2016/01/21 「25.皆さんを信じています!」を追加しました。
2016/01/22 「26.サミラの物語」を追加しました。
2020 The New Earth
A travel report
世界中で新しい地球を共同創造するため、本書を無料で公開する旨、本文中に記されてありました。
人名は英語読みにしました。こちらが翻訳元の英訳文書です。
2020 The New Earth
A travel report
――ネイサンの物語――
(つづき)
23.タマラの物語
「あなたの古い自己もそうだけど、私もバウチをよく知っているの。彼とは Eigiland を通して知り合ったのよ。彼が Eigi と例の賛歌をつくったと聞いて興奮したわ。当時私はエイジランダーだったの。エイジランドは私の自己意識を随分変えてくれたし、エイジランダーの一人であることは、とても心地よかったわ。 ゲーマーズ・ギルドに例えられるかしら。あらゆるキャラクターを選ぶことができながらも、どこかに属しているってすごいこと。ほとんどの人たちには得ることが一杯あるのよ。属すということは、特定の考え方をするということだけど、 以前のようなドグマチックなものでは決してないの。もっと話を聞きたい? それなら本を戻してちょうだい。これからはいつでも読めるし、経験し続けていくこともできるわ」
もちろんそうだとも。僕たちはベッドに腰掛ける。ものすごい親近感を覚える。僕の姉妹と話しているみたい。
「当時、私はシングルマザーだったの。私の娘エバは 2015 年だと3歳よ。私は娘と一緒に当時のボーイフレンド、リチャードと暮らしていたの。リチャードは娘の父親じゃない。私はいつだって、人生とセックスを楽しむ女だったわ。彼といると、私はいつでも穏やかな気持ちでいられたの。自分は淫乱なのかと思ったこともあったけど、自分はそれだけの者ではないと気付いたわ。私はセックスするのが純粋に好きだったけれど、世間ではいつも自由や束縛、依存、期待がセックスに結びつけられていた。そして他者をジャッジする人たちも。彼らは自分自身に向き合うのが怖かったのよ。2015 年の前半、何かが私の中で変わった。リチャードとの関係も失敗に終わりそうなときで、私はとても内省的になったの。 自分宛に書いた手紙のことを思い出すわ。目を閉じてちょうだい。お互いにシンクロしてみましょう。そうすればあなたにもその手紙が見えるから、一緒に読むことができるわ」
初めは当惑したが、彼女の誘いを受け入れて目を閉じた。
「目を開けずに私を見て。私が見える?」
僕が大きな声でイエスと答えると、彼女は話し続ける。
「テーブルについている私を見て。私は文具を前にして座っている。私はちょうど万年筆をしまったところ。手紙を読めるように持ち上げているわ。その手紙に集中して。私の目を通して手紙を見て」
魔法が働いているみたい。彼女の手紙がはっきりと僕の目に見える。
「手紙を読める?」彼女が尋ねる。
文面に意識を集中して声に出して読み始める。最初は躊躇したが、あとは流れるように読んだ。
「孤独感は常にそこにある。時にはあなたが孤独を受け止め、時には孤独があなたをさらう。今は孤独が私をさらっていった。孤独が私を支配する前に、私は孤独を取り戻さねばならない。私は孤独の意味を理解しようとしている。私は独りぼっちになるだろう。多分それだけは分かっている。独りぼっちになったらあなたはどうする? 考えるのよ! あなたは何を考えるの? あなた自身について、自分について。私の最初の結論は、自分が幸せじゃないこと。どうして私は 幸せになるために何もしないの? もし私が自分で幸せになりたかったら、私は一人でいなければならない。リチャードはいつも私といる。私たちの将来、愛、一体感、私たちはこれらのことを十分語り尽くした。私がそれらを手放して自分の道を行くことができるように。彼の許を完全に去りたくはないけれど、今の私は一人になりたい。だけど彼もそれを望んでいるだろうか? 考えや質問はもう要らない。行動を通して解決するしかない。私はまだ彼を以前と同じように愛しているけれど、エバと二人になりたい。そして私一人だけにもなりたい。こうして自分が、そして彼も幸せになれるか確信はもてない。それはすごいことだろうけれど、想像しにくい。私は自分の不幸を他人のせいにする臆病者なの? 人を助けたいと思っている人は大勢いるけれど、何よりも大きな助けは、私が、自分は何者なのか、何をするのか、自分で決意することよ。唯一それだけが、私がしなければならないことだけど、本当につらいことだ。私はそうしなければならないし、そのことを知っているし、それを今書き記している。でも、本当の答えは何だろう。私は自分がじたばたしているのが分かる。ロープを探して、握れるものを探している。自分を救うロープは自分に他ならない。そのことを知るのって助けになる? もっと深みに落ちないように、私は人生に、自分に "イエス" と言おう。それに私たちの愛はとても偉大だから、二人のことにもさらに取り組もう。嘘や隠し事をしないで、自分にしているのと同じように彼に話そう。今までは問題がなかったのも当然だわ。自分に嘘をついて、それ故に彼にも嘘をついているのだから。私は勉強がしたい。自分の家を探したい。彼と一緒に実家に滞在して私の母親と仲直りしたい。夏には長旅に出たい。 2 月に旅行がしたい。自分自身 を見つけたい。正直でいたい。書き記したい。ようやく気分がましになった。幸福は感じられないままだけど」
