
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は2022年10月11日、岸田政権が統一教会に対する解散命令請求に対して極めて消極的なことに業を煮やし、とうとう文部科学大臣や法務大臣などに対し、教団の宗教法人格を剝奪する解散命令を裁判所に請求するよう求める申入書を郵送したそうです。
宗教法人法では、法令に違反し、著しく公共の福祉を害する行為があった場合などに、裁判所は所轄庁などの請求を受けて解散を命令できると定めています。
そして裁判所から解散命令が出ると、宗教団体としての活動は継続できるものの、税制優遇を受けられなくなるなどの影響が出るのです。
全国弁連は申入書で、教団による多額の献金勧誘行為や正体を隠した伝道活動などを挙げて
「財産権などへの侵害は多数かつ深刻だ」
と指摘しています。
全国弁連代表世話人の山口広弁護士は会見で、解散命令を求める意義について
「教団が反社会的な活動をしていたと公的にはっきりするのが一番大きい」
と強調しました。
岸田文雄首相は臨時国会の衆参代表質問で、立憲や共産が裁判所に解散命令を請求するべきだと求めたのに対し、
「法人格を剝奪するという極めて重い対応」
「信教の自由を保障する観点から、判例も踏まえ、慎重に判断する必要がある」
と答えました。
しかし、法令違反を理由に裁判所が解散命令を出したのは過去に2例があり、1995年に地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教と、霊視商法詐欺事件で1995~96年に幹部らが詐欺罪で摘発された明覚寺があります。
大量殺人事件を起こしたオウム真理教はともかく、私も霊視商法弁護団に参加した明覚寺の詐欺事件に比べれば、統一教会の被害者数、被害額、被害年数は莫大で、明覚寺の霊視商法が解散命令の対象になると司法が判断しているのですから、統一教会は文句なく解散させねばなりません。
岸田政権が、全国霊感商法対策弁護士連絡会が求めた宗教法人法に基づく統一教会の解散命令請求を拒否。岸田首相が統一教会と手を切る気がないことは明らかだ。
オウム真理教の事件で裁判所は解散命令を出す基準を示していて
「社会通念に照らして、法人の行為であるといえる」
「刑法等の実定法規の定める禁止規範または命令規範に違反する」
などを挙げていて、これは明覚寺への決定にも適用され、両法人は解散させられました。
文化庁の担当者はこれまでの野党ヒアリングで、この基準を引き合いに
「教団の幹部で刑事事件に問われた方はおらず、裁判所が解散命令を出すのは難しいと考えられる」
「解散できるか確信がない状況で、とりあえず請求するのは責任ある対応ではない」
とも述べてきましたが、裁判所の基準は幹部が刑罰法規に触れて処罰されていることまで求めてはいません。
そもそも、宗教法人法の解散命令自体も、もちろん幹部が刑事罰を受けていることなど要件になっていません。
同法第81条は
「裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。」
と定め、その第1項第1号は
となっていて、刑事法に違反しなければいけないことにはなっていませんので、民法の不法行為や消費者契約法などに違反した行為を重ねていれば、裁判所は解散命令は出せるのです。
全国弁連は文化庁の説明について、10月11日の申入書で
「刑事事件がない限り請求できないとするのは不当だ」
「解散請求を消極的に解している」
と批判していますが、この主張は宗教法人法の条文にも判例にも適合しています。
宗教法人法の明文が
「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」
と規定していて特に刑罰法規に限っていないのですから、全国弁連が高額献金などをめぐって教団の不法行為や使用者責任を認めた民事裁判の判決などを挙げて、
「解散の要件を満たしている」
と指摘したのは当然なのです。
これに対して、紀藤弁護士とミヤネ屋でぶつかっては論破されている橋下徹弁護士が
「紀藤弁護士たちを除く法律家の間では現行法においては解散命令は困難という意見が多数だろう。」
というのですが、この人に法律家の多数意見なんてわかるわけないでしょうW
