今週せっかく通常国会が始まり、昨日で代表質問も終わったのですが、何かこう一つ盛り上がらないというか、ブログ記事に書くことがなくてブロガーとして困っています。
一言でいうならこの国会は「軍拡国会」。
岸田首相が防衛費=軍事費を2倍にする、だとか、「反撃能力」=敵基地攻撃能力=先制攻撃能力を具備する軍拡を進めると言い出して、戦後日本の専守防衛という安保政策が完全に崩れ去ろうとしているのに、報道の仕方も悪いんでしょうが、なにか野党が重大な危機感を持って政権を追い詰めているという姿が伝わってきません。
そんな中、平和と護憲に関して一番信頼できる「確かな野党」、日本共産党が揺れています。
共産党でかつて政策委員会の安保外交部長も務めたという松竹伸幸氏が文春新書から共産党に党首公選制の導入を呼びかける『シン・日本共産党宣言』という本を出版したのです。
シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由 (文春新書 1396)
その現役の共産党員でもあるジャーナリストの松竹伸幸氏が2023年1月19日、この本の出版を機に東京都内で記者会見を開きました。
松竹氏は会見で党首選が実現した場合の立候補も表明し、共産党の安保政策について
「他の野党からすれば共産は政権共闘の対象にはならない」
と述べ、現実的な安全保障政策への転換が必要だと訴えたそうです。
それでなくても、確かな野党のはずの共産党が右旋回することを心配しているのに、党首公選制の目的が自衛隊合憲論や日米安保条約合憲論を目指すものなら、やらない方がマシです。
共産党ではセクハラを理由に除名された筆坂秀世氏を筆頭に、分派活動や不祥事で辞めさせられた後に反共主義に転じて、産経新聞などでねちっこく共産党をディスることを生きがいに細々と文筆活動を続けている人がたくさんいます。
外部にいる私には会ったこともない松竹氏という人がどんな人か全くわかりません。
党にとどまりながら議論をしようという松竹氏はまともな人のようにも見えるのですが、この松竹という人もこれまでの人と同じようになっちゃうのかなあとい気持ちと半信半疑ですね。
文芸春秋 《シン・日本共産党宣言》「共産党は“怖い”と思われている」ヒラ党員が異例の執行部批判、元安保外交部長(67)が「党首公選を実施すれば日本の政治がマシになる」と訴えるワケ
ですから、この党首公選論も共産党を右に動かすための「ためにする」議論である疑惑も濃厚なのですが、松竹氏が批判している日本共産党の「民主集中制」は私もどうかと思っています。
日本共産党は規約により、下から議論を積み上げて代表を決める、たとえば下部組織から討論を積み重ねて自分たちの単位組織の代表を選挙で選び、最終的に党首である委員長は党大会で代議員により選ばれた中央委員会委員が討議で決定する、となっています。
日本共産党規約23条では
『中央委員会は、中央委員会幹部会委員と幹部会委員長、幹部会副委員長若干名、書記局長を選出する。また、中央委員会議長を選出することができる。』
となっていて、他党と違って党員が委員長を直接選挙で選べるようになっていないんですね。
その第一の理由は、徹底した議論で自分たちの下部組織の代表を選んで、その人たちがまた上の機関で議論をして代表を選ぶというやり方が最も党員の民意を反映して民主主義的だということ。
そして、党首を直接選挙で選ぶと必ず派閥が生まれる、分派が生まれかねないという事も理由に、党員による直接投票で党首を選ぶことを認めていません。
しかし、最下位の下部組織で6対4で意見が分かれているとしますよね。
その組織からは6の支持を得た代表が上位の組織に代表としていくわけです。
そこに、各下部組織から6の意見を代表する人が集まっていたら、また6の意見を代表する人がさらに代表で選ばれて上の組織に行くという風になってしまって、いつまでたっても4の少数意見を代表する人が上に上がれないことになってしまいます。