読むのをやめてもまだ彼女の声が、現実離れして反響していた。
「この文章が、あなたが手にしていた本の一部になったのよ。今の手紙文を載せたこの本は、たくさんの本棚で見つけることができるわ。多くの人たちが、その中に自分自身を見ることができた。そして彼らは、私がこれから言うことに感謝してくれたのよ。手紙の最後の文は消しておいてね。自分は決して幸せになれない、私は自分にそう言い聞かせている限り、決して幸せになれないと気付いたの。 私の意識にとって、それが最初のパラダイムシフトだった。こんな考え方をしたって何も良いことがなかったから、そういうふうに考える癖を直したの。私は幸せになりたかったんだもの。思考は現実になる。私はそれをロンダ・バーンの『シークレット』から学んだわ。あなたがその本をどう思っているかも知っている。 はっきり言えば、幸せを求めている人にはすごく危険な本にもなりうる。なぜなら、経験していることはすべて経験したかったことなのだと、その本はちゃんと伝えていないからよ。人々はそういうことを意識していなかったの。今日では誰もがそれをはっきり知っている。あらゆるものが興味と興味が結びついたものに従っており、何かを願うから、それを経験するのではないということをね。私は人生を楽しむことを学んだわ。手紙を記さなければ、そうならなかったと思う。 2015 年 8 月、たまたまあなたの物語を読んだの。ワクワクしながらどんどん引き込まれていったわ。そうしたら私の手紙が出てくるじゃない。私は、手紙を取り出して比べてみたわ。まったくのコピーだった! バウチはどうやったのかしら? そんなことあるはずないじゃない! 私はネイサンの存在を信じ切れていなかった。だから今日、あなたに会えてとても幸せよ。たとえネイサンのことをよく知っているとしてもね。これは私にとっても特別な瞬間なの。ずっと待ち続けていたのよ。私も 2020 年の世界であなたに―― 2015 年のネイサンに―― 会える数少ない一人だと知っていたわ。ここでは一切がゲームよ。この 5 年間、 あなたが本当に存在しているのか、それともバウチとネイサンの創作なのか、誰にも分からなかった。だけど、バウチは私の手紙を書き取ったのよね。 私は自然とバウチに興味をもって、何者なのか調べたの。彼の本のおかげで再び人生に喜びを取り戻したのは、私だけではないでしょうが、著作以外にはどんなことをしている人なのかなって。
そうやってエイジランドを知ることになり、私が手紙に書いたことは真実だと悟ったの。私はまだ何も実行しないままだった。リチャードとはまだ一緒に暮らし、愛し合っていたけれど、どうしても一人にはなれなかった。だから私は決意したの。というより、自然にそうなったんだわ。本当に洞察力が働いたのだと思う。心は重かったし随分緊張していたけれど、バウチが書いていた "別の種類の別れ" について打ち明けたの。あなたにも見つけられると思うわ。大切なことは、客観的に話し合って自分に自由――彼が私から奪っていたように思っていた自由 ――を与える機会を得たということ。私が母親に電話すると、とても喜んでくれたわ。私は母の気持ちに感謝して、自分探しをしなければならないことを伝えた の。母がエバのことを聞いたので、エバは私と一緒にいると答えた。 母は、エバにあんまりストレスがかかるようなら、喜んで面倒を見に行ってあげると言った。(母はいつも私に高圧的で、一緒にいると気がめいるので、もう母のところには行かなくなっていた。その電話のときもちょっぴりそんな感じだった)。母も本当に寂しかったもんだから、しばらくエバをみてくれることになったの。その年の最初の数ヵ月間、母もまたいろいろ思うところがあって気付いたのよ。私の問題の多くは、母が私の思うようにさせてくれないところから来てるって。彼女はいつも私に干渉していたの。母の申し出は、母が私の意向をくんでくれたということ。エバにしばらく母と暮らすかどうか尋ねたら、とてもはしゃいでいたわ。私は人生で初めて自由になれたの。私は自分が何を経験したいのか知っていたわ。それはこの物語よ。それはバウチを通して私たちにもシェアしてもらえるあなたの物語でもあるわ。多くの人たちにとって、あなたの物語はずっと待ち望んでいた神の印だった。
そうして私は船出した。衣類を詰めたバックパックと、カメラとラップトップが荷物のすべてだったわ。リチャードと家を出たとき、私が予想していたのとは様子が違った。彼もその本を読んでいたのよ。 『それぞれの道に進み、連絡を取り合おう。そしてお互いが幸せになるように、旅の間経験したいことは何でも愛をもって許し合おう。お互いに立ちはだかるのではなくね』彼はそう言ってくれた。『愛してるよ。君が考えることはすべて言葉や行動に移していいからね。僕は、君の素晴らしい経験も含め、何もかも知っている必要はない。だけど僕はいつでも君のためにいるよ! 連絡してね。どうすればいいか分かっているだろう。明日は僕も荷造りして発つよ。この冒険を大切に経験しような!』
