花粉症が混じっているせいもあるでしょうが、いつまでも眠っていたい季節です。
春眠暁を覚えずとはよく言ったものでございます。
いえ、春だけじゃないって、、、。
まあ、いつでも朝はもう少し眠っていたいと思いますが、、、。
寝ぼけ眼での妄想です。
ぼんやりと朝焼けの中を帰ってゆく青年の後ろ姿をアパートの窓から見送っている。
泊まってしまっても同じなのに、いつも彼は明け方には帰ってゆくのだ。
後ろ姿が朝靄の中に消えてゆくのを見てから、浩一は布団に身を横たえる。
先ほどまでの情事の余韻の温もりがますます寂しさを募らせる。
彼と出会ったのは三ヶ月ほど前、古い家並みの残る街の公園だった。
夕暮れの公園でたたずんでいた彼は、思わず声を掛けたくなるほどの切ない目をしている美青年だったのだ。
ひと月も経たない家に同衾する仲になった。
泊まっていけばいいのに、彼は明け方に帰ってしまう。
一日のはじめだというのに、残された方ももの悲しい気分になってくるのだ。
「昼間は連絡が取れないところにいる」
携帯の番号を聞くと、青年はそう答えた。
幾度も愛し合っているのに不安は焦燥となる。
ある日、こっそりと明け方に姿を消す青年の後をつけた。
青年は大きな楠のある角で、かき消えるように見えなくなった。
その日、一日青年を捜し回った。
陽が暮れかけてきたとき通りかかった小さなほこらの前に老人がすわっていた。
ふと気がさして老人に話しかけると、老人は昔話を始めた。
戦争前、そして戦争中 この周辺は花街のはずれで、貧しいものが街頭に立っていたと老人は話し出した。
娼婦はもとより青年、少年の売春夫も少なくなかったが、空襲のせいで全てが焼けてしまったと言った。
「もともと、大きな声ではいえない商売のものばかりだし、供養も何もせんで穴に埋めたらしい。なにしろ、戦時中のことでなあ、、、」
老人はそのころこの街の用心棒をしていたといって笑った。
徴収されて帰ってきたら一面焼け野原で可愛がっていた少年も、弟分だった青年もいなくなっていたと言った。
そんなことを言葉にしながらも笑みを浮かべた老人に、朝日が昇る頃に帰ってしまう青年の話をした。
「そりゃ、皆貧しくて食べるために身を売っていたような連中だ。食べなくてもよくなって初めて好きで体を合わせたい漢を見つけたのかもしれない」と、言った。
その日の夕刻、やってきた青年にどう接すればよいのか分からなかった。
青年は自分のことを調べたのかと詰め寄った。
昼間のことを正直に話すと、青年は笑いながら『ほら吹きじいさん』の話をした。
「いつもひとを引っかけるんだ」
そして、昼間は大きなビルの地下駐車場で働いていると教えてくれた。
地下だから携帯も通じないし、仕事場でも電話は繋いでもらえないと。
綺麗な青年に似つかわしくはない仕事だと思いながらも、納得することにした。
合わせた唇は甘い香りがする。
後ろに回った青年の手の骨が透けて見え、鏡にも青年の姿が映らないということに、まだ気づきもしなかった。
ちょっとホラー入り、でもぬるいです。ごめんなさい。
春眠暁を覚えずとはよく言ったものでございます。
いえ、春だけじゃないって、、、。
まあ、いつでも朝はもう少し眠っていたいと思いますが、、、。
寝ぼけ眼での妄想です。
ぼんやりと朝焼けの中を帰ってゆく青年の後ろ姿をアパートの窓から見送っている。
泊まってしまっても同じなのに、いつも彼は明け方には帰ってゆくのだ。
後ろ姿が朝靄の中に消えてゆくのを見てから、浩一は布団に身を横たえる。
先ほどまでの情事の余韻の温もりがますます寂しさを募らせる。
彼と出会ったのは三ヶ月ほど前、古い家並みの残る街の公園だった。
夕暮れの公園でたたずんでいた彼は、思わず声を掛けたくなるほどの切ない目をしている美青年だったのだ。
ひと月も経たない家に同衾する仲になった。
泊まっていけばいいのに、彼は明け方に帰ってしまう。
一日のはじめだというのに、残された方ももの悲しい気分になってくるのだ。
「昼間は連絡が取れないところにいる」
携帯の番号を聞くと、青年はそう答えた。
幾度も愛し合っているのに不安は焦燥となる。
ある日、こっそりと明け方に姿を消す青年の後をつけた。
青年は大きな楠のある角で、かき消えるように見えなくなった。
その日、一日青年を捜し回った。
陽が暮れかけてきたとき通りかかった小さなほこらの前に老人がすわっていた。
ふと気がさして老人に話しかけると、老人は昔話を始めた。
戦争前、そして戦争中 この周辺は花街のはずれで、貧しいものが街頭に立っていたと老人は話し出した。
娼婦はもとより青年、少年の売春夫も少なくなかったが、空襲のせいで全てが焼けてしまったと言った。
「もともと、大きな声ではいえない商売のものばかりだし、供養も何もせんで穴に埋めたらしい。なにしろ、戦時中のことでなあ、、、」
老人はそのころこの街の用心棒をしていたといって笑った。
徴収されて帰ってきたら一面焼け野原で可愛がっていた少年も、弟分だった青年もいなくなっていたと言った。
そんなことを言葉にしながらも笑みを浮かべた老人に、朝日が昇る頃に帰ってしまう青年の話をした。
「そりゃ、皆貧しくて食べるために身を売っていたような連中だ。食べなくてもよくなって初めて好きで体を合わせたい漢を見つけたのかもしれない」と、言った。
その日の夕刻、やってきた青年にどう接すればよいのか分からなかった。
青年は自分のことを調べたのかと詰め寄った。
昼間のことを正直に話すと、青年は笑いながら『ほら吹きじいさん』の話をした。
「いつもひとを引っかけるんだ」
そして、昼間は大きなビルの地下駐車場で働いていると教えてくれた。
地下だから携帯も通じないし、仕事場でも電話は繋いでもらえないと。
綺麗な青年に似つかわしくはない仕事だと思いながらも、納得することにした。
合わせた唇は甘い香りがする。
後ろに回った青年の手の骨が透けて見え、鏡にも青年の姿が映らないということに、まだ気づきもしなかった。
ちょっとホラー入り、でもぬるいです。ごめんなさい。