秋...天高く馬肥ゆる秋である。
TVコマーシャルではやたらとビールの宣伝が目に付く。
さんまやマツタケ、新ジャガ、クリ、新米。
食欲の秋なのである。
でも秋の風はぴちぴちした美少年よりもオヤジの方が似合うと、私は思うのである。
で、オヤジ話。
マツタケの話ではない。
うだるように暑かった夏が過ぎ、少し肌寒くなってきたこの季節。
オヤジは会社の帰りにふらふらと赤ちょうちんに寄ってしまうのだ。
色っぽいママがいるような高級な店ではない。
どちらかというと頑固オヤジと愛想はいいが美人とは言えないおかみさんが夫婦二人でやっているような店である。
就職したての頃から通っているオヤジの馴染みの店である。
馴染みの店なのでオヤジは一人でこの店に入る。
連れがいなくともオヤジやおかみさん相手に酒が飲めるからだ。
今日も何組かのサラリーマンがオヤジを相手に野球や相撲の話を始めている。
オヤジはカウンターの席の端に腰掛けた。
黙っていてもおかみさんは焼酎のボトルと突き出しをオヤジの前に置いた。
「寒くなってきたからお湯割ですかね」
気が利くおかみさんがお湯を入れたポットを出してくれた。
「ああ」
口下手なオヤジはその言葉で十分に謝意を表しているということをおかみさんは知っている。
そして、オヤジはいつものように静かに焼酎を飲んだ。
「なんだ、お前。もう一度言ってみろ!」
突然オヤジの座っていたカウンター席の後ろの二人席にいるサラリーマンが喧嘩を始めた。
「先輩の考え方は間違っています!」
見ると入社1,2年目と見えるサラリーマンとオヤジと同じ年頃のくたびれかけたサラリーマンが口論していた。
「だから、営業はただ利益をあげればいいわけではないでしょう?」
どうやら若いサラリーマンの理想と、擦切れたサラリーマンの現実の間には暗くて深い溝があるようだった。
オヤジは考える。
オレも若いときは理想に燃えていた、だが今はしがないサラリーマンでしかないのだと自分に言い聞かせている。
若いサラリーマンは店を飛びだし、くたびれたサラリーマンが店の中に取り残された。
「よお、御同輩。一緒に飲まないか」
肩を落としたサラリーマンに同情してしまったためか、オヤジは声を掛けてしまった。
「ああ、ありがとう」
くたびれたサラリーマンは苦笑いをしてから、オヤジの隣の席に移った。
「あいつは見どころがあるんだが、理想に燃えていてね。商売はそんなに綺麗なことばかりじゃないのにな」
「ああ、わかるよ」
「オレだってあいつの真直ぐなところは嫌いじゃないんだ」
「ああ、不景気のせいだろう」
「まあな。会社の営業方針ってやつだ。多少汚い手を使っても仕事を取ってこいとあいつに言わなきゃならない」
「間に立って一番苦労してるのはお前だろう」
「まあな。だが苦労って程じゃない」
「お前、いいやつだな」
「おまえこそ」
会社の中で同じような立場に立っているオヤジ二人。
意気投合して焼酎を差しつ差されつ。
友情か同志愛か。
オヤジが二人居酒屋で飲んでいる姿を見てなんだかもやもやとそれ以上の意気投合の後、酔っぱらった揚げ句の差しつ差されつ(!)まで妄想してしまった私でございました。
TVコマーシャルではやたらとビールの宣伝が目に付く。
さんまやマツタケ、新ジャガ、クリ、新米。
食欲の秋なのである。
でも秋の風はぴちぴちした美少年よりもオヤジの方が似合うと、私は思うのである。
で、オヤジ話。
マツタケの話ではない。
うだるように暑かった夏が過ぎ、少し肌寒くなってきたこの季節。
オヤジは会社の帰りにふらふらと赤ちょうちんに寄ってしまうのだ。
色っぽいママがいるような高級な店ではない。
どちらかというと頑固オヤジと愛想はいいが美人とは言えないおかみさんが夫婦二人でやっているような店である。
就職したての頃から通っているオヤジの馴染みの店である。
馴染みの店なのでオヤジは一人でこの店に入る。
連れがいなくともオヤジやおかみさん相手に酒が飲めるからだ。
今日も何組かのサラリーマンがオヤジを相手に野球や相撲の話を始めている。
オヤジはカウンターの席の端に腰掛けた。
黙っていてもおかみさんは焼酎のボトルと突き出しをオヤジの前に置いた。
「寒くなってきたからお湯割ですかね」
気が利くおかみさんがお湯を入れたポットを出してくれた。
「ああ」
口下手なオヤジはその言葉で十分に謝意を表しているということをおかみさんは知っている。
そして、オヤジはいつものように静かに焼酎を飲んだ。
「なんだ、お前。もう一度言ってみろ!」
突然オヤジの座っていたカウンター席の後ろの二人席にいるサラリーマンが喧嘩を始めた。
「先輩の考え方は間違っています!」
見ると入社1,2年目と見えるサラリーマンとオヤジと同じ年頃のくたびれかけたサラリーマンが口論していた。
「だから、営業はただ利益をあげればいいわけではないでしょう?」
どうやら若いサラリーマンの理想と、擦切れたサラリーマンの現実の間には暗くて深い溝があるようだった。
オヤジは考える。
オレも若いときは理想に燃えていた、だが今はしがないサラリーマンでしかないのだと自分に言い聞かせている。
若いサラリーマンは店を飛びだし、くたびれたサラリーマンが店の中に取り残された。
「よお、御同輩。一緒に飲まないか」
肩を落としたサラリーマンに同情してしまったためか、オヤジは声を掛けてしまった。
「ああ、ありがとう」
くたびれたサラリーマンは苦笑いをしてから、オヤジの隣の席に移った。
「あいつは見どころがあるんだが、理想に燃えていてね。商売はそんなに綺麗なことばかりじゃないのにな」
「ああ、わかるよ」
「オレだってあいつの真直ぐなところは嫌いじゃないんだ」
「ああ、不景気のせいだろう」
「まあな。会社の営業方針ってやつだ。多少汚い手を使っても仕事を取ってこいとあいつに言わなきゃならない」
「間に立って一番苦労してるのはお前だろう」
「まあな。だが苦労って程じゃない」
「お前、いいやつだな」
「おまえこそ」
会社の中で同じような立場に立っているオヤジ二人。
意気投合して焼酎を差しつ差されつ。
友情か同志愛か。
オヤジが二人居酒屋で飲んでいる姿を見てなんだかもやもやとそれ以上の意気投合の後、酔っぱらった揚げ句の差しつ差されつ(!)まで妄想してしまった私でございました。