世界遊戯博物館ブログ

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香港・澳門の暗象棋

2013年10月21日 | 世界のゲーム

前回、タイの将棋・マックルックの変則規定を紹介したので、今回は香港や澳門(マカオ)で盛んな象棋を使った別の遊びを紹介したいと思います。

港澳(香港と澳門の略称)で遊ばれている象棋を使ったゲームは、駒を裏返して遊ぶものです。

遊び方の名前を現地で遊んでいる人に聞いたら、「暗象棋」と言っていましたが、これが一般的な名称か定かではありません。

同じように象棋駒を裏返して遊ぶゲームに台湾の「暗棋」がありますが、港澳の暗象棋は象棋本来の遊び方を改変したもので、台湾の暗棋とは遊び方が全く異なっています。

↓<台湾の暗棋>↓ 盤の半分のみを使って遊びます。

同地域の広東省でも現地の縁台象棋を数多く調査しましたが、暗象棋を見かけることは無かったので、恐らく縁台などで行われているのは港澳地域のみだと思われます。

遊び方を以下に記しますので、象棋のお好きな方は、是非ともお遊び下さい。

港澳・暗象棋規則

■初期配置

お互いの駒の色(黒・赤)を決めて、相手に自分の駒16枚を渡す。

相手の駒から「将・帥」の王駒を取り除き、裏返してかき混ぜる。

そして、裏返したまま盤上に駒に配置する。

配置の位置は、象棋の初期配置と同じで、「将・帥」だけは表向きで配置する。

お互いが駒を配置したら、盤を180度回転して、裏返した配置のまま相手に返す。

■駒の動き

裏向きの駒を最初に動かす時は、配置された位置の駒の動きをする。

例えば、馬の位置に配置された裏向きの駒は、馬の動き、砲の位置に配置された裏向きの駒は、砲の動きをする。

一旦動いた駒は、移動が終わると同時に表向きになり、次にその駒を動かす時は、その駒本来の動きになる。

「仕・士」や「象・相」は表向きになった状態で、河界を越えて、敵陣でも動く事が出来る。

■その他の規定

相手の駒は裏向きでも表向きでも取る事が出来る。

取った駒は、裏向きで相手に見えないように置いておく。

取った駒は、相手に見えないように自分だけ確認することが出来る。

相手の王駒を取ったら勝ちとなる。

以上が、暗象棋の遊び方です。

象棋と違って運の要素も多分に含まれているので、実力差が異なる者同士でも充分楽しむことが出来ます。

対局を見ていると、なるべく裏返しの駒を表にせず、表にした駒を進めて行くという戦法が、多く採られていました。

暗象棋は、非常に面白い遊びなので、多くの人達の間で遊ばれる事を願っています。

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マックルックの初手の特殊規定

2013年10月14日 | 世界の将棋

前回、マックルックの特殊な昇格規則を紹介したので、今回は、タイ国内でよく見かける初手の特殊な動きについてご紹介します。

マックルックの初期配置は、以下のように配置するのが一般的となっています。

しかし、タイ国内で対局すると、この初期配置からある動きを強制されることが多く、暗黙の規則となっている場合が多いと感じます。

その動きは、お互いに最初にメットの駒の前にあるビアを一歩進めた後、メットを前に2歩進めるというものです。

普通、メットは斜め四方向に一歩ずつしか進めないのですが、この規則だと、初手に限っては前に二歩進めるようになっています。

これは、地方ルールと思われるものでしたが、タイ北部のターク県やアユタヤ、首都バンコクなどで6~7人と実際に対局した際に、殆どこのルールでの対局を強制されました。

最近、よく「Play OK」で、マックルックを通信対戦しているのですが、自分自身、やはり最初の手順で駒をこの位置に動かすことが多い事に気付き、この動きが定石に至る手を簡略化したものではないかと思うようになりました。