私は唖然としたまま立っていたけれど、ふいに涙がこぼれたわ。彼が私を腕の中に引き寄せると、私たちは一緒に泣いていた。深く愛し合っていた関係が終わったから泣いたのではないわ。私たちは愛し合ったまま、とうとう新しいスタートを切る方法を見つけたからよ。生まれ変わるようだった。その夜はとどまって、 早朝まで愛し合った。いつもと違ってとても自由でいられた。期待からの自由、解釈からの自由、思考の自由、失うことの恐れからの自由、標準通りでいることからの自由。何もかも自由に流れた。私たちを通して流れ続けていたわ。私たちは一つだった。私たちには、お互い別の方向に進んでいくとしても、翌日の旅は一緒に始まるのだと分かっていた。日が昇ると、彼は私の目を見て言ったわ。
『君は愛の芸術家だ! もし、いつか君がどうすれば人の役に立てるのか迷った ら、そのことに意識を向けてごらん!』」
24.エイジランド
「私には信じられなかった。起きていることがすべて 2020 に書かれていたんだもの。単純化されてはいても、きっぱりとした言葉で書かれてある。あまり細かいことは出てこないけど、理解すべき骨子はすべて押さえてある。これからエイジランドのことが出てくるけど、自分が話したこととはいえ、当時の私にとっては 5 歳年上の自己が話したことだった。Eigi(aka Thomas)は Wirkarte.de (http://wirkarte.de/en/home/)で見つけて最初に訪問した人よ。(訳注:Wirkarte.de は問題を解決したり、世界を変化させるために自由に協力し合うネットワーク)。私にとって Wirkarte.de は本の一文に隠されていたイースターエッグだったの。私は登録するときに、他に何人くらいいるか確かめた。登録した人同士、個人的に会ってもよかったの。 それはすごいことだわ。一週間後に彼に会って、バウチと会うことを希望したの。 だけどバウチは本のプロモーションのために、ドイツ中を回っている最中だった。 後になって会えたけど。エイジは私に才能があることを分からせてくれたの。私のセクシュアリティーはちっとも歪んでいない。私がセックスが好きで、別のパートナーがいるからといって、私は異常じゃない。私が彼に、自分は男性の側で眠り、その人のために良いことをするのが楽しいと言ったとき、彼はただ笑っただけだった。
彼は私に言ってくれた。『エイジランドでは、あなたのような女性は非常に尊敬されますよ。セクシュアルなエネルギーは物理的領域で最も高いものです。あなたがそのエネルギーを物惜しみしないのなら、多くの男性があなたに引きつけられるのも当然のことです。ただし、そのことをあなたのエゴの餌にしないように。それは自分の才能なのだと、ただ知っていればいいのです。この社会では、それほどオープンでいられる女性は――自分でいたいような自分を認めてもらっている女性は――あまり多くありません。エイジランドは違います。私たちはお互いに尊敬し合っている。あなたに嫉妬したり、あなたを尻軽女呼ばわりするような女性は誰もいません。彼女たちもあなたに助けられたり、あなたから学んだりしますよ!』
それには本当にびっくりしたわ。彼は私をジャッジしたり、娼婦として働くようにほのめかしたりもしなかった。彼は、私がありのままの自分自身を受け入れて、それを最大限に活かすよう励ましてくれた。私はエイジランドのそういうところが大好き。この哲学が生きている。人々は平等であるという事実に即して形成された "国" は、世界中に一つもなかった。(平等という理念が)生きているのよ! そして人々は今でもそのように生きている。それは他の憲法にも書かれていたり、常に引用されたりしているけれど、それは決して活かされなかった。それは、ヒエラルキーの中では不可能なのよ。だって、階層の中のどこかに自分をはめ込まねばならないから。エイジランドにはヒエラルキーは存在しない。誰もが自分の王様で、他の人たちの平和を乱すことはせず、みんながお互いに助け合う。エイジランドには戦争が起こりっこないわ。住民に敵なんていないのだから。 エイジランドは TerraNia ネットワークの一部なのよ。今日では他にもたくさん そのネットワークに繋がっている。テラニアというのは私たちの地球という意味よ。地球はみんなのもの。今日では誰も自分の子どもたちに、理屈上でさえ、戦争が何なのかうまく説明できないわ。子どもたちには本当に理解できないの。彼らの思考方法に適合しないのよ。あらゆるものが UBUNTU なの! (訳注:ウブントゥ。南アフリカのズールー語で「他者への思いやり」を意味する。DebianGNU/Linux をベースとしたオペレーティングシステムの名前として有名)。私たちは今ではもう、このような国家はすべてマインドの構成物でしかないことを 分かっているわ。誰も本気で国を通して自分を定義づけたりしない。虐殺が止むと、地球は遊び場になったの。たくさんのことが変わったわ・・・・・・」彼女は黙り 込み、じっと考えていた。