もちろんこれは非常に素朴にシンプルに図式化してはいますが、日本共産党の言う民主集中制が上からの意見を押し付けやすい、逆に言うと異論が出にくい構造になっていることは間違いないと思います。
また、直接選挙をすれば必ず派閥ができるから選挙はしないんだという消極的な理由も、日本一民主的な政党であることを自認している政党としては情けない話です。
そしてそもそも、議会制民主主義で多数派を取って政権を奪取すると言っているのに、自分たちの代表を選ぶ場面では選挙制度自体を否定するような議論をしているようでは、共産党が正当だと言えば言うほど非民主的な印象になります。
松竹氏は著書で代表選党首選のメリットについて
「異論の存在を許さない『怖い』政党だという認識に変化が生まれ、共産党を含む政権共闘への国民の不安感も和らぐのではないだろうか」
と記しているそうで、志位和夫委員長が2000年から23年!も委員長を務めている現状については会見で、
「国民の常識からかけ離れていると言わざるを得ない。人材は豊富にいる。(党首交代によって)全体の能力が落ちるようなことは心配しないでいい」
と述べています。
日本共産党って2022年に結党100年を迎え、1950年代終わりに武闘派を追い出して今の共産党になってから65年間で宮本顕治氏、不破哲三氏、志位氏と3人しか代表がいないんですよ。
これはどうみても一人一人の在任期間が長すぎでしょう。
私が今回の松竹氏の党首公選制騒動で、素晴らしいなと思ったのは、日本共産党でもこういう現役党員、それも以前は幹部的な立場だった人から異論が表に出てきたこと。
これ自体は、共産党にもこういう風通しのよさがあるんだという印象を持ちました。
しかし、これに対する志位委員長と田村智子副委員長の対応はいただけません。
志位委員長は1月23日の記者会見で
「この問題については先日、赤旗に藤田編集局次長の論説が出ている。そこで述べられている通りだ」
と繰り返すばかりで、
「あの、この問題についての、わが党の見解は一昨日の論説に尽きている。論点はあそこに提示した通りだ」
自分の言葉でこの問題について語ることを全く拒否しています。
23年前は青年党首だったろうが、今は主要政党の代表で一番高齢なのではないだろうか。
私が次の委員長にと期待をかけていた田村副委員長も1月27日の記者会見で
「党の見解の通りというか、論文の通りだ」
と、志位委員長の言葉のコピペみたいなコメントで、がっかりさせられました。
志位さんは自分が党代表なんだから党の見解を改めて述べたらいいし、田村さんは赤旗にどう書いてあるかは置いておいて自分個人はどう思うかを述べてもいい。
二人が自分の言葉で語らず、記者にも市民にも党員にも自分なりに丁寧に説明を尽くそうとしないコメントに、図らずも日本共産党の議論がしにくい硬直した体質が見えた感じがします。
志位氏や田村氏が引用している藤田氏の赤旗での論文には
『異論があれば党内で意見をのべるということを一切しないまま、「公開されていない、透明でない」などと外からいきなり攻撃することは、「党の内部問題は、党内で解決する」(第5条第8項)という党の規約を踏み破るものです。』
と書いてあります。
党首公選制の問題を本にしたり記者会見したりして「党外」に持ち出した松竹氏を、規約違反だということで処分するような事態にならないといいのですが。
そうなったら、共産党に対する市民からの評価が下がることはあっても上がることはないでしょう。
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志位氏との質疑応答は次の通り。
◇
--先日、現役党員が党首公選制を求めて記者会見を開いた
「この問題については先日、赤旗に藤田編集局次長の論説が出ている。そこで述べられている通りだ」
--その記事には、規約に違反するというふうに書いてあったが、処分する考えはあるか
「今、言えることは、あの論説に尽きている」
--その論説に委員長自身も同意しているという理解でいいか
「これはあの、赤旗にお任せして、書いていただいたということだ。赤旗を信頼して、任せたという内容だ」
