政権交代後、初の大型国政選挙になる第22回参議院選挙が11日投開票された。民主党は改選54議席を大きく下回って44議席にとどまり、国民新党も含めた与党の議席は過半数を割り込んだ。自民党は51議席を確保し、改選議席で第1党になった。菅直人首相(民主党代表)は12日未明、続投する意向を表明したが、国会は衆参各院で多数派が異なる「ねじれ」状態になり、厳しい政権運営になるのは確実だ。民主党は参院選直前に鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長が辞任し、支持率は回復したものの、首相の「消費税10%」発言で消費増税が争点化し、苦戦となった。党内には首相の責任を問う声もあり、9月の代表選に向け、党内対立が激しくなる可能性もある。一方、みんなの党は民主党政権に対する批判票を吸収する形で躍進した。
首相は12日未明、東京都内で記者会見し、敗北の理由について「私が消費税に触れたことが唐突な感じを持って国民に伝わった。事前の説明が不足していた」と語った。その上で「選挙結果は真摯(しんし)に受け止めながら、私としては改めてスタートラインに立ったという気持ちで政権運営を今後も続けていきたい」と述べ、正式に続投を表明した。
また、枝野幸男幹事長ら執行部について「これからも職務を全うしてもらいたい」として、留任させる意向を示した。首相は「個々のテーマでは他党にも共通テーマがあると思うので、丁寧な国会運営の中で合意できるものは実現を図っていきたい」と語り、政策ごとの連携を模索する考えも示した。消費税をめぐる超党派協議は「改めて呼びかけたい」とした。
首相は当初、財政再建を政権の最重要課題として掲げ、参院選の勝利で政権基盤を固めた上で、消費税を含む税制の抜本改革に取り組む道筋を描いていた。だが、与党の過半数割れで、首相の戦略は根底から見直しを迫られる。
当面の課題は、首相続投に対して党内の意思統一を図れるかどうかだ。石井一副代表は11日、記者団に「党内抗争を始めるということは厳に慎むべきだ」と指摘。輿石東参院議員会長も「菅総理の責任ということに、すぐに持って行くのはおかしい。これは連帯責任でもある」と語り、首相続投を支持した。
一方、消費増税に慎重な小沢氏のグループなどからは首相の責任論も出ている。若手議員の一人は「党内議論をせずに消費税に踏み込んだ。その独裁的発言の責任を取るべきだ」と批判。鳩山氏側近も「鳩山さんが政治家人生をかけて引いたのに、消費税発言ですべて台無しにされた。許せない」と語っている。
消費税問題のほか、普天間移設問題でも党内には異論があるため、これらを争点に、小沢グループでは対抗馬擁立論や小沢氏の立候補に期待する声もある。9月の代表選での再選を確実にするため、首相は今後、内閣改造や党役員人事で党内融和を図るとの見方も出ている。
与党の過半数割れで、国会運営では「ねじれ国会」という難問を抱える。衆院は与党で300議席を超える勢力があるが、再可決が可能な3分の2には足りない。参院は野党が主導権を握ることになり、法案の成立は与党の思い通りに進まなくなる。首相は11日、側近議員に秋の臨時国会に提出する法案を早くも絞り込む意向を伝えた。
首相が態勢を立て直すまでは他党との連携も見通せない。みんなの党の渡辺喜美代表は会見で「みんなの党はアジェンダの党なので連立はしません」と指摘。ただ、「みんなの党の霞が関改革法案を否決したが、考え直して丸のみしますというのだったら、その範囲での連携はあり得る」と語り、テーマごとの連携には含みを残した。
公明党の山口那津男代表は「私たちはレッドカードを突きつけた立場であり、その結果として与党の過半数割れとなったのだから、そういう相手と連携することは考えられない」と否定した。
一方、自民党は谷垣禎一総裁が掲げた「与党の過半数阻止」の目標を達成した。谷垣氏は11日のテレビ番組で「与党の過半数を阻止できれば辞める必要はない」と語り、総裁を続投する意向を示した。改選第1党になったことで菅政権への対決姿勢を強めており、「早く衆院を解散してきちんと国民の信を問うことが必要だ」と要求した。
ただ、谷垣氏は消費税の超党派協議については「与党が今のばらまきを整理してこられれば、協議に応じたい」と語り、柔軟に対応する姿勢を示した。