自分が議論で勝てないからと言って、私たち一般の弁護士を巻き込んで味方にするのは迷惑なのでやめてもらいたい(笑)
旧統一教会への解散命令は困難 自民・萩生田政調会長 https://t.co/jA1Bk58pqT
— 橋下徹 (@hashimoto_lo) October 2, 2022
→紀藤弁護士たちを除く法律家の間では現行法においては解散命令は困難という意見が多数だろう。解散命令は裁判所の職権でも検察官の請求でもできるが、法律的には困難だという評価により裁判官や検察官たちは動かない。
紀藤弁護士に徹底論破された「咬ませ犬」橋下徹弁護士が、まだ統一教会の名称変更を許した下村博文元文科相より拒絶した前川喜平氏が違法と主張。むしろ橋下氏が統一教会の「思う壺」になっている(笑)。
さらに、オウム真理教と明覚寺の解散に当たって裁判所は、以上のような要件がそろって宗教法人を解散させても、それが信者の信教の自由を侵害することにはならないと明言しています。
なぜなら、宗教法人が解散しても法人格のない任意団体としては存続できるのであって、税法上の特権がなくなるだけのことですから、宗教的結社の自由などに対して致命的な影響を与えるものではないからです。
憲法が保障する信教の自由も絶対無制約ではなく、「公共の福祉」により(=他人の人権を保障するため)制約されうることは憲法自体が規定しています。
ですから、岸田首相が
「信教の自由を保障する観点から、判例も踏まえ、慎重に判断する必要がある」
と述べて統一教会を解散したがらないのは、憲法解釈の上からも間違っているのです。
憲法知らずの橋下徹(弁護士)氏と三浦瑠麗(学者?)氏に、なぜ自民党と統一教会の関係を断っても信教の自由の侵害にならないかを解説する。「信者」の信教の自由は無制約ではなく、統一教会は宗教団体ではない。
そこで、山口弁護士は「信教の自由は大切だ」としたうえで
「教団は宗教法人の名を借りた特殊な団体。政府が司法の判断をあおぐのは、日本の宗教を守るうえでも非常に重要だ」
と述べています。
そう、このブログでは統一教会に属する人を呼ぶときにカッコ付きの「信者」としている理由もそれです。
そもそも、統一教会は宗教団体というより、宗教の皮をかぶった政治団体であり、宗教の名を借りて利用して「信者」から高額献金を巻き上げ、霊感商法の被害者からお金を脅し取って、そうして作った莫大な資金を幹部が贅沢したり反共活動に使ってしまうという団体です。
そんな統一教会を普通の宗教団体として扱うからおかしくなるのです。
岸田政権が統一教会の解散命令をどうしても請求しようとしないのは、その裁判の過程で安倍晋三元首相や自民党と統一教会の癒着が暴かれるのが嫌だというだけの私利私欲なのです。
市民の救済よりも自分たちの権力維持を優先する岸田内閣には総辞職してもらうべきでしょう。
自民党と統一教会の「接点」追加報告から、またも山際大臣・山谷えり子・下村博文・杉田水脈・山本朋広各議員の名前漏れ。さらに萩生田政調会長の「統一教会の解散命令請求は難しい」のお前が言うな感が凄い(笑)。
自民党の統一教会汚染 追跡3000日
改訂新版 統一教会とは何か
一連の問題を受けて、旧統一教会は、過度の献金を禁止するなど、「教会改革」に乗り出すと発表。しかし、連絡会では、教団の実態や教義の内容、教団内で発信されている内容などから、「改革には重大な疑義がある」として、解散命令を請求するよう求めたという。
宗教法人法では、所管する文化庁が、宗教法人の解散命令を、裁判所に請求する権限があると規定されている。また、その解散命令の要件としては、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害する行為」や「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」などが認められた場合とされている。
。


しかし、公開申入書によると、旧統一教会への解散請求について、文化庁宗務課からは、「法令に違反」しているかどうか判然としないため、「解散請求が難しい」との消極的な意見が出されているという。
これに対して弁護士らは、オウム真理教をめぐる高裁決定(1995年)では、解散命令の対象として、「反道徳的、反社会的存在」などが挙げられていると指摘。
このため、過去の民事裁判で、不法行為や使用者責任が認定されている旧統一教会についても、解散の要件を満たしていると主張している。