--現役党員の会見での主張だと、党首公選制を求めることについて、規約では分派・派閥をつくることにつながるとされているが、そういったことにはならないと言っている。もっと党員を信頼したらどうかという話もしていた
「何度も言うが、藤田論説に尽きている」
--赤旗を信頼しているということだが、今、共産として党勢回復、党員を増やそうとしている中、この記事に書かれた主張の内容が多くの共感を得ると考えるか
「記事に書かれた主張とはどういうことか?」
--(松竹氏の見解は)規約違反だという認識を示しているが、そうした見方が党勢回復に与える影響をどのように考えるか
「私としては藤田さんの論説、的確な内容だと考えている」
--党首公選制の問題提起は国民や党員からもかなり関心を集めていて、委員長自身の説明、見解を聞きたい方もいると思う
「あの、この問題についての、わが党の見解は一昨日の論説に尽きている。論点はあそこに提示した通りだ」
赤旗は21日付で「規約と綱領からの逸脱は明らか」などと現役党員を批判。志位和夫委員長は「(記事は)的確な内容だ」「論説に尽きる」と多くを語っていない。
田村氏は会見で、党千葉県委員会書記長が女子トイレでの盗撮などで逮捕された際に「声を上げたのか」とも問われ、「すぐに、千葉の所属している党組織のところで、最も重い処分をやって、そのことをちゃんと赤旗でも示した。そういう対応をとっている」と答えた。
「現職の衆参両院の女性議員は声をあげたのか」との質問には、「私たちが性犯罪、性暴力に対して、認められないことだという立場は鮮明にとっていて、そういう要請も行っている」と強調。その上で「声を上げた、上げないということが、私たちの立場に何か関係するだろうか。私はしないと思う。共産党の立場は明確だ。性暴力は許されない。盗撮も含めた痴漢行為は認められない。これが私たちの立場だということに一片の揺らぎもない」と続けた。
2023年1月21日(土) しんぶん赤旗
規約と綱領からの逸脱は明らか
――松竹伸幸氏の一連の言動について
赤旗編集局次長 藤田健
元日本共産党本部職員で「現役日本共産党員」を名乗る松竹伸幸氏が、記者会見、最近出版した本、ネットTV、週刊誌などで「党首公選制」を主張しています。
自ら同意したはずの党規約に違反する行為
まず指摘しておかなければならないのは、松竹氏の行動が党のルールに反していることです。党規約では、党員は、「中央委員会にいたるどの機関にたいしても、質問し、意見をのべ、回答をもとめる」(第5条第6項)ことができるとしています。松竹氏も「党首公選制」を実施すべきだという意見があるなら、中央委員会に対しても幹部会や常任幹部会に対しても、そうした意見をのべる権利がありました。しかし、松竹氏が、そうした行動をとったことは、これまでただの一度もありません。異論があれば党内で意見をのべるということを一切しないまま、「公開されていない、透明でない」などと外からいきなり攻撃することは、「党の内部問題は、党内で解決する」(第5条第8項)という党の規約を踏み破るものです。
「党首公選制」についていえば、日本共産党の規約が、党員の直接投票によって党首を選出するという方式をとっていないことには理由があります。そうした方式を実施するならば、理の必然として、各候補者が多数派を獲得するための活動を奨励する――派閥・分派をつくることを奨励することになっていくからです。
日本共産党は、旧ソ連や中国の干渉によって党が分裂した「50年問題」という痛苦の体験を踏まえ、規約で、「党の意思決定は、民主的な議論をつくし、最終的には多数決で決める」「決定されたことは、みんなでその実行にあたる」「党内に派閥・分派はつくらない」という民主集中制を組織原則として明記(第3条)しており、「党首公選制」という主張は、規約のこの原則と相いれないものです。
そして党規約には、次のように明記しています。
「党の諸決定を自覚的に実行する。決定に同意できない場合は、自分の意見を保留することができる。その場合も、その決定を実行する。党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」(第5条第5項)