初期の駒組で最も利に適っている定石であれば、お互い最初からその形から始めてしまえば余計な時間を省けるので、これを規則化したのであれば、実に合理的な事だと思います。

一時期、将棋でも最初の駒組で、双方が相矢倉で対局するのが一般化していた時期もあったので、どうせその形になるのなら、手を省略して、相矢倉で始めてしまえという考えが生じても不思議ではありません。

そのような考えに至りましたが、あくまで主観なので、何が事実なのかは判りませんが。

マックルックは、以下のサイトで通信対戦が出来ますので、これを機会に日本人の指し手が増えることを願っています。

Play ok Makruk通信対戦

マックルックの駒販売

オンライン麻雀対戦の決定版


マックルック「ルア・ガーイ(ルア昇格駒)」

2013年10月12日 | 世界の将棋

先日、タイのトランプ「ポック・デン」を紹介したので、再びタイのゲームについて書こうと思います。

タイの路地を歩いていると、タイ将棋「マックルック」の縁台対局をよく目にします。

タイは、英仏の植民地化の野望を外交で躱して独立を保っただけに、西洋チェスの対局を殆ど見かける事が無く、縁台ではマックルックの対局ばかりを目にします。

このマックルックですが、歩の駒であるビアの初期配置や昇格の位置が、将棋と同じなので、アユタヤ時代の朱印船貿易と関連付けて、お互いが影響を与え合ったと仮説を唱える人もいます。

その駒の昇格についてですが、ビアが敵陣三段目に入ったら将棋の成りと同じく駒を裏返し、今まで前に一歩しか進めなかったのが、斜め四方向に進めるようになります。

この裏返しの成り駒は、ビアだけでなく、なんと一般的に裏返す事のないルア(船の駒)までもが昇格しているのを見た事がありました。

場所は、バンコクのヤワラート(中華街)のお寺の境内で、縁台マックルックが三つ立っている中の一つが、そのルールで行われていました。

これは、世界の将棋研究の第一人者である岡野さんの著した「タイの将棋・マックルックの指し方と現地情報」の中にも「ルア・ガーイ(ビアが裏返ったらビア・ガーイ)」として紹介されており、2つある駒の片方だけ裏返すのと、両方とも裏返す方法があるそうです。

対局を見ていると、カロリーを鱈腹摂取していそうなプヨプヨのお坊さんが、「もっと近くに来い」という感じで手招きし、近付くと椅子まで差し出してくれました。

座って対局を見ていると、今まで普通に動いていたルアが、敵陣三段目に入ったと同時に裏返り、従来の縦横移動に加え、斜め四方向にも一歩ずつ動けるようになったので、これがあの「ルア・ガーイ」かと感動しました。

ここで行われていた対局では、ルア・ガーイに成れるのは、お互い一つのルアだけでした。

このルア・ガーイは、かなり強力な駒で、詰め駒として大きな役割を果たしていたので、終盤にこの駒を失った方が一気に劣勢になっていました。

暑い中、一休みしようと、ぶらり立ち寄ったお寺で、このような変則マックルックの対局を発見できるとは、まさに思いがけない大収穫でした。

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ポック・デン(ポッベ・ポッガーオ)

2013年10月08日 | カードゲーム

本来なら、世界遊戯博物館で紹介すべきかもしれませんが、ブログの方が手っ取り早く、検索され易いので、取り敢えず、こちらに記しておきます。

この「ポックデン」は、タイ人なら誰でも知っている遊びで、「ポッベ・ポッガーオ(ป๊อกแปด ป๊อกเก้า/Pok8 Pok9)」とも呼ばれています。

私もタイで、知り合いの親戚一同と過ごした時に、様々な世代の人達と何度もポックデンで遊びました。

遊び方は、配られた札の合計数が9に近いものが勝つカブ系で、配られた2枚の札で親と勝負します。
参加人数は、何人でも参加できるのですが、親の負担が大きいので、参加者の持ちチップの状況次第となります。