それから彼女は話を続ける。
「リチャードとの夜の後、何かが変化したの。朝食では私たちはほとんど何もしゃべらなかった。一晩中寝ていなかったのに元気よく旅立つ用意ができていたわ。私たちはただお互いに微笑んでいただけ。それで十分だった。セックスも違っていた。それ以降私のセックスは、その夜と同じようなものになった。とても気楽で複雑でなくなった。私はセックスが何なのか徐々に理解していった。SEX とはエネルギーを交換し合うことによる相乗効果よ。それにはお互いをバランスさせるエネルギーが必要なの。憎しみも愛と同じように作用し、セックスがなければ戦争もないでしょうね。戦争は憎しみが頂点に達したものだから。 やがて愛がどんどん高まっていく時期が来るわよ。そしてあなたがここで今日見 ている世界になる。その時期の間ずっと至るところでそうなるわ。似たようなエネルギーが引き寄せられる。そのエネルギー同士が出会って自由に動き回れるとき、互いのエネルギーを高め合って爆発するも同然になる。憎しみもピークに達したわ。それが破壊的なセックスだったのよ。でも愛は果てしなく続いていくことができる。なぜならそれは命を与えるし、何でも可能にしてしまうから。だから当時、多くの人たちにとってセックスが、特に問題つきのセックスが話題にされていたのよ。誰も自由に移動できなかったから、広がっていく余地がなかった。 すべてが変化したとき、私たちのセクシュアリティーも変化し、ほとんど誰にとっても物事は、あっという間に違うものになった。2015 年は大変化の年だった。 そして 2016 年はみんなに自由が訪れた年だった。私たちを通して。
誰もが何が起こっているのか見ることができた。それはミステリーなんかではなく、単純なロジックだったわ。もしも私たち全員がすべてのことをお互いに禁じ合っているのなら、私たちは何も経験できない。それほど簡単なことなのよ。 人々が身の周りの禁止事項をすべて取っ払って、その規制に従うのをやめたとき、 人生はすぐに実体験的なものになった。そのことで新しくいろんな世界への扉がたくさん開いたの。あなたは SEX-セックスをサミラと初体験するわ。私は本当にあなたとそうしたかったのだけれど、あなたが 2015 年に戻って自分でそれを見つけ出す楽しみと意欲を奪いたくない。私たちはお互いに見つけ合うだろうし、常に繋がっているわ。あなたはただ私のことを思うだけでいい。そうすれば私はそこにいる」
彼女は自分の片手を僕の胸にあて、見つめ合ったまま深呼吸する。この女性への感謝と喜びと無条件の愛が巨大な波となって僕を通して流れる。何の言葉も要らない。僕は体を傾けて彼女をハグする。彼女も僕をハグして自分の方に引き寄せる。別のエネルギーの波が僕を通して流れる。それは、彼女がさっき僕にキスしたときに解放したエネルギーだ。再び僕は時が止まった感覚を得る。
「それが SEX よ」彼女は囁く。「性交とは何の関係もないものよ。でも SEX という基礎の上での性交は・・・・・・あなたはきっと気に入るわ!」
「リチャードのことは?」僕は尋ねた。
「ええ、私は彼の女よ」彼女が答える。
「私たちはほぼ一年近く会っていないわ。でも WhatsApp で連絡は取っているの。ある日、火がついたように彼に会いたくてしょうがないときがあった。彼もそうだったの。私たちの再会は、私が願っていたとおりのものだったわ。頭を高く上げ、互いに向かい合って立った。相手から何も得る必要のない自立している 二人の人間が、お互いに楽しんでいた。私たちは素晴らしい数週間を共に過ごし、また別々の道に進んでいった。今でもハートで繋がっているわ。私たちはお互いを、そしてお互いの無条件の愛を知ったの。私たちは相手も自分もありのままに 愛せるのよ。そのことは、その時以来ずっと変わらない。私たちは互いに会って それぞれのことを行う。自分の興味に任せて自由にしていられるの。近頃はほとんどの人がそうしているわ。リチャードは今、エバと一緒にオーストラリアにいる。エバは本当に田舎で過ごしてみたかったのよ」
僕たちはもっと長く抱き合う。そのとき僕の中で何かが点火していることに気が付いた。サミラに会いたい! まるで彼女が僕の思考を読み取ったように、彼女は僕から身を離して僕の目の奥を見る。(彼女には僕の思考が通じていたのだ。 僕たちは一つだったし、この瞬間を意識し、祝っていたのだから)
「それではタイムトラベラーさん、SEX がどう働くか分かったでしょう。ただあなたのインパルスに従っていけばいいのよ。そうすればサミラの許に導かれる。 彼女に私からもよろしくと言っといてね。彼女は私の姉なの。行っていいわよ。 私は部屋を元通りにするから。この経験をあなたと分かち合えて良かった。私たちは 2015 年の終わりに出会うわ!」
僕は彼女と笑い、彼女にキスする。
「ありがとう。何もかもありがとう!」僕はそう言うと体を起こして出て行く。 部屋を出る途中でちらっと本を見るが、もう手にしようとは思わない。次に何が 起こるか、自分で見つける楽しみを台無しにしたくないからね!