松竹氏の行動は、党の決定のなかでも綱領とならんで最も重い決定である党規約に反する意見を、党内で主張することもせず、勝手に発表したものであって、松竹氏自身も同意したはずの党規約に違反する行為です。
松竹氏は「党規約に反することのないよう、慎重にやっています」などと言っていますが、それは党規約をまったく理解していないものと言わなければなりません。
「安保条約堅持」と自衛隊合憲を党の「基本政策」にせよと迫る
それでは松竹氏は、何のために「党首公選制」なる主張をとなえているのか。
松竹氏は、19日の記者会見で、2021年の総選挙で日本共産党が「安全保障問題、とりわけ自衛隊問題での野党間の違いを克服できなかった」などとして、それが野党共闘の失敗の原因であるかのようにいいます。そして、「『政権共闘の議論の対象になる』というぐらいのもの(政策)は提示する必要がある」として、安保・自衛隊政策を転換するよう主張しています。
それでは提示すべき政策とはなにか。松竹氏は新たに出版した本のなかで、次のようにのべています。
「共産党が現段階で基本政策として採用すべきだと私が考えるのは、結論から言えば、『核抑止抜きの専守防衛』である。日本は専守防衛に徹するべきだし、日米安保条約を堅持するけれども、アメリカの核抑止には頼らず、通常兵器による抑止に留める政策である」
これは、日本共産党の綱領の根幹をなす、国民多数の合意で日米安保条約を廃棄するという立場を根本から投げ捨て、「日米安保条約の堅持」を党の「基本政策」に位置づけよという要求にほかなりません。
松竹氏は、「専守防衛」を党の「基本政策」に位置づけることも主張しています。いま私たちは、「専守防衛」さえ覆す岸田内閣の大軍拡に反対する国民的多数派をつくるために奮闘しており、「自衛隊は合憲」と考えている多くの人々とも、「岸田内閣の大軍拡を許すな」という一点で広く協力していくことを願っています。しかし、そのことと、「専守防衛」を党の「基本政策」に位置づけることとは全く性格を異にした問題です。「専守防衛」とは、自衛隊合憲論を前提とした議論だからです。結局、松竹氏の主張は、自衛隊は違憲という党の綱領の立場を根本から投げ捨て、自衛隊合憲論を党の「基本政策」に位置づけよという要求にほかなりません。
「綱領の枠内」という言い訳は通用しない
松竹氏は、自身のこうした主張を、「綱領の枠内」のものと言い訳をしていますが、驚くべき主張というほかありません。
党綱領では、日米安保条約について、「日本を守る抑止力」どころか「日本をアメリカの戦争にまきこむ対米従属的な軍事同盟条約」(第4項)と規定し、「日米安保条約を、条約第十条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる。対等平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ」(第13項)と、日米安保条約廃棄の旗を高々と掲げています。
自衛隊については、「国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」(第13項)と明記していますが、ここには自衛隊が憲法違反であるという認識と、自衛隊解消によって憲法9条の完全実施に進むという目標がはっきりのべられています。
党綱領のこれらの根本的命題を投げ捨て、「日米安保条約の堅持」と自衛隊合憲論を党の「基本政策」に位置づけよと主張しながら、自分の主張を「綱領の枠内のもの」と強弁する。いったい松竹氏は、長い間党に在籍しながら、綱領を真剣に学んだことがあるのでしょうか。
日本共産党に対して、日米安保容認、自衛隊合憲の党への変質を迫る議論は、総選挙以来、自民党や一部メディアによって、執拗(しつよう)に繰り返されてきた攻撃です。松竹氏の行動は、“日本共産党という党の存在に期待している”といった装いをこらしながら、こうした攻撃に押し流され、迎合したものと言わざるをえません。