子がそれぞれチップを置いてから開始です。
親は、反時計周りに一枚ずつ、合計2枚の札を配ります。
全部札が配られたら、子は札を見て、もう一枚引くか考えます。
親は、反時計周りの順番で、子にもう一枚引くか?と聞いていきます。
タイ語では、「アオ マイ?(いるか?)」→「アオ(いる)」または、「マイ アオ(いらない)」と言います。

札の数値は、Aが1で、2~9が数字と同じ、K・Q・J・10は、0となります。

一般的なカブ系と同じく、足した合計数の一の位の数値で勝負します。

もし、子の札の合計数が0~4の場合は、必ずもう一枚引かなければなりません。

また、子の札の合計数が「8(ポッベ/ป๊อกแปด/Pok8)」または「9(ポッガーオ/ป๊อกเก้า/Pok9)」であった場合、札を即開示します。

子の配られた2枚に「Pok8」と「Pok9」が無く、親の配られた2枚が「Pok8(ポッベ)」か「Pok9(ポッガーオ)」の場合、親の勝ちとなります。

子が「Pok8(ポッベ)」で、親も「Pok8(ポッベ)」、「子がPok9(ポッガーオ)」で親も「Pok9(ポッガーオ)」の場合は、「引き分け(チョーン)」となります。

「Pok8(ポッベ)」<「Pok9(ポッガーウ)」となりますので、親が「Pok9」で子が「Pok8」なら親の勝ち、親が「Pok8」で子が「Pok9」なら子の勝ちとなります。

ポックデンには役があり、「同じ数」や「同じマーク(スート)」があると、「デン」という役になります。

例えば、4・4や3・3、2・2、1・1等、同じ数2枚で勝つと、「2デン(ソーンデン)」となり、勝ち点が2倍になります。

また、ハート3とハート5等、同スート2枚で勝つと、これも「2デン」となります。

配られた札が「デン」であった場合は、1~4でも引かない選択をする事が出来ます。

札をもう一枚引いた時に、「デン」が3つある状態で勝った場合は、「3デン(サームデン)」となり、勝ち点が3倍となります。

この「3デン」は、同数3枚と同マーク3枚の他に、連続する数(順子・シークエンス)も「3デン」となります。

例えば、「2・3・4」や「Q・K・A」等で勝つと「3デン」になります。

※A・2・3は連続する数にはなりません。

「2デン」で、もう一枚引いたとき、「3デン」にならなかった場合は、「2デン」にもなりません。

例えば、「2・2」でもう一枚引いて、3が出て合計数「9(2・2・3)」になった場合や、ハート2枚の「デン」でもう一枚引いて、クラブが出た場合は、「デン」は無効になってしまいます。

3枚が絵札の場合も「3デン」となります。

「同数(3・3・3)」や「同絵札(K・K・K等)」が3枚ある手は、「5デン(ハーデン)」となります。

「5デン」の同数は「999」が一番強く、同絵札は「KKK」が一番が強くなります。

「5デン(同数・同絵札)」は、「2デン」、「3デン」の連続する数、「3デン」の絵札3枚にも勝ち、5倍の得点を得る事が出来ます。

強さの順位を記すと、以下のようになります。

「Pok8・Pok9(同スート・同数2枚=2デン)」>「5デン(同数・同絵札3枚)」>「数が連続する3枚(3デン)」>「絵札3枚(3デン)」>「合計数9~1(同スート3枚=3デン」>「同スート・同数2枚=2デン」)>0

このポックデンは、世界中で大ヒットしたムエタイ映画「マッハ!!!!!!!(原題・Ong bak)」の賭博の場面にも登場し、登場人物が、「ポッペ!」「ポッガ~ウ!」と言いながらポックデンを遊ぶ様が描かれています。

また、FACE BOOKのアプリにも、ポックデンがあり、タイの人達と遊べますので、このブログで遊び方を覚えた方は、是非ともお試し下さい。

Facebookの「ポック・デン」