25.皆さんを信じています!
僕は表の通りに踏み出す。パパの視点から、ネイサンがそうしているのが見える。ネイサンの隣にはジャック(聖霊)がいる。そしてその隣に僕(パパ)がい る。この三位一体が周りの美に感嘆している。僕は本能のままに、出会う人たち に心からの挨拶を送る。彼らもみんな挨拶を返してくれるが、その度に愛の波が 僕を通して流れる。何とか、もと来た道をたどって歩き、カフェオレに戻った。 離れたところから笑い声が聞こえる。声の方へ行くと、僕の友人たちが勢揃いして座っている! バウチ、クリスティーナ、マーク、そして知らない女性。多分ナタリーだろう。(2020 年の)ネイサンがいて、その隣に・・・・・・僕の心臓が飛び跳ねる。サミラだ! 彼らは僕を見て嬉しそうに挨拶する。僕を待っていたようだ。みんなは、僕がまたここに立ち寄ることを、本を読んで知っていたのだろう。 サミラは自分の隣の椅子を引き、僕に座るように促した。
「一度あなたたち二人の間に座ってみたかったのよ」と彼女は笑う。「そうあることじゃないわよね、最愛の人に挟まれて座っていられるなんて!」
ネイサンが僕に微笑みかける。「あのときは、僕が君の椅子に座ってた。今日はこっち側に座っている。サミラが君を連れ出す前の数分間を楽しもうぜ! 僕らにしてみれば、君はその後、もう戻ってこないんだ。僕たちはみんな喜んでいるよ。君がここにいることを。そしてそれは僕たちにとって大きな意味をもつことなんだ。正直に話すとね、僕たちは一週間前にこの島に集合した。君が来たときにみんなが居合わせていられるようにね。みんなは君がカフェオレに来ることを知っていたけど――タマラが教えてくれたんだ――そのときは君たち二人きりにしてあげるときだって。ところで、こちらはナタリー」僕とナタリーは、愛のこもった視線を交わす。
「ステファンとウィリアムが君によろしくって。二人は浜辺を探索中。僕たちは君にお別れとお礼を言いたかったんだ。君の物語を僕たちにシェアしてくれて、本当にありがとう。それは僕たちみんなの物語の一部になった。僕がこう言うのも少しうぬぼれが強いように感じるだろうが、僕はきちんと君に伝えたいんだ。これからこの物語をシェアするのは君なのだよ。君は 5 年前の僕であり、今日の僕じゃない。それでも君と僕は一つだよ。それをいつも忘れないで。そのことが一番大切な旅のみやげになる。僕は今君と一緒に深呼吸をしたい。なぜなら、世界は君を通じて学んだからだ。内なる平和への道を。みんなも一緒にどうだ い?」彼が尋ねると、僕たちみんな手を上げた。僕たちはうっすらと、あるいはしっかりと目を閉じて一緒に息を吸い込み、そして吐き出す。僕が目を開けたとき、何もかも良いものに見えた。人生への熱い思いが湧いてくる。またメアリーの本のことを考えよう。すべてがあまりにも美しい。言葉に言い表せないほど!
