ドーナツ経済学
311から10年。
あの日をきっかけに
「持続可能な社会とは?」
「持続可能な生き方とは?」
を考えさせられ、色々と模索する10年間でありました。
都会暮らし、消費暮らしに終止符を打ち、自然に飛び出し、生産活動を手がけるきっかけに
「循環型の社会モデルを創ろう」
と八ヶ岳の地を選び、細々とコミュニティ活動の基盤を作ってきました。
ようやく準備もできたところで、とどめの一発でコロナ騒動も起こり、いよいよ今年からコミュニティ活動も本格化する予定です。
そんな中、世界全体は、どこへ向かっているのかといえば、最近の世界経済フォーラム、通称「ダボス会議」では
「グレート・リセット」
がテーマに選ばれ、これから文明社会を一新する方向性へ舵を切ろうとしています。
コロナ禍で立ち止まることで、あまりにも問題が多すぎることに気づいた、現在の地球社会。
「成長、成長」
をスローガンに、世界のGDPは、1950年から7倍になっています。
人類の平均寿命も1950年は、48歳だったのが、現在は71歳まで寿命が伸び、1日に1.9ドル未満で暮らす極度の貧困層は50%減少し、安全な水やトイレなどを利用できる人の数も大幅に増えました。
文明の発展と経済の成長は、人類にとって大きな恩恵をもたらしましたが、一方でまだ全世界の人々が救済されるにはほど遠く、全世界の11人に1人が安全な水源がない場所で暮らし、9人に1人が十分に食べ物を得ていません。
4人に1人が1日3ドル未満で生活し、3人に1人はトイレもない環境に置かれています。
そして、世界の人口は急激に増加して、1950年から現在まで3倍以上に。
2050年には100億人を突破する見込みです。
「取る→作る→使う→失う」
地球資源を搾取し、再生不可能な現在の産業モデルは
「芋虫経済」
と呼ばれ、片方の口から葉っぱ(資源)を食べては、反対側で糞(ゴミ)を撒き散らし、資源を枯渇させるだけでなく、人類は自然環境を破壊するガン細胞のような存在になっています。
その結果、世界の平均気温は、産業革命から0.8℃上がり、2100年までに4℃近く上がる見込みとなっており、この先の地球環境は大きく変わってしまって、未曾有の大災害、飢饉、海面上昇など大きなしっぺ返しが予想されています。
農薬や化学肥料の利用によって、世界の農地の40%は、汚染とともに痩せ細ってしまい、毎分トラック1杯分のプラスチックが海に投棄され、このままでは2050年には、魚よりプラスチックの方が海中に多くなるそうです。
そして、2025年には、世界の3人に2人が、水不足の地域に暮らすことになると言われ、食糧危機以上に将来確実に起こりえる水不足は、世界中で深刻な問題になると予想されています。
人類は増加する一方で、1970年以来、あらゆる野生生物の数が半減し、種の絶滅スピードは、安全とみなされる限度の10倍以上に達していると言われています。
これはもう「グレート・リセット」なしでは、とても継続できる文明ではなく、今のまま何もしないで、変わらずに同じレールを歩めば、人類の未来に先はないと思います。
そんな中で
「世界を救う」
と注目されているのが、それこそ10年前の2011年にオックスフォード大学の女性経済学者ケイト・ラワースさんが提唱された
「ドーナツ経済学」
というもの。
【社会的な土台】(内側)と【環境的な上限】(外側)の2つの境界線の間で人間の経済、社会が存在するのが、人と地球の循環にベストというものです。
貧困や平和、人が生きるに必要最低な保障を社会で実現しながらも、行きすぎると資源の破壊、搾取になるので、そのバランスで生きるというもの。
ケイト・ラワースさんは、この著書の冒頭で、ドームハウス生みの親である発明家バックミンスター・フラーの言葉を引用しており、宇宙船地球号を世界に提唱したフラーの考え方にも大きく影響を受けているようにも思えます。
そして、まさにその中身は、これからキブツ八ヶ岳で実践しようとしていることと、多くがシンクロしており、世界トップクラスの経済学者が、持続可能な循環型経済(サーキュラーエコノミー)を提唱し、これがアフターコロナの経済モデルに最も注目されていることも、まさに時代の変化を感じます。
ケイトさんによると、現在までの世界の常識的な経済学は、もはや化石のような方程式と理論に基づいており、はるか昔の経済学が、今の今まで世界の常識として使われていたことは驚きのようです。
ただ、経済の発展と環境への負荷について、現在の経済学が、一切無視していたかといえば、決してそういった訳ではなく
「経済の発展は最初は環境に負荷を与えるが、経済が発展し、社会が豊かになると環境も回復する」
という無茶苦茶な理論がまかり通っており、その結果が今の惨状に至っているようです。
でも、今はようやくまともな学者が世に出てきて、さらにこのドーナツ経済学をマニュアルとして、循環型のモデル都市を作ろうと、多くの国々で動きが活発化しています。
まさに地球人(アースリング)に目覚めた人々が、宇宙船地球号の操作マニュアルを作るような流れであり、間違いなく、文明の方向性は、こっちの方向、循環型、持続可能な方向性にすべての産業構造はシフトしていくと思います。
でも、日本は縄文古来より、すでにドーナツ経済学が基盤となっていたような循環文明と社会を持つ国。
今は大きく時代に乗り遅れていますが、その古来からの叡智を取り戻す時期が差し迫っているように思えます。