また、法務大臣に対しては、過去に刑事事件で摘発した資料を分析し、組織性などを立証するためには、「検察官の目」が欠かせないとして、文化庁だけではなく、検察官と共同で、解散請求を行うことを求めているという。
「世界平和統一家庭連合」旧統一教会について、弁護士らが国に対し、宗教法人法に基づく「解散命令」を請求するよう申し入れを行いました。
申し入れを行ったのは、元信者らを支援している「全国霊感商法対策弁護士連絡会」です。
会見で川井康雄弁護士は「旧統一教会は、正体隠しによる伝道を行い、裁判で献金に関する違法行為が各地で認められている」と述べ文部科学大臣や法務大臣などに対し、宗教法人の解散命令を速やかに請求するよう求めたことを明らかにしました。
宗教法人の解散命令は所轄庁などの請求により、裁判所が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」などを理由に命じるものです。
川井弁護士は「民事の判決では社会的相当性を逸脱していると繰り返し教会の使用者責任が問われているので、解散命令の根拠となる法令違反にあたる。旧統一教会は『教会改革』の方針を発表したが過去の被害に対する言及が全くないなど信用できず、自浄作用は期待できない」と述べ、解散命令の必要性を訴えました。
文化庁の担当者は「申し入れの文書が届いていないので、コメントできない」としています。
宗教法人の「解散命令」とは
命令が出されると宗教法人は解散となり、固定資産税の非課税など、税制上の優遇措置が受けられなくなりますが、任意の宗教団体としては活動を続けられます。

そのうえで「宗教法人法の解散命令の要件は非常に抽象的にしか書いておらず、国が請求して裁判所が解散を命じたのはこれまで2例しかなく、最後に示されたのは20年前になる。過去の基準をそのまま当てはめるのではなく新しい問題として再検討されるべきだと思う」と話していました。
過去の宗教法人解散命令は2件
このうちオウム真理教については、東京地方検察庁と東京都からの請求を受けて、1995年に東京地方裁判所が解散命令を出しました。
東京高等裁判所も認めたため、教団側は決定を不服として最高裁判所に特別抗告しましたが、1996年1月、「大量殺人を目的として毒ガスであるサリンを大量に生成することを計画したうえ、多数の信者を動員し、計画的、組織的にサリンを生成した。法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる」などとして退けました。
また、1999年には和歌山県に本部があった宗教法人「明覚寺」について、文化庁が解散命令を請求しました。
3年後の2002年1月、和歌山地方裁判所は、教団の関係者が霊能があるように装って相談に訪れた人から現金をだましとっていたとして「被害件数が極めて多く、被害額も多額に及んでいて、著しく公共の福祉を害するものであることは明らかだ」と指摘しました。
さらに「組織的に詐欺行為を行い、宗教団体の目的を著しく逸脱している」として、請求を認める決定を出しました。
こちらも最高裁まで争われましたが、この年の12月に特別抗告が退けられ、確定しています。
◆紀藤正樹氏「国会に調査委設置を期待」
きとう・まさき 1960年生まれ。旧統一教会による被害の根絶を目指す「全国霊感商法対策弁護士連絡会」事務局担当。
◆後房雄氏「反社会的行為には対処法を」
うしろ・ふさお 1954年生まれ。専門は政治学、行政学。名古屋大教授などを経て現職。日本公共政策学会会長も務めた。
https://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/18dd2ec38be4315984e9127e6c6974a3
>宗教法人法では、法令に違反し、著しく公共の福祉を害する行為があった場合などに、裁判所は所轄庁などの請求を受けて解散を命令できると定めています。
例えば、宗教法人自体は犯罪を犯すことができないわけですから、法人の中枢にいる人や信者の大半が犯罪を起こしているという証拠をもって宗教団体による組織的な犯罪行為が証明されます。
ですから、法人の中枢にいる役職員が刑事罰を受けていないと解散請求の要件を満たさないと言われるのですね。
中々ハードルは高そうです。