「このカフェのオーナーは誰?」ウェイターがいないことに気づいて尋ねる。みんなが笑っている。
「誰でもないし、みんなでもある」ネイサンが答える。「名をなしたシェフがまだ働いているレストランは数軒あり、僕たちはそこに行ったりするよ。けれどもお客さんも彼らと一緒に"働く"。しなければならないことは何でも自分たちでする。洗い物をしたり、特産品があれば持って行ったり。僕たちは何でも分かち合うんだ。奇妙に見えるだろう? でもとても楽なんだよ。誰もやりたくないことをする必要がないからね。それでもとにかく何でも片付いてしまう。いつもそこには友だちがいるから、楽しみながら用事を済ませられるのさ」
僕にはもう質問はない。たった一つを除いて。
「僕とバウチが本を著すにあたり、2015 年の人たちに伝えたいことはある?」
「うん、たくさんの愛を。僕たちは皆さんを信じています!」 みんなの声が重なっている。僕の心は愛に溢れ、喜びと感傷の涙がこぼれ落ちる。うんとたくさんの愛を!
サミラが(2020 年の)ネイサンにキスして僕の手を取る。
「歩かない?」 彼女が尋ねる。僕には何も思い残すことはない。僕は肯いて二人で立ち上がり、一人一人にさよならを言ってハグをする。僕の人生で、こんなにもたくさんの愛が一つの場所に満ちているのを経験したことがない。喜び、勇気、興奮、期待、その他様々なポジティブな感情が、僕の中で大きくなり、巨大な波となって流れているのを感じる。体がふらつきそうだ。サミラと僕が通りに出たところで、タマラとマニュエルとモジョーに出くわす。彼らもさよならを言いに来たのだ。タマラとサミラは抱き合ってくすくす笑っている。その後、サミラは再び僕の手を取り、緑のマークの車に向かって通りを歩いていく。僕たちは その車に乗り込み、サミラが運転する。街を離れて北へ向かう。僕には映画のよう に感じられる。双方向のムービーかゲームみたい。ビデオシーケンスが流れていて、僕は出来事を見ているだけで何もする必要がない。僕は右後ろにパパを、パパの隣にジャックを感じる。僕たちは互いに微笑み合い、調和を楽しんでいる。 サミラは僕の隣で黙ったまま、微笑みながら車を運転している。
「君と一緒にいられるなんて素晴らしいことだよ。とても平和を感じられるし、 自分がしっかりここに存在し、ありのままの自分を受け入れてもらえる」 彼女が僕の目を直視する。稲妻に打たれたみたい。神様、この女性は気絶するほど美しい! かつて経験したことのないような感じ方で、僕が彼女と一つであることを感じる。
「あなたが自分自身と共にいることは素晴らしいことなのよ。だからあなたは、期待や恐れをもたずに私と接することができる。私も同じ。このような一体感は本当に豊かなものよ。だから私、誰よりもあなたを愛しているの。あなたは私にとって特別な存在。なぜなら私たちはぴったりの仲だから。私たちは互いを完全に補い合っているわ。私たちが、他のことから自由だからよ。もし私たちが数年早く出会っていたら、そうならなかったわね」
「僕たちどんなふうに出会うの?」
「本当にその答えを今聞きたい?」 彼女がいたずらっぽく言う。
「そうは思わないな。だけどとてもワクワクしていて、またすぐに会いたい」
「会えるわよ。でも、あなた気付いた? あなたがもう "今、ここに" いないことを。あなたの思いはさまよっていて、もう(この瞬間に)集中していない。大したことじゃないけれど、あなたのためにならないわ」
彼女の言う通りだ。どうしてそうなんだろうとジャックを見る。
「僕を見ないでください。それはあなたのプログラミングです」と彼が答える。
僕は、いかに自分の思考が恐れにつられてしまうかを理解した。僕はこの瞬間が過ぎるのを恐れ、何の記憶もないままどこかで目覚め、サミラと二度と会えないことを恐れている。実にくだらない感情だし、この瞬間を台無しにする。この瞬間、彼女は実際に僕の隣に座っているのだ。次のプログラムがぱっと浮かんでいろんなことを言ってくる。例えばこんなふうに。「お前、馬鹿だなあ。何にもできやしないのか?」
そのような言葉をジャックがどのように考えているのか、僕にはわかる。そしてジャックにはそれらを考えること以外選択肢がないことも、僕にはわかる。僕の視点(僕の恐怖心に基づいた視点)が、ジャックが何を考えるか決めてしまうのだから。僕はこの瞬間において、自分の中で生じていることを見ることができ、ありがたいと思う。それのみが、ぼくの迷いを晴らしてくれる。僕が、僕のエゴが、ネイサンが言う。「ただ見続けるんだ。経験しろ!」僕はただちに "今、ここに" 戻る。僕はサミラを見て率直に指摘してくれたことに感謝する。
「大したことじゃないわ。私はそれをあなたから学んだのよ」
