは困惑した表情で僕を見ると、笑い出した。「私、ここには住んでいないの。それでも彼は私のハウスメイトよ! 説明させてね。今日では誰も固定した家をもっていないの。私たちはみんな自由で、どこへでも好きに移動できるわ。 居住空間もシェアし合っているの。ルールは簡単よ。赤いマークがあれば、邪魔しないでくださいということ。だから、中の人が出て行くのを待つか、緑のマー クの場所を探すかするの。昔の公衆トイレみたいなものね。この時代にもあるけれど。去るときには必ず、次の人が気持ちよく使えるようにして出るのよ。食べ物は至るところにあるし、ごみを持って出る必要もないわ。ごみはほとんど出ないし、すごく暮らしやすくなったのよ。最高なのが、もう家賃を払ったり、何十年もローンを返済したりしなくていいこと。もちろん、もっといい場所もあるけれど、一回使ったら、しばらくしてからまた使うのが基本よ。世界は、同じ場所で人生を送るのが惜しいと思うくらい、あまりにも面白い場所になったのよ。ハウスメイトしかいないわけだから、さっきあなたが会った人も私のことを知らない理由が分かったでしょう。私たちにはどこにでも自分の家があるの。それは本当にすごい違いなのよ。さあ、どうぞ食べてちょうだい」

僕はリンゴを取ってかじる。喜びの波が僕を襲う。今でも LSD トリップのように感じる。

「家賃がいらないって?」

「ええ。家賃も何もいらないの。世界は、特に製品には、もうお金が必要ないの。 私たちに必要なのは、緑か赤かを示す小さなスライディングハッチだけ。もうこれ以上簡単にしようがないほど簡単になっているわ。0と1。あなたのものと私のもの。今は誰もお金を使わない。もう必要ないからよ。近頃じゃお金はほとんど使われないし、私はお金を使っている人を誰も知らないわ。何でも自由に利用できるのに、どうして使う必要があるの。みんなに十分行き渡るように、誰もが自分にできることをしているわ。以前もそうだったはずのよ。今日、私たちは、エネルギー、お金を吸い上げて我が物にする支配組織や団体を必要としていないの。私たちは社会システムのために一日 8 ~ 10 時間労働をしていたけど、今は いつでも自由に使えるわ。自分の愛していることをして、絶えず自分を向上させているのよ。私たちにはカレンダーも、もうないの。私たちは、約束の時間に会うのではなく、会うようにインパルスを受けたときに会うの。あなたは自分のインパルスに従う以外、何もする必要がない。それでもあなたは誰にでも会えると 断言するわ。あなたが望んでいる限り、あなたが会いたい人には誰にでも会える。 常に会うべき人物にね。私たちの信念や考え方のせいで、以前は無理だったけど、 それもやっぱりいつでもそうだったのよ。まだキッチンの中で座っていたい? それとも部屋に行く?」

僕はまだリンゴをかじっている最中だったので、残ったリンゴの芯を彼女に見せた。彼女はドアの外を指差して言う。

「あそこのリンゴの木がスナックを欲しがっているわ。私について来てね」

僕は感謝しながらリンゴの芯を木の下に放る。そして期待を胸に彼女について行く。この女性は何か言いたいことがある。そして僕のフィーリングはそれだけじゃないことを告げている。

 

僕たちは階段を上がってあたりを見回す。廊下はいくつかの部屋に通じており、一つの部屋のドアが開いている。目印は緑になっている。バスルームだ。二つの部屋の目印が赤になっているが、ドアは開いており、中には誰もいない。

 

「利用中で、誰かがすぐに戻ってくるんだな」とジャックが言う。他の三つの部屋は緑になっているが、ドアは閉まっている。タマラが一つの部屋のドアを開けて中を覗き、僕を見る。

「この部屋はどう?」彼女が柔らかい声で言う。

僕は中に入って見回す。美しく飾られている部屋だ。ダークレッドのカーペット、壁にはカラフルな絵、カップボード、コーナーの二脚のアームチェアー、長椅子、壁に備えつけてある本棚。部屋の奥にはベッドがある。樹皮がついたままの二本の丸太の上にベッドが渡してあった。「共有物だ」と頭に浮かぶ。全部自由に使える。次の人が気持ちよく使えるようにしてから出ていけばいいだけ。

タマラが目印を赤にスライドさせてドアを閉める。彼女はフルーツボウルをベッドに置く。僕は本棚の前に立ちっぱなし。僕の習性なんだ。本棚を見つけると、どんな本が揃えてあるのか見ずにはいられない。僕は、「本を見ればその人がわかる」という言い回しをよく使ったものだ。たくさん本を読んできたし、いつでも本には強い興味があった。本棚の一冊が目に飛び込んできた。カフカとブコウスキーの間にあるやつ。僕は著者の異名を知っている。"Jesus Urlaube(r Bauchi)" そして "2020"。僕がその本を取り出すと、タマラがそばに来て訳知り顔に微笑んで言った。

「それはあなたの物語でしょう?」

「うん。バウチが朝食をとるときに教えてくれたんだ。何を僕がここで経験しているのか、なぜ周りの人たちがそれを知っているのか。彼が言うには、僕がここでの経験を彼に話し、彼はそれを本に記したということだ。本当に一瞬その本が光ったんだ。夢みたいだよ。だけど僕はすべてが本当に夢であり、すべて繋がっていることに慣れてきた。それでもやっぱり僕にとって、この読み古された本は驚きだ。本当にこの夢にさわれるのだから!」

 

(つづく)