彼女は僕に微笑んで角を曲がり、僕の見覚えのある道に入る。道沿いに可愛らしい小さな家々とテスラタワーがあって、海岸に続く道。僕たち本当にこんなに速く 20 ㎞も移動したの? つい声に出てしまう。僕のスクリーンにブラックホールが現れているのだ。
「時間がいかに相対的なものか、ここでもわかったでしょう」彼女が笑いながら答える。「とにかく、もうここまで来てしまったわ。家の中には他の人もいるから、このまま浜辺まで車で行って、しばらく二人だけで過ごしましょう」
僕には何の異存もございません。彼女は駐車場の前に車をとめ、僕たちは外に降りる。
「ここはもう駐車場じゃないの。車で来る人は滅多にいなくなったから、駐車場があっても意味がないの」浜辺へと歩きながら、彼女が説明してくれる。
「時折、数人が集まって一緒に座ったり、音楽を演奏したり、バーベキューや海水浴をしたりするけど、車で来たらあの家にとめるのよ。あなたも最初にあの家を補修した一人だったわ。そのときは、まだ私たちは知り合っていないけど、あの家の補修は、あなたが元の世界に戻って最初にすることの一つよ。バウチはまだ本を執筆中だったけど、あなたはここに来てあの家を使えるようにしたの。 I.H.R. 即ち Intergalactic help & rescue チームの指導のもとでね。使用されていない居住空間は、所有権とは無関係に、崩壊しないように手を入れたの。そこに住んで使用しながら修繕し、新しい命を吹き込んだのよ。あなたが家を回復させるのに大して時間はかからなかったし、あなたはもう独りぼっちじゃなかったわ。 あなたはトーマスとしばらく船旅に出たのよ」
僕はその話に魅了されながら聞いていた。ビーチに着いたが誰もいなかった。 彼女はバッグからいくつかのものを取り出したが、その中に僕のタオルがあった。
「(2020 年の)ネイサンが私に預けたの。あなたが午後の散歩に出るときにフィンカに置き忘れたのよ。普通は、そこにあるものは何でもそのままにしておくものなの。それ自体が自ずからいいように巡り回っていくからよ。でも今回は特別で、彼の意見ではそのタオルは "あなたのもの" ですって」
僕はびっくりした。今日の午後だって? 僕はたった今、2020 年に 30 時間しかいなかったことを意識した。おそらくそのうちの 10 時間眠っていたのだろう。時間は本当に相対的なものだ。タオルを受け取る。どっから見ても普通のタオルだ。前に僕が横たわっていたところにタオルを置いた。 「すべてはここから始まったのか」僕は感慨を覚えながら、そう言った。彼女が僕の腕をつかんで海の方へ引っ張っていく。
「来て。少し体を冷やしましょう」
26.サミラの物語
僕は彼女の後について海に入っていく。これまでなかったほど、海水が気持ちよく感じられる。毛穴の一つ一つが塩分を含んだ海水を感じている。全身が浸かると、細胞の一つ一つが生の喜びを祝っている。サミラが僕を引き寄せて目を見つめ、キスをした。僕は溶けてしまう。こんなにも僕たちは互いに一つだったのか。彼女のタッチは電撃的で、僕の体は震え出したが、あるがままにまかせる。 僕たちは、純粋なエネルギーになる。それは僕たちであるというエネルギー。他には何も存在しない。あらゆるものがこのエネルギーからできているのだから。 二人の周りの海水も僕たちの一部。島も地球全体も宇宙も。このエネルギーの他に何も存在しない。体験されるすべてのものは、このエネルギーからやってくる。 僕たちの愛が爆発し、文字通り、二人同時に絶頂感に達した。それは波となって僕たちの体を流れている。SEX と簡単な触れ合いだけでこうなるのだ。僕たちは歓喜のうめきと叫び声を発する。それから発作みたいに笑いが止まらなくなる。足は地についていても、僕たちは飛んでいるようだ。僕たちは互いに愛し合っている。自分たちを、他の人たちを、周りの何もかもを無限に愛している。どんな言葉をもってしても、言い表すことはできないほど愛している。
誰もそれを言い表すことはできない。それを経験するしかないのだ。そして僕 たちは、それを経験していたんだ。しばらくして、僕たちは浜辺へ戻った。僕がタオルを敷くと、彼女が僕の隣に横たわる。愛の中で、お互いを見て、また笑い出 す。
「人生は良いものだよ」僕の内側でステファンの言葉が聞こえる。「決してそれを忘れちゃいけないよ!」 そうだね、小さな兄弟。君の言う通りだよ! もうどうしたってそれを忘れようがないだろう? 思い出させてくれてありがとうな。僕には本当に、本当に、 本当に必要なことだった! もう二度と忘れないよ。 沈黙の後で、サミラが話し始めた。
「あなたにすべてを話さないのは、不公平に思えるかもしれないけれど、その理由は理解してくれているわよね。これからあなたに話すことは、私たち二人に関係することなの。あなたと、いつ、どこで出会うかは言わないつもり。ただ、その出会いが私にとってどういうものだったかを話したいの。もうすぐ 2015 年に戻ろうとしているあなたにとっても、そして戻った後のあなたにとっても、"今、ここに" 居続けるために役立つことだと思う。私はあんまり幸せじゃなかった。 人生なんてつまらなかった。がっかりすることばかりだったわ。妹のタマラは違っていた。私の目から見て、彼女はふしだらで誰とでもベッドを共にした。自分の娘も、一緒に暮らすボーイフレンドもいたのによ。小さなエバは私にとって何よりも愛しい存在だったけど、私はタマラの中に私とは正反対のものを見て憎んでいた。私はタマラのように男性に近づくことができなかったから。私はたくさんの点で自分を疑っていた。私はタマラに嫉妬し、自己嫌悪と引っ込み思案のまま埋もれていた。ある日彼女が私の所に来て、私の理解できない無意味なことを泣きながら話していたの。
彼女が私に、ある本を手渡して言ったわ。『これを読んで! 私たちみんなを救ってくれるから。私、お姉さんのことだって愛しているのよ』それが、あなたの本というか、バウチの本というか、とにかくあなたの物語だった。彼女が去って、退屈していた私は本を手にとって静かに読み始めた。最初のほうのページに、私と同じ名前の美しくて可愛らしい女性が出てきたので、話が気に入って読み進めたの。そして私は、物語に出てくる特定のプロジェクトや名前が、想像されたものではないことに気がついた。すべてインターネットで見つけられたからよ。 アンドレ・スターンと Birkenbihl は知っていたけど、ジェフ・ロートンは知らなかったので Google 検索で調べた最初の名前よ。それからというもの、私は夢中になった。物語の中に事実があることが分かって一気に読んだわ。読むのがやめられなくなったの。タマラの話のところでは、こんな世界になってほしいと熱望し、希望も出てきた。私自身に関しても、本の中のサミラが私であればいいと本当に願ったわ。そしてどうやらそうらしいとも感じた。私は何もする必要がないことが分かった。ただ、本の中のお誘い――物語の一部になることと、あなたを見つけること――を受け入れればいいだけ。私は、あなたも私を探していると感じていた。少なくともそう願っていたわ。私は OKiTALK ショーを聞き出した。本も人に譲って宣伝もし、他の人たちとも連絡を取り始めたの。私は、突然喜びに生き始めた人に、どんどん出会うようになった。私は自分の殻から這い出て、オ ープンで近づきやすい人間になったの。そうしたら人生は、毎日もっと面白いものになったわ。そしてある日・・・・・・おっといけない、あやうく言うところだった。 あなたがいたのよ。誰もあなたのことが分からなかった。バウチはいつも、あなたが誰だかばれないようにかばっていたから。でも私にははっきり分かったわ。 あなたの目に表れていたからよ。無限の喜びが。あなたは思慮深くもそれを隠そうとしていたけど、ちょっと隠せる自信がなかったみたい。私は、あなたがずっと待ち続けていたものを見たことが分かった。あなたが目を逸らすことができな かったからよ。私から。私の胸はドキドキして世界が溶けていくように感じた。 私たちはお互いに近づき合って、互いの腕の中に身を任せた。
『僕がネイサンだ』とあなたが言い、私はこう答えた。『分かってる!』
私たちは互いの目を見つめ、キスした。それからは、何もかもが違っていったわ。 私はまったく新しい人間になった。独立心を持ち、真っ直ぐに顔を上げ、正直な。 できる限りそうしているわ。私は蝶になったのよ。あまりにも長かった芋虫の期間を経て。それ以来、私はあなたの女だったし、あなたが自分のことを、私の男と呼ぶのをとても光栄に思うわ。その関係にそれ以上の誓いなんて必要なかった。 そんなにいつもいつも会わなくたって、私たちの愛は壊れない。あなたにはあなたの人生があり、私には私の人生がある。近頃ではそれが普通のことなの。でもお互いが新鮮な気持ちで会うときには、その機会を最大限に活かして、笑い、愉しむわ。私は自分が完全な存在になり、癒やされたように感じるの。それはあなたがいるからよ。いつも私の胸の中にいる。私がオンマインドゲームに夢中になったとき、私は自分の内側であなたを知覚することが上手になったの。そしていつでもあなたと意思疎通できるようになった。一日に何度もやり取りしているわ。 相手を渇望したり、失うことを恐れたりせずに、無条件の愛と感謝の気持ちと共にやり取りしているの」